【完結】婚約破棄される前に察して距離を置いていたら、幼なじみの第三王子が本気になっていました〜義妹と元婚約者? もう過去の人です〜

井上 佳

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第22話 選ばれるということ

数日後。
私は、再び王宮の庭園でレオニス殿下と会うことになった。

「エレノア」
「レオニス殿下」

私たちは、庭園のベンチに座る。
美しい紅葉が、風に舞っている。

「......エレノア」

殿下が、真剣な表情で言う。

「前回、言えなかったことがある」
「はい」

私は、紅茶を置く。
殿下は、深く息を吸って――。

「私は――君を、ずっと想っていた」
「......え?」

私は、驚いて殿下を見つめる。

「幼い頃から、君のことが好きだった」

殿下の金色の瞳が、私を真っ直ぐ見つめる。

「君の強さ、聡明さ、そして優しさ」
「......殿下」
「だが――君には婚約者がいた。だから、私は何も言えなかった」

殿下は、静かに続ける。

「でも、今――君は自由だ」
「......」
「だから、私は言いたい」

殿下は、私の手を取る。

「私は――君に、選んでほしい」

その言葉に、胸が高鳴る。

「......殿下」
「押しつけではない。選択肢として、差し出したいんだ」

殿下は、優しく微笑む。

「君が、私を選んでくれるかはわからないけど......」
「でも――」
「私は、君と共に歩みたい」

その真剣な眼差しに、私は言葉を失う。

「......えっと」
「即答しなくていい」

殿下は、私の手を優しく握る。

「ゆっくり、考えてほしい」
「......」

私は、混乱していた。

レオニス殿下が、私を想っていた?
幼い頃から?

「......なぜ、私なんですか」
「なぜ?」

殿下は、少し笑う。

「君だからだよ」
「......」
「君は、強くて、誇り高くて、そして――誰よりも美しい」

その言葉に、頬が熱くなる。

「......私は」
「ん?」
「私は――領地経営のことで頭がいっぱいで」
「知っている」

殿下は、微笑む。

「それが、君らしい」
「......」
「だから、私は――君のそういうところも、好きなんだ。家族を、領民を大切にしている君だから」

私は、何も言えなかった。
ただ――胸が、温かくなる。

「......考えさせてください」
「もちろん」

殿下は、優しく頷く。

「待っているよ」

私たちは、しばらく黙って庭園を眺めた。

――選ばれる、ということ。
それは、こんなに温かいものなのか。



その夜。
私は、一人で部屋にいた。

「......お嬢様」

マルティナが、紅茶を持ってくる。

「......王子殿下に、告白されたんですね」
「......どうしてわかるの?」
「お顔に出ております」

マルティナは、微笑む。

「お嬢様、どうなさいますか」
「......わからない」

私は、正直に答える。

「私、恋愛のことなんて考えたことなかったから」
「そうですね」
「ずっと、領地経営のことばかり考えていて」
「はい」

マルティナは、私の隣に座る。

「でも――お嬢様」
「ん?」
「王子殿下のこと、嫌いではないでしょう?」

その言葉に、私は黙る。
――嫌いではない。
むしろ――。

「......好き、かもしれない」
「なら、いいじゃないですか」

マルティナは、優しく笑う。

「お嬢様も、幸せになっていいんですよ」
「......」
「ずっと、侯爵家のために頑張ってこられた」
「でも――」
「でも、お嬢様も一人の女性です」

マルティナは、私の手を握る。

「幸せになってください」
その言葉に、涙が溢れそうになった。

「......ありがとう、マルティナ」
「いいえ」

私は、窓の外を見る。
月が、美しく輝いていた。

――レオニス殿下。

あの方と、一緒に歩む未来。

それは――悪くないかもしれない。
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