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第二章 外国漫遊記
第四話 モーニシュ家
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モーニシュ家の執事、ベント・シケイラだと名乗った男性。彼に案内され、これまた目に優しくない絢爛豪華な廊下を移動して、応接室へ向かいます。
赤褐色の美しい木目で、独特の光沢があるローズウッドの扉。この先が応接室のようです。非常に高度な技術が必要とされる加工をこれほどまで精巧に美しい装飾を入れて仕上げるとは、どこの職人さんか知りたいところですわ。
「お連れしました」
「ええ、ありがとう」
シケイラさんが重厚な扉を開くと、私たちを中に促しました。そこには、女性がふたりと男性がいるようです。
豪華なドレスを纏って革張りのソファに座る女性、これから夜会にでも行くのかしら? その後ろに控え目に立つ、真っ白のスカプラリオを着ている女性が、聖女様ね。やはり、戦場にいるなんて嘘。
それともうひとりの男性は、モーニシュ家のご当主でしょうか。
「ようこそおいでくださいました。歓迎しますわ、グイスト様!」
「……」
お胸が零れ落ちんばかりの派手なドレスを着ている女性が、きゅるるんという効果音つきで祈るように手を前で組み立ち上がります。
お嬢さん、相手が他国の準王族と知ってその態度だとしたら、不敬罪です。知らずとも、不敬罪です。
あら? どこかの誰かさんを思い出しますわね。
「ずっと、あなたに会いたかった…。グイスト様っ!」
「っ!」
「あっ」
バッと勢いよく抱き着こうと飛びかかってきた女性を、サッと躱し腕を掴み肩を床に押し付けるグイスト様。鮮やかなお手並みです。
「ビトリア!」
「っ…!」
「い、痛いですわ~!」
慌てるご当主(仮)と聖女様(仮)、そして涙目になる痴女さん(仮)。
まずは自己紹介から始めましょう?
「む、娘が失礼しました。私はモーニシュ家当主、サロマン・モーニシュ。こちらが娘のビトリアと、国で聖女として認定されているポワリアです」
「グイスト・ルシエンテスだ」
「エリシャ・エストルムですわ」
「なんで悪役令嬢が、グイスト様と一緒なのよ」
「ビトリア!」
「…あくやく?」
モーニシュ家のお嬢さんは、どうやらグイスト様に夢中みたいだけれど、私のことは気に食わないようです。もともと釣り気味の目を、さらに鋭く尖らせて睨んでいきています。
「だってお父様! ピオミルがギースと結ばれて、妹をいじめていたエリシャは国外追放! ピオミルに密かに思いを寄せていたグイスト様が失恋の痛手を負って冒険者になって、2の舞台では隠しキャラに……」
「ビトリアっ! 口を、閉じていてくれ…不敬罪で家ごとなくなりかねん…」
「でもお父様っ!」
「話をしても、いいだろうか」
「ヒッ」
ごちゃごちゃとマナーのなっていない親子を前にして、こらえきれず圧を飛ばすグイスト様。モーニシュ親子、手を取り合って震え上がっていますわ。
それにしても、ピオミルさんは妹ではないとあれほど……あら? なんだか、おかしな発言がいくつか飛び出しましたわね?
『ピオミルがギースと結ばれて、妹をいじめていたエリシャは国外追放! ピオミルに密かに思いを寄せていたグイスト様が失恋の痛手を負って冒険者になって、2(ツー)の舞台では隠しキャラに……』って…だってお父様、以外すべてがおかしかったですわね。
ピオミルさんが妹? …義妹ですらありませんでしたけど。
「昨日だろうか。アンドロッツォ家から、聖女との面会を望む封書が届いたと思うのだが、貴家から聖女はいないと回答が来た、と」
「アンドロッツォ家から、ですか」
「見ていないのか?」
「あ、はぁ、私にはなんのことだか…」
「ふむ」
すっと目線を横にやると、ビトリアさんが滝汗でした。
もしや、当主宛の領主家からの書を勝手に処理したのでしょうか。そう、なのでしょうねその様子だと。
「ビトリアさんは、何かご存じ?」
「ヒッ」
私も、少しの圧を込めてニコリとビトリアさんに話しかけます。あまり委縮させては話が進みませんから相当加減したのですが、まだ強かったみたいですね。
「私からお話しても、よろしいでしょうか」
「あら、もちろんですわ。聖女様」
意を決したように彼女がスッと前に出ると、金色の艶やかな髪がサラッと揺れます。
涙目になっている聖女様。きっと、この家で発言することは、とても勇気がいることなのでしょうね。
なんとなくですが、立ち位置的に想像ができました。
赤褐色の美しい木目で、独特の光沢があるローズウッドの扉。この先が応接室のようです。非常に高度な技術が必要とされる加工をこれほどまで精巧に美しい装飾を入れて仕上げるとは、どこの職人さんか知りたいところですわ。
「お連れしました」
「ええ、ありがとう」
シケイラさんが重厚な扉を開くと、私たちを中に促しました。そこには、女性がふたりと男性がいるようです。
豪華なドレスを纏って革張りのソファに座る女性、これから夜会にでも行くのかしら? その後ろに控え目に立つ、真っ白のスカプラリオを着ている女性が、聖女様ね。やはり、戦場にいるなんて嘘。
それともうひとりの男性は、モーニシュ家のご当主でしょうか。
「ようこそおいでくださいました。歓迎しますわ、グイスト様!」
「……」
お胸が零れ落ちんばかりの派手なドレスを着ている女性が、きゅるるんという効果音つきで祈るように手を前で組み立ち上がります。
お嬢さん、相手が他国の準王族と知ってその態度だとしたら、不敬罪です。知らずとも、不敬罪です。
あら? どこかの誰かさんを思い出しますわね。
「ずっと、あなたに会いたかった…。グイスト様っ!」
「っ!」
「あっ」
バッと勢いよく抱き着こうと飛びかかってきた女性を、サッと躱し腕を掴み肩を床に押し付けるグイスト様。鮮やかなお手並みです。
「ビトリア!」
「っ…!」
「い、痛いですわ~!」
慌てるご当主(仮)と聖女様(仮)、そして涙目になる痴女さん(仮)。
まずは自己紹介から始めましょう?
「む、娘が失礼しました。私はモーニシュ家当主、サロマン・モーニシュ。こちらが娘のビトリアと、国で聖女として認定されているポワリアです」
「グイスト・ルシエンテスだ」
「エリシャ・エストルムですわ」
「なんで悪役令嬢が、グイスト様と一緒なのよ」
「ビトリア!」
「…あくやく?」
モーニシュ家のお嬢さんは、どうやらグイスト様に夢中みたいだけれど、私のことは気に食わないようです。もともと釣り気味の目を、さらに鋭く尖らせて睨んでいきています。
「だってお父様! ピオミルがギースと結ばれて、妹をいじめていたエリシャは国外追放! ピオミルに密かに思いを寄せていたグイスト様が失恋の痛手を負って冒険者になって、2の舞台では隠しキャラに……」
「ビトリアっ! 口を、閉じていてくれ…不敬罪で家ごとなくなりかねん…」
「でもお父様っ!」
「話をしても、いいだろうか」
「ヒッ」
ごちゃごちゃとマナーのなっていない親子を前にして、こらえきれず圧を飛ばすグイスト様。モーニシュ親子、手を取り合って震え上がっていますわ。
それにしても、ピオミルさんは妹ではないとあれほど……あら? なんだか、おかしな発言がいくつか飛び出しましたわね?
『ピオミルがギースと結ばれて、妹をいじめていたエリシャは国外追放! ピオミルに密かに思いを寄せていたグイスト様が失恋の痛手を負って冒険者になって、2(ツー)の舞台では隠しキャラに……』って…だってお父様、以外すべてがおかしかったですわね。
ピオミルさんが妹? …義妹ですらありませんでしたけど。
「昨日だろうか。アンドロッツォ家から、聖女との面会を望む封書が届いたと思うのだが、貴家から聖女はいないと回答が来た、と」
「アンドロッツォ家から、ですか」
「見ていないのか?」
「あ、はぁ、私にはなんのことだか…」
「ふむ」
すっと目線を横にやると、ビトリアさんが滝汗でした。
もしや、当主宛の領主家からの書を勝手に処理したのでしょうか。そう、なのでしょうねその様子だと。
「ビトリアさんは、何かご存じ?」
「ヒッ」
私も、少しの圧を込めてニコリとビトリアさんに話しかけます。あまり委縮させては話が進みませんから相当加減したのですが、まだ強かったみたいですね。
「私からお話しても、よろしいでしょうか」
「あら、もちろんですわ。聖女様」
意を決したように彼女がスッと前に出ると、金色の艶やかな髪がサラッと揺れます。
涙目になっている聖女様。きっと、この家で発言することは、とても勇気がいることなのでしょうね。
なんとなくですが、立ち位置的に想像ができました。
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