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11.偉そうな人は偉い人でした。

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突然現れた男だったが、偉そうな言い方ってだけで嫌な予感しかしない。私は男の様子を窺いながら答えた。


「はい。私がヨリコですけど。何の御用でしょうか?」

「お前が城から逃げ出し街に隠れ住んでいる聖女だという報告を受けた。こんなところでいったい何をやっている?」

「逃げ出した??」

「近く騎士団で討伐隊が組まれる。すぐに城に戻り、お前もそれに参加して成果を上げろ。」

「え、……は??」


何を言っているのかわからない。私が城から逃げ出した聖女? 追い出されたんですけど?
騎士団? 討伐? モンスターと戦えってこと? あ、聖女は浄化するんだっけ?? 説明不足すぎて意味がわからん。てかオジサンは誰!


「討伐、ですか。」

「そうだ。聖女の義務だろう。」

「えっと、まず、あなたは誰?」

「私は騎士団長のゲオルグ・ドミストスだ。」

「騎士団長さん。」


名前は普通に名乗ってくれたけど、偉そう。騎士団長っていうくらいだから偉いんだろうけど、偉そう。高圧的すぎる。


「あの、お話がよく見えないのですが。」

「何を言っている? お前は城から逃げ出した聖女なんだろう? こんなところで遊んでいないで本来の任務に戻れと言っているだけだ。」


うん、きっとなにか誤解があるやつだ。
と言っても、話を聞かなそうな人だし、誤解を解くのも難しそう……。


「彼女を連れて行かれては困る。」

「あっ。」


終始上からの圧力オジサンをどうしようかと悩んでいると、ギルド長と話をしてくると言って奥へ行っていたジークさんが戻ってきた。


「あ、貴方は……!」

「ドミストス騎士団長、貴殿は誰の命でここに?」

「はっ、部下からの報告を受けたので確認に参りました。」

「ほう。」

「聖女の任務に着くのが嫌で逃げ出したと聞きました。」

「そう……。」


何がどうなったか、間違った報告がされているようだ。けど、私が口を挟んでもきっとこの男は聞いてくれない。態度から、ジークさんが公爵だってことを知っているようだし、ここは任せよう、と見守ることにした。


「貴殿に上がった報告は事実と違うところが多々ある。」

「と、言いますと?」

「ヨリコが聖女として召喚された者だというのは間違いない。しかし、任務が嫌で逃げ出したわけではない。」

「……では、」

「まあ、その辺りはどうでもいいんだけどね。」


えっ、どうでもよくないよジークさん。冤罪晴らして? だって逃げ出した女って、すごく心象悪いよ?


「とにかく、彼女は渡せない。」

「聖女とは国のために尽くす者でしょう。公爵が何を言います。」

「それもまた、少し認識がおかしいが、まあいい。」


よくないよジークさん。
勝手に呼び出して勝手に役目を押しつけて、国に尽くせなんて危険思想だよ。


「ヨリコは、私と想いを交わしている。連れて行くことは許さない。」

「な、なんですと?」

「彼女は私の恋人だ。」

「えっ……?」


そんなくだりあった? っていうくらい突然の恋人宣言。え、私、ジークさんからそんなアプローチ受けてたっけ? あれ?それとも私から好き好きオーラが出ていたとか?? いや確かにイケメンだけど。ああ、とりあえず公爵の恋人ってことにして手を出せないようにして時間稼ぎってやつ??


「し、しかしその女は、我が国が召喚した聖女で、貴方には――」

「『召喚しといて聖力が鑑定出来ずに追い出した聖女』、ね。」

「そ、それは……?」


どうやらこの権力には弱い圧力オジサンは、聖力がないと誤鑑定されて追い出されたことを知らないらしい。どういう報告を受けたかわからないけど、聖女なのに遊び歩いて仕事しないやつ、とでも思っていたのだろう。


「……改めて、上の者に事実確認をして参ります。今日のところは引きますが、後日また。」

「もう来なくていいよ、ドミストス騎士団長。」

「…………失礼します。」


ゲオルグ・ドミストスさんは帰っていった。


「で、何ですか恋人って。」

「え?」

「えっ?」

「違うの?」

「えっ?」


いつの間にか恋人になっていたらしい。ってそんなはずあるかーい!


「私たち恋人同士なんですか?」

「だってヨリコ、優しくてイケメンで強くてイケメンで好きだ、って。」

「えっ? あ、ああ確かに、言いましたけど……。」

「それで私も好きだって言ったし、付き合った記念ということで一緒に煮込み料理を食べただろう?」

「ああ、あれ、確かに食べましたけど……。」

「えっ、違うの? 私たちは恋人同士ではないのか? 部屋にも何回も入れてくれただろう? 2人きりで。」

「あ、や、確かにそうですけど、え? それって恋人的なアレでした?? クラフト見に来てたんじゃ??」

「部屋でもソファに一緒に掛けて、近い距離で見つめ合ったし。あれ、ほんとうに君が可愛くて、手を出さないように我慢するの大変だったよ?」

「(間近で見ても極イケメン眼福、とか思ってた。)」

「君のほっぺについたお米粒を取って食べたり、あんなの恋人同士じゃなきゃやらないだろう?」

「(見守りお兄ちゃんポジ萌え、とか思ってた。)」

「ね、ヨリコ。私たちは恋人同士だよね?」

「え、えっと……。」


否定する理由もない、が否定する理由しかない。だって異世界だし、公爵様だし、私はただの一般市民。パン屋で家具屋だ。でもイケメンだし優しいし強いしお金持ちだしイケメンだしこんな人が恋人だったら毎日ハッピーなのは間違いない。

何で答えたらいいか悩んでいると、救世主イケおじヴェッセルさんが現れた。


「それはひとまず置いておこう。それよりも、現状把握と対策を話し合うべきだ。」

「ヴェッセルさん……!」

「そうね、また来るって言っていたし、どうするのがいいか考えましょう。」

「リャラスさんっ」


そんなこんなで作戦会議に流れ込んだ。




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