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しおりを挟む「せ、ん、ぱ、い。幸せそうですねぇ」
課長とお付き合いを始めて一ヶ月ほど。
山ちゃんはとても喜んでくれて、こうして冷やかされることも増えた。
「もっと惚気ていいんですよぉー! ラブラブ話聞きたいですぅー」
照れてしまってしょうがないけど、誰よりも応援してくれた山ちゃんだから、自分のことのように喜んでくれるのは嬉しい。
退勤後、オフィスから駅へ向かう間、山ちゃんは目を輝かせて質問攻めをする。
「彼氏の課長ってどんな感じですか!?」
「そ、それはっ……優しくて……」
優しくてめちゃくちゃに甘やかしてくれる。
だけど元来堅物で真面目だから、表面的にはクリーンで清い交際だ。
……表面的には。
「夜は豹変したりして?」
「いやいやいや!」
ボンッと顔から火が出そうになる私を山ちゃんが笑う。
「あんまり虐めるとかわいそうなんでこのくらいにしときますね! 先輩、このあと飲みに…………は、また今度ゆっくり」
山ちゃんは急に何かを察して私に手を振り先に駅へと向かってしまった。
彼女が会釈した方向に振り向くと、大嗣さんの姿が。
「……お邪魔してすみません。僕も仕事切り上げられたもので……」
「そ、そうだったんですね!
お疲れさまです! 早く上がれてよかった」
「……かなめさんと一緒にご飯食べたくて」
はにかんで真っ赤になりながらそう呟く大嗣さんが可愛くて、ぎゅっと胸を掴まれる。
「わ、私もです……」
くすぐったくて、悶えそうになりながらキョロキョロと周りに知り合いがいないか確認し、どちらからともなく手を繋いだ。
「今日は僕の家に泊まりませんか。昨日作ったビーフストロガノフが成功したので、かなめさんに食べてもらいたくて」
「いいんですか? 嬉しい!」
私達は週末、お互いの自宅に行き来して過ごすことが増えた。
特に大嗣さんは学生時代レストランでアルバイトをしていたらしく料理の腕前が一流で、美味しいご飯をたくさん振る舞ってくれる。
それがこの上ない幸福でもあり、実は今、ちょっと心配でもあった。
……幸せすぎて、徐々にリバウンド傾向にある。
体重はまだ1、2㎏しか戻ってないけれど、このまま調子に乗っていたら非常にまずい。
「タクシーにしましょうか」
そんな大嗣さんの提案に焦る。
「ご、ごめんなさいっ。私、運動の為に一駅歩いてから電車で帰ります! 大嗣さんは先に家でゆっくりしていてください!」
土日も二人でイチャイチャすることが多く、言い訳だけど運動する時間があまりない。
こっそりストレッチしていると、すぐに襲われてしまうし。
「………………」
何か考え込んでいる様子の大嗣さん。
取り繕って微笑み一度解散しようとした瞬間、
「大嗣?」
突然見知らぬ男性に声をかけられて私達は立ち止まった。
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