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第二章 インターンシップの収穫
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席に戻ると、奈美江とグループ長の会話が耳に飛び込んできた。
「寺内ぃ―、しらかば製菓さんのキャンペーン、今日だったよな?」
「はい、正午スタートです」
「その確認作業、阿倍野くんにも手伝わせて」
「はい、了解です」
「あと、さっきの弓削さんの話、聞いていたよな? 社長室に睨まれたら、こっちまで迷惑するんだからな」
グループ長はちくりと針で刺すような言い方をした。
「分かってます」
奈美江は神妙な顔をしている。
さっき注意された対象に奈美江も含まれていたのか、どうりで、と思った。
「阿倍野くん、今日は昼休みちょっと遅くなっちゃうけどいい?」
だが奈美江がこちらを向いた時には、もちろん何も気づいていないふりをした。
しらかば製菓の『しらかば』は木の枝の形をしたホワイトチョコレート。昭和の時代からある菓子の定番商品だ。基季も小さい頃に食べた覚えがある。
今回のキャンペーンはその『しらかば』にQRコードのついたシールが貼ってあり、購入した客が携帯で読み込むとその場で景品の当選結果が表示されるという、よくある懸賞企画だ。
キャンペーン開始時刻の十二時を回り、奈美江は本番URLの画面が応募可能な状態になったことを確認し、「よし、特に問題なさそうね」と呟いた。
「阿倍野くんは、このQRコードでテスト応募してみてくれる? 私はクライアントに連絡するから」
「はい」
基季は奈美江からテスト用のQRコードを受け取り、言われた通り作業に取りかかる。
お!?
いきなり当たりが出た。
派手なアニメーションが流れ、テストだと分かっているのに少しテンションが上がる。
よし、もう一回。
あれ、また当たり? 別のQRコードを読み込む。
「どう? 問題ないでしょ?」
電話を終えた奈美江が声をかけてきた時には、基季はすでに十回の当たりを引いていた。ハズレはゼロ、明らかにおかしい。
「これ何度やっても当たりしか出ないんですけど……」
「そんなはずは……。ちょっと貸して」
奈美江は急いで自分の携帯でテストした。
「なんで? 昨日までテストサーバーでは問題なかったのに」
やはり結果は同じだったようで、奈美江は口を歪ませ即座に電話をかけた。
「先日御社から納品いただいたキャンペーンのサイト、バグが出てるんですけど……。ええ、そうです。しらかば製菓さんの。えっ!? 担当者が盲腸で入院? 嘘でしょ……」
奈美江の電話の相手はこのキャンペーンサイトを制作した外注、要するに下請け会社だ。どうも今あちらでは非常事態が起こっているようで、すぐに問題を解決するのは難しそうだ。
「とにかく御社のシステムなんで、どうにか対処してください」
奈美江は受話器を叩きつけるように置いて、深いため息をついた。
こんな時になんと声をかけていいか分からない。うっかり地雷を踏んでとばっちりをくわないよう、基季は押し黙っていた。
「寺内ぃ―、しらかば製菓さんのキャンペーン、今日だったよな?」
「はい、正午スタートです」
「その確認作業、阿倍野くんにも手伝わせて」
「はい、了解です」
「あと、さっきの弓削さんの話、聞いていたよな? 社長室に睨まれたら、こっちまで迷惑するんだからな」
グループ長はちくりと針で刺すような言い方をした。
「分かってます」
奈美江は神妙な顔をしている。
さっき注意された対象に奈美江も含まれていたのか、どうりで、と思った。
「阿倍野くん、今日は昼休みちょっと遅くなっちゃうけどいい?」
だが奈美江がこちらを向いた時には、もちろん何も気づいていないふりをした。
しらかば製菓の『しらかば』は木の枝の形をしたホワイトチョコレート。昭和の時代からある菓子の定番商品だ。基季も小さい頃に食べた覚えがある。
今回のキャンペーンはその『しらかば』にQRコードのついたシールが貼ってあり、購入した客が携帯で読み込むとその場で景品の当選結果が表示されるという、よくある懸賞企画だ。
キャンペーン開始時刻の十二時を回り、奈美江は本番URLの画面が応募可能な状態になったことを確認し、「よし、特に問題なさそうね」と呟いた。
「阿倍野くんは、このQRコードでテスト応募してみてくれる? 私はクライアントに連絡するから」
「はい」
基季は奈美江からテスト用のQRコードを受け取り、言われた通り作業に取りかかる。
お!?
いきなり当たりが出た。
派手なアニメーションが流れ、テストだと分かっているのに少しテンションが上がる。
よし、もう一回。
あれ、また当たり? 別のQRコードを読み込む。
「どう? 問題ないでしょ?」
電話を終えた奈美江が声をかけてきた時には、基季はすでに十回の当たりを引いていた。ハズレはゼロ、明らかにおかしい。
「これ何度やっても当たりしか出ないんですけど……」
「そんなはずは……。ちょっと貸して」
奈美江は急いで自分の携帯でテストした。
「なんで? 昨日までテストサーバーでは問題なかったのに」
やはり結果は同じだったようで、奈美江は口を歪ませ即座に電話をかけた。
「先日御社から納品いただいたキャンペーンのサイト、バグが出てるんですけど……。ええ、そうです。しらかば製菓さんの。えっ!? 担当者が盲腸で入院? 嘘でしょ……」
奈美江の電話の相手はこのキャンペーンサイトを制作した外注、要するに下請け会社だ。どうも今あちらでは非常事態が起こっているようで、すぐに問題を解決するのは難しそうだ。
「とにかく御社のシステムなんで、どうにか対処してください」
奈美江は受話器を叩きつけるように置いて、深いため息をついた。
こんな時になんと声をかけていいか分からない。うっかり地雷を踏んでとばっちりをくわないよう、基季は押し黙っていた。
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