【完結】聖女は妖精に隠される ~召喚されてきたのに追放されました。婚約破棄上等!~

井上 佳

文字の大きさ
34 / 34
第二章

最終話 しばしの――

しおりを挟む

シェーレからゾゼ国に帰還したセツコたちは、ペガサスの泉に降り立った。泉にいる妖精たちに挨拶し、セツコとジスは旅の思い出を振り返りながら家までゆっくりと歩いて帰った。家の扉を開けると、可愛い我が子が笑顔で迎えてくれる。


「まぁま、ぱぱ!」

「ツバサ!」

「ただいま、ツバサ」


大手を広げてツバサを抱え上げるジス。手を伸ばしてきたツバサに自分の手を合わせるセツコ。家族が揃うのは二カ月振りくらいだろうか。


「おかえりー!」

「ふふっ、元気にしてた?」

「げんき!」

「そうか、元気か!」

「きゃーっ!!」


ジスはツバサを持った手を掲げ、ぐるぐる回る。久しぶりのパパの高い高いに、ツバサはご機嫌だ。


「おかえりなさい」

「レイラさん、留守をありがとう」

「いいえー」

「エコルも、ありがとうね」

「お疲れさま、セツコ」

「戻ったか」

「え?」


ツバサの世話を頼んでいたレイラとエコルに挨拶をしていると、奥から声がしたので目を向けるセツコ。するとキッチンから、エプロンをつけた大柄の男が出てきた。


「ザルバロか?」

「ああ。邪魔してるぞ」

「えっ、国王陛下??」

「初めましてだな、セツコ殿」


ニッと歯を見せて笑うザルバロ・フィー、ゾゼ国の若き国王である。


「なんでお前がここにいる……」

「いやあ、レイラがちゃんとやっているか心配でな。大聖女の子に何かあったら一大事だろう?」

「失礼ですわよお兄様。わたくしだって二人の子を持つ母です。手抜かりなどありませんわ」

「シスコンめ」

「妹はかわいいものだろう?」

「妹はいないからわからん」


昔馴染みが揃っているものだから、身分など関係なく気安い会話がされている。セツコはそれを、微笑ましく見ていた。


「それで?」

「ああ、シェーレならもう手を出さなくても大丈夫だろう。な?」

「ええ。瘴気が無い今のうちに、復興を進められるでしょう。それに、新たに召喚された聖女のメイナちゃん、やる気満々みたいだから、きっと明るい国になると思うわ……思い、ます!」

「ははっ、そうか。これで心配事もひとつ減ったな」

「ひとつ? ……聞かないぞ、俺は」

「そういうな、ジス。実はな?」

「聞かないぞ。俺は家族団らん、平和に暮らすんだ」

「まあまあそう言わずに!」

「嫌だ」


実はゾゼ国内で、問題が発生している。国王は国の問題を解決するためにいるので、問題がない事のほうがあり得ないのだが、今回の問題にはまたジスを巻き込もうとしているようだ。ジスを、というか、セツコを、なのだが。
それが伝わったのか、嫌な予感がしたジスは、ザルバロの言葉を遮り続けるという無駄な行為をしている。


「とりあえず――」

「言うな」

「聖女が――」

「聞こえん!」


そしてしまいには、セツコとツバサを抱えて家を飛び出してしまった。


「あっ、おい待て!」

「うるさい! 家族の再会に水を差すな!」

「話だけでも――」

「お兄様! あとになさいませ!」

「あとでも聞かん!」

「ジス、話くらい」

「っ……こればかりはセツコの頼みでも!」

「きゃっきゃっ」


ジスは二人を抱えたままペガサスの元まで走った。

ザルバロも、諦めずに泉まで追ってきた。

泉のほとりにペガサスの姿を見つけたジスは、叫ぶ。


「ペガサス殿! 緊急事態だ乗せてくれ!」

「ん? ああ、乗るがいい」

「感謝する!」


なにがなんだかよくわからないが、ジスが必死なのでセツコに関わる事なのかと思い、三人を乗せるペガサス。追ってきているのが国王だと気づいてギョッとした。


「なぜ王に追われるのだ」

「家族団らんを邪魔するのだ」

「そうなのか?」

「なにか、頼み事があるみたいなんだけど……」

「ふむ」

「いいから飛んでくれ!」

「ああ、ああわかった。耳元で騒ぐな」

「ごめんねーペガさん」

「いや、いい。落ち着いたところで話を聞こう」

「ありがとう」


そしてペガサスは、王の前から飛び去った。


「待ってくれジス! セツコ殿! どうかゾゼの聖女を――」


上空へ舞い上がったジスたちに、ザルバロの叫びは届かなかった。





「何があろうとしばらくは家族で平和に暮らすんだ」

「そうね。畑仕事にポーション作り、村の皆に挨拶もしなきゃ」

「シェーレで食べた料理にも挑戦してみよう」

「わっ、いいわね! 小籠包に春巻きも!」

「ショウリャンポウじゃなかったか?」

「あれね、私のいたところではショウロンポウっていうの」

「そうなのか」

「マキャロンもね、

「マカロンか」

「ほかにも――」


そうして追っ手を撒いたジスは、しばし家族団らんの時間を手に入れたのだった。










聖女は妖精に隠される


- 完 -




しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

おこ
2023.04.16 おこ

とても面白く読ませていただきました‼️

時系列もスッキリしていて
出てくるキャラクターもみんな
素敵でした✨

ジス・せつ子・ツバサ

お幸せに😘

解除
kokekokko
2023.04.07 kokekokko
ネタバレ含む
2023.04.07 井上 佳

感想ありがとうございます!

セツコちゃんはなかなかよいお姉さんキャラに出来たような気がするので、嬉しいです。きっと二人の間にはもっと子ができて、ツバサと兄弟姉妹たちがゾゼ国に関わっていくことになるのでしょうね。

お読みいただきありがとうございました!

解除
蒼さん
2023.04.06 蒼さん
ネタバレ含む
2023.04.07 井上 佳

感想ありがとうございます!

最近ギリシャ神話の本、簡単なものですが、読む機会があったのでところどころに取り入れてみました! 気づいてくれた♪

読んでいただきましてありがとうございます!

解除

あなたにおすすめの小説

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。 土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。

向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。 幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。 最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです! 勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。 だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!? ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。

偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人
ファンタジー
「お前のような女が聖女であるはずがない!」 婚約者の王子に、身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セレスティナ。 罰として与えられたのは、冷酷非情と噂される「氷の辺境伯」への降嫁だった。 それは事実上の追放。実家にも見放され、全てを失った――はずだった。 しかし、窮屈な王宮から解放された彼女は、前世で培った知識を武器に、雪と氷に閉ざされた大地で新たな一歩を踏み出す。 「どんな場所でも、私は生きていける」 打ち捨てられた温室で土に触れた時、彼女の中に眠る「豊穣の聖女」の力が目覚め始める。 これは、不遇の令嬢が自らの力で運命を切り開き、不器用な辺境伯の凍てついた心を溶かし、やがて世界一の愛を手に入れるまでの、奇跡と感動の逆転ラブストーリー。 国を捨てた王子と偽りの聖女への、最高のざまぁをあなたに。

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。