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第一章
第七話 迎えに来た友人
しおりを挟む「つまりお前は、ここでその女と乳繰り合っていたというわけか」
「いや……まあ、そうなのだが」
「討伐後に、大怪我してたお前がペガサス殿に連れて行かれたと聞いたが……。『治療したが療養するのでしばらく帰らない』と、たった一枚どこから送ったかもわからない手紙を寄越して? それにしても帰りが遅いと皆が心配しているときに?」
「まあ…………わ、悪かったと思っている」
「はあ……そろそろペガサス殿のところに捜索隊が送られるところだったぞ」
ここ、とはセツコが暮らしていた家のことだが、現在家主は不在である。
その家主がいなくなってからしばらく経ったある日、王都からザルバロ・フィー公爵が訪ねてきた。もちろん、ジスを迎えにきたのだ。
「まさか妖精が呼びに来るとは思わなかったが」
「そうか、レイラは妖精が見えるのだったな」
「ああ。迎えを寄越せと言ってきた妖精は、エコルというそうだ」
「エコルが……」
レイラ・フィー。公爵家ただひとりの姫であり、ザルバロの妹だ。
ジスには妖精は見えないが、セツコが話をしている妖精の中にエコルという光の妖精がいることは聞いていた。そのときにジスは、もしや昔王家に仕えていたとう妖精か、ということに気づいていた。
「そのセツコとやらと仲がいい妖精がお前を連れ帰れというなら、彼女は妖精に隠されているんじゃないのか?」
「ああ……」
「そうか。歓迎されていないんだな」
「……」
「に、睨むなよ」
そうかもしれない。そうかもしれないが、それを他人から言われると腹が立つもので、ジスは目をひん剥いてザルバロを睨んでいた。
「ああ、すまない。現実を突きつけられてつい」
「つい、で殺気まで飛ばすなよ……」
ジスは、やりきれないため息をひとつついた。
妖精はいたずらでそういったことをするという知識はある。実際は、ネフレがセツコを心配して二人を意図的に引き離しているのだが。
自分は国の王子という立場だ。セツコはそれを知ったんだろう、とあたりがついた。セツコの身の上は詳しくは知らなかったが、隣国を追放された聖女ということは聞いている。自分一人で結婚相手を決めることができない以上、セツコを城に連れ帰る訳にはいかないことはわかっていた。強引に連れて行っても、彼女が辛い思いをするのは目に見えている。なにせ王と王妃がアレアレなのだ。気に入られても嫌われても地獄だろう。
「俺がここに来た以上、お前を力ずくでも連れ帰るということだ」
「そうか……」
ジスが本気を出せば、ザルバロを退けることもできる。しかし、幼馴染でもあり信頼のおける同僚に剣を向けるのは良策ではない。
いつかは王宮に戻らなければならない。その前にセツコと話し合いをしたかったが、妖精に隠されているのならそれも叶わない。人間の常識や都合が通用する相手ではないのだ。
もっと早く、二人の今後について話し合うべきだった、とジスは後悔した。
「セツコ……」
ジスは、彼女との再会を固く決心し、今は城に戻ることにした。
〝きみとのことをこれで終わらせる気はない。必ず迎えに来るから待っていてほしい〟
「ジス……」
家に戻ったセツコは、二人で食事をしていたダイニングテーブルの上の手紙を読み涙を流した。
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