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第二章
最終話 しばしの――
しおりを挟むシェーレからゾゼ国に帰還したセツコたちは、ペガサスの泉に降り立った。泉にいる妖精たちに挨拶し、セツコとジスは旅の思い出を振り返りながら家までゆっくりと歩いて帰った。家の扉を開けると、可愛い我が子が笑顔で迎えてくれる。
「まぁま、ぱぱ!」
「ツバサ!」
「ただいま、ツバサ」
大手を広げてツバサを抱え上げるジス。手を伸ばしてきたツバサに自分の手を合わせるセツコ。家族が揃うのは二カ月振りくらいだろうか。
「おかえりー!」
「ふふっ、元気にしてた?」
「げんき!」
「そうか、元気か!」
「きゃーっ!!」
ジスはツバサを持った手を掲げ、ぐるぐる回る。久しぶりのパパの高い高いに、ツバサはご機嫌だ。
「おかえりなさい」
「レイラさん、留守をありがとう」
「いいえー」
「エコルも、ありがとうね」
「お疲れさま、セツコ」
「戻ったか」
「え?」
ツバサの世話を頼んでいたレイラとエコルに挨拶をしていると、奥から声がしたので目を向けるセツコ。するとキッチンから、エプロンをつけた大柄の男が出てきた。
「ザルバロか?」
「ああ。邪魔してるぞ」
「えっ、国王陛下??」
「初めましてだな、セツコ殿」
ニッと歯を見せて笑うザルバロ・フィー、ゾゼ国の若き国王である。
「なんでお前がここにいる……」
「いやあ、レイラがちゃんとやっているか心配でな。大聖女の子に何かあったら一大事だろう?」
「失礼ですわよお兄様。わたくしだって二人の子を持つ母です。手抜かりなどありませんわ」
「シスコンめ」
「妹はかわいいものだろう?」
「妹はいないからわからん」
昔馴染みが揃っているものだから、身分など関係なく気安い会話がされている。セツコはそれを、微笑ましく見ていた。
「それで?」
「ああ、シェーレならもう手を出さなくても大丈夫だろう。な?」
「ええ。瘴気が無い今のうちに、復興を進められるでしょう。それに、新たに召喚された聖女のメイナちゃん、やる気満々みたいだから、きっと明るい国になると思うわ……思い、ます!」
「ははっ、そうか。これで心配事もひとつ減ったな」
「ひとつ? ……聞かないぞ、俺は」
「そういうな、ジス。実はな?」
「聞かないぞ。俺は家族団らん、平和に暮らすんだ」
「まあまあそう言わずに!」
「嫌だ」
実はゾゼ国内で、問題が発生している。国王は国の問題を解決するためにいるので、問題がない事のほうがあり得ないのだが、今回の問題にはまたジスを巻き込もうとしているようだ。ジスを、というか、セツコを、なのだが。
それが伝わったのか、嫌な予感がしたジスは、ザルバロの言葉を遮り続けるという無駄な行為をしている。
「とりあえず――」
「言うな」
「聖女が――」
「聞こえん!」
そしてしまいには、セツコとツバサを抱えて家を飛び出してしまった。
「あっ、おい待て!」
「うるさい! 家族の再会に水を差すな!」
「話だけでも――」
「お兄様! あとになさいませ!」
「あとでも聞かん!」
「ジス、話くらい」
「っ……こればかりはセツコの頼みでも!」
「きゃっきゃっ」
ジスは二人を抱えたままペガサスの元まで走った。
ザルバロも、諦めずに泉まで追ってきた。
泉のほとりにペガサスの姿を見つけたジスは、叫ぶ。
「ペガサス殿! 緊急事態だ乗せてくれ!」
「ん? ああ、乗るがいい」
「感謝する!」
なにがなんだかよくわからないが、ジスが必死なのでセツコに関わる事なのかと思い、三人を乗せるペガサス。追ってきているのが国王だと気づいてギョッとした。
「なぜ王に追われるのだ」
「家族団らんを邪魔するのだ」
「そうなのか?」
「なにか、頼み事があるみたいなんだけど……」
「ふむ」
「いいから飛んでくれ!」
「ああ、ああわかった。耳元で騒ぐな」
「ごめんねーペガさん」
「いや、いい。落ち着いたところで話を聞こう」
「ありがとう」
そしてペガサスは、王の前から飛び去った。
「待ってくれジス! セツコ殿! どうかゾゼの聖女を――」
上空へ舞い上がったジスたちに、ザルバロの叫びは届かなかった。
「何があろうとしばらくは家族で平和に暮らすんだ」
「そうね。畑仕事にポーション作り、村の皆に挨拶もしなきゃ」
「シェーレで食べた料理にも挑戦してみよう」
「わっ、いいわね! 小籠包に春巻きも!」
「ショウリャンポウじゃなかったか?」
「あれね、私のいたところではショウロンポウっていうの」
「そうなのか」
「マキャロンもね、マカロン」
「マカロンか」
「ほかにも――」
そうして追っ手を撒いたジスは、しばし家族団らんの時間を手に入れたのだった。
聖女は妖精に隠される
- 完 -
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