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萩原さんはどこか嬉しそうに口角を上げた。
「変身した望月さんに何人落ちるかって、山本さんと二人で賭けてるって。悪趣味ですよね。オカンなんて言って相手を油断させて、一番男好きじゃないですか」
「そんなことしてません!」
即座に否定するも、水野さんは青ざめて私を見つめている。
課長も何も言わず、凍りついたような空気が流れた。
「ね? 鎌田さん、わかったでしょ。水野さんも。騙されないでください」
「違うんです、課長……」
確かに少し強引に誘ってしまったし、女を武器にしたことも否めない。
だけどそれはたった一人課長に対してだけで、振り向いてもらいたいのも課長だけだ。
こんな状況、遊んでいると思われても仕方がないことはわかってる。
課長はいつものように無表情で、どんな感情なのかも読み取れない。
「課長……」
チクリと胸が痛んだ瞬間、課長は今までみたことのないような厳しい眼差しに変わった。
まるで見る者を全て凍らしてしまうような迫力にゾクッと鳥肌が立つ。
そしてその視線の矛先は、萩原さんに向かった。
「根拠のない噂を言いふらすのはやめてください。望月さんへの侮辱行為ですよ」
あまりの冷ややかな眼差しに、さすがの萩原さんも黙り込む。
「……望月さん」
課長の視線が私へと移ると、射抜くような瞳で言った。
「あなたがどんな姿であっても、僕に特別な感情がないとしても、僕の気持ちは変わりません。望月さんを愛してます」
「愛!?」
私が言う前に水野さんが驚愕したように復唱した。
私もまだ何が起きているかわからなくて、放心状態で立ち尽くす。
「誰よりも心優しくて、人を安心させてくれるような温かさを持つあなたに惹かれました」
「課長……」
表情は硬いけれど、課長らしい誠実さが滲み出ている言葉に胸が震えて、我慢できずに涙が溢れた。
その言葉、そっくりそのまま返したい。
愛してるって……なんて真っ直ぐな声なんだろう。
「望月さん、僕と結婚を前提に交際してください」
おもむろに取り出した小さなベルベットの小箱を開き、私に差し出す課長。
今度こそ心臓が大きく揺れて止まりそうになり、倒れる寸前だった。
「激重……」
「激重……」
水野さんと萩原さんは美しいハーモニーを奏でる。
尋常じゃないほど身体が震えて、立っていられない。
早く返事をしたいのに、声が出ない。
だけど課長、結婚を前提に……だなんて、あまりにも展開が早すぎて。
「あ……私……」
舞い上がり口ごもる私に痺れを切らしたのか、課長は突然私の手を握ると歩き出す。
「か、課長っ!?」
繋いだ彼の手から汗びっしょりなのが伝わって、胸がいっぱいになり連れられるがまま歩みを進めていくのだった。
「変身した望月さんに何人落ちるかって、山本さんと二人で賭けてるって。悪趣味ですよね。オカンなんて言って相手を油断させて、一番男好きじゃないですか」
「そんなことしてません!」
即座に否定するも、水野さんは青ざめて私を見つめている。
課長も何も言わず、凍りついたような空気が流れた。
「ね? 鎌田さん、わかったでしょ。水野さんも。騙されないでください」
「違うんです、課長……」
確かに少し強引に誘ってしまったし、女を武器にしたことも否めない。
だけどそれはたった一人課長に対してだけで、振り向いてもらいたいのも課長だけだ。
こんな状況、遊んでいると思われても仕方がないことはわかってる。
課長はいつものように無表情で、どんな感情なのかも読み取れない。
「課長……」
チクリと胸が痛んだ瞬間、課長は今までみたことのないような厳しい眼差しに変わった。
まるで見る者を全て凍らしてしまうような迫力にゾクッと鳥肌が立つ。
そしてその視線の矛先は、萩原さんに向かった。
「根拠のない噂を言いふらすのはやめてください。望月さんへの侮辱行為ですよ」
あまりの冷ややかな眼差しに、さすがの萩原さんも黙り込む。
「……望月さん」
課長の視線が私へと移ると、射抜くような瞳で言った。
「あなたがどんな姿であっても、僕に特別な感情がないとしても、僕の気持ちは変わりません。望月さんを愛してます」
「愛!?」
私が言う前に水野さんが驚愕したように復唱した。
私もまだ何が起きているかわからなくて、放心状態で立ち尽くす。
「誰よりも心優しくて、人を安心させてくれるような温かさを持つあなたに惹かれました」
「課長……」
表情は硬いけれど、課長らしい誠実さが滲み出ている言葉に胸が震えて、我慢できずに涙が溢れた。
その言葉、そっくりそのまま返したい。
愛してるって……なんて真っ直ぐな声なんだろう。
「望月さん、僕と結婚を前提に交際してください」
おもむろに取り出した小さなベルベットの小箱を開き、私に差し出す課長。
今度こそ心臓が大きく揺れて止まりそうになり、倒れる寸前だった。
「激重……」
「激重……」
水野さんと萩原さんは美しいハーモニーを奏でる。
尋常じゃないほど身体が震えて、立っていられない。
早く返事をしたいのに、声が出ない。
だけど課長、結婚を前提に……だなんて、あまりにも展開が早すぎて。
「あ……私……」
舞い上がり口ごもる私に痺れを切らしたのか、課長は突然私の手を握ると歩き出す。
「か、課長っ!?」
繋いだ彼の手から汗びっしょりなのが伝わって、胸がいっぱいになり連れられるがまま歩みを進めていくのだった。
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