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第三章 最悪の再会
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しおりを挟む息せき切ってビルのエレベーターホールに駆け込み、飛びかかるように上矢印ボタンを押す。
すると一旦閉じかけていた扉が、みさをのせいで再び開いてしまった。たくさんの視線が一斉にみさをに注がれる。バツが悪く「すいません」と謝りながら乗り込むと、目の前に今一番会いたくない男、弓削が立っていた。
「おはようございます」
無視するわけにもいかず小声で挨拶する。
「今来たんですか? 珍しいですね遅刻なんて」
あいかわらず弓削の言葉には温度が感じられない。
「ええ、まぁ」
みさをは点灯する表示板を見るふりをして視線をそらせた。
「萩野さん、ちょっと」
弓削は十三階でエレベーターを降りると、みさをの肘をつつき廊下の隅に連れて行った。
「そのシャツ……」
また身だしなみを注意するつもりなのだろうか。勘弁してほしい。学校の風紀指導の先生に捕まったような気分になる。
弓削は何かを確認するようじっと見つめ、「男物ですね?」と言った。
「えっ!?」
慌てて自分の服を確認する。何の変哲もない白い綿のシャツだが、言われてみるとボタンの位置が逆だし、サイズも大きい。特に胸周りなどブカブカだ。だから朝着るのに手間取ったのか。
キキめ、いつの間にクローゼットに服を……。
今朝はどたばたしていて、よく確認もせず一番手前にあった服を手に取ったのだが、それがキキのシャツだったようだ。
「あーこれ、そうなんですよ。男物なんですけど、デザインが気に入ってて」
苦しい言い訳だ。こんなシンプルな服にデザインだなんて。
「そうですか」
「じゃ、私、急ぐんで」
長く話しているとボロが出そうなので、みさをは早々に退散しようとした。
「萩野さん」
だが数歩進んだところで弓削に呼び止められる。
「はい?」
「何か困ったことがあったら相談してくださいね」
弓削は全てを見透かしたような目で言った。
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