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4章
心中
しおりを挟む片喰の声など耳に掠ってもいないようだ。
「ルイ!ルイ!やめ………っ」
思わずルイのところまで光を掻き分け進み、その肩を揺さぶる。途中で足のつま先に当たったのが力を吸われ尽くして昏倒し、ただの蛇になり下がったアスクだと気が付いた片喰は、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
麻耶が吸われてしまう。
必死に揺さぶり声をかけるもルイは反応しない。
断固としてレイから離れないルイの指先だけが恐ろしい勢いで煙を吹き飛ばし、心臓をマッサージするかのように光で包み込み中へ流れていくのが見える。
人体のグロテスクな中身を見てもそれどころではないくらい、片喰は焦っていた。
「ルイ!お願いだ、ルイ……!」
揺さぶっても叫んでもルイは眉ひとつぴくりとも動かない。
しかし、その口や瞳、鼻、顔を覆う鱗の隙間から真っ白な肌に不釣り合いな鮮血が滴っていることに気が付き、片喰は揺さぶる手を止めた。
「ルイ………………」
ルイの体に何が起こっているのかはわからない。ただ、今のルイに意識がないことだけは明白だった。
穴という穴から毒である血液が流れても動けずただ取り憑かれたように治療だけを行っている。
麻耶を吸っているのはルイの意思ではない。これは無意識の範疇だ。
片喰はなすすべなく、瞳に浮かんだ涙を拭うとゆっくりとルイを抱きしめた。
「ルイ、大丈夫だ、ルイ…大丈夫……」
ルイの纏う光に体が反応してか、燃えるように熱い。
少しでも冷やすように熱さましや煎じ薬になる薬草を生やしてルイを覆っていく。
ルイがこのまま麻耶を吸い尽くすのであれば、吸い尽くして自分自身も全て消費してしまうのであれば、このまま葉を出し続けて一緒に消えていくつもりだ。
約束をした。
とこしえの愛を与え、共に生きて、共に死ぬと。
その言葉に、誓いに、偽りはない。
ルイの命の炎が消えるのならば、一緒に燃えるだけだ。
「ルイ、ルイ………大丈夫、俺も一緒だ」
自身の体が能力の使いすぎで熱く燃えるほど出した葉と花と蔦に囲まれながら、片喰はただただルイを強く抱きしめた。
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