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第83話・責任者の覚悟
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朝。
枕元で鳴るアラームの音が、どこか遠くの世界から聞こえてくるようだった。
止めようと手を伸ばそうとするのに、腕が重くて思うように動かない。
(……ちゃんと寝たはずなのに)
まぶたの裏が、やけに熱い。
頭はぼんやりと霞がかかったようで、意識が覚めきらない。
隣の気配が動いた。
それが崇雅だと気づくまでに、少し時間がかかった。
「……澪。朝だ」
低く優しい声とともに、肩をそっと揺すられる。
「……う、ん……」
うっすらと返事をしたつもりだったが、自分でも何を言ったのかよくわからなかった。
「澪、起きろ。今日は会議も詰まってる」
その言葉でようやく意識が少しずつ浮上し、思考が現実を思い出す。
出勤しなければ。仕事が待っている。
——でも、体がついてこない。
眠気が抜けないどころか、布団に沈む体がどんどん重くなっていく。
まぶたが持ち上がらない。
(やばい……起きなきゃ……)
心は焦っているのに、体は全くついてこない。
寝不足ではない。昨夜はちゃんと崇雅と一緒に寝たはずだ。
それなのに、目覚めがこんなにも最悪なのは、疲れが抜けていないから——
(……限界……近いのかも)
そう思った瞬間、また肩をトン、と優しく叩かれた。
「——澪、無理なら今日は……」
「……だいじょうぶ、です……起きます……」
なんとか絞り出した声に、崇雅は言葉を止める。
そしてそのまま、布団の中から澪の手を取り、そっと引き上げた。
「……シャワーを浴びろ。身体が起きる」
「……うん……」
指先は冷たく、足取りもおぼつかない。
それでも、今日も会社へ行かなければならない。
任された仕事が、自分を待っている——それが、自分に課された“責任”だから。
そう言い聞かせながら、澪は崇雅の背中にそっと寄りかかるようにして、立ち上がった。
熱めのシャワーでようやく目が覚めた澪は、ふらつく足取りのまま洗面所を後にした。
タオルで髪を拭きながらリビングへ戻ると、キッチンにはすでに朝食が用意されていた。
けれど——
「……ごめんなさい、食べられそうに、ないです……」
崇雅が差し出した箸を、そっと押し戻す。
昨夜から胃が重く、湯気の立つ食事を見ただけで、かすかに吐き気が込み上げた。
崇雅は何も言わなかった。
黙って食器を下げ、代わりに白湯を注いだコップを澪の手元に差し出す。
「着替えて、最低限のメイクだけしてこい」
その言葉に頷き、最低限の身支度を整える。
玄関を出ると、マンション前にはすでに崇雅の車が停まっていた。
そして、開いていたのは後部座席のドアだった。
「……今日は、後ろでいい。横になってろ」
逆らう気力はなかった。
澪は頷き、促されるまま後部座席へと身を滑り込ませる。
バックを枕にして横になり、目を閉じる。
通勤時間はわずか10分ほど。
——けれど、その間だけでも体を休めたかった。
「……着いたら、起こす」
運転席から聞こえる声に、澪は小さく返事をした。
会社に到着した時、澪の顔には“いつもの仮面”が戻っていた。
きちんと整えた髪、仕上げたメイク。
誰が見ても“仕事のできる結城澪”そのもの。
けれど、それはあくまで表面だけ。
デスクに着くなり、澪はすぐに今日のタスクを確認し、スケジュールを詰めていく。
メール、社内チャット、会議資料の修正と共有、C社との連絡調整。
(……今日は、何時に帰れるかな)
まだ始まったばかりなのに、すでに体は重かった。
集中力も限界に近い。
けれど、それでも止まれなかった。
プロジェクトの責任者として、果たさなければならない仕事が山ほどあるから。
だからこそ、崇雅が今日、自分にどんな想いを抱いているのか——
そのことに気づく余裕すら、澪にはなかった。
午前の会議が終わり、澪がフロアに戻った直後だった。
「結城。——会議室に来い」
その声は冷静だったが、有無を言わせぬ強さを帯びていた。
周囲の数人がちらりと視線を向けるが、崇雅は構わず歩き出す。
澪は思わず小さく息を飲み、後を追った。
会議室の扉が閉まる。
その瞬間、静寂と緊張が一気に満ちた。
「……状況はわかってるな?」
背を向けたまま、崇雅が問う。
澪は喉の乾きを覚えながら、小さく頷いた。
「はい……」
「じゃあ聞く。——今のお前で、あと4ヶ月走りきれると思ってるのか?」
その問いに、返す言葉が見つからなかった。
今は、なんとか持ちこたえている。
けれど、ギリギリだ。
余裕なんて、どこにもない。
「責任者は、ただの作業担当じゃない。
“全体を見て、指示を出し、最終的に責任を取る”立場だ。
倒れました、間に合いませんでした——では済まない」
痛いほどの言葉だった。
けれど、それ以上に“正論”だった。
澪は唇を噛みしめる。
「……すみません。自分でもわかっています。
でも……思うように、できなくて……」
絞り出した声が、情けなさに滲む。
——悔しい。
——崇雅に、こうして叱られるのが、いちばん悔しい。
「……なら、変われ」
崇雅の声は冷たくも厳しくもなかった。
ただ、まっすぐだった。
「自分を甘やかすな。限界を見誤るな。
“責任者”として、自分の体調も、仕事の配分も管理しろ。
これは——上司として言っている」
その一言が、澪の胸に深く刺さる。
(——私、まだまだ甘かったんだ)
「……はい」
その返事は小さかったけれど、確かな決意が込められていた。
崇雅はそれ以上何も言わず、部屋を出ていく。
澪は一人、静まり返った会議室で深く息を吐いた。
情けない。
でも、ここで崩れるわけにはいかない。
——今の私は、もう“守られるだけ”ではいられないのだから。
枕元で鳴るアラームの音が、どこか遠くの世界から聞こえてくるようだった。
止めようと手を伸ばそうとするのに、腕が重くて思うように動かない。
(……ちゃんと寝たはずなのに)
まぶたの裏が、やけに熱い。
頭はぼんやりと霞がかかったようで、意識が覚めきらない。
隣の気配が動いた。
それが崇雅だと気づくまでに、少し時間がかかった。
「……澪。朝だ」
低く優しい声とともに、肩をそっと揺すられる。
「……う、ん……」
うっすらと返事をしたつもりだったが、自分でも何を言ったのかよくわからなかった。
「澪、起きろ。今日は会議も詰まってる」
その言葉でようやく意識が少しずつ浮上し、思考が現実を思い出す。
出勤しなければ。仕事が待っている。
——でも、体がついてこない。
眠気が抜けないどころか、布団に沈む体がどんどん重くなっていく。
まぶたが持ち上がらない。
(やばい……起きなきゃ……)
心は焦っているのに、体は全くついてこない。
寝不足ではない。昨夜はちゃんと崇雅と一緒に寝たはずだ。
それなのに、目覚めがこんなにも最悪なのは、疲れが抜けていないから——
(……限界……近いのかも)
そう思った瞬間、また肩をトン、と優しく叩かれた。
「——澪、無理なら今日は……」
「……だいじょうぶ、です……起きます……」
なんとか絞り出した声に、崇雅は言葉を止める。
そしてそのまま、布団の中から澪の手を取り、そっと引き上げた。
「……シャワーを浴びろ。身体が起きる」
「……うん……」
指先は冷たく、足取りもおぼつかない。
それでも、今日も会社へ行かなければならない。
任された仕事が、自分を待っている——それが、自分に課された“責任”だから。
そう言い聞かせながら、澪は崇雅の背中にそっと寄りかかるようにして、立ち上がった。
熱めのシャワーでようやく目が覚めた澪は、ふらつく足取りのまま洗面所を後にした。
タオルで髪を拭きながらリビングへ戻ると、キッチンにはすでに朝食が用意されていた。
けれど——
「……ごめんなさい、食べられそうに、ないです……」
崇雅が差し出した箸を、そっと押し戻す。
昨夜から胃が重く、湯気の立つ食事を見ただけで、かすかに吐き気が込み上げた。
崇雅は何も言わなかった。
黙って食器を下げ、代わりに白湯を注いだコップを澪の手元に差し出す。
「着替えて、最低限のメイクだけしてこい」
その言葉に頷き、最低限の身支度を整える。
玄関を出ると、マンション前にはすでに崇雅の車が停まっていた。
そして、開いていたのは後部座席のドアだった。
「……今日は、後ろでいい。横になってろ」
逆らう気力はなかった。
澪は頷き、促されるまま後部座席へと身を滑り込ませる。
バックを枕にして横になり、目を閉じる。
通勤時間はわずか10分ほど。
——けれど、その間だけでも体を休めたかった。
「……着いたら、起こす」
運転席から聞こえる声に、澪は小さく返事をした。
会社に到着した時、澪の顔には“いつもの仮面”が戻っていた。
きちんと整えた髪、仕上げたメイク。
誰が見ても“仕事のできる結城澪”そのもの。
けれど、それはあくまで表面だけ。
デスクに着くなり、澪はすぐに今日のタスクを確認し、スケジュールを詰めていく。
メール、社内チャット、会議資料の修正と共有、C社との連絡調整。
(……今日は、何時に帰れるかな)
まだ始まったばかりなのに、すでに体は重かった。
集中力も限界に近い。
けれど、それでも止まれなかった。
プロジェクトの責任者として、果たさなければならない仕事が山ほどあるから。
だからこそ、崇雅が今日、自分にどんな想いを抱いているのか——
そのことに気づく余裕すら、澪にはなかった。
午前の会議が終わり、澪がフロアに戻った直後だった。
「結城。——会議室に来い」
その声は冷静だったが、有無を言わせぬ強さを帯びていた。
周囲の数人がちらりと視線を向けるが、崇雅は構わず歩き出す。
澪は思わず小さく息を飲み、後を追った。
会議室の扉が閉まる。
その瞬間、静寂と緊張が一気に満ちた。
「……状況はわかってるな?」
背を向けたまま、崇雅が問う。
澪は喉の乾きを覚えながら、小さく頷いた。
「はい……」
「じゃあ聞く。——今のお前で、あと4ヶ月走りきれると思ってるのか?」
その問いに、返す言葉が見つからなかった。
今は、なんとか持ちこたえている。
けれど、ギリギリだ。
余裕なんて、どこにもない。
「責任者は、ただの作業担当じゃない。
“全体を見て、指示を出し、最終的に責任を取る”立場だ。
倒れました、間に合いませんでした——では済まない」
痛いほどの言葉だった。
けれど、それ以上に“正論”だった。
澪は唇を噛みしめる。
「……すみません。自分でもわかっています。
でも……思うように、できなくて……」
絞り出した声が、情けなさに滲む。
——悔しい。
——崇雅に、こうして叱られるのが、いちばん悔しい。
「……なら、変われ」
崇雅の声は冷たくも厳しくもなかった。
ただ、まっすぐだった。
「自分を甘やかすな。限界を見誤るな。
“責任者”として、自分の体調も、仕事の配分も管理しろ。
これは——上司として言っている」
その一言が、澪の胸に深く刺さる。
(——私、まだまだ甘かったんだ)
「……はい」
その返事は小さかったけれど、確かな決意が込められていた。
崇雅はそれ以上何も言わず、部屋を出ていく。
澪は一人、静まり返った会議室で深く息を吐いた。
情けない。
でも、ここで崩れるわけにはいかない。
——今の私は、もう“守られるだけ”ではいられないのだから。
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