わるいむし

おととななな

文字の大きさ
15 / 46

15

しおりを挟む
 その後、二人で天気予報をチェックしたり録画していたドラマを観たりしたが、奏汰の様子に変化はなかった。
 やはりあれは新汰の見間違えだったらしい。
 もうそろそろ寝ようかと考えていたとき、新汰のスマホにメッセージが届いた。
 大学の友人か、兄の元恋人たちの誰かだろう。
 新汰はなるべく奏汰から見えない位置で画面をひらく。
 『今大丈夫かな』
 絵文字も何もない簡素な文章だ。
 こんな短文珍しいなと送り主の名前を確認した瞬間、心臓が跳ね上がった。
 升谷だったからだ。
 新汰はすぐに奏汰を盗み見た。
 兄のスマホはテーブルの上にあり、メッセージが送られてきている気配がない。
 つまり、升谷は新汰にのみメッセージを送ってきているということだ。
 なんの目的だ?
 一週間以上も前に会って以来なんの音沙汰もなかったのに、突然連絡をしてきてどういうつもりだろうか。
 飲みに連れていくという約束を律儀に守ろうとしているのだろうか。
 それとも奏汰のことで弟の新汰に聞きたいことでもあるとか?
 色々考えながらも無難に返事を返す。
 『大丈夫ですよ。どうしました?』
 メッセージはすぐに既読になりまた新たなメッセージが届く。
 『この前あんまり話せなかったでしょ?もう少し新汰くんと話してみたいなって思ってて。嫌かな?』
 升谷からのメッセージを二、三度読み返すと、新汰は素早く兄に視線を向けた。
 奏汰はスマホをいじることなくテレビに集中している。
 『兄さんも一緒にですか?』
 『できれば二人がいいんだけど、新汰くんが嫌なら奏汰も一緒に』
 新汰はひとりでに持ち上がりそうになる口角を必死におさえつけながらメッセージを読み返した。
 できれば二人がいいということは、升谷が新汰に興味を持っているということになる。
 つまり、升谷は新汰と二人になるきっかけを作ろうとしているのだ。
 飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのことだ。
 兄を裏切る行為は許せないが、この男もまたこれまでの馬鹿でちょろい奴らと同じように排除できる。
 それは新汰にとって何よりも喜ばしいことだった。
 『嫌じゃないですよ。でも兄さんに言わなくていいんですか?』
 快い返事をしながらもいい弟を取り繕ってみる。
 少しして返事がきた。
 『俺が新汰くんと一緒にいたいんだよ。それじゃダメ?』
 新汰は冷ややかな表情でメッセージに返事を返すとスマホをポケットに入れた。
 やはり升谷も兄を本気で愛してなんかいなかった。
 もちろん怒りはある。
 兄の気持ちをもてあそび平気で裏切る、どいつもこいつも薄情な奴らばかりだ。
 だが、どこかで安堵もしていた。
 升谷もまた兄に相応しい人間ではなかったことが、これではっきりと証明される。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

若旦那からの甘い誘惑

すいかちゃん
BL
使用人として、大きな屋敷で長年奉公してきた忠志。ある日、若旦那が1人で淫らな事をしているのを見てしまう。おまけに、その口からは自身の名が・・・。やがて、若旦那の縁談がまとまる。婚礼前夜。雨宿りをした納屋で、忠志は若旦那から1度だけでいいと甘く誘惑される。いけないとわかっていながら、忠志はその柔肌に指を・・・。 身分差で、誘い受けの話です。 第二話「雨宿りの秘密」 新婚の誠一郎は、妻に隠れて使用人の忠志と関係を続ける。 雨の夜だけの関係。だが、忠志は次第に独占欲に駆られ・・・。 冒頭は、誠一郎の妻の視点から始まります。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

令息だった男娼は、かつての使用人にその身を買われる

すいかちゃん
BL
裕福な家庭で育った近衛育也は、父親が失踪した為に男娼として働く事になる。人形のように男に抱かれる日々を送る育也。そんな時、かつて使用人だった二階堂秋臣が現れ、破格の金額で育也を買うと言いだす。 かつての使用人であり、初恋の人でもあった秋臣を拒絶する育也。立場を利用して、その身体を好きにする秋臣。 2人はすれ違った心のまま、ただ身体を重ねる。

風変わりな教師に買われた男娼は、花嫁として迎えられる

すいかちゃん
BL
男娼として毎日のように男に抱かれる和哉。ある日、美形の英語教師に買われる。その理由は、逃げた花嫁の代役だった。

愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる

すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。 第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」 一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。 2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。 第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」 獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。 第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」 幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。 だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。 獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

処理中です...