【完結】婚約破棄される前に察して距離を置いていたら、幼なじみの第三王子が本気になっていました〜義妹と元婚約者? もう過去の人です〜

井上 佳

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第二章

第46話−2

バザササール侯爵は――何も言えない。
ただ――頭を下げ続けるだけだ。

だが――。

「お父様……」

サナサリリアが、小さく呟く。

「……サナサリリア、黙っていなさい」

バザササール侯爵が、低い声で言う。
だが――サナサリリアは、聞いていない。

「で、でも――」

彼女は、顔を上げる。
その目には、涙が浮かんでいる。

「私、レオニス様の第二夫人になるつもりだったんですのよ!」

その言葉に――。
謁見の間が、ざわめく。
国王陛下も、眉をひそめる。

「サナサリリア・バザササール」
「は、はい……」
「この国は、一夫一妻制だ」

国王陛下は、厳しく言う。

「国王のみ、王妃に子ができなかった場合、側妃を娶ることができる」
「……」
「だが、レオニスはすでに侯爵家に婿として迎え入れられている。その権利を持ち得ることはない」
「で、でも――」

サナサリリアは、必死に言い返す。

「レオニス様は王子様ですもの! 特別でしょう!?」
「特別ではない」

国王陛下は、冷たく答える。

「法は、すべての者に平等だ」

その言葉に――。
サナサリリアは、泣き崩れる。

「そんな……そんなはずない……」

彼女は、床に手をつき、嗚咽を漏らす。
その姿は――哀れだった。
だが――同情する気にはなれない。
彼女は、私を陥れようとしたのだから。

「サナサリリア……」

バザササール侯爵が、娘の名を呼ぶ。
その声には――後悔が滲んでいる。
だが――もう、遅い。

「サナサリリア・バザササール」

国王陛下が、再び口を開く。

「お前にも、聞きたいことがある」
「……はい」

サナサリリアは、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら――答える。

「お前は――なぜ、ヴァルディス領に行ったのだ」
「……それは」

サナサリリアは、少し躊躇する。
だが――もう、隠しても意味がないことを悟ったのか――。

「お父様が――」

彼女は、バザササール侯爵を見る。

「お父様が、言ったんですの」
「……サナサリリア!」

バザササール侯爵が、慌てて止めようとする。
だが――。

「『エレノアを、悪い噂を流して失脚させる』って!」

サナサリリアは、叫ぶ。

「『そうすれば、お前がレオニス殿下の妻になれる』って!」

その言葉に――。
謁見の間が、どよめく。
重臣たちも、驚いた顔をしている。
バザササール侯爵は――顔を真っ青にして、固まっている。

「サナサリリア……お前……」
「でも、私――」

サナサリリアは、涙を流しながら続ける。

「なんでもいいから、レオニス様の妻になれるなら――って思って」
「……」
「だから、ヴァルディス領に行って、とりあえず第二夫人になろうとしたの」

彼女は、床に手をつく。

「お父様が、エレノアを陥れて――エレノアがいなくなったら、第一夫人になるって、思って」
「……っ」

私は――思わず、息を呑む。
こんなに――露骨に、計画を話すなんて。

「でも――」

サナサリリアは、泣きながら言う。

「早くレオニス様に会いたくて……我慢できなくて……」
「だから、お父様の計画が終わる前に、行っちゃったの……」

その言葉に――。
国王陛下は、深くため息をつく。

「……愚かな」

その一言が、謁見の間に響く。
サナサリリアは――泣き続けている。
バザササール侯爵は――もう、何も言えない。
娘が――すべてを、暴露してしまった。

「バザササール侯爵」

国王陛下が、再び口を開く。

「申し開きは、あるか」
「……」

バザササール侯爵は、しばらく沈黙する。
だが――もう、言い訳は無理だと悟ったのだろう。

「……ありません」

その声は――力なく、弱々しい。
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