【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第三章:堕ちた月、騎士たちの誓約

第22話・立て続けの襲撃

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魔獣を討ち倒し、一時の安堵が広がる。
だが、ユリウスの違和感は的中していた。

翌日、再び魔物の襲撃があった。

ルナフィエラは、 その異変をいち早察知していた。
森の奥から漂う不気味な魔力の気配。
昨日と同じ——いや、それ以上に濃く、強い。

「……また、来る」

ルナフィエラの呟きに、ヴィクトルがすぐに察した。
「ルナ様、城にお戻りください」

「でも……!」

ルナフィエラは悔しそうに拳を握る。

また自分のせいで、皆が戦うことになる。

ユリウスは、静かにルナフィエラの肩に手を置いた。

「お前が前に出たところで、できることはない」

「……っ」

「だったら、大人しく守られていろ」

シグが戦斧を担ぎながら、 いつものように短く言い放つ。

それが彼らなりの優しさだと分かっているから、ルナフィエラは何も言えなかった。

そして、2度目の戦いが幕を開けた——。



「昨日より多いぞ……!」
シグが苦々しく呟く。

森の奥から、無数の魔物たちが押し寄せてくる。
鋭い牙、爛々と光る瞳。
どれも紅き月の影響を受け、異常に魔力を高めた魔物たち だった。

「昨日のやつは、前触れにすぎなかったってことか」
ユリウスが冷静に状況を分析する。

「これ、マズいね……」
フィンも眉をひそめる。

「どういうこと?」
ルナフィエラが不安げに問うと、ユリウスが言った。

「一度、魔物たちはお前の魔力に引き寄せられた……そして、味をしめたんだ」

「味をしめた……?」

「お前の魔力は、奴らにとって最高の餌ってことだよ」

ルナフィエラはゾッとした。

(じゃあ、私は……ずっと魔物を引き寄せ続けるの?)

「とにかく、戦うしかない!」
シグが 真正面から魔物の群れへと突っ込んだ。

ユリウスが魔法を展開し、フィンが後方からサポート。
ヴィクトルは常にルナフィエラを守る位置にいる。

「……っ!」
ルナフィエラは その戦場の中心に立っている自分が、何よりも恐ろしかった。

(また……私のせいで)
(また、皆を危険にさらしている)

恐怖と罪悪感が胸を締めつける。

その戦いは昨日よりも激しく、 長く続いた。
だが、何とか魔物たちを殲滅することができた。

しかし、戦いが終わったあと、 ルナフィエラの表情は沈んでいた。

「……まだ終わってない気がする」

ルナフィエラの呟きは、 その場の誰もが感じていた不安 を代弁していた。


——————

「……また来たか」

シグが忌々しげに呟き、戦斧を肩に担ぐ。

3日連続の魔物の襲撃。
しかし、今日は今までとは違った。

「魔物だけじゃない……」
ヴィクトルが敵の気配の異変 に気づいた。

ユリウスが魔力探知の術式を展開し、目を細める。

「……魔族だ」

「……ッ」
ルナフィエラが息を呑む。

紅き月の夜が近づき、ルナフィエラの魔力がより強く漏れ出している。
それに惹かれたのは、魔物だけではなかった—— 狙う者たちがついに動き出したのだ。

「狙いは……俺たちじゃない」
ユリウスが ルナフィエラを見て言う。

「——ルナ、お前だ」

「……!」

ルナフィエラの背筋が、ぞくりと寒くなった。

(私を、狙ってる……?)

「ルナ様、お下がりください」
ヴィクトルが 彼女の前に立ち、剣を構える。

「俺が斬る」
シグも魔族に向かって前に出た。

「……援護するよ」
ユリウスが魔法を展開し、後方からのサポートに回る。

フィンはルナフィエラの傍を離れず、 治癒魔法の準備を整える。

「……すぐに終わらせるぞ」
ヴィクトルが紅い瞳を光らせ、魔族との戦闘が始まった。



戦闘は激しさを増していた。

魔族は、魔物とは比べ物にならないほど 知性が高く、統率されていた。
彼らは明確にルナフィエラを狙い、攻撃の手を仕掛けてくる。

「くそ……っ、こいつら、しつけぇ……!」

シグが魔族の剣を受け止めながら、 わずかに肩を切られた。

「シグ!!」

ルナが 思わず声をあげる。
すぐにフィンが治癒魔法を唱えようとするも、次の瞬間—— ヴィクトルも負傷した。

「——ッ!」

敵の剣が彼の脇腹をかすめる。
しかし、ヴィクトルは 表情を変えずに剣を振り払った。

(……みんな、傷ついてる……!)

ルナフィエラの胸が焦りで締めつけられた。

(私のせいで……)

(私がいるから、みんなが……!)

「ルナ、動いちゃだめ!」
フィンが叫んだ。

しかし ルナフィエラは動いてしまった。

彼らを守りたかった。

フィンの庇護から離れ、戦場に視線を向けた——その瞬間。



「——やっと隙を見せたな」

不気味な声が響いた。

「……ッ!?」

次の瞬間、ルナフィエラの身体が強く引かれた。

背後から魔族が襲いかかってきたのだ。
彼らは瞬時にルナフィエラを拘束し、口元を覆う。

「——っ!!」

声を上げる間もなく、 強い魔力が意識を刈り取る。

視界がぐらりと歪む。
頭がふわりと浮くような感覚。

(……嘘……こんな……)

(捕まった……?)

「ルナ!!」

ヴィクトルの絶叫が響く。

しかし—— ルナフィエラの意識は、そのまま闇へと沈んでいった。



「……しまっ——」

フィンが 叫びながら駆け寄ろうとした。

だが、その瞬間別の魔族がフィンを襲った。

「邪魔だ——人間風情が!」

「……っ!!」

強烈な一撃を食らい、 フィンの身体が宙を舞う。
魔族の強大な力で後方に吹き飛ばされ、木々を何本も薙ぎ倒す。

フィンの体は、 倒木の間に埋まるようにして動かなくなった。



「さて、お姫様……これからお前には 我らの研究に協力してもらうぞ。」

薄れゆく意識の中、魔族の声だけが聞こえた。

(……誰か……)

(助けて……)

ルナフィエラの心の声は誰にも届かないまま、闇へと消えた——。



「ルナ様……!!」

ヴィクトルが今にも追いかけようとする。

「待て!」

ユリウスが冷静にヴィクトルの肩を掴んだ。

「くそっ……!」

ヴィクトルが拳を握りしめる。

「俺もすぐに行く!」

シグが斧を担ぎ、走り出そうとする。

「その前に……! フィンの無事を確認しないと」

ユリウスが魔族を追跡する術式を発動しながら、後方の倒木を指差した。

「フィン……!!」

シグが素早く駆け寄ると、倒木の中からフィンを引きずり出した。

「……大丈夫か」

「……っ」

フィンは呻きながら、何とか目を開ける。

「ルナ……は……?」

「攫われた」

ヴィクトルが、 悔しそうに低く答えた。

「……そんな……」

フィンは 歯を食いしばる。

「だが、ここで立ち止まるわけにはいかない」

ユリウスが 冷静に言う。

「今すぐ、ルナを取り戻すぞ」

4騎士は、絶望の中、ルナを救うために動き出した。
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