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第十八話 イケメン護衛騎士、立ってる者は主人でも使う
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そんなこんなで、ギース様を生徒会室に出禁にしてもらったおかげで仕事もはかどり、各国、要所要所との連携もしっかり取れています。もちろん文句は言われていますが、学園長であるグイスト殿下がなんとかしてくれていますので、大丈夫です。それに、先生方も、自分より上位の生徒だとしてもあしらい方を心得ていらっしゃるようで、特に単純なギース様は簡単に丸め込まれています。
そうして迎えた魔装戦当日――
花火が打ち上がり、観客の入場が開始されました。
会場には可動式の舞台が四つあって、一回戦は四試合同時進行で二回戦は二試合、三回戦以降は一試合ずつ行われます。
「ここまで、きましたわね」
「私は引き続き、委員会のほうで待機していますね」
「ありがとうフィリアン。あとで皆に差し入れを届けるわ」
フィリアンは、当日のトラブル対応として待機している魔装戦委員会の詰所へ向かってくれました。バンテは、屋台が並ぶ辺りの警備詰所で会場全体をモニターでチェックしてくれています。ハマメルとモンドは、学園に入るゲートでトラブルが起きないよう、仁王立ちで目を光らせています。わたくしは――
「エリシャ様、そろそろ控え室でスタンバイしてください」
「わかりました」
そう、わたくしは魔装戦出場者なので、その準備に取り掛かります。
控え室は、選手それぞれに一部屋与えられているのでゆっくりできます。
「お嬢さまさ、これから戦うってのに、ずいぶん余裕ですね」
「まあ、今さら慌てることもありませんわ。それよりリノ?」
「はい?」
「護衛騎士が、主人のお茶を取らないでちょうだい」
「あ、すみません。俺の前に置かれたので」
「わたくしの前に置いたのですわ」
護衛は連れているけれど、侍女は連れ歩かないわたくしは、このような場面では自分でお茶を淹れます。前にリノにお茶を淹れるよう言ったら、何をどうしたらそうなるのか、いったい何の葉っぱだったのか、ドロドロで見た目からしてお茶ではなかったので、練習するように言ったことがあります。しかし、いくら練習しても、我が家でも滅多に入手できない夏摘みの一番茶や、グイスト殿下からこっそり横流ししていただいた、遠い大陸産の岩場に根を張り葉から栄養を取り入れる大紅袍という岩茶を謎の物体Xに変えるのです。もう、二度とリノにお茶を頼むことはしませんと誓いました。
「まあいいですわ、座って飲みなさい」
「お、ありがとうございます。これ食べていいですか?」
「はいはいどうぞ。マドレーヌでもダックワーズでも好きにーー」
「あ、そこのカヌレ、ちょっと焼いてもらえます?」
「……あなたね」
「ちょっと、ちょーっとでいいんで。俺、カリッとしてたほうが好きで」
「主人に生活魔法使わせる護衛騎士なんて、あなたくらいですわ」
ポッとリノの持つお皿の上のカヌレの周りに火を灯して、表面が焦げない程度に炙ります。すると、バターやラム酒のいい香りが漂ってきて、わたくしもお腹がすきました。というかリノ、あなた生活魔法は得意中の得意ではなかったかしら?
「あれ、お嬢さまも食べるんで?」
「匂いにつられましたわ」
わたくしも、護衛騎士の能力に疑問を持ちながらカヌレをお皿に取りました。しかしそれを火であぶる前に、マイクロ波で食品内の水分を振動させ熱します。これを先にすることで、中がもっちりした食感になり、その後表面を焼くことで、魅惑のもちっかりっ食感で美味しさ倍増なのですわ。
「あっ、ずるい」
「あなたは焼いてと言いましたわ」
「そうですけど、ずるい」
不満顔のリノは放っておいて、じとっとした視線をブロックしカヌレを楽しみます。んー、もちかりで美味しいですわ。
そうして迎えた魔装戦当日――
花火が打ち上がり、観客の入場が開始されました。
会場には可動式の舞台が四つあって、一回戦は四試合同時進行で二回戦は二試合、三回戦以降は一試合ずつ行われます。
「ここまで、きましたわね」
「私は引き続き、委員会のほうで待機していますね」
「ありがとうフィリアン。あとで皆に差し入れを届けるわ」
フィリアンは、当日のトラブル対応として待機している魔装戦委員会の詰所へ向かってくれました。バンテは、屋台が並ぶ辺りの警備詰所で会場全体をモニターでチェックしてくれています。ハマメルとモンドは、学園に入るゲートでトラブルが起きないよう、仁王立ちで目を光らせています。わたくしは――
「エリシャ様、そろそろ控え室でスタンバイしてください」
「わかりました」
そう、わたくしは魔装戦出場者なので、その準備に取り掛かります。
控え室は、選手それぞれに一部屋与えられているのでゆっくりできます。
「お嬢さまさ、これから戦うってのに、ずいぶん余裕ですね」
「まあ、今さら慌てることもありませんわ。それよりリノ?」
「はい?」
「護衛騎士が、主人のお茶を取らないでちょうだい」
「あ、すみません。俺の前に置かれたので」
「わたくしの前に置いたのですわ」
護衛は連れているけれど、侍女は連れ歩かないわたくしは、このような場面では自分でお茶を淹れます。前にリノにお茶を淹れるよう言ったら、何をどうしたらそうなるのか、いったい何の葉っぱだったのか、ドロドロで見た目からしてお茶ではなかったので、練習するように言ったことがあります。しかし、いくら練習しても、我が家でも滅多に入手できない夏摘みの一番茶や、グイスト殿下からこっそり横流ししていただいた、遠い大陸産の岩場に根を張り葉から栄養を取り入れる大紅袍という岩茶を謎の物体Xに変えるのです。もう、二度とリノにお茶を頼むことはしませんと誓いました。
「まあいいですわ、座って飲みなさい」
「お、ありがとうございます。これ食べていいですか?」
「はいはいどうぞ。マドレーヌでもダックワーズでも好きにーー」
「あ、そこのカヌレ、ちょっと焼いてもらえます?」
「……あなたね」
「ちょっと、ちょーっとでいいんで。俺、カリッとしてたほうが好きで」
「主人に生活魔法使わせる護衛騎士なんて、あなたくらいですわ」
ポッとリノの持つお皿の上のカヌレの周りに火を灯して、表面が焦げない程度に炙ります。すると、バターやラム酒のいい香りが漂ってきて、わたくしもお腹がすきました。というかリノ、あなた生活魔法は得意中の得意ではなかったかしら?
「あれ、お嬢さまも食べるんで?」
「匂いにつられましたわ」
わたくしも、護衛騎士の能力に疑問を持ちながらカヌレをお皿に取りました。しかしそれを火であぶる前に、マイクロ波で食品内の水分を振動させ熱します。これを先にすることで、中がもっちりした食感になり、その後表面を焼くことで、魅惑のもちっかりっ食感で美味しさ倍増なのですわ。
「あっ、ずるい」
「あなたは焼いてと言いましたわ」
「そうですけど、ずるい」
不満顔のリノは放っておいて、じとっとした視線をブロックしカヌレを楽しみます。んー、もちかりで美味しいですわ。
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