75 / 101
第二章 外国漫遊記
第三十七話 新しい出会い
しおりを挟む
「鉄仮面をつけた囚人?」
「そう、いるんだって。俺はまだ行ってないから実際見たわけじゃないけどなー。魔物の島と言われているザル島に、たったひとつ分厚い鉄でできた監獄があってさ。その中に鉄仮面をかぶって足は鎖でつながれている男がいて、もう何年も生き延びているっていう」
「都市伝説みたいですわね」
「同感だ」
イーパの首都ゼノヴァーの冒険者ギルドで、そんな話をしてきたのは、ビトさんという、やたらと顔のいい冒険者さんです。家が貧乏なので、出稼ぎで冒険者をしているとおっしゃっていました。なんとAランクだそうです。
「おふたりさんも、ザル島行くの?」
「ええ。冒険者ランク上げを目的として、討伐依頼をいくつか受けようかと」
「パーティ組まない? 三人で」
「パーティ」(←エリシャ)
「得物は?」
「戦うのは剣だけど、絶対防御結界が張れる」
「ほう」
「前面にだけ」
「前面に」(←エリシャ)
正直、グイスト様は「防御何それ美味しいの?」状態で、剣で押し負けることがありません。私は魔法攻撃で遠距離いけますし、回復もできます。なのでふたりで十分なのですが、結界を張る力は持っていないので、組んでもいいような気もします。どこか、馴染みのある雰囲気もありますし。
「どうする?」
「そうですね、結界は見てみたいかもしれません」
「じゃあそうするか」
「おっ、やったねー」
ギルドでパーティ申請すると、ランク上げに必要なポイントだったり討伐報酬だったりを、自動で分け合うことができます。寄りかかられるだけでは損してしまいますが、ビトさんはAランク冒険者ということですし、私より大先輩。きっとすごい戦いを見せてくれるはずです。
「いやー、ここんとこなかなか高ランク冒険者に会えなくてさ。いても、なんかエラそうなんばっかで組みたいと思えないし、ひとりは寂しいし、あやうく寂し死にするとこだったぜー」
「まあ、それは間に合ってよかったですわ」
「お嬢さん面白いねー」
「エリシャは天然なところもいい」
「ははっ」
ビトさんは、ひとりでも実力があるので討伐で困ることはそんなにないそうですが、ザル島のように、冒険者用の定期便はあるけれどそれ以外で人の移動がないようなところにひとりで行くのが嫌だったそうです。
気持ちはわかります。
ひとりで魔物と戦うのはいいですけれど、魔物しかいないところで野営がひとりって、相当嫌ですわ。
「いいね。エリシャさんもグイストさんも、ちょうどいいや」
「そうですか?」
「そうだな。私もビトさんとは初対面だが、安心感がある」
「そうそう、安心感。大事よねこれ」
「なるほど?」
そういうことで、私たちは三人でザル島に向かうことになりました。
まず、ゼノヴァーの港から冒険者専用の船に乗ります。2日かかるそうです。
ここの船にも、専用の潜水士がいるようで、海中の魔物が船上までくることはほぼないそうです。
突破されても乗っているのは冒険者ですからね。問題はありませんけれど。
「はいっ、パーティ・ジャービーさん、あっ、ジャービー国ご出身ですかぁ? うわぁ、目がつぶれそうなイケメンがいるぅ」
「そうそう、さっき話してたらさ、三人ともジャービー出身だってことで――あれ? ジャービー?」
船に乗るための乗船チケットをもぎっているお姉さんにチケットを渡すと、ビトさんを見てイケメンと言いました。グイスト様でなく。
船が到着するまでの時間で、出身の話になり、みんなジャービーだったのでそれをパーティ名にして乗船名簿に記入したのですが、ビトさんが何かを思い出したようです。
「『エリシャ』さん?」
「はい」
「『グイスト』さん?」
「ああ」
そして考え込むこと数秒……
「リノのお嬢さまか!」
「えっ?」
聞きなれた名前が、そういえばどこか見慣れた瞳だったビトさんの口から飛び出しました。
「そう、いるんだって。俺はまだ行ってないから実際見たわけじゃないけどなー。魔物の島と言われているザル島に、たったひとつ分厚い鉄でできた監獄があってさ。その中に鉄仮面をかぶって足は鎖でつながれている男がいて、もう何年も生き延びているっていう」
「都市伝説みたいですわね」
「同感だ」
イーパの首都ゼノヴァーの冒険者ギルドで、そんな話をしてきたのは、ビトさんという、やたらと顔のいい冒険者さんです。家が貧乏なので、出稼ぎで冒険者をしているとおっしゃっていました。なんとAランクだそうです。
「おふたりさんも、ザル島行くの?」
「ええ。冒険者ランク上げを目的として、討伐依頼をいくつか受けようかと」
「パーティ組まない? 三人で」
「パーティ」(←エリシャ)
「得物は?」
「戦うのは剣だけど、絶対防御結界が張れる」
「ほう」
「前面にだけ」
「前面に」(←エリシャ)
正直、グイスト様は「防御何それ美味しいの?」状態で、剣で押し負けることがありません。私は魔法攻撃で遠距離いけますし、回復もできます。なのでふたりで十分なのですが、結界を張る力は持っていないので、組んでもいいような気もします。どこか、馴染みのある雰囲気もありますし。
「どうする?」
「そうですね、結界は見てみたいかもしれません」
「じゃあそうするか」
「おっ、やったねー」
ギルドでパーティ申請すると、ランク上げに必要なポイントだったり討伐報酬だったりを、自動で分け合うことができます。寄りかかられるだけでは損してしまいますが、ビトさんはAランク冒険者ということですし、私より大先輩。きっとすごい戦いを見せてくれるはずです。
「いやー、ここんとこなかなか高ランク冒険者に会えなくてさ。いても、なんかエラそうなんばっかで組みたいと思えないし、ひとりは寂しいし、あやうく寂し死にするとこだったぜー」
「まあ、それは間に合ってよかったですわ」
「お嬢さん面白いねー」
「エリシャは天然なところもいい」
「ははっ」
ビトさんは、ひとりでも実力があるので討伐で困ることはそんなにないそうですが、ザル島のように、冒険者用の定期便はあるけれどそれ以外で人の移動がないようなところにひとりで行くのが嫌だったそうです。
気持ちはわかります。
ひとりで魔物と戦うのはいいですけれど、魔物しかいないところで野営がひとりって、相当嫌ですわ。
「いいね。エリシャさんもグイストさんも、ちょうどいいや」
「そうですか?」
「そうだな。私もビトさんとは初対面だが、安心感がある」
「そうそう、安心感。大事よねこれ」
「なるほど?」
そういうことで、私たちは三人でザル島に向かうことになりました。
まず、ゼノヴァーの港から冒険者専用の船に乗ります。2日かかるそうです。
ここの船にも、専用の潜水士がいるようで、海中の魔物が船上までくることはほぼないそうです。
突破されても乗っているのは冒険者ですからね。問題はありませんけれど。
「はいっ、パーティ・ジャービーさん、あっ、ジャービー国ご出身ですかぁ? うわぁ、目がつぶれそうなイケメンがいるぅ」
「そうそう、さっき話してたらさ、三人ともジャービー出身だってことで――あれ? ジャービー?」
船に乗るための乗船チケットをもぎっているお姉さんにチケットを渡すと、ビトさんを見てイケメンと言いました。グイスト様でなく。
船が到着するまでの時間で、出身の話になり、みんなジャービーだったのでそれをパーティ名にして乗船名簿に記入したのですが、ビトさんが何かを思い出したようです。
「『エリシャ』さん?」
「はい」
「『グイスト』さん?」
「ああ」
そして考え込むこと数秒……
「リノのお嬢さまか!」
「えっ?」
聞きなれた名前が、そういえばどこか見慣れた瞳だったビトさんの口から飛び出しました。
104
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【完結】すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ
エレインたちの父親 シルベス・オルターナ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる