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会議
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「すまん。定時ダッシュできなかった。笑」
すごく疲れた顔の良樹さんが、寮の食堂で待つ俺と玄弥の元にやって来た。
「お疲れ様です。お疲れのところ申し訳ないですが、早速会議を始めましょう!」
少しでも早く話を進めたい玄弥が疲れている良樹さんに何も気を遣わず話し始める。
「まず、お二人は『アビルド多層構造説』についてどうお考えですか?」
「多層構造の意味がわからないんだよなぁ。アビルドの世界では地下空間に世界が広がっているってことか?笑」
良樹さんは、穴を掘るしぐさをしながら冗談っぽく言った。
「いや、あながち間違いじゃないかも知れませんよ。現実世界でも七百年前には、地底人の存在が都市伝説として流れていたそうですから。結局、その地底人の存在ってのは七百年経った今でも完全に否定されたわけではないので、地下空間というのは十分にあり得る話だと思います。」
と、目を輝かせながら話す玄弥。
「翔平はどう思う?」
キラキラした目でこっちを見つめてきた。
「んー、最初多層構造って聞いたときは、俺も地下空間を想定したよ。けど、過去に亡くなったCEOのジョセフさんも、最近ニュースで話題のゲーム会社に勤務していた男性も、死因は脳の深刻なダメージなんだよな。アビルドで地下空間に行ったら、現実世界で脳がダメージを受けるという因果関係がイマイチしっくり来ないんだよな。」
俺は、そのまま続けた。
「『多層構造』『脳への深刻なダメージ』『仮想現実世界』‥‥‥。特に根拠は無いけど、ずっと前から、1つ気になってることがあって‥‥‥。」
「何だよ。この際、疑問に思うことは全部共有しようぜ。」
良樹さんが優しげな顔をして言った。
「では‥‥‥‥‥。僕たちは現実世界で専用のヘルメット、通称『アビルドリンカー』を装着することで、アビルドに意識ごと入り込むことができます。このとき、アビルドでの僕たちは、まるで現実世界と変わらない生活を送ることができ、ボーッとしていると自分がアビルドにいるのか現実世界にいるのか区別がつかないくらい精密に作られた空間です。アビルドは現実世界と何ら変わらない構造、つまり、現実世界に存在するものはアビルドに存在しても何ら不思議ではないと思うんです。」
「ん?つまり、どういうこと?」
玄弥が首をかしげている。その隣で、良樹さんがハッと何か気づく。
「そうか!アビルドリンカーだ!」
「そうです。僕の疑問点はそこなんです。アビルドが現実世界を模倣して作られた空間であるのなら、アビルド内にも現実世界同様、アビルドリンカーが存在してもおかしくはないと思います。そして、アビルド内でアビルドリンカーを使った場合、どうなるのか‥‥‥‥‥。」
ようやく、理解した玄弥が身を乗り出してくる。
「確かに、それなら下の階層に行けても不思議じゃない!ただ‥‥‥。」
玄弥が言葉を濁す。
「そう。もし、それが可能なのであれば、ルーバッチ社が気づいているはず。しかし、実際に当時のCEOであったジョセフ氏は、そのことに亡くなる直前に気づいたようだった。つまり、ルーバッチ社が関係しているのは、表層のアビルドのみ。下の階層は別の何者かによって作られた可能性が高い。さらに、アビルドリンカーを使用する方法で下の階層に行けるのであれば、他の誰かが気づいても良いはず。しかし、ネット上でもそんな噂は目にしたことがないから、方法自体が間違っているか、もしくは何らかのセキュリティでガードされていると考えた方が良いかもしれない。」
俺の言葉を聞き、少し考えたあとで、玄弥が口を開いた。
「悩んでても何もわからないんで、とりあえず、今からアビルドに行きましょう!アビルドに行ったほうが時間を有効活用できますからね!」
俺たちは各自の部屋に戻り、それぞれアビルドへと向かった。
すごく疲れた顔の良樹さんが、寮の食堂で待つ俺と玄弥の元にやって来た。
「お疲れ様です。お疲れのところ申し訳ないですが、早速会議を始めましょう!」
少しでも早く話を進めたい玄弥が疲れている良樹さんに何も気を遣わず話し始める。
「まず、お二人は『アビルド多層構造説』についてどうお考えですか?」
「多層構造の意味がわからないんだよなぁ。アビルドの世界では地下空間に世界が広がっているってことか?笑」
良樹さんは、穴を掘るしぐさをしながら冗談っぽく言った。
「いや、あながち間違いじゃないかも知れませんよ。現実世界でも七百年前には、地底人の存在が都市伝説として流れていたそうですから。結局、その地底人の存在ってのは七百年経った今でも完全に否定されたわけではないので、地下空間というのは十分にあり得る話だと思います。」
と、目を輝かせながら話す玄弥。
「翔平はどう思う?」
キラキラした目でこっちを見つめてきた。
「んー、最初多層構造って聞いたときは、俺も地下空間を想定したよ。けど、過去に亡くなったCEOのジョセフさんも、最近ニュースで話題のゲーム会社に勤務していた男性も、死因は脳の深刻なダメージなんだよな。アビルドで地下空間に行ったら、現実世界で脳がダメージを受けるという因果関係がイマイチしっくり来ないんだよな。」
俺は、そのまま続けた。
「『多層構造』『脳への深刻なダメージ』『仮想現実世界』‥‥‥。特に根拠は無いけど、ずっと前から、1つ気になってることがあって‥‥‥。」
「何だよ。この際、疑問に思うことは全部共有しようぜ。」
良樹さんが優しげな顔をして言った。
「では‥‥‥‥‥。僕たちは現実世界で専用のヘルメット、通称『アビルドリンカー』を装着することで、アビルドに意識ごと入り込むことができます。このとき、アビルドでの僕たちは、まるで現実世界と変わらない生活を送ることができ、ボーッとしていると自分がアビルドにいるのか現実世界にいるのか区別がつかないくらい精密に作られた空間です。アビルドは現実世界と何ら変わらない構造、つまり、現実世界に存在するものはアビルドに存在しても何ら不思議ではないと思うんです。」
「ん?つまり、どういうこと?」
玄弥が首をかしげている。その隣で、良樹さんがハッと何か気づく。
「そうか!アビルドリンカーだ!」
「そうです。僕の疑問点はそこなんです。アビルドが現実世界を模倣して作られた空間であるのなら、アビルド内にも現実世界同様、アビルドリンカーが存在してもおかしくはないと思います。そして、アビルド内でアビルドリンカーを使った場合、どうなるのか‥‥‥‥‥。」
ようやく、理解した玄弥が身を乗り出してくる。
「確かに、それなら下の階層に行けても不思議じゃない!ただ‥‥‥。」
玄弥が言葉を濁す。
「そう。もし、それが可能なのであれば、ルーバッチ社が気づいているはず。しかし、実際に当時のCEOであったジョセフ氏は、そのことに亡くなる直前に気づいたようだった。つまり、ルーバッチ社が関係しているのは、表層のアビルドのみ。下の階層は別の何者かによって作られた可能性が高い。さらに、アビルドリンカーを使用する方法で下の階層に行けるのであれば、他の誰かが気づいても良いはず。しかし、ネット上でもそんな噂は目にしたことがないから、方法自体が間違っているか、もしくは何らかのセキュリティでガードされていると考えた方が良いかもしれない。」
俺の言葉を聞き、少し考えたあとで、玄弥が口を開いた。
「悩んでても何もわからないんで、とりあえず、今からアビルドに行きましょう!アビルドに行ったほうが時間を有効活用できますからね!」
俺たちは各自の部屋に戻り、それぞれアビルドへと向かった。
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