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第三章:堕ちた月、騎士たちの誓約
第21話・穏やかな日々/迫り来る魔の気配
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ルナフィエラが騎士たちと共に暮らし始めてから、二週間が経った。
フィンの治癒魔法のおかげで、以前のように体調を崩すことは少なくなり、彼女の顔色も少しずつ良くなってきている。
古城での生活も落ち着き、5人の間には自然と穏やかな空気が流れるようになっていた。
ルナフィエラの日常に変化があった。
相変わらず本を読んで過ごす時間が多いが、最近は森へ散歩に行くことが習慣になっていた。
最初は体力の問題もあり短時間の散歩だったが、徐々に歩く時間も伸びてきている。
「外に出るのが好きになったんだな」
シグが何気なく言った。
「……うん。気分転換にもなるし、風が気持ちいい」
ルナフィエラは小さく微笑んだ。
この100年、ルナフィエラにとって外の世界は怖いものだった。
何かに狙われるのではないか、誰かに見つかるのではないか——そう考え、ひっそりと城の中で生きてきた。
しかし、今は 彼らが傍にいてくれる。
外へ出ることの恐怖よりも、森の緑やそよ風の心地よさの方が勝るようになっていた。
騎士たちの溺愛ぶりにも変化が——
ヴィクトル はいつもルナフィエラのそばを離れず、主として忠誠を誓いながらも細やかな気配りを欠かさない。
紅茶を淹れてくれたり、椅子を引いてくれたりと、何かと世話を焼く姿は 執事のよう だ。
「ルナ様、足元にお気をつけください」
散歩の際には必ず彼が隣に立ち、少しの段差でも手を差し伸べてくる。
ユリウス はからかうような態度を取りながらも、ルナフィエラのことをよく観察している。
「歩くのが随分と上手くなったね。……でも、少し頑張りすぎじゃない?」
「そんなことないわ」
「本当かな?」
ユリウスは 「君は嘘が下手だね」 と笑いながら、無理をしないよう釘を刺してくる。
シグ は無骨ながらも、不器用にルナフィエラを甘やかしていた。
「……お前、俺をもっと頼れ」
そう言いながら、ルナが疲れた素振りを見せると、何も言わずに背負ってしまう。
「ちょ、ちょっと!? 自分で歩けるわ!」
「歩く必要、ない」
「あるわよ!」
「……ない」
シグの言葉に有無を言わさぬ迫力があり、ルナフィエラは何も言えなくなる。
フィン はいつもルナフィエラの体調を最優先に考え、少しでも不調があればすぐに治癒魔法をかけてくれる。
「無理しないでね、ルナ」
「無理してないよ」
「じゃあ、僕の目を見て言って」
「……うぅ」
ルナフィエラが言葉に詰まると、フィンは優しく微笑みながら治癒魔法を施す。
そんな彼らとの穏やかな日々が続いていた。
しかし、ルナは 最近、どこか落ち着かない感覚 を覚えていた。
——何かに 見られている ような気がする。
——誰かの 視線を感じる。
しかし、周囲を見回しても、そこには何もない。
「どうした、ルナ?」
シグが怪訝そうに尋ねる。
「……ううん、何でもない」
言葉にはしなかったが、その 微かな違和感は日を追うごとに強くなっていた。
——————
ルナフィエラの違和感は、日に日に強まっていた。
まるで、何かが近づいてきているような……。
自分を “狙う” 何かが。
「……ルナ様?」
ヴィクトルが静かに呼びかける。
ルナはハッとして顔を上げた。
「……ごめんなさい、少し考え事をしてたの」
「顔色が優れません。戻られますか?」
「大丈夫よ」
ヴィクトルは納得していない様子だったが、それ以上は何も言わなかった。
それは、森の散歩から戻る直前のことだった——。
ゴゴゴゴゴ……ッ!
突然、 地面が震えた。
不吉な音が遠くから響いてくる。
「……何の音?」
ルナフィエラが足を止めた瞬間、 森の奥から禍々しい魔力の波動が広がる。
風が逆巻き、森の静寂が一瞬で破られた。
「これは……魔物か?」
シグが目を細め、獣のような気配を感じ取る。
「……ルナ」
ユリウスが表情を引き締める。
「おそらく、お前の魔力に引き寄せられたな」
「……え?」
「紅き月が近づくにつれ、お前の魔力は無意識に漏れ出している。おそらく、それに反応したんだ」
ユリウスの言葉に、ルナフィエラは息をのむ。
彼女自身、魔力を抑えようと努めていたが、それが完全に制御できていたわけではない。
「……ごめんなさい、私のせいで……」
「謝らないでください、ルナ様」
ヴィクトルが静かに言った。
「それよりも、すぐに城へ戻りましょう」
「だけど——」
「——遅い!!」
ガシャアアアッ!!!
突然、木々が弾け飛ぶように裂けた。
風圧とともに、巨大な影が姿を現す。
ルナフィエラは、 本能的な恐怖 を感じた。
漆黒の身体に、赤い瞳を持つ魔獣。
その体躯は人間の何倍も大きく、牙がギラリと光る。
魔力が異常に高く、ただの魔獣とは違う—— 「上位種」 の魔物だ。
「来たか……!」
シグが斧を構え、ユリウスは素早く魔法を展開する。
「フィン、ルナを頼む!」
「……わかった!」
フィンはすぐさまルナフィエラの腕を取り、後方へと下がる。
「ルナ、今は僕たちに任せて!」
ルナフィエラは唇を噛んだ。
自分が何もできないのが悔しい—— けれど、彼らの邪魔はしたくなかった。
「……お願い、気をつけて!」
ヴィクトルがルナフィエラを見つめ、静かに頷く。
「——ルナ様を、必ずお守りします」
そして、戦いが始まった。
「シグ、前衛を頼む!」
ユリウスが詠唱を開始しながら叫ぶ。
「言われなくても!」
シグが巨大な斧を振り上げ、魔獣の爪を受け止める。
ガキィィィン!!!
金属と爪が激しくぶつかり合い、火花が散る。
その隙に、ヴィクトルが魔力を纏った細剣を 一閃 させた。
「……チッ、硬ぇな」
シグが舌打ちする。
「こいつ……ただの魔物じゃない」
ユリウスの紫紺の瞳が鋭く光る。
「魔法耐性が異常に高い」
「つまり、力でねじ伏せるしかねぇってことか?」
シグが不敵に笑う。
「いや、俺に考えがある」
ユリウスが片手を掲げると、 地面に魔法陣が描かれる。
「シグ、ヴィクトル、奴をこの範囲に押し込めろ」
「……おもしれぇ!」
シグが笑いながら魔獣に突撃する。
「やってやろうじゃねぇか!」
その瞬間——
ユリウスの魔法が発動し、 魔獣が魔法陣に囚われる。
「今だ、ヴィクトル!」
「……了解!」
ヴィクトルは細剣に全魔力を集中させ、魔獣の急所を貫く——!
魔獣の断末魔が響き渡る。
その巨体が ドサリ と音を立てて地面に崩れ落ちた。
「……やった?」
ルナが恐る恐る口を開く。
「……はい」
ヴィクトルが息を整えながら答えた。
「ルナ様、ご無事で何よりです」
ルナフィエラは安堵の息をつく。
しかし—— 彼女の違和感は消えていなかった。
(こんな簡単に終わる……?)
何かが引っかかる。
魔獣の死骸を見つめるルナフィエラに、 ユリウスが小さく呟いた。
「……妙だな」
「何が?」
フィンが首を傾げる。
「いや……こいつの魔力、まだ完全には消えてない気がするんだよ」
その言葉に ルナフィエラの背筋が凍る。
まるで、この戦いがまだ「序章」にすぎないと言われているような気がした——。
フィンの治癒魔法のおかげで、以前のように体調を崩すことは少なくなり、彼女の顔色も少しずつ良くなってきている。
古城での生活も落ち着き、5人の間には自然と穏やかな空気が流れるようになっていた。
ルナフィエラの日常に変化があった。
相変わらず本を読んで過ごす時間が多いが、最近は森へ散歩に行くことが習慣になっていた。
最初は体力の問題もあり短時間の散歩だったが、徐々に歩く時間も伸びてきている。
「外に出るのが好きになったんだな」
シグが何気なく言った。
「……うん。気分転換にもなるし、風が気持ちいい」
ルナフィエラは小さく微笑んだ。
この100年、ルナフィエラにとって外の世界は怖いものだった。
何かに狙われるのではないか、誰かに見つかるのではないか——そう考え、ひっそりと城の中で生きてきた。
しかし、今は 彼らが傍にいてくれる。
外へ出ることの恐怖よりも、森の緑やそよ風の心地よさの方が勝るようになっていた。
騎士たちの溺愛ぶりにも変化が——
ヴィクトル はいつもルナフィエラのそばを離れず、主として忠誠を誓いながらも細やかな気配りを欠かさない。
紅茶を淹れてくれたり、椅子を引いてくれたりと、何かと世話を焼く姿は 執事のよう だ。
「ルナ様、足元にお気をつけください」
散歩の際には必ず彼が隣に立ち、少しの段差でも手を差し伸べてくる。
ユリウス はからかうような態度を取りながらも、ルナフィエラのことをよく観察している。
「歩くのが随分と上手くなったね。……でも、少し頑張りすぎじゃない?」
「そんなことないわ」
「本当かな?」
ユリウスは 「君は嘘が下手だね」 と笑いながら、無理をしないよう釘を刺してくる。
シグ は無骨ながらも、不器用にルナフィエラを甘やかしていた。
「……お前、俺をもっと頼れ」
そう言いながら、ルナが疲れた素振りを見せると、何も言わずに背負ってしまう。
「ちょ、ちょっと!? 自分で歩けるわ!」
「歩く必要、ない」
「あるわよ!」
「……ない」
シグの言葉に有無を言わさぬ迫力があり、ルナフィエラは何も言えなくなる。
フィン はいつもルナフィエラの体調を最優先に考え、少しでも不調があればすぐに治癒魔法をかけてくれる。
「無理しないでね、ルナ」
「無理してないよ」
「じゃあ、僕の目を見て言って」
「……うぅ」
ルナフィエラが言葉に詰まると、フィンは優しく微笑みながら治癒魔法を施す。
そんな彼らとの穏やかな日々が続いていた。
しかし、ルナは 最近、どこか落ち着かない感覚 を覚えていた。
——何かに 見られている ような気がする。
——誰かの 視線を感じる。
しかし、周囲を見回しても、そこには何もない。
「どうした、ルナ?」
シグが怪訝そうに尋ねる。
「……ううん、何でもない」
言葉にはしなかったが、その 微かな違和感は日を追うごとに強くなっていた。
——————
ルナフィエラの違和感は、日に日に強まっていた。
まるで、何かが近づいてきているような……。
自分を “狙う” 何かが。
「……ルナ様?」
ヴィクトルが静かに呼びかける。
ルナはハッとして顔を上げた。
「……ごめんなさい、少し考え事をしてたの」
「顔色が優れません。戻られますか?」
「大丈夫よ」
ヴィクトルは納得していない様子だったが、それ以上は何も言わなかった。
それは、森の散歩から戻る直前のことだった——。
ゴゴゴゴゴ……ッ!
突然、 地面が震えた。
不吉な音が遠くから響いてくる。
「……何の音?」
ルナフィエラが足を止めた瞬間、 森の奥から禍々しい魔力の波動が広がる。
風が逆巻き、森の静寂が一瞬で破られた。
「これは……魔物か?」
シグが目を細め、獣のような気配を感じ取る。
「……ルナ」
ユリウスが表情を引き締める。
「おそらく、お前の魔力に引き寄せられたな」
「……え?」
「紅き月が近づくにつれ、お前の魔力は無意識に漏れ出している。おそらく、それに反応したんだ」
ユリウスの言葉に、ルナフィエラは息をのむ。
彼女自身、魔力を抑えようと努めていたが、それが完全に制御できていたわけではない。
「……ごめんなさい、私のせいで……」
「謝らないでください、ルナ様」
ヴィクトルが静かに言った。
「それよりも、すぐに城へ戻りましょう」
「だけど——」
「——遅い!!」
ガシャアアアッ!!!
突然、木々が弾け飛ぶように裂けた。
風圧とともに、巨大な影が姿を現す。
ルナフィエラは、 本能的な恐怖 を感じた。
漆黒の身体に、赤い瞳を持つ魔獣。
その体躯は人間の何倍も大きく、牙がギラリと光る。
魔力が異常に高く、ただの魔獣とは違う—— 「上位種」 の魔物だ。
「来たか……!」
シグが斧を構え、ユリウスは素早く魔法を展開する。
「フィン、ルナを頼む!」
「……わかった!」
フィンはすぐさまルナフィエラの腕を取り、後方へと下がる。
「ルナ、今は僕たちに任せて!」
ルナフィエラは唇を噛んだ。
自分が何もできないのが悔しい—— けれど、彼らの邪魔はしたくなかった。
「……お願い、気をつけて!」
ヴィクトルがルナフィエラを見つめ、静かに頷く。
「——ルナ様を、必ずお守りします」
そして、戦いが始まった。
「シグ、前衛を頼む!」
ユリウスが詠唱を開始しながら叫ぶ。
「言われなくても!」
シグが巨大な斧を振り上げ、魔獣の爪を受け止める。
ガキィィィン!!!
金属と爪が激しくぶつかり合い、火花が散る。
その隙に、ヴィクトルが魔力を纏った細剣を 一閃 させた。
「……チッ、硬ぇな」
シグが舌打ちする。
「こいつ……ただの魔物じゃない」
ユリウスの紫紺の瞳が鋭く光る。
「魔法耐性が異常に高い」
「つまり、力でねじ伏せるしかねぇってことか?」
シグが不敵に笑う。
「いや、俺に考えがある」
ユリウスが片手を掲げると、 地面に魔法陣が描かれる。
「シグ、ヴィクトル、奴をこの範囲に押し込めろ」
「……おもしれぇ!」
シグが笑いながら魔獣に突撃する。
「やってやろうじゃねぇか!」
その瞬間——
ユリウスの魔法が発動し、 魔獣が魔法陣に囚われる。
「今だ、ヴィクトル!」
「……了解!」
ヴィクトルは細剣に全魔力を集中させ、魔獣の急所を貫く——!
魔獣の断末魔が響き渡る。
その巨体が ドサリ と音を立てて地面に崩れ落ちた。
「……やった?」
ルナが恐る恐る口を開く。
「……はい」
ヴィクトルが息を整えながら答えた。
「ルナ様、ご無事で何よりです」
ルナフィエラは安堵の息をつく。
しかし—— 彼女の違和感は消えていなかった。
(こんな簡単に終わる……?)
何かが引っかかる。
魔獣の死骸を見つめるルナフィエラに、 ユリウスが小さく呟いた。
「……妙だな」
「何が?」
フィンが首を傾げる。
「いや……こいつの魔力、まだ完全には消えてない気がするんだよ」
その言葉に ルナフィエラの背筋が凍る。
まるで、この戦いがまだ「序章」にすぎないと言われているような気がした——。
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