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第三章 最悪の再会
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しばらくしてインターホンが鳴ったので、みさをが立ち上がろうとすると、
「いやっほー! ピザが来た」
テレビの前で寝転んでいたキキが飛び起きて、先にオートロックを解除してしまう。
「ちょっと勝手に出ないでよ」
家主の威厳を保とうと注意したが、キキは聞く耳を持たない。玄関の呼び出し音が鳴ると、犬のように素早く玄関に走って行った。
「だから……」
みさをも後を追ったが、すでに赤い帽子をかぶった配達員は「ありゃりゃしたー」と聞き取れない言葉を発して帰っていくところだった。
キキが顔の二倍もありそうな大きい箱を開くと、部屋中にチーズと加工肉の脂が温まった強烈な臭いが充満した。
「うわっ、馬鹿ウマー」
一口かじったキキが、まるでCMのように大仰な反応を見せた。
「みさをさんも食べてみなよ。このマッシュルームとアンチョビのやつ、めっちゃ美味いから」
キキにしつこく勧められ、仕方なく口に運んだ。
あれ?
強い塩気と辛みが食欲のスイッチを入れ、後からたくさんの具材の旨味が複雑に絡まって口の中に広がっていく。
気づくと「本当だ。美味しい」と呟いていた。
宅配のピザなんて食べるのは何年ぶりだろう、女の一人暮らしではなかなか頼まないものだ。
「やっぱり食事は一人より二人の方が断然旨いよね」
白い歯を見せて笑うキキに、うっかり笑顔を返してしまった。
いかん、いかん。ピザごときで気を許しては。
それからピザの美味しさとストレスの相乗効果で、みさをはビールをしこたま飲んでしまった。
「いやっほー! ピザが来た」
テレビの前で寝転んでいたキキが飛び起きて、先にオートロックを解除してしまう。
「ちょっと勝手に出ないでよ」
家主の威厳を保とうと注意したが、キキは聞く耳を持たない。玄関の呼び出し音が鳴ると、犬のように素早く玄関に走って行った。
「だから……」
みさをも後を追ったが、すでに赤い帽子をかぶった配達員は「ありゃりゃしたー」と聞き取れない言葉を発して帰っていくところだった。
キキが顔の二倍もありそうな大きい箱を開くと、部屋中にチーズと加工肉の脂が温まった強烈な臭いが充満した。
「うわっ、馬鹿ウマー」
一口かじったキキが、まるでCMのように大仰な反応を見せた。
「みさをさんも食べてみなよ。このマッシュルームとアンチョビのやつ、めっちゃ美味いから」
キキにしつこく勧められ、仕方なく口に運んだ。
あれ?
強い塩気と辛みが食欲のスイッチを入れ、後からたくさんの具材の旨味が複雑に絡まって口の中に広がっていく。
気づくと「本当だ。美味しい」と呟いていた。
宅配のピザなんて食べるのは何年ぶりだろう、女の一人暮らしではなかなか頼まないものだ。
「やっぱり食事は一人より二人の方が断然旨いよね」
白い歯を見せて笑うキキに、うっかり笑顔を返してしまった。
いかん、いかん。ピザごときで気を許しては。
それからピザの美味しさとストレスの相乗効果で、みさをはビールをしこたま飲んでしまった。
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