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戦争編〜第四章〜
第193話 もういいかい
しおりを挟む私は動揺した、非常に動揺した。
「あ、あお…………の」
シアンとかち合った。戦闘とも言えないけど戦闘をしていると、シアンの眼帯が外れた。私の撃った魔法がかすったせいだろう。
ヒラヒラと落ちる黒い布。
銀色の髪の隙間から覗いた瞳が青色だった。
金髪と碧眼の瞳。
これは散々私が苦しめられたクアドラード王家の色彩といわれ、色々な目にあった。主にクラップ。
もしかして、あれ、あの、クアドラードの王族と関係あったりします?
胃がキリキリと痛み始めた。おっかしいな、追い詰めようと思ったのに逆に追い詰められた。あいててててて。
「……っ! 見るな!」
シアンは片目を手で隠して私を睨み、その剣で私を拒絶するように斬った。
片手間の攻撃は私が避けるまでもなく空を斬ったけど。
「どういう、事で」
「だからこの目が嫌いなんだ!」
沢山の感情を混ぜた声で叫ばれ、思わず反射的に肩を揺らす。殺意も怒りも混ぜた声はあまりにもクアドラードを憎んでいますと言いたげ。
「ほら、お前も思っただろう、私がクアドラード王家じゃないかと。冗談じゃないっ! これは強がりでもなく純粋な事実だ!」
「………………ご存知なのですね、青い瞳がクアドラードのものだと」
「愚かな、金の髪が何を言うか……っ」
「私は王家ではなきですので」
血は確実に流れているけどね。
隠す青い瞳、恐らくそれで散々な目にあってきたんだろう。
王家の血が流れてないのなら、もしかして事故で目が青く変色した……とか。
「…………。……リィンと言ったな」
「え、はい」
「クアドラード王国の差別を知っているか」
その質問に首を傾げるがひとまず頷いた。
「人が魔族を差別し、獣人を差別する。実感はあまりありませぬがご存知です」
「違う」
シアンは否定した。
「異種族間では無い。異種族間の問題はクアドラード王国だけでは無い。……私が問いたいのは、クアドラード王国の同種族間での差別の話だ」
要するに人間同士の話、ってことでしょう。
残念ながら私は知らない。魔族や獣人ならともかく、というかその問題が大きくて見えていない。
私は無言で首を横に降った。
「クアドラード王国では、人同士でも差別はある。魔族の様に魔法に優れすぎると魔物と称されるが、魔法を使えないものは文明に置いていかれる。……魔法の使えるお前には分からないだろう。使えるはずなのに使えない劣等種の気持ちが」
魔法を封じている国でも私の魔法は通用する。
シアンから見て私は出る杭側の人間なのだろう。……そしてシアンは、使えるはずなのに使えない劣等種側。
「私はクアドラード王国の、騎士団の出だ」
薄々そんな気がしていたけどやっぱりそうかぁ。
騎士団の、しかも貴族家系だろうな、ってことは分かる。だってそうじゃなかったら盾は使わない。
「私は魔法が心底嫌いだ。魔法の使えない私が何より嫌いだ。分からないだろう分かってたまるか!」
……。
「分かるですよ」
「はぁ!? っ、魔法の使えないはずのこの国で、魔法を堂々と扱うお前に何が分かる!」
「私だって最初は魔法が全く使えぬですた! 家族は皆使えるすて、私一人だけ使えぬ時間の恐ろしさ!」
あっれおかしいな私ってチート的な感じで生きていけると思ったのになんて考えたこともありましたよ。えぇ。
子供が魔法を使える様になるには個人差があるから、とパパ上達はそこまで重大に考えてなかったしどこか『やっぱり』という感じの雰囲気すらあった。
世の中と私は違った。だって私は転生者だ。生まれた瞬間から自我があった。
世の中では4歳までは魔法が理解出来なくて、使えなくて、分からなくても常識といった風潮があるのかもしれない。でも私は魔法が理解出来る脳みそを持っていた。固定概念に囚われて魔法が使えないまま過ごす年月はあまりにも長く感じた。
いやー、私めっちゃ諦めなかったな。
最終的に、あの、貴族令嬢が関わっちゃまずいだろって感じの人に教えて貰って使える様になったんだけど。うん。それはまた今度にしよう。
魔法の感覚さえ掴めればあとは想像力と思い込みと集中でどうにかなった。フェヒ爺が来てからは爆発的かつ無理矢理才能を開花させられたといいますか。
うーん?
「やっぱり分かるしませぬね……」
流石に奇妙すぎるな、我ながら人生が。
「自分の理解者って、所詮自分なのですね。すみません、発言撤回するです。──分かりたくもなきぞ」
突き放す様な言葉をかければシアンはイラッと来たのか殺気立った。
あっ。
「でも周囲は使えるすて、自分も使えるはずなのに使えぬ劣等種の気持ちは分かるかも知れませぬ」
「また性懲りも無く……!」
「──言語です。」
「…………………………………………」
無言の時間が続く。
ふっふっふっ、どうだ、ぐうの音も出ないだろう。説得力の塊だぞこちらは。ドヤ顔で言っちゃうぞ。
「…………その……なんというか。……どんまい?」
「うぉーらーぼうるぅうう!」
不思議言語だろうと魔法は使えるだぞこっちは!
微妙な同情はいたたまれなくなるからやめろぉおおお!
クアドラード王国出身なのは本当なのだろう、初級とは言え魔法を簡単に盾で防いだ。
ちぃっっ!
「もういい!? 殺すても良き!?」
羞恥心いっぱいに問いかけるとシアンは軽く目を見開いた後、剣と盾を構えた。
「……まだだ、私はまだ死なない。死ぬのは、お前だ」
==========
夕陽が、戦火が国を赤く照らす。
「もーういーいかーい」
「まーだだよー」
24年前。
クアドラード王国の王都にある時計塔で、やせ細った男の子は緑の目をした女の子と唯一知っている遊びをしていた。
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