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第7話 守られない約束
学園では、貴族令嬢たちの社交クラブ「薔薇の会」が定期的に開かれる。
今日はその月例会合。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
フローラが、議長として会を進行する。
「本日の議題は、秋季舞踏会の最終確認です」
令嬢たちが、それぞれの準備状況を報告していく。ドレス、装飾品、エスコート役――。
「エレノア様は、どなたとご出席を?」
ある令嬢が、遠慮がちに尋ねる。
「一人で出席する予定よ」
私は、明るく答える。
「まあ......ディートリヒ様とは?」
「彼は、別の方とご出席なさるそうよ」
その瞬間、部屋の空気が変わる。
令嬢たちは、顔を見合わせる。
「......そう、ですか」
「まあ......」
彼女たちは、同情の目を向けてくる。
でも、私は平気。
席を離れて飲み物を撮りに行くと、フローラがやってきた。
「......エレノア?」
フローラが、心配そうにこちらを窺っている。
「いい機会よね。虚栄心の塊みたいなリリアナだったら、きっと大勢の前での婚約破棄を狙うでしょう?」
「そうね」
「正直、面倒だったからありがたいわ」
私はあっけらかんと答える。
「領地経営の話をしても、ディートリヒは興味なさそうだし」
「まああのお坊ちゃんは、ね」
「ええ。お勉強も剣術も成績下位で、実家は侯爵家だけど三男。侯爵家当主の私に婿入りが決まっていたのにそれを反故にしていったい何がしたいのかしら」
「ありえないわよね」
「ええ」
私は微笑む。
「これで、勉強に集中できるわ」
「やっぱり、次期侯爵は違うわね」
「末長くよろしくね? 次期伯爵様?」
私たちは笑い合った。
会合が終わり、帰り道。
マルティナが、ため息をつく。
「お嬢様、本日も記録を取りました」
「ありがとう」
彼女は手帳を取り出す。
「ディートリヒ様は、本日も義妹様との外出を優先なさいました。本来であれば、会計報告会に同席するはずでしたが」
「そう」
私は、その手帳を受け取った。
すべて、日時と理由が記録されている。
「完璧ね、マルティナ」
「当然です」
彼女はきっぱりと答える。
「お嬢様のために、万全の準備をしております」
「ありがとう」
私は、手帳をぱらぱらとめくる。
――これだけ証拠があれば、十分だ。
婚約破棄の理由として、完璧すぎるほどに。
その夜、自室で一人になると――。
私は、領地経営の資料を広げた。
北方交易の実例集。税制改革案。新しい作物の導入計画。
これらを読んでいると、心が落ち着く。
――私は、これが好きだ。
領地のことを考え、領民の生活を豊かにする方法を探す。
それが、何より楽しい。
「......お嬢様」
ドアがノックされる。
「どうぞ」
マルティナが、温かい紅茶を持って入ってくる。
「お疲れ様です」
「ありがとう」
私は、紅茶を受け取る。温かさが、胸に染み込む。
「マルティナ」
「はい」
「私は――間違っていないわよね」
「もちろんです」
マルティナは、きっぱりと答える。
「お嬢様は、ご自分の人生を生きていらっしゃいます。それは、素晴らしいことです」
その言葉に、少し嬉しくなった。
「ありがとう」
「いえ」
マルティナは微笑む。
「お嬢様は、もっとご自分に自信を持ってください」
「......そうね」
私は、資料に目を戻す。
――そして、遠く離れた王宮。
レオニスは、一人で月を見上げていた。
「......エレノア」
彼の呟きは、誰にも届かない。
ただ――夜風に溶けていくだけだった。
「殿下」
カイが、静かに声をかける。
「......ああ」
「秋季舞踏会まで、あと僅かです」
「......わかっている」
レオニスは、月を見つめたまま答える。
「その時――」
「その時、俺は動く」
主人の確かな声を聞いたカイは、静かに頷いた。
今日はその月例会合。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
フローラが、議長として会を進行する。
「本日の議題は、秋季舞踏会の最終確認です」
令嬢たちが、それぞれの準備状況を報告していく。ドレス、装飾品、エスコート役――。
「エレノア様は、どなたとご出席を?」
ある令嬢が、遠慮がちに尋ねる。
「一人で出席する予定よ」
私は、明るく答える。
「まあ......ディートリヒ様とは?」
「彼は、別の方とご出席なさるそうよ」
その瞬間、部屋の空気が変わる。
令嬢たちは、顔を見合わせる。
「......そう、ですか」
「まあ......」
彼女たちは、同情の目を向けてくる。
でも、私は平気。
席を離れて飲み物を撮りに行くと、フローラがやってきた。
「......エレノア?」
フローラが、心配そうにこちらを窺っている。
「いい機会よね。虚栄心の塊みたいなリリアナだったら、きっと大勢の前での婚約破棄を狙うでしょう?」
「そうね」
「正直、面倒だったからありがたいわ」
私はあっけらかんと答える。
「領地経営の話をしても、ディートリヒは興味なさそうだし」
「まああのお坊ちゃんは、ね」
「ええ。お勉強も剣術も成績下位で、実家は侯爵家だけど三男。侯爵家当主の私に婿入りが決まっていたのにそれを反故にしていったい何がしたいのかしら」
「ありえないわよね」
「ええ」
私は微笑む。
「これで、勉強に集中できるわ」
「やっぱり、次期侯爵は違うわね」
「末長くよろしくね? 次期伯爵様?」
私たちは笑い合った。
会合が終わり、帰り道。
マルティナが、ため息をつく。
「お嬢様、本日も記録を取りました」
「ありがとう」
彼女は手帳を取り出す。
「ディートリヒ様は、本日も義妹様との外出を優先なさいました。本来であれば、会計報告会に同席するはずでしたが」
「そう」
私は、その手帳を受け取った。
すべて、日時と理由が記録されている。
「完璧ね、マルティナ」
「当然です」
彼女はきっぱりと答える。
「お嬢様のために、万全の準備をしております」
「ありがとう」
私は、手帳をぱらぱらとめくる。
――これだけ証拠があれば、十分だ。
婚約破棄の理由として、完璧すぎるほどに。
その夜、自室で一人になると――。
私は、領地経営の資料を広げた。
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これらを読んでいると、心が落ち着く。
――私は、これが好きだ。
領地のことを考え、領民の生活を豊かにする方法を探す。
それが、何より楽しい。
「......お嬢様」
ドアがノックされる。
「どうぞ」
マルティナが、温かい紅茶を持って入ってくる。
「お疲れ様です」
「ありがとう」
私は、紅茶を受け取る。温かさが、胸に染み込む。
「マルティナ」
「はい」
「私は――間違っていないわよね」
「もちろんです」
マルティナは、きっぱりと答える。
「お嬢様は、ご自分の人生を生きていらっしゃいます。それは、素晴らしいことです」
その言葉に、少し嬉しくなった。
「ありがとう」
「いえ」
マルティナは微笑む。
「お嬢様は、もっとご自分に自信を持ってください」
「......そうね」
私は、資料に目を戻す。
――そして、遠く離れた王宮。
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「......エレノア」
彼の呟きは、誰にも届かない。
ただ――夜風に溶けていくだけだった。
「殿下」
カイが、静かに声をかける。
「......ああ」
「秋季舞踏会まで、あと僅かです」
「......わかっている」
レオニスは、月を見つめたまま答える。
「その時――」
「その時、俺は動く」
主人の確かな声を聞いたカイは、静かに頷いた。
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