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4章
ホテプの呪詛
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「ホテプ?あぁ……レイのとこの黒い蛇か…あいつが、なんだ?」
「あらァ、ホテプの呪詛だ。ルイが回復されてもずっと起きず、レイの自己治癒を以てしても昏睡してンのはあのせいだ……大方、ルイが殴られたときにでも仕込んだンだろォよ……何考えてンだあの馬鹿、ルイは生け捕りだって言って…」
麻耶の言葉を遮って、アスクは自分自身の対の存在である黒い蛇が許せないといったように体をぶるぶると震わせた。
真っ赤な瞳が煮えたぎる。
「ドクター!治療でどうこうできるアレじゃぁない…!食われる!すぐ離れて!」
「くっ……、エウフロン!」
「ドクター!」
片喰にはホテプの呪詛が何かわからない。黒い靄か煙にしか見えず、とにかく何か気持ち悪くて怖いものだということしか感じ取れない。ただ、あの煙が原因なのであればアスクが言うようにどう見てもい医者が治せるものではない。ルイの治療で治せないのであればレイはこのまま死を待つしかないのだろう。
呪詛の煙に少しずつ押されながら、ルイはアスクの制止を振り切って治療を続けた。
その様子をただ見ている麻耶の肩が震える。
医療では治せない。祈りの力による浄化ができないルイには、呪詛を祓うなんて専門外だ。
呪いを医者に診せても仕方がない。
かといって、自浄に優れたレイですら祓えないこれを扱える僧侶を今から探して、そんなものが見つかるかどうか。
麻耶の震えは、レイの死を感じ取ったものだった。
「アスク……、シュピツェー・グナーテをもっと、僕に…」
「ダメだよドクター!もう鱗が出てる!これ以上のバフはダメだ!」
「アスク!」
手術室にルイの金切り声が響き渡る。あまりの声量に、アスクだけでなく麻耶も片喰も凍り付いた。
「…確かに、僕は…祈れないし浄化もできないから、呪詛は…僧侶たちやレイみたいには祓えない。でも…、でも…」
「ドクター……」
レイの心臓から立ち上る穢い煙にルイの光が吸われていく。眩しさが失われ、見えるようになったそこに立っていたのはおおよそ人とは思えない、辛うじて目鼻立ちがルイのようであるだけのものだ。白い肌は艶のある鱗で覆われ、人の造形を模した真っ白な蛇にすぎない。目や唇には血が滲み、少し動く度にその鱗も剥がれてポロポロと落ちた。
アスクは口を使ってなんとかルイをレイから引き剥がす。
ルイは抵抗もせず、重力を感じさせない動きでゆっくりと手術台を離れると麻耶の方へと近寄った。
「あ……」
瞳孔もなく、鱗が生えそろったルイにのぞき込まれて麻耶は咄嗟に縮こまる。ルイは怯えられていることも承知の上で麻耶に手を差し伸べた。
「僕の……、力不足で、ごめん。呪詛を受けたのが…、僕の、ままなら、レイは……レイなら…」
「ルイ…」
見た目は人から離れていてもその声色と優しさは確かにルイだ。
「あらァ、ホテプの呪詛だ。ルイが回復されてもずっと起きず、レイの自己治癒を以てしても昏睡してンのはあのせいだ……大方、ルイが殴られたときにでも仕込んだンだろォよ……何考えてンだあの馬鹿、ルイは生け捕りだって言って…」
麻耶の言葉を遮って、アスクは自分自身の対の存在である黒い蛇が許せないといったように体をぶるぶると震わせた。
真っ赤な瞳が煮えたぎる。
「ドクター!治療でどうこうできるアレじゃぁない…!食われる!すぐ離れて!」
「くっ……、エウフロン!」
「ドクター!」
片喰にはホテプの呪詛が何かわからない。黒い靄か煙にしか見えず、とにかく何か気持ち悪くて怖いものだということしか感じ取れない。ただ、あの煙が原因なのであればアスクが言うようにどう見てもい医者が治せるものではない。ルイの治療で治せないのであればレイはこのまま死を待つしかないのだろう。
呪詛の煙に少しずつ押されながら、ルイはアスクの制止を振り切って治療を続けた。
その様子をただ見ている麻耶の肩が震える。
医療では治せない。祈りの力による浄化ができないルイには、呪詛を祓うなんて専門外だ。
呪いを医者に診せても仕方がない。
かといって、自浄に優れたレイですら祓えないこれを扱える僧侶を今から探して、そんなものが見つかるかどうか。
麻耶の震えは、レイの死を感じ取ったものだった。
「アスク……、シュピツェー・グナーテをもっと、僕に…」
「ダメだよドクター!もう鱗が出てる!これ以上のバフはダメだ!」
「アスク!」
手術室にルイの金切り声が響き渡る。あまりの声量に、アスクだけでなく麻耶も片喰も凍り付いた。
「…確かに、僕は…祈れないし浄化もできないから、呪詛は…僧侶たちやレイみたいには祓えない。でも…、でも…」
「ドクター……」
レイの心臓から立ち上る穢い煙にルイの光が吸われていく。眩しさが失われ、見えるようになったそこに立っていたのはおおよそ人とは思えない、辛うじて目鼻立ちがルイのようであるだけのものだ。白い肌は艶のある鱗で覆われ、人の造形を模した真っ白な蛇にすぎない。目や唇には血が滲み、少し動く度にその鱗も剥がれてポロポロと落ちた。
アスクは口を使ってなんとかルイをレイから引き剥がす。
ルイは抵抗もせず、重力を感じさせない動きでゆっくりと手術台を離れると麻耶の方へと近寄った。
「あ……」
瞳孔もなく、鱗が生えそろったルイにのぞき込まれて麻耶は咄嗟に縮こまる。ルイは怯えられていることも承知の上で麻耶に手を差し伸べた。
「僕の……、力不足で、ごめん。呪詛を受けたのが…、僕の、ままなら、レイは……レイなら…」
「ルイ…」
見た目は人から離れていてもその声色と優しさは確かにルイだ。
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