最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音

文字の大きさ
110 / 193
戦争編〜序章〜

第110話 魔法の国を憎む国

しおりを挟む

 こつり、こつり。
 トリアングロ王国要塞都市の中心に堂々とそびえ立つ王城に、続々と幹部が集まっていた。
 もちろん中には戦争の前線にて戦う者もいる為、全員が全員と言うわけでは無いが。

「レヒト・べナードが戻りました」
「ライアルディ・ルナール、戻った」

 クアドラード王国に潜入していた2人がそう挨拶を告げると、会議室にいた幹部は振り返る。

「早かったな」

 蛇、サーペントが書類を片手に口を開いた。

「時間も無かったことだし、国境で転移魔導具を使わせてもらいましたよ。宣言者の我々がいなければ元も子もないでしょう」
「魔石の補充は?」
「はんっ、そんなもの私がカジノ経営しているのだから腐るほどありましたよ」

 べナードが鼻を鳴らし席に腰掛ける。
 魔石を大量に用いることになるが、幹部の国内移動は魔導具の使用を許されている。

 トリアングロは平地の多いクアドラードに比べ土地の高低差が激しい。故に重要な情報を担っている幹部の移動は国内の誰よりも優先される。
 もちろん、コストがかなりかかる為推奨されないが。

「移動魔導具なんて使えるのはクアドラード潜入組だけだろうよ」

 猫、コーシカがふいっと興味無さそうに顔を背ける。
 幹部唯一の獣人でもある男は元より魔法だとか魔導具だとかに興味はなかった。

「あぁ、噂の猫さんですか。初めまして、鹿のべナードです」
「おい若造。その言い方だけはやめろ」
「こちらとしては敬意を表して呼んでいるんですけども」
「あぁ? それなら俺はてめぇのことを鹿ちゃんって呼んでやるぞ?」
「自分のキャラ分かってます???? くそほど似合わないの分かってやってます????」

 べナードが首を180度回転させるレベルで首を傾げる。
 するとバタバタと大きな足音を立てて何者かが近付く。

「あーーーー! もうっ、ほんっっと信じらんない!」

 バン! と勢いよく入ってきたのは薄い水色の綺麗な髪をハーフツインにしたくりくりお目目の可愛い顔立ちをした若い世代の子であった。

「ほら見てよ! 俺の肌! うっげぇー! 俺魔法アレルギーだって言ったじゃん! 王様さぁ、なんでこんなか弱い俺に、しかも薬学の街とかふざけた場所に潜入させんの!? ……って王様居ないしッッッ!」

 腕を捲り鳥肌を見せ、ドスドスと足踏みをして不満を漏らしまくる。

「やぁ、シュテーグリッツのアイドル」
「猿、ティザー・シンミア。ただいま戻りましたっと」

 挨拶の終えたシンミアが揶揄うべナードをキッと睨む。

「その口塞ぎなよ胡散臭カジノオーナー」
「貴方に言われたかないですね」
「はーーーー、帰って早々こんな美しくも無い奴らの顔見るなんて」


「あら、うちは美しくないっていいはるん?」

 海蛇、アダラが笑顔で首を傾げればシンミアはより一層顔を歪めた。

「そんなどす黒い腹抱えた女が美しいとか冗談じゃない。見た目はまあ美しいとは思うけど」
「せやねぇ。戦争企む様な人間が美しくあるわけないやんなぁ」

 クスクスと笑みを浮かべるアダラは妖艶そのもの。シンミアは軽くあしらわれてしまった事により一層腹を立てた。

「猫獣人!」
「獣人族に動物の名前を被せんな猿野郎」
「俺もかっわいくねぇ猿なんて名前で呼ぶなって言ってんだろデコ助野郎!」

 可愛い顔から吐き出される言葉はどぎつい。
 コーシカはやれやれと言いたげにため息を吐いて机に足を乗せた。

「せや。クアドラードに潜入してはった人らに質問なんやけど」

 アダラは頬に手を当てて笑みを浮かべたまま3人を見た。

「魔法の国はどないやった?」
「「「最悪」」」

 べナードは嘲笑するように。シンミアはうげぇと顔を歪めて。ルナールは無表情で。

 更にいえば発言が被った3人は、そのこと自体に最悪そうな顔をした。

「まず俺は元々魔法アレルギーってなんっっかいも言ってたのにさ」
「仕方ないだろ、お前の長所はクアドラード向きなんだから」
「あんな汚い国に行くだけでくしゃみ止まらなくなるし鳥肌だらけだし、コマース領で薬学ババアの任務終わらせた瞬間さっさと帰ってきたよね」

 サーペントが呆れ顔で文句をぶつくさたれるシンミアを諌めようとするが普通に無視された。サーペントは幹部1の情報通故に、幹部の粗方の情報は掴んでいた。

「私はそうですね、王都にずっと居ましたし。膿みたいな貴族相手にしてましたからね」
「その変な口調もあっちで出来た癖か。お前昔は丸太担いで敵対相手吹き飛ばしてただろ」
「……黒歴史をほじくり返すのは本当にやめろ」

 サーペントの思わぬ暴露に殺気が漏れた。殺したい。

「はあ。あっちは差別も中々でしたよ。魔法が使えるが故の問題、というか。……第2王子が国を見限るのも無理は無い」
「お前本当に王族味方に出来たんだな……。俺の・・、チビ助から伝令聞いた時は度肝を抜かしたが」
うちの・・・、ヘビちゃん有能やろ? クアドラード国内走り回ってくれて、ほんまに嬉しいわぁ」

 まーた蛇同士が睨み合いをしている。
 シュランゲの友人に一票。べナードはそうツッコミを入れたかったが普通にやめた。賢明な判断だ。

「魔族差別なんて笑いものです。向こうの王都のギルマスが魔族なのですが、彼、ギルドから中々出られませんよ」
「へぇ、出られないって?」
「ギルド職員から止められているというのも理由の一つですが国が魔族という『魔法に関して完全上位存在』に国の秩序を乱されるのは嫌なんでしょうね。……それに今の貴族は理由無く差別しています。特に、頭の弱い大人と子供に多いですね。ま、賢い貴族当主はやりたくとも出来ないでしょうが」

 そりゃそうだ、と各々が納得する。国同士の秩序を守るため、この世界には世界法がある。貴族当主は世界法に基づき、様々な仕組みを教えさせられる。

「あぁ、魔族の奴隷は酷いもんですよ。対人戦の練習をさせられているんです。『魔法に長けた種族で魔法に耐性があるから的に丁度いい』と」
「……反吐が出るな」
「魔法をずっと使い続けることが出来るのも、気味が悪い、と。魔物みたいだ、と」

 べナードは鼻で笑った。

「人間が魔法なんか使うから。本当に愚かですよねぇ」

 王都で最も魔法国家の汚い所を見てきた男の言葉は、心の底から吐き出された。

「狐さんはどうだったんです。貴方結構、厄介なのにまとわりつかれてましたよね」

 べナードが横を見て問いかけると、眉間にしわを寄せたルナールは息を吸って溜め込んだ鬱憤を吐き出す。

「…………ほんっっとうに、無意味な存在だった。本当に最悪だった」

 感情を表に出すのは珍しい。アダラが軽く目を見開いた。

「魔法職ってのはろくな奴が居ない。俺のした功績はことごとく無意味と化す」
「あぁ、お前の嫌うことだろうな。無駄な労力ってのは」
「労力と功績が割に合わない。腹立たしい」
「でた効率厨」
「別にそこまで効率厨では無い。ただ、過去が無意味になる行為が嫌いなだけだ。自然と効率も良くなる」
「うちは狐のその考え方好きやで。裏切りと最も縁遠いところ、ほんまに扱いやすくて敵わんわぁ」

 だってトリアングロ王国で得た功績、無駄になりかねんもんなぁ。とアダラは怒りを抑えた表情で笑顔を見せる。
 べナードが何かあったのか、とサーペントに視線を向けると『か、ら、す』と口パクで説明をした。裏切り者の名前だ。

「……まぁ狐の席に着いたって功績持ちのお前が無意味に裏切るとは考えられんが。お前の起こしたスタンピードを『狐』の名前が着いた存在に止められた、と合ってな」
「…………やはり月組に疑いの目を向けられてもあの時殺しておくんだったか」
「あ、もしかしてそれ女狐ですか? 王都にも噂として広まってましたよ。……もしかしてあの時の『シュランゲ、元グルージャ、ルナールに囲まれた言語不自由娘』が?」
「情報量が多いちょっと待てその話全く知らないんだが報告しろ」


 ルナールは、忌々しい旅路を思い返した。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

処理中です...