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第一章
第六話 隠されたセツコ
しおりを挟む「セツコ! どこだ!」
ジスは叫びとも聞こえるような悲痛な声でセツコの名前を呼び、彼女の姿を捜していた。
エコルに、ジスが王子だという事実を聞いて以降もセツコは、彼との関係を変えることはなかった。ただ、ときどき切ないような辛いような顔をすることが多くなった。
それを見た空の妖精ネフレは、セツコが辛い思いをしていると思い彼女を雲の中に隠してしまった。
「ネフレ、お願いよ。ジスと話をさせて」
「いいえ、それはできないわセツコ。あの男といても苦労するだけだわ。諦めてちょうだい」
正直、セツコも迷ってはいたのだ。いくら愛していても、一国の王子と、これから先も一緒に居続けることができるのか。もし結ばれたとしても、王は? 王妃は? 国民は認めてくれるのだろうか。異世界から来たという、何も持たないただの女を……。
二人で楽しいときを過ごしたあとふと思うのは、いつもそれだった。
不思議と、ジスの愛を疑ったことはない。けれども、取り巻く環境が、自身の状況が不安を増幅させていった。
「やはり無理なのね。身分を持たない、国を追われてきた女なんて……彼にふさわしく、ないわ」
「セツコ……」
ジスとの未来を諦めたかのようにつぶやくセツコに、ネフレは悲しそうな目を向けた。ネフレも、ただセツコに幸せになってほしいだけだったのだ。
「ありがとうネフレ。そんな顔をしないで。あなたが私を想ってしてくれたというのは、わかっているから」
この家に二人でいるだけなら幸せでいられる。けれど、ジスは王子で帰りを待つ人たちがいる。もし自分がついて行くことができても、迷惑をかけるだけだ、とセツコはジスを諦める決心をした。
「迎えを、呼びましょう」
「エコル……」
「見ていられないわ」
セツコは、自分を捜し続けるジスを雲間から見て、涙を流し続けていた。エコルはそれを見かねて、力ずくでもジスを連れ帰れるような迎えの人を呼びに行くことにした。
「でも、あなたは……」
「大丈夫。ほとんどの人には見えないから……王や王妃に会わないよう上手いことやるわ」
「……ありがとう、エコル」
ジスの迎えを呼びに行くということは、エコルが追放された王宮に行くということ。見つかったらただではすまないだろう。しかし妖精が見える人間はそういないので、見つかる可能性はかなり低い。
エコルは、急いで王都に向かった。
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