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最終話 その後のおはなし
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エリシャ・エストルムはずっと、ギース・ジャビウスと婚約破棄したいと思っていた。
性的な興味から、出会って数時間で触れようとしてくるような男、きもちわるいだけだ、と彼女は言う。とくに顔がきもちわるいそうだ。
エリシャの家に住んでいたピオミルと、婚約者ギースが仲良くなったことで、彼女はそれが叶うと思った。
数年に渡って、二人は不義を働き、公にもまるでピオミルが婚約者かのように振る舞っているのだから。
他の縁談がこないように、このまま婚約者として過ごし、学園卒業の時に婚約を破棄して自由になる、それがエリシャの計画だった。ギースも、卒業時に婚約破棄をするとほのめかしていたからそのままにしていた。
しかしそれは、少しだけ早まることになる。
生粋のお姫様であるエリシャのことが気に食わないピオミルが、何度かエリシャに対して牙を剥いては護衛や周りの人間にあしらわれていたのだが、あの魔装戦の日に、ついにそれがエリシャに掠ることになった。
そしてピオミルは捕まり、自白し、罪人収容施設送り。50年の刑だから、生きているうちに出られるかわからない。
「なんで……なんでよ……」
「ピオミル、ここはもっと色を使ったほうがいいわ」
「お母様、なんでそんなに楽しそうなの……」
「えっ、だって……、ここは平和じゃない?」
「えー…………」
侯爵家に対する詐欺罪で刑を執行されたピオミルの母パニラは、娘より刑期は短いが、同じ収容施設に入っていた。そこで、親子仲良く労働に勤しんでいる。
「食べるのに困らない、着飾れはしないけど着るものはある。寝る時間だってちゃんと確保されているし、安全な仕事も与えられているのよ?」
「まあそうだけど……」
「それに何より……貴女と一緒に過ごせて嬉しいわ、ピオミル」
「……おかあさん」
「ふふっ、久しぶりね? そう呼ばれるの」
「…………うん」
収容所で再会した親子。母は、娘に縋りつき泣いて謝った。
そして今は、娘といられることが嬉しいと言う。
「さ、このドレスの刺繍が終わったら、あなたは会計のお手伝いよね」
「うん」
「昔から計算が得意だったものね。張り切ってお役に立ってらっしゃい」
「うん。頑張る、ね」
「ふふっ」
娘は、絢爛豪華な世界から転落して収容施設暮しとなったことに納得はしていない。しかし今は、お金やドレスや宝石、男、王子だなんだのの全ての欲から解き放たれた。素直に表に出すことはないが、母と二人、幸せだった時のことを思い出し、共に過ごせることを喜んでいるようだ。
10年経って、母が施設を出ていくまでの時間を、大切にすることだろう。
罪人が入れられるこの収容施設は、罪を悔い改め改心し、社会復帰させることが目的である。
きちんとした生活が送れるし、出所してから困らないよう手に職を持つこともできる。
取り返しのつかない、悪意にまみれた罪人以外には、やさしい施設だ。
ここが平和だ、というパニラが刑期を終え出所したらどうなるか……母がいなくなりひとりになったとき、ピオミルはここでどう生きるのか……今はまだ、わからない。
「平民……平民、か」
ここに、城から追い出された元第二王子がいる。彼は何か思案しているようだった。
結局、彼をここまで追いやったのは、『王族としての意識の低さ』につきるだろう。国民のおさめる税金で生活しているなんて考えもしなかった。王家の血筋を持つものが王位継承権を得ることは知っていたが、自身がまき散らした種が芽吹くなどとは考えもしなかった。何のために、母が苦労してエリシャとの婚約を取り付けたのかも、正しく理解してはいなかった。
与えられたものを受け取り、消化し、どう生かすかを考えるべきだった。しかし彼は、えり好みし、いらないものは捨てていった。
結果、出来上がったのが今のギースだ。
「平民として生活するにはどうしたらいい?」
「え? えっと、そうですね……」
「何か、仕事をすればいいのか?」
「あー、はい。仕事をしてお金を稼いで、税金を納めるのが国民の義務ですから」
「税金……なるほど」
「あ、えっと、お住まいはどちらで?」
「住まい? そうだな、ないな」
「えっ?」
「家がないと仕事ができないのか?」
「い、いえ! 大丈夫ですよ! 住み込みの仕事もあります!」
「住み込み……」
「体力には自信ありますか?」
「体力か、そうだな。私は一晩で最高10回はイケる」
「あ、え? は、はあ……そうですか、えっと、体力には自信あるということでしたら――」
今まで、好きなものを食べ好きな遊びをし、好きな女を好きにして、ダラダラと王家に寄生しているような暮しをしていたギースだったが、以外にも働くことに抵抗はないらしい。
このあとギースは、王都にいて宿なしだなんて……と同情され、職業あっせん所の職員に実のいい仕事を紹介してもらった。金属加工工場に住み込み、教えられた仕事をきちんとこなしていったギース。その仕事は、王子としてやらなければいけない勉強より頭を使わないし、剣術や体術の特訓より体力を使わなかった。元王子というだけのことはあって審美眼は確かで、鉱石や宝石の偽物を見破り、工場の皆から信頼され好かれていく。そして、工場内でもそれなりの給料をもらう地位について金も貯まった頃、工場に宝石などを売りに来る行商が楽しそうだと思ったので転職することにした。
「ではギースさん、見習いとして私と一緒に仕入れに行きましょうか」
「ああ店主。私は王都以外の街に行ったことがないので、とても楽しみだ」
「あなたの目利きに期待していますよ」
「うむ。任せろ」
どうやらうまくやっているようだ。
「すみません、兄上」
「いつか、戻るんだろう?」
「この国に骨を埋める気でいます」
「ははっ、だいぶ先のことだな」
国王としてではなく、弟を思う兄として、優しい顔をしているレオカディオ。
グイストは、学園長の座を退いて再び冒険者として世界をまわることを決意していた。王族が条件の学園長の席には、王太子ギザークが座ることになった。もちろん、いろいろな仕事と兼務になるが。
「まあ、エリシャの気が済むまでは、帰ってこれないでしょうね」
「そうか……エリシャ嬢には長年苦労をかけたからな。愛する弟くらい、護衛に差し出すさ」
「……ありがとうございます」
「だが、ギザークの即位までには帰れよ?」
「まだ決まってもいないでしょう」
「そうだけどな」
「間に合わなかったら、叔父上に手紙を書いて学園長代理を頼みますよ」
「あの老兵にか? 務まるといいがな」
「ははっ、怒られますよ」
「ああ、本人には口が裂けても言えないな」
「…………お元気で」
「……ああ、気をつけて行ってこい」
「はい。いってきます」
どうやら、自由になりたい自由になりたいと思い続けていた物語の主人公は、冒険者になる気らしい。
世界中をまわって様々なものに、人に、食べ物に出会い、いろいろな価値観を理解したい。知識や人とのつながりは最高の財産だ。
そして最後は、それを国に持ち帰り貢献したいと思っているそうだ。
「行きませんよ」
「えっ? そうなの?」
「まあ俺は、今はあなたに雇われている護衛ですけどね?」
「ええ」
「ですけど、それはエストルム邸ありきの話です」
「そうなの?」
「契約では、『エストルム邸に住むエリシャ・エストルムの護衛』とありましたし」
「……雇用条件の変更は?」
「受け付けてませーん。世界中を旅する冒険者についてって護衛なんて、できませんよ」
「えー……」
「もうアーシャと婚約もしているし、俺は結婚して花屋になります」
「あっ、そうなの? おめでとう!」
「ありがとうございます」
「あら、でも花屋の店主さんは――」
「血縁じゃないですけどね。長く勤めてるアーシャに店を譲るって話になってるんで。結婚して夫婦で花屋をやります」
「そう……なんていうか、すごく、すてきね!」
「そうでしょ?」
「そっか、リノとはここまでかー」
「いやだって、王弟殿下がついてくる旅なんですよね? 本気で俺、いります?」
「それは、……いつも、一緒にいてくれたし」
「護衛ですからね」
「まさか辞めるなんて思ってもいなかったから……」
「ずっとは無理ですよ」
「そう、よね……」
「…………ま、帰ってくることがあったら顔出してくださいよ。お嬢さまの好きな花、用意しとくんで」
「――ええ、ありがとう」
「いって、らっしゃい」
「いってきます!」
長年過ごしたエストルム邸と使用人たち、そして護衛のリノ・カートナーにも別れを告げ、エリシャは旅立った。
今後はエドガー・エストルムが邸に戻り、侯爵を務めることになる。
「エリシャ嬢は行ったか」
「はい、今朝」
「長く、弟が……いや、王家が迷惑をかけたな」
「はい……。あ、いえ、エリシャはそれほど気にしておりませんでしたので」
「大物だな。一国の王子妃におさめるには惜しい」
「ええ。きっと、広い世界を見てさらに素晴らしい女性に成長することでしょう。次に会えるのが楽しみで仕方ありません。そもそも今でも十分淑女として申し分ないし王子妃どころか王妃、いえなんならどこぞの国の女王としても――」
「そうだな! ……楽しみだ。それで、エドガー。後任は決まったのか?」
「ああ、そうでした。殿下の近衛ですが、エリシャが置いていった……というか連れていけなかったリノ・カートナーが浮いていますが、いかがいたしますか? 婚約者と花屋をやると言っているのですが、あの腕を町の花屋にくれてやるのは惜しいかと」
「いや、…………カートナーは遠慮しよう」
「まさかまだ、根に持ってます?」
「……いや」
「子供の頃から仲良くしていて果ては王子妃だ王妃だと言われていた現婚約者のアリオネッサ様が、カートナーが近衛外隊に配属されたときにあいつの顔面が『超モロ好み!』とはしゃいでいたこと」
「…………ちがうぞ」
そしてエドガーは、王太子の近衛隊を副隊長だった男に引き継いで城を去った。
変わりとは言わないが、近く、エストルム家次男のエーレンデュースが、宰相職の引継ぎに入って城で働くことになる。
そして――
「今帰ったぞー!!」
爵位を息子に譲り渡し、騎士団長の地位は腹心のギルテシュ・シーザーに引継ぎ、一個隊の隊長として国防に勤しんでいるシュナイダー・エストルムの突然の帰還。
「ジダール海峡が落ち着いたから、タリファの駐屯地で土産をたくさん買ってきたぞ! エリシャ!」
驚きながらも出迎えてくれる使用人はいたが、最愛の娘の姿が見えなくて、父シュナイダーは邸中を捜しまわった。
「エリシャー? タイル細工が有名な町でなー、エリシャの名前のモザイクタイルを――」
「旦那様」
「おお、ヴァルデマールさん。今帰ったぞ。エリシャはどこだ?」
「ご無事でなによりです。……が、お帰りになる前にご一報ください」
「ああすまない。帰れると思うと嬉しくて、早馬を抜かしてきてしまったようだな。エリシャは?」
「まったく……。エリシャ様でしたら、もうここにはいらっしゃいませんよ」
「いな、……え? いない??」
「はい。冒険者登録を済ませ、旅立たれました。まずは西に渡ると仰っていましたよ」
「ぼ、冒険者??」
「旦那様がお帰りにならないので、お手紙は送っていらっしゃいましたが……」
「手紙……いや、手紙は……見ないようにしていて……」
「長年の癖でしょうか」
「そう、検閲官に、国からの重要事項以外は通すなと……」
「困ったことですね」
「うう……! エリシャ……エリシャ――っ!!」
父は、またしばらく、娘とは会えないようだ。
「ふふっ、ほんとに、リノにそっくりだったわ」
「そうだな……あれなら確かに信徒に拝まれても仕方ない」
エリシャとグイストは、ジャービー国最西部のグラッドノア伯爵領で、以前リノが似ているといって拝まれた『光の使徒様』の壁画を見てから西国に向かっていた。ジャービーの西に隣するボルディ国は、比較的低ランクの魔物しか出ないので、初心者冒険者におすすめの国となっている。
そしてなんと、実は今、ボルティ国にマゴールパティシエがいるという。
「ああ……楽しみ!」
「そうか」
「ボルティ国のシンボルともいえるギャロを模ったカラフルな練り菓子ですって!」
「そうか」
「お土産でもらったけど、あの可愛い鳥の形をどうやってお菓子に取り入れているのかしら……」
「うむ」
「練り菓子といってもいろいろあるけど、餡子の入っているのがとっても美味しくて……」
「ああ」
「ギャロといえば黒だけど、黒ゴマを使っていたりするのかしら?」
「んん」
「ボルティの人たちは色に意味を持って身に着けるものに使ったりしているのよね。だったら、平和の白とか希望の黄色を入れていたり――」
お菓子に対する想いは募るばかりのようだ。
「ボルティ国では、まずランク上げをしようか」
「グイスト様は何ランクなんですか?」
「Aランクだな」
「一番上がS?」
「ああ」
「登録時はFからだから……え、でもグイスト様冒険者やっていたのって、どのくらい?」
「3年、くらいだろうか」
「3年……」
冒険者ランクはFから始まりE・D・C・B・A・Sとある。
S級は、世界冒険者協会でみても5人しかいないので、実質Aが最高ランクといってもいい。3年でFからAにランクを上げるような凄腕は、今いる5人のS級の冒険者くらいだ。
「じゃあグイスト様も、目指せS級ね!」
「いや、別にそんな高みは目指していないんだが……」
「そうなんですか?」
「あの時は、君とギースの婚約が決まって荒れていて……ただただ憂さ晴らしに魔物や盗賊や海賊や山賊を倒し続けていたらいつの間にか」
「そ、そうですの」
「ああ……」
なんとなく、ピンク色の雰囲気になり頬を染めるエリシャ。
「あ、いや、そんなこと言われても困るよな」
「えっ? ええ、……え、いえ、だいじょうぶですわ」
「…………なんだその表情は、かわいいが過ぎるぞ」
「なっ! なにを言っていらっしゃいますの?!」
「口調も戻っている」
「そ、そんなことありませんわ!」
「そうか?」
「そうですわ!」
「…………ははっ」
「っ! もう!」
二人の旅は、ここから始まる。
妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~
第一章・完
性的な興味から、出会って数時間で触れようとしてくるような男、きもちわるいだけだ、と彼女は言う。とくに顔がきもちわるいそうだ。
エリシャの家に住んでいたピオミルと、婚約者ギースが仲良くなったことで、彼女はそれが叶うと思った。
数年に渡って、二人は不義を働き、公にもまるでピオミルが婚約者かのように振る舞っているのだから。
他の縁談がこないように、このまま婚約者として過ごし、学園卒業の時に婚約を破棄して自由になる、それがエリシャの計画だった。ギースも、卒業時に婚約破棄をするとほのめかしていたからそのままにしていた。
しかしそれは、少しだけ早まることになる。
生粋のお姫様であるエリシャのことが気に食わないピオミルが、何度かエリシャに対して牙を剥いては護衛や周りの人間にあしらわれていたのだが、あの魔装戦の日に、ついにそれがエリシャに掠ることになった。
そしてピオミルは捕まり、自白し、罪人収容施設送り。50年の刑だから、生きているうちに出られるかわからない。
「なんで……なんでよ……」
「ピオミル、ここはもっと色を使ったほうがいいわ」
「お母様、なんでそんなに楽しそうなの……」
「えっ、だって……、ここは平和じゃない?」
「えー…………」
侯爵家に対する詐欺罪で刑を執行されたピオミルの母パニラは、娘より刑期は短いが、同じ収容施設に入っていた。そこで、親子仲良く労働に勤しんでいる。
「食べるのに困らない、着飾れはしないけど着るものはある。寝る時間だってちゃんと確保されているし、安全な仕事も与えられているのよ?」
「まあそうだけど……」
「それに何より……貴女と一緒に過ごせて嬉しいわ、ピオミル」
「……おかあさん」
「ふふっ、久しぶりね? そう呼ばれるの」
「…………うん」
収容所で再会した親子。母は、娘に縋りつき泣いて謝った。
そして今は、娘といられることが嬉しいと言う。
「さ、このドレスの刺繍が終わったら、あなたは会計のお手伝いよね」
「うん」
「昔から計算が得意だったものね。張り切ってお役に立ってらっしゃい」
「うん。頑張る、ね」
「ふふっ」
娘は、絢爛豪華な世界から転落して収容施設暮しとなったことに納得はしていない。しかし今は、お金やドレスや宝石、男、王子だなんだのの全ての欲から解き放たれた。素直に表に出すことはないが、母と二人、幸せだった時のことを思い出し、共に過ごせることを喜んでいるようだ。
10年経って、母が施設を出ていくまでの時間を、大切にすることだろう。
罪人が入れられるこの収容施設は、罪を悔い改め改心し、社会復帰させることが目的である。
きちんとした生活が送れるし、出所してから困らないよう手に職を持つこともできる。
取り返しのつかない、悪意にまみれた罪人以外には、やさしい施設だ。
ここが平和だ、というパニラが刑期を終え出所したらどうなるか……母がいなくなりひとりになったとき、ピオミルはここでどう生きるのか……今はまだ、わからない。
「平民……平民、か」
ここに、城から追い出された元第二王子がいる。彼は何か思案しているようだった。
結局、彼をここまで追いやったのは、『王族としての意識の低さ』につきるだろう。国民のおさめる税金で生活しているなんて考えもしなかった。王家の血筋を持つものが王位継承権を得ることは知っていたが、自身がまき散らした種が芽吹くなどとは考えもしなかった。何のために、母が苦労してエリシャとの婚約を取り付けたのかも、正しく理解してはいなかった。
与えられたものを受け取り、消化し、どう生かすかを考えるべきだった。しかし彼は、えり好みし、いらないものは捨てていった。
結果、出来上がったのが今のギースだ。
「平民として生活するにはどうしたらいい?」
「え? えっと、そうですね……」
「何か、仕事をすればいいのか?」
「あー、はい。仕事をしてお金を稼いで、税金を納めるのが国民の義務ですから」
「税金……なるほど」
「あ、えっと、お住まいはどちらで?」
「住まい? そうだな、ないな」
「えっ?」
「家がないと仕事ができないのか?」
「い、いえ! 大丈夫ですよ! 住み込みの仕事もあります!」
「住み込み……」
「体力には自信ありますか?」
「体力か、そうだな。私は一晩で最高10回はイケる」
「あ、え? は、はあ……そうですか、えっと、体力には自信あるということでしたら――」
今まで、好きなものを食べ好きな遊びをし、好きな女を好きにして、ダラダラと王家に寄生しているような暮しをしていたギースだったが、以外にも働くことに抵抗はないらしい。
このあとギースは、王都にいて宿なしだなんて……と同情され、職業あっせん所の職員に実のいい仕事を紹介してもらった。金属加工工場に住み込み、教えられた仕事をきちんとこなしていったギース。その仕事は、王子としてやらなければいけない勉強より頭を使わないし、剣術や体術の特訓より体力を使わなかった。元王子というだけのことはあって審美眼は確かで、鉱石や宝石の偽物を見破り、工場の皆から信頼され好かれていく。そして、工場内でもそれなりの給料をもらう地位について金も貯まった頃、工場に宝石などを売りに来る行商が楽しそうだと思ったので転職することにした。
「ではギースさん、見習いとして私と一緒に仕入れに行きましょうか」
「ああ店主。私は王都以外の街に行ったことがないので、とても楽しみだ」
「あなたの目利きに期待していますよ」
「うむ。任せろ」
どうやらうまくやっているようだ。
「すみません、兄上」
「いつか、戻るんだろう?」
「この国に骨を埋める気でいます」
「ははっ、だいぶ先のことだな」
国王としてではなく、弟を思う兄として、優しい顔をしているレオカディオ。
グイストは、学園長の座を退いて再び冒険者として世界をまわることを決意していた。王族が条件の学園長の席には、王太子ギザークが座ることになった。もちろん、いろいろな仕事と兼務になるが。
「まあ、エリシャの気が済むまでは、帰ってこれないでしょうね」
「そうか……エリシャ嬢には長年苦労をかけたからな。愛する弟くらい、護衛に差し出すさ」
「……ありがとうございます」
「だが、ギザークの即位までには帰れよ?」
「まだ決まってもいないでしょう」
「そうだけどな」
「間に合わなかったら、叔父上に手紙を書いて学園長代理を頼みますよ」
「あの老兵にか? 務まるといいがな」
「ははっ、怒られますよ」
「ああ、本人には口が裂けても言えないな」
「…………お元気で」
「……ああ、気をつけて行ってこい」
「はい。いってきます」
どうやら、自由になりたい自由になりたいと思い続けていた物語の主人公は、冒険者になる気らしい。
世界中をまわって様々なものに、人に、食べ物に出会い、いろいろな価値観を理解したい。知識や人とのつながりは最高の財産だ。
そして最後は、それを国に持ち帰り貢献したいと思っているそうだ。
「行きませんよ」
「えっ? そうなの?」
「まあ俺は、今はあなたに雇われている護衛ですけどね?」
「ええ」
「ですけど、それはエストルム邸ありきの話です」
「そうなの?」
「契約では、『エストルム邸に住むエリシャ・エストルムの護衛』とありましたし」
「……雇用条件の変更は?」
「受け付けてませーん。世界中を旅する冒険者についてって護衛なんて、できませんよ」
「えー……」
「もうアーシャと婚約もしているし、俺は結婚して花屋になります」
「あっ、そうなの? おめでとう!」
「ありがとうございます」
「あら、でも花屋の店主さんは――」
「血縁じゃないですけどね。長く勤めてるアーシャに店を譲るって話になってるんで。結婚して夫婦で花屋をやります」
「そう……なんていうか、すごく、すてきね!」
「そうでしょ?」
「そっか、リノとはここまでかー」
「いやだって、王弟殿下がついてくる旅なんですよね? 本気で俺、いります?」
「それは、……いつも、一緒にいてくれたし」
「護衛ですからね」
「まさか辞めるなんて思ってもいなかったから……」
「ずっとは無理ですよ」
「そう、よね……」
「…………ま、帰ってくることがあったら顔出してくださいよ。お嬢さまの好きな花、用意しとくんで」
「――ええ、ありがとう」
「いって、らっしゃい」
「いってきます!」
長年過ごしたエストルム邸と使用人たち、そして護衛のリノ・カートナーにも別れを告げ、エリシャは旅立った。
今後はエドガー・エストルムが邸に戻り、侯爵を務めることになる。
「エリシャ嬢は行ったか」
「はい、今朝」
「長く、弟が……いや、王家が迷惑をかけたな」
「はい……。あ、いえ、エリシャはそれほど気にしておりませんでしたので」
「大物だな。一国の王子妃におさめるには惜しい」
「ええ。きっと、広い世界を見てさらに素晴らしい女性に成長することでしょう。次に会えるのが楽しみで仕方ありません。そもそも今でも十分淑女として申し分ないし王子妃どころか王妃、いえなんならどこぞの国の女王としても――」
「そうだな! ……楽しみだ。それで、エドガー。後任は決まったのか?」
「ああ、そうでした。殿下の近衛ですが、エリシャが置いていった……というか連れていけなかったリノ・カートナーが浮いていますが、いかがいたしますか? 婚約者と花屋をやると言っているのですが、あの腕を町の花屋にくれてやるのは惜しいかと」
「いや、…………カートナーは遠慮しよう」
「まさかまだ、根に持ってます?」
「……いや」
「子供の頃から仲良くしていて果ては王子妃だ王妃だと言われていた現婚約者のアリオネッサ様が、カートナーが近衛外隊に配属されたときにあいつの顔面が『超モロ好み!』とはしゃいでいたこと」
「…………ちがうぞ」
そしてエドガーは、王太子の近衛隊を副隊長だった男に引き継いで城を去った。
変わりとは言わないが、近く、エストルム家次男のエーレンデュースが、宰相職の引継ぎに入って城で働くことになる。
そして――
「今帰ったぞー!!」
爵位を息子に譲り渡し、騎士団長の地位は腹心のギルテシュ・シーザーに引継ぎ、一個隊の隊長として国防に勤しんでいるシュナイダー・エストルムの突然の帰還。
「ジダール海峡が落ち着いたから、タリファの駐屯地で土産をたくさん買ってきたぞ! エリシャ!」
驚きながらも出迎えてくれる使用人はいたが、最愛の娘の姿が見えなくて、父シュナイダーは邸中を捜しまわった。
「エリシャー? タイル細工が有名な町でなー、エリシャの名前のモザイクタイルを――」
「旦那様」
「おお、ヴァルデマールさん。今帰ったぞ。エリシャはどこだ?」
「ご無事でなによりです。……が、お帰りになる前にご一報ください」
「ああすまない。帰れると思うと嬉しくて、早馬を抜かしてきてしまったようだな。エリシャは?」
「まったく……。エリシャ様でしたら、もうここにはいらっしゃいませんよ」
「いな、……え? いない??」
「はい。冒険者登録を済ませ、旅立たれました。まずは西に渡ると仰っていましたよ」
「ぼ、冒険者??」
「旦那様がお帰りにならないので、お手紙は送っていらっしゃいましたが……」
「手紙……いや、手紙は……見ないようにしていて……」
「長年の癖でしょうか」
「そう、検閲官に、国からの重要事項以外は通すなと……」
「困ったことですね」
「うう……! エリシャ……エリシャ――っ!!」
父は、またしばらく、娘とは会えないようだ。
「ふふっ、ほんとに、リノにそっくりだったわ」
「そうだな……あれなら確かに信徒に拝まれても仕方ない」
エリシャとグイストは、ジャービー国最西部のグラッドノア伯爵領で、以前リノが似ているといって拝まれた『光の使徒様』の壁画を見てから西国に向かっていた。ジャービーの西に隣するボルディ国は、比較的低ランクの魔物しか出ないので、初心者冒険者におすすめの国となっている。
そしてなんと、実は今、ボルティ国にマゴールパティシエがいるという。
「ああ……楽しみ!」
「そうか」
「ボルティ国のシンボルともいえるギャロを模ったカラフルな練り菓子ですって!」
「そうか」
「お土産でもらったけど、あの可愛い鳥の形をどうやってお菓子に取り入れているのかしら……」
「うむ」
「練り菓子といってもいろいろあるけど、餡子の入っているのがとっても美味しくて……」
「ああ」
「ギャロといえば黒だけど、黒ゴマを使っていたりするのかしら?」
「んん」
「ボルティの人たちは色に意味を持って身に着けるものに使ったりしているのよね。だったら、平和の白とか希望の黄色を入れていたり――」
お菓子に対する想いは募るばかりのようだ。
「ボルティ国では、まずランク上げをしようか」
「グイスト様は何ランクなんですか?」
「Aランクだな」
「一番上がS?」
「ああ」
「登録時はFからだから……え、でもグイスト様冒険者やっていたのって、どのくらい?」
「3年、くらいだろうか」
「3年……」
冒険者ランクはFから始まりE・D・C・B・A・Sとある。
S級は、世界冒険者協会でみても5人しかいないので、実質Aが最高ランクといってもいい。3年でFからAにランクを上げるような凄腕は、今いる5人のS級の冒険者くらいだ。
「じゃあグイスト様も、目指せS級ね!」
「いや、別にそんな高みは目指していないんだが……」
「そうなんですか?」
「あの時は、君とギースの婚約が決まって荒れていて……ただただ憂さ晴らしに魔物や盗賊や海賊や山賊を倒し続けていたらいつの間にか」
「そ、そうですの」
「ああ……」
なんとなく、ピンク色の雰囲気になり頬を染めるエリシャ。
「あ、いや、そんなこと言われても困るよな」
「えっ? ええ、……え、いえ、だいじょうぶですわ」
「…………なんだその表情は、かわいいが過ぎるぞ」
「なっ! なにを言っていらっしゃいますの?!」
「口調も戻っている」
「そ、そんなことありませんわ!」
「そうか?」
「そうですわ!」
「…………ははっ」
「っ! もう!」
二人の旅は、ここから始まる。
妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~
第一章・完
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第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
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ロイズ王国
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帝国
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