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結局、その後新汰は母親に散々連れまわされ料理の準備まで手伝わされたあげく、しっかり後片付けまでさせられた。
せっかくの帰省だというのに扱いがあまりにも酷い。
父親は升谷をえらく気に入り、酒を酌み交わしながらずっと楽しそうに話しこんでいる。
新汰とは今まで一度だってやったことないのに。
だが、そんな中でも奏汰は新汰を気にかけてちょこちょこ手をかしてくれた。
積み重ねた皿を危なっかしく運んでいると、スッと手が伸びてきて代わりに運んでくれたり、新汰が好きなネタの寿司をそっと新汰の取り皿に乗せてくれたり。
今だって食後のデザートに出されたリンゴを奏汰が器用にナイフを操り新汰のために剥いてくれているのだ。
そういうさりげない優しさに触れると、恋の指数がぐんぐん上がってしまう。
「全く、あんたたち本当に昔から仲が良いわね。そういえばあんたたちが怒鳴り合ったりとっくみあいの喧嘩なんかしてるとこ見たことないわね…。普通兄と弟って喧嘩がすごいって話聞くけど」
奏汰と新汰のやり取りをじっと見つめながら母親が訊ねてきた。
新汰はなぜかドキッとしてしまう。
普通…普通の兄弟。
普通の兄弟なら喧嘩するし、普通の兄弟なら弟は兄に恋心を抱かない。
何気ない一言だったが、自分のこの気持ちが普通ではないと言われているような気がしてしまった。
いや、実際そうなのだ。
実の兄に恋をしているなんて世間からしたら御法度。
男同士でもまだまだ理解が難しいのに、血縁者同士の恋は更にそれを上回る難しさがある。
そもそも血の繋がったもの同士の交わりは一般的には禁忌とされている。
日本の民法でも直系の血族および 姻族間では親等を問わず、傍系の血族間では 三親等以内は婚姻をすることができないとなっている。
婚姻を考えたことはないが、誰も喜ばない応援もされない認められないこの恋はつまり、不毛な恋なことに間違いはないのだ。
きっと母親も父親も新汰が兄をそんな目で見ていると知ったら泣くはずだ。
気持ち悪いと罵られ、一家の恥だと縁を切られるかもしれない。
家族はバラバラになり、修復は不可能。
そんなリスクを背負う覚悟があるかと問われたら、新汰はやっぱり迷ってしまう。
人使いは荒いが心配してくれる母親も、あまり感情が面に出ないがいつも温かく見守ってくれる父親も、新汰にとってはとても大切な存在なのだ。
やはりこの気持ちは消してしまうのが一番なのかもしれない。
新汰は向いに座る兄を見つめた。
母親に近況を話す奏汰は、穏やかで凛としていて聡明で美しい。
じわりと目頭が熱くなってくる。
この世のどんなものより輝いて見えてしまうというのに、この目を瞑らなきゃいけないなんてあまりにも酷なことだと思った。
せっかくの帰省だというのに扱いがあまりにも酷い。
父親は升谷をえらく気に入り、酒を酌み交わしながらずっと楽しそうに話しこんでいる。
新汰とは今まで一度だってやったことないのに。
だが、そんな中でも奏汰は新汰を気にかけてちょこちょこ手をかしてくれた。
積み重ねた皿を危なっかしく運んでいると、スッと手が伸びてきて代わりに運んでくれたり、新汰が好きなネタの寿司をそっと新汰の取り皿に乗せてくれたり。
今だって食後のデザートに出されたリンゴを奏汰が器用にナイフを操り新汰のために剥いてくれているのだ。
そういうさりげない優しさに触れると、恋の指数がぐんぐん上がってしまう。
「全く、あんたたち本当に昔から仲が良いわね。そういえばあんたたちが怒鳴り合ったりとっくみあいの喧嘩なんかしてるとこ見たことないわね…。普通兄と弟って喧嘩がすごいって話聞くけど」
奏汰と新汰のやり取りをじっと見つめながら母親が訊ねてきた。
新汰はなぜかドキッとしてしまう。
普通…普通の兄弟。
普通の兄弟なら喧嘩するし、普通の兄弟なら弟は兄に恋心を抱かない。
何気ない一言だったが、自分のこの気持ちが普通ではないと言われているような気がしてしまった。
いや、実際そうなのだ。
実の兄に恋をしているなんて世間からしたら御法度。
男同士でもまだまだ理解が難しいのに、血縁者同士の恋は更にそれを上回る難しさがある。
そもそも血の繋がったもの同士の交わりは一般的には禁忌とされている。
日本の民法でも直系の血族および 姻族間では親等を問わず、傍系の血族間では 三親等以内は婚姻をすることができないとなっている。
婚姻を考えたことはないが、誰も喜ばない応援もされない認められないこの恋はつまり、不毛な恋なことに間違いはないのだ。
きっと母親も父親も新汰が兄をそんな目で見ていると知ったら泣くはずだ。
気持ち悪いと罵られ、一家の恥だと縁を切られるかもしれない。
家族はバラバラになり、修復は不可能。
そんなリスクを背負う覚悟があるかと問われたら、新汰はやっぱり迷ってしまう。
人使いは荒いが心配してくれる母親も、あまり感情が面に出ないがいつも温かく見守ってくれる父親も、新汰にとってはとても大切な存在なのだ。
やはりこの気持ちは消してしまうのが一番なのかもしれない。
新汰は向いに座る兄を見つめた。
母親に近況を話す奏汰は、穏やかで凛としていて聡明で美しい。
じわりと目頭が熱くなってくる。
この世のどんなものより輝いて見えてしまうというのに、この目を瞑らなきゃいけないなんてあまりにも酷なことだと思った。
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