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どこに住んでいて普段何をしているのか、兄とどこでどんなふうに知り合ったのかも聞けていない。
わかっていることといえば、今までのちょろい女たちとは違うということだけだ。
それは兄には言えないが…
新汰は少し悩むと答えた。
「兄さんが話してた通り、穏やかで話しやすい人だよね。やっぱり同性だからってのもあるのかも」
新汰の言葉に兄の表情がフッとゆるむ。
自分から切り出してこなかったがやはり兄も相手が男だということを気にしていたらしい。
「驚いたろ。…男だったから」
「そりゃあ、少しはね。でも好きになった人がたまたま同性だっただけでしょ。俺はそういうの気にしないけど?」
新汰はそう言うと、何げに奏汰を見上げた。
キッチンの明かりに照らされて陰影を深めた顔がじっとこちらを見つめている。
そのなんとも言えない表情に、新汰は思わず目をそらしてしまった。
え?
今のはなんだ?
今まで向けられたことのない表情に心が一気にざわつく。
シン、と静まりかえった部屋。
雨の音がやけに響いて聞こえてくる。
この部屋、こんなに静かだっただろうか?
いつもと違う雰囲気に戸惑っていると、兄が訊ねてきた。
「新汰もそう思うのか?」
「う…うん」
新汰は平静を装いながら答えた。
そっと隣を盗み見ると、奏汰はいつものように穏やかな笑みを浮かべている。
さっきの表情はなんだったのだろうか。
新汰はまだドキドキとしている心臓を落ち着かせながらマグカップにティーパックを落とした。
あの表情、向けられたことはないが知っている。
あれは奏汰が鑑定するときの顔だ。
物を鑑定するときの奏汰の表情は小さい頃からよく見てきているから見間違えるはずがない。
しかし、兄がそういった眼差しを向けるのは人以外のもの。
物ではない、しかも新汰に向けられたのは初めてだった。
もしかして嘘をついているかもしれないと疑われているのだろうか。
それともこれまでの新汰の行いがバレている…?
しかし、万が一バレているのだとしたらとっくに責められているはずだ。
「雨、止まないな。明日の天気予報みておこうか」
ハーブティーの入ったマグカップを二つ手に持つと奏汰が提案してくる。
気のせい…だよな?
いつもと変わらない兄の様子にホッと胸をなでおろしながら、新汰はそうだねと返す。
さっきの顔はきっと明かりのせいでそういう風に見えただけだ。
兄は一流の目を持っているが、人を鑑定することはできない。
だからこそいつも恋人選びに失敗している。
兄が新汰を鑑定するはずがないのだ。
わかっていることといえば、今までのちょろい女たちとは違うということだけだ。
それは兄には言えないが…
新汰は少し悩むと答えた。
「兄さんが話してた通り、穏やかで話しやすい人だよね。やっぱり同性だからってのもあるのかも」
新汰の言葉に兄の表情がフッとゆるむ。
自分から切り出してこなかったがやはり兄も相手が男だということを気にしていたらしい。
「驚いたろ。…男だったから」
「そりゃあ、少しはね。でも好きになった人がたまたま同性だっただけでしょ。俺はそういうの気にしないけど?」
新汰はそう言うと、何げに奏汰を見上げた。
キッチンの明かりに照らされて陰影を深めた顔がじっとこちらを見つめている。
そのなんとも言えない表情に、新汰は思わず目をそらしてしまった。
え?
今のはなんだ?
今まで向けられたことのない表情に心が一気にざわつく。
シン、と静まりかえった部屋。
雨の音がやけに響いて聞こえてくる。
この部屋、こんなに静かだっただろうか?
いつもと違う雰囲気に戸惑っていると、兄が訊ねてきた。
「新汰もそう思うのか?」
「う…うん」
新汰は平静を装いながら答えた。
そっと隣を盗み見ると、奏汰はいつものように穏やかな笑みを浮かべている。
さっきの表情はなんだったのだろうか。
新汰はまだドキドキとしている心臓を落ち着かせながらマグカップにティーパックを落とした。
あの表情、向けられたことはないが知っている。
あれは奏汰が鑑定するときの顔だ。
物を鑑定するときの奏汰の表情は小さい頃からよく見てきているから見間違えるはずがない。
しかし、兄がそういった眼差しを向けるのは人以外のもの。
物ではない、しかも新汰に向けられたのは初めてだった。
もしかして嘘をついているかもしれないと疑われているのだろうか。
それともこれまでの新汰の行いがバレている…?
しかし、万が一バレているのだとしたらとっくに責められているはずだ。
「雨、止まないな。明日の天気予報みておこうか」
ハーブティーの入ったマグカップを二つ手に持つと奏汰が提案してくる。
気のせい…だよな?
いつもと変わらない兄の様子にホッと胸をなでおろしながら、新汰はそうだねと返す。
さっきの顔はきっと明かりのせいでそういう風に見えただけだ。
兄は一流の目を持っているが、人を鑑定することはできない。
だからこそいつも恋人選びに失敗している。
兄が新汰を鑑定するはずがないのだ。
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