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第二章 外国漫遊記
第二十八話 ついに開会式スイーツ
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最初に静かなストリングスが流れ、次第に軽快なホルンが加わっていきます。曲が厚みを増していくと、バンと一斉に音が鳴り、ハトが羽ばたきます。
いよいよ、カーレースの開会式が始まりました。
「この良き日に、再びレースを開催できること嬉しく思う。皆も存分に楽しんでくれ」
モッラーロの国王が短めに挨拶し、アントワネット様がマイク前に立ちます。
「我が国の誇る、モッラーロの市街地レース! みんな、準備はいい?」
「「「(ワ―――)」」」
「行くわよー!」
「「「「(ワ―――)」」」
「目指せ優勝! モッラーロレース、開幕ーっ!!」
「「「(ワ―――――)」」」
そしてシグナルが青になり、一斉に車が発進します。ついに、初夏の予選会が始まりました。
このレースは、夏と冬の年二回開催されていて、各回予選・本戦と二日間行われます。本日は予選会。あまり詳しくは知らないけれど、どのチームが残るのか楽しみです。
「全部で20チームあって、各チームふたりのドライバーが出場するわ。その中で、本戦に進めるのは上位10人よ」
「予選会は40台の車が参加して、本戦は10台で優勝を競うということですね」
「ええ。大体いつも、フィレンセのチームが上位に来るのよね。ジャービーのチームもいるわよ。国境にあるジロナに本拠地があるんじゃなかったかしら」
「まあ、そうなのですね! あとでご挨拶させていただきますわ」
そう、ご挨拶はあとで、まずはスイーツですわ!
開会式は、レースのスタートグリッド横で行われました。VIPで参加している人たちは、そこからガーデンに移動します。
観客席下を抜けた先の光射すガーデンに、きらきらと輝くスイーツたちが……!
「ようこそ、私のスイーツ大乱舞へ」
「さあみなさん、世界で活躍するマゴールパティシエのスイーツをご用意しております。ご堪能くださいな」
マゴールパティシエとアントワネット様がホストとなりこの場を仕切る中、私は目移してしまうたくさんのスイーツを、いくつ食べられるのかと生唾を飲み込みました。
「さあエリシャ、マゴール氏への挨拶はあとにして、とにかくこのスイーツを」
「これは! あんこですわね? ひんやりと冷えた寒天に、大粒の小豆で作った粒あん! こちらは、抹茶のみつかしら? お茶粉まで用意されているなんて……。んんっ! …おいしいですわ! んくっ…、抹茶のほろ苦さとあんの上品な甘さが混ざり合った冷たい寒天! この暑い日にも嬉しい喉越しですわ!」
「そうか。こちらはどうだ?」
「これは?」
「チョコレートを温めた牛乳に入れて溶かしたものを凍らせて削った、チョコの削り氷だな。たっぷりの生クリームと、アーモンドスライス、クラッシュアーモンド、カリッとしたカラメルアーモンドも乗っているな。アーモンドづくし、チョコソースの量はお好みで」
「たっぷりお願いしますわあぁぁ!」
ひんやり餡子からひんやりチョコまで、なんて楽しいのでしょう!
「さ、口直しにレモンゼリーだ」
「まああ」
「カルピスゼリーの上に、少し固めのレモンゼリーがさいの目切りになって乗っているな。きれいだ」
「ほんとうに、宝石のようですわ……」
「さあ、まだまだあるぞ」
「あああ、楽園はここにありましたのね……」
その後も新作旧作拘らず、焼き菓子も生菓子も食べられるだけいただきました。
グイスト様が新しい皿を差し出すタイミングが絶妙で、順番もしっかり考えられていて、薄めの味の次に濃いめ、そして口直し、すべてが完璧でしたわ。
「エリシャさん、楽しんでいるかしら?」
「マゴールパティシエ! ご無沙汰しております」
「ええ、ジャービーで会って以来かしら? どう? 新作スイーツは」
「はいぃ! どれもこれも大変おいしゅうございます!」
「ふふっ、その笑顔が何よりのご褒美だわ。ありがとう」
「エリシャさんったら、はしゃぎすぎですわよ?」
「アントワネット様…、すみません。どうしても、マゴールパティシエのスイーツを前にしてだけは、冷静ではいられなくて…」
「ふふ、気持ちはわかるわ」
「あらぁアンナさん? おふたりは仲良しなのねぇ」
「ええ。あなたのおかげよミスター」
「えっ、ミスター?」
「そう? お菓子が世界を平和にしてくれるなら、願ったりかなったりだわ」
そして、お菓子の感想を言い切って、渾身の五十六枚つづりのファンレターも渡すことができました。ボルティ国での話が耳に入っていたようで、また機会があれば出店するからそのときは知らせてくださるとお約束いただき、マゴールパティシエとはお別れしました。
「相変わらず、お忙しいのですね」
「そうね。このあとはフィレンセの店舗を見に行くって言っていたわ」
「そうですか」
「ねえ、もうお腹はパンパンよね? よかったら部屋を用意するけど」
「ありがとうございます。ですが、せっかくですのでカーレースを見ていこうと思いますわ。この、コース案内を見ながらお散歩して、夜に備えます」
「そう、気を付けて。じゃあまたあとでね」
「ええ。ごきげんよう」
レースをする蒸気自動車は、戦地で使われることはありますが、まだ一般的に普及していないので見る機会がなかなかありません。
自分でも運転してみたいけれど、レース中ですものね。それはまたの機会にしましょう。
いよいよ、カーレースの開会式が始まりました。
「この良き日に、再びレースを開催できること嬉しく思う。皆も存分に楽しんでくれ」
モッラーロの国王が短めに挨拶し、アントワネット様がマイク前に立ちます。
「我が国の誇る、モッラーロの市街地レース! みんな、準備はいい?」
「「「(ワ―――)」」」
「行くわよー!」
「「「「(ワ―――)」」」
「目指せ優勝! モッラーロレース、開幕ーっ!!」
「「「(ワ―――――)」」」
そしてシグナルが青になり、一斉に車が発進します。ついに、初夏の予選会が始まりました。
このレースは、夏と冬の年二回開催されていて、各回予選・本戦と二日間行われます。本日は予選会。あまり詳しくは知らないけれど、どのチームが残るのか楽しみです。
「全部で20チームあって、各チームふたりのドライバーが出場するわ。その中で、本戦に進めるのは上位10人よ」
「予選会は40台の車が参加して、本戦は10台で優勝を競うということですね」
「ええ。大体いつも、フィレンセのチームが上位に来るのよね。ジャービーのチームもいるわよ。国境にあるジロナに本拠地があるんじゃなかったかしら」
「まあ、そうなのですね! あとでご挨拶させていただきますわ」
そう、ご挨拶はあとで、まずはスイーツですわ!
開会式は、レースのスタートグリッド横で行われました。VIPで参加している人たちは、そこからガーデンに移動します。
観客席下を抜けた先の光射すガーデンに、きらきらと輝くスイーツたちが……!
「ようこそ、私のスイーツ大乱舞へ」
「さあみなさん、世界で活躍するマゴールパティシエのスイーツをご用意しております。ご堪能くださいな」
マゴールパティシエとアントワネット様がホストとなりこの場を仕切る中、私は目移してしまうたくさんのスイーツを、いくつ食べられるのかと生唾を飲み込みました。
「さあエリシャ、マゴール氏への挨拶はあとにして、とにかくこのスイーツを」
「これは! あんこですわね? ひんやりと冷えた寒天に、大粒の小豆で作った粒あん! こちらは、抹茶のみつかしら? お茶粉まで用意されているなんて……。んんっ! …おいしいですわ! んくっ…、抹茶のほろ苦さとあんの上品な甘さが混ざり合った冷たい寒天! この暑い日にも嬉しい喉越しですわ!」
「そうか。こちらはどうだ?」
「これは?」
「チョコレートを温めた牛乳に入れて溶かしたものを凍らせて削った、チョコの削り氷だな。たっぷりの生クリームと、アーモンドスライス、クラッシュアーモンド、カリッとしたカラメルアーモンドも乗っているな。アーモンドづくし、チョコソースの量はお好みで」
「たっぷりお願いしますわあぁぁ!」
ひんやり餡子からひんやりチョコまで、なんて楽しいのでしょう!
「さ、口直しにレモンゼリーだ」
「まああ」
「カルピスゼリーの上に、少し固めのレモンゼリーがさいの目切りになって乗っているな。きれいだ」
「ほんとうに、宝石のようですわ……」
「さあ、まだまだあるぞ」
「あああ、楽園はここにありましたのね……」
その後も新作旧作拘らず、焼き菓子も生菓子も食べられるだけいただきました。
グイスト様が新しい皿を差し出すタイミングが絶妙で、順番もしっかり考えられていて、薄めの味の次に濃いめ、そして口直し、すべてが完璧でしたわ。
「エリシャさん、楽しんでいるかしら?」
「マゴールパティシエ! ご無沙汰しております」
「ええ、ジャービーで会って以来かしら? どう? 新作スイーツは」
「はいぃ! どれもこれも大変おいしゅうございます!」
「ふふっ、その笑顔が何よりのご褒美だわ。ありがとう」
「エリシャさんったら、はしゃぎすぎですわよ?」
「アントワネット様…、すみません。どうしても、マゴールパティシエのスイーツを前にしてだけは、冷静ではいられなくて…」
「ふふ、気持ちはわかるわ」
「あらぁアンナさん? おふたりは仲良しなのねぇ」
「ええ。あなたのおかげよミスター」
「えっ、ミスター?」
「そう? お菓子が世界を平和にしてくれるなら、願ったりかなったりだわ」
そして、お菓子の感想を言い切って、渾身の五十六枚つづりのファンレターも渡すことができました。ボルティ国での話が耳に入っていたようで、また機会があれば出店するからそのときは知らせてくださるとお約束いただき、マゴールパティシエとはお別れしました。
「相変わらず、お忙しいのですね」
「そうね。このあとはフィレンセの店舗を見に行くって言っていたわ」
「そうですか」
「ねえ、もうお腹はパンパンよね? よかったら部屋を用意するけど」
「ありがとうございます。ですが、せっかくですのでカーレースを見ていこうと思いますわ。この、コース案内を見ながらお散歩して、夜に備えます」
「そう、気を付けて。じゃあまたあとでね」
「ええ。ごきげんよう」
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