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第二章 外国漫遊記
第三十九話 ザル島① 上陸
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「フィレンセの王?」
「うん。見たことあるー?」
「ないですわね。王子と王女なら、つい先日会いましたけど」
「マジか」
私たちは三人揃ってザル島に上陸しました。
冒険者専用の定期便では、ビトさんやグイスト様が女性にたくさん声をかけられていて忙しそうでした。その分、私に飛んでくる妬み嫉みの視線は不快でしたけれど、途中からビトさんは「絶対防御結界はこういうのにもきくんだよ」と結界を張ってくれて、前面からの悪意は防げました。背中にはちくちく刺さっていましたけれど。
上陸するパーティは、全部で6チーム。とりあえず、ついてこられてしまうと主に男女間の面倒事が起きそうだったので、島に降りた瞬間、三人で疾走しました。
魔物に出会っても走り抜け、もう追ってきていないなと確信したところで、戦闘をいくつか経験しました。この島の魔物にも私の戦いが今のところ通用するようで安心し、休憩をとることにしました。ビトさんの剣術も、確かなものでしたわ。三人が三人で別々に無双。パーティの意味とは。
「いやこれウマ! マッシュルームスープ?」
「はい。我が家のキノコ好きたちが栽培しているものを使っています」
「エストルム家やばー」
「その鉄仮面が、フィレンセの王に似ているというのか?」
「あーうん、確証の無い話だけどね」
ギルドでお会いしたときに話していた、ザル島の監獄にいる鉄仮面。
それが、監獄の位置は確かではないし、実際に見たという人もいるのかいないのか怪しいくらいのレベルの話だけれど、そもそも鉄仮面をつけているのに似ていると言われているフィレンセ王とは。
「フィレンセ王は、四角いのでしょうか」
「ぶふぁ」
「仮面のような顔をしていると?」
「ええ。鉄仮面をつけている囚人、ですからね。でも、アントワネット様もベジックさんも、四角い顔ではありませんでしたわ。お母様似なのかしら」
ええ、いえ、冗談です。わかっていますわ。
笑いすぎのビトさんはおいておいて、四六時中鉄仮面をかぶっているわけではない鉄仮面さんがたまたま素顔をさらしたとき、たまたまそれを見た冒険者がフィレンセ王の顔を知っており、たまたま無事に本土に帰ってこれた際にそんな話を誰かにしたのが広まった。可能性としては、低いですがないこともないかもしれません。
「目的は鉄仮面さんではないので、もしも遭遇したらお話をしてみる、くらいの気持ちでいいかもしれませんね」
「そうだな」
「いやっ、うんっ、ははっ、そうだねっ!」
まだ笑っています。
休憩を終えて、コンパスを確認し西へ向かいます。
船が着くのは島の北側で、初めに真っすぐ下に走って来たので、今は島の北エリアの中心辺りでしょうか。西側の海沿いに南下していこうと思います。野営をするのなら、森の中より浜辺のほうがいいそうです。
「あれ、なんだー?」
「ん? ……建物、か?」
「建物、にしては小さいですわね」
ビトさんが指差す先に、石造りの何かが見えました。建物、家にしては小さすぎるし、たとえて言うなら先日のモッラーロのコース散策中に見た〝仮設トイレ〟のような大きさです。
「トイレでしょうか」
「ずいぶん親切だな、無人島に」
「ギルドが設置してるのかなー」
「開けてみよう」
グイスト様がその建物の扉を開けると、そこには地下へ通じる階段がありました。
「うん。見たことあるー?」
「ないですわね。王子と王女なら、つい先日会いましたけど」
「マジか」
私たちは三人揃ってザル島に上陸しました。
冒険者専用の定期便では、ビトさんやグイスト様が女性にたくさん声をかけられていて忙しそうでした。その分、私に飛んでくる妬み嫉みの視線は不快でしたけれど、途中からビトさんは「絶対防御結界はこういうのにもきくんだよ」と結界を張ってくれて、前面からの悪意は防げました。背中にはちくちく刺さっていましたけれど。
上陸するパーティは、全部で6チーム。とりあえず、ついてこられてしまうと主に男女間の面倒事が起きそうだったので、島に降りた瞬間、三人で疾走しました。
魔物に出会っても走り抜け、もう追ってきていないなと確信したところで、戦闘をいくつか経験しました。この島の魔物にも私の戦いが今のところ通用するようで安心し、休憩をとることにしました。ビトさんの剣術も、確かなものでしたわ。三人が三人で別々に無双。パーティの意味とは。
「いやこれウマ! マッシュルームスープ?」
「はい。我が家のキノコ好きたちが栽培しているものを使っています」
「エストルム家やばー」
「その鉄仮面が、フィレンセの王に似ているというのか?」
「あーうん、確証の無い話だけどね」
ギルドでお会いしたときに話していた、ザル島の監獄にいる鉄仮面。
それが、監獄の位置は確かではないし、実際に見たという人もいるのかいないのか怪しいくらいのレベルの話だけれど、そもそも鉄仮面をつけているのに似ていると言われているフィレンセ王とは。
「フィレンセ王は、四角いのでしょうか」
「ぶふぁ」
「仮面のような顔をしていると?」
「ええ。鉄仮面をつけている囚人、ですからね。でも、アントワネット様もベジックさんも、四角い顔ではありませんでしたわ。お母様似なのかしら」
ええ、いえ、冗談です。わかっていますわ。
笑いすぎのビトさんはおいておいて、四六時中鉄仮面をかぶっているわけではない鉄仮面さんがたまたま素顔をさらしたとき、たまたまそれを見た冒険者がフィレンセ王の顔を知っており、たまたま無事に本土に帰ってこれた際にそんな話を誰かにしたのが広まった。可能性としては、低いですがないこともないかもしれません。
「目的は鉄仮面さんではないので、もしも遭遇したらお話をしてみる、くらいの気持ちでいいかもしれませんね」
「そうだな」
「いやっ、うんっ、ははっ、そうだねっ!」
まだ笑っています。
休憩を終えて、コンパスを確認し西へ向かいます。
船が着くのは島の北側で、初めに真っすぐ下に走って来たので、今は島の北エリアの中心辺りでしょうか。西側の海沿いに南下していこうと思います。野営をするのなら、森の中より浜辺のほうがいいそうです。
「あれ、なんだー?」
「ん? ……建物、か?」
「建物、にしては小さいですわね」
ビトさんが指差す先に、石造りの何かが見えました。建物、家にしては小さすぎるし、たとえて言うなら先日のモッラーロのコース散策中に見た〝仮設トイレ〟のような大きさです。
「トイレでしょうか」
「ずいぶん親切だな、無人島に」
「ギルドが設置してるのかなー」
「開けてみよう」
グイスト様がその建物の扉を開けると、そこには地下へ通じる階段がありました。
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