堅物上司の不埒な激愛

結城由真《ガジュマル》

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24 課長視点

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 資料を全て確認したところによると、二人が参加するのは取引先の企業が開催している、若手向けのセミナーらしいことがわかった。
 仕事熱心な姿勢は尊敬するが、やはり同席する相手が水野であることに懸念を抱く。
 望月さんは人が良いから、帰りに食事を誘われたら断れない。
 まして昨夜だって俺が断っていたら水野を誘おうとしていたくらいだし。
 もしも酒を飲んで同じ展開になったとしたら。
 目を潤ませて水野の腕を掴むしおらしい望月さんを想像し、嫉妬で狂いそうだ。

 居ても立ってもいられずに身支度を整え家を出た。
 すぐにセミナー会場へ向かいたいところだが、予約でいっぱいでそれも断念する。
 冷静さを取り戻す為にも、とある場所に寄ることに。
 俺の望月さんへの気持ちが本気であることを証明する為にも、どうしても手に入れたいものがある。

 数時間、思っていたよりも苦戦しながら吟味して彼女への贈り物を購入すると、今度こそ都内の会場へ。
 ビルのエントランスで待つこと更に一時間。
 セミナーを終えたと思われる若いビジネスマン達がちらほらとエレベーターから降りてくる。

 望月さんを見逃さないようにくまなく凝視している俺に、とんだ邪魔者が現れた。

「……鎌田さん?」

 前部署の萩原。まさかよりによって彼女もセミナーに参加していたとは。

「びっくりしました。こんなところでどうされたんですか? セミナー……じゃないですよね。鎌田さんが参加するには初心者向けすぎますし


「いえ。……ちょっと人を待ってまして」

 今邪魔されるわけにはいかない。
 望月さんのことが気になってエレベーターの方ばかり目を向ける俺に、萩原は察したように言った。

「もしかして望月さんですか?」

 最早隠している余裕も理由もなく、「そうです」と率直に答える。
 萩原は苦笑し、少々俺を憐れむような眼差しで言った。

「余計なお世話かもしれませんが、望月さんは水野さんと一緒に飲みに行くみたいですよ。さっきたまたま聞こえちゃった」

 やはり嫌な予感は的中した。
 焦燥感が燻り、落ち着いてはいられない。

「私達も飲みませんか? この近くに良いお店あるんですよ」

「遠慮します」

「そんなこと言わずに」

 やたら距離感が近い萩原に辟易してるうちに、エレベーターから目を逸らしてしまったのが失態だ。

────「モッチーさん、待ってよ」

 フランクな水野の声がしてギクリと振り返ると、反対側にあるもう一つの自動ドアから去って行く望月さんの後ろ姿を発見した。
 そのあとを追いかける水野。

「待ってください、鎌田さん」

 自分でも困惑するほどの嫉妬が燃えたぎり、萩原の制止も無視して二人の後を追った。
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