借りてきたカレ

しじましろ

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第七章 きょうだいごっこ

(2)

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「まあ良かったんじゃない? 実は心配してたんだよね。このままキキくんと仲良く暮らしていたら、みさを間違いなく婚期逃してたでしょ」

「どうして?」

「だって若い男の子と同居しながら婚活なんて無理よ。付き合っても相手を家に呼べないし、バレたら何もないって言っても絶対信じてもらえないよ」

「そうかな」

 確かにみさを自身もキキがいる間は、婚活のことをすっかり忘れていた。

 毎日顔が見られて話をする人がいるだけで、心の隙間が埋まり満足してしまっていたのかもしれない。

「この際、本気で結婚相手探したら? 会社に誰かいないの?」

 なぜか弓削の顔が頭に浮かんで、慌てて打ち消した。

「あれ。今、誰かのこと考えたでしょ?」

 優希はみさをの一瞬の動揺を見逃さなかった。

「ううん」

 みさをは首を振って否定したが、優希は話題を変えようとはしない。

「その人いくつ?」

「たしか三十……だったかな」

「一つ下か。ちょうどいいじゃない。その人にしなよ」

 優希は愉しそうに手を打った。

「ないない。むしろ苦手な人だから」

 自分の気持ちをごまかしているわけではなく、弓削に恋愛感情はない、それだけは絶対だ。

「みさを、キキくんと暮らし始めてから人間らしくなったっていうか、表情が柔らかくなったから、きっと他の人と恋愛してもうまくいくと思うよ」

 それって前は人間らしくなかったってこと? 褒めてくれているんだろうけど、言い回しがひっかかった。まぁ、ずっとパソコンに向かって作業していると、自分でも機械マシンと同化していると思うことはあるけど。


 優希は「明日早いから」と暗くなる前に帰って行った。

「よし、掃除でもするか」

 優希と話したことで気持ちが軽くなり、少しやる気が出てきた。友達とはありがたいものだ。

 手始めにソファに被さっていたブランケットを畳もうと持ち上げたら、何かが落ちてカランと音をたてた。

「ん?」

 顔写真の貼ってあるプラスチック製のカード。それはキキの大学の学生証だった。裏面には住所も書いてある。

 おいおい、こんな大事なもの忘れていくか?

 みさをは頭の中でツッコミをいれた。
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