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第4話「茉純との再会、ニュー東京の脅威」
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学校が休みだった俺は、1人で買い物に出かけることにした。
母さんは今日は家にいるけど、デザイン案を急ぎで仕上げなくてはならないらしく、土日も仕事に追われている。
朝食を済ませた俺は、母さんに声を掛けて外に出る。
「じゃあ母さん、行って来るね。何か買うものあったら連絡して」
「うん、わかった。行ってらっしゃい雄飛♪」
母さんは俺の方へパタパタと歩いてきて手を振る。俺は微笑みながら手を振り返す。
家を出た俺は、平和連合軍の岡山支部のビルへと足を向けていた。
昨日から茉純さんが、岡山支部に合同訓練のために来ているらしい。
茉純さんは、平和連合軍の兵士として世界各地に赴いている。
華怜の情報について、何か得られていないだろうか?
それを一番知りたいのは茉純さんだろうけど……。
そんなことを考えながら、
俺は岡山支部の建物に辿り着き、受付で茉純さんに会いに来たことを告げる。
「はい。話は聞いていますのでどうぞ」
受付の女性はそう言って俺を奥へと案内する。
廊下を少し進むと、奥の部屋から銃声が聞こえてきた。見上げると「射撃訓練場」というプレートが。
俺がドアから顔を出すと、茉純さんと数人の兵士が真剣な表情で射撃訓練を行っていた。
ほんの少し前に兵士になったとは思えないほどの射撃技術に、俺は思わず息を飲む。
「はぁ……はぁ……」
茉純さんは射撃を止め、銃を下げる。兵士の1人が彼女にタオルを手渡した。
「ありがとうございます」
茉純さんがそれを受け取ると、兵士は口を開く。
「いや、さすがです! もう俺なんかより全然うまいですよ!」
兵士の称賛に、茉純さんは首を横に振る。
「いえ……そんな。まだ全然です」
そこで俺に気づいたのか、茉純さんがこちらに歩み寄ってくる。
「あら! 雄飛くん。もう来てくれてたのね♪」
「お久しぶりです、茉純さん。……お邪魔でしたか?」
俺がそう聞くと、茉純さんはフフと笑う。
「邪魔だなんてとんでもない! ちょうど休憩しようと思ってたところだし」
……まるで別人のようだと思う。転生者の俺、そしてさらに転生経験の多かった華怜を除いても、一緒に過ごしたり、逃げたりしていた当時は、俺の母さんよりもさらに気弱な印象だったのに。
彼女の表情には一切の弱さも甘えも無かった。よくいる1人の心優しき母親だった彼女が、今は非情なテロリストや、ヤツらの使役する生物兵器と闘う戦士なのだ。
愛する娘の華怜が、戻れなかったばかりに……。
「茉純さん。……華怜の安否は、まだ……?」
俺がそう切り出すと、彼女は目を伏せて答える。
「……ええ。……私もずっと行方を追ってはいるのだけれど……」
彼女はふぅと息をつく。
「いえ……! そんな……茉純さんは立派に戦ってるじゃないですか!」
俺がそう言うと、茉純さんは首を振る。
「そんなことないわ。私はただ、小さい子供たちが安心して暮らせる場所を作りたいの。そして、華怜を必ず取り返す。……それだけなの」
彼女の目には、強い意志が宿っているように見えた。
茉純さんも、ずっと探し続けているんだ。華怜を……自分の娘を。
「茉純さん……」
俺がそう言うと、彼女は微笑む。
「そんな顔しないで? ……大丈夫、きっと華怜は生きているわ。絶対にね」
彼女は自分に言い聞かせるようにそう言った。そうだ、茉純さんの言うとおりだ。
華怜は生きている、必ず。……そしてきっと、いつかまた会える日が来るはずだ。
「……はい。俺もそう思います」
俺がそう言うと、茉純さんは嬉しそうに微笑むのだった。
もう少し話をしていたかったけど、茉純さんはすぐにまた訓練に参加しなければならないらしく、舞歌さんによろしく、とだけ言って持ち場に戻って行った。
ビルを出ようとすると、フロントのモニターに、世界中で今現在起きているテロや襲撃事件のニュースが映し出される。
複数の映像が、それぞれ違う事件現場の状況を伝えている。
(……Ouroborosだけじゃない……。この世界には、数えきれないほどの世界的な脅威が潜んでいる……)
俺が足を止めてモニターを眺めていると、1つの映像が目に留まった。
それを見た瞬間、俺の心臓はドクンと大きく脈打った。
「これって……まさか……!」
そこに映っていたのは、あまりに見知った人物だった。俺は思わず息を呑む。
「父さ……いや……種吉秀……! どうして……!」
そう。モニターに映っていたのは、俺の父さんであり、Ouroborosの幹部でもある種吉秀の姿だった。
俺はしばらく映像を見ていたが、ふと我に返り、その場を後にする。
驚いたのは種吉秀の姿に、ではない。……彼が映っていた映像の内容に、だ。
ニュー東京の旗を掲げた部屋の中で、ニュー東京の首相である河南乱下と笑顔で握手を交わしている秀の姿があった。
"Ouroborosとニュー東京は、協力関係にある"……とでも言わんばかりに。
テロップでは、「神の復活を望む組織と、ディストピア新興国家が同盟か——?」
とあった。
俺は背筋が凍るのを感じた。
Ouroborosだけでも厄介だというのに、これからはニュー東京までも俺と母さんを狙ってくる可能性が高い。相手は武装した、秩序もモラルも失くした兵士たちだ。
……すぐにでも、対策を考えないと。
これまで続けてきた能力と肉体の鍛錬だけじゃなく、もっと実用的な対策を……。
そんなことを考えつつ、俺は岡山支部を後にしたのだった。
母さんは今日は家にいるけど、デザイン案を急ぎで仕上げなくてはならないらしく、土日も仕事に追われている。
朝食を済ませた俺は、母さんに声を掛けて外に出る。
「じゃあ母さん、行って来るね。何か買うものあったら連絡して」
「うん、わかった。行ってらっしゃい雄飛♪」
母さんは俺の方へパタパタと歩いてきて手を振る。俺は微笑みながら手を振り返す。
家を出た俺は、平和連合軍の岡山支部のビルへと足を向けていた。
昨日から茉純さんが、岡山支部に合同訓練のために来ているらしい。
茉純さんは、平和連合軍の兵士として世界各地に赴いている。
華怜の情報について、何か得られていないだろうか?
それを一番知りたいのは茉純さんだろうけど……。
そんなことを考えながら、
俺は岡山支部の建物に辿り着き、受付で茉純さんに会いに来たことを告げる。
「はい。話は聞いていますのでどうぞ」
受付の女性はそう言って俺を奥へと案内する。
廊下を少し進むと、奥の部屋から銃声が聞こえてきた。見上げると「射撃訓練場」というプレートが。
俺がドアから顔を出すと、茉純さんと数人の兵士が真剣な表情で射撃訓練を行っていた。
ほんの少し前に兵士になったとは思えないほどの射撃技術に、俺は思わず息を飲む。
「はぁ……はぁ……」
茉純さんは射撃を止め、銃を下げる。兵士の1人が彼女にタオルを手渡した。
「ありがとうございます」
茉純さんがそれを受け取ると、兵士は口を開く。
「いや、さすがです! もう俺なんかより全然うまいですよ!」
兵士の称賛に、茉純さんは首を横に振る。
「いえ……そんな。まだ全然です」
そこで俺に気づいたのか、茉純さんがこちらに歩み寄ってくる。
「あら! 雄飛くん。もう来てくれてたのね♪」
「お久しぶりです、茉純さん。……お邪魔でしたか?」
俺がそう聞くと、茉純さんはフフと笑う。
「邪魔だなんてとんでもない! ちょうど休憩しようと思ってたところだし」
……まるで別人のようだと思う。転生者の俺、そしてさらに転生経験の多かった華怜を除いても、一緒に過ごしたり、逃げたりしていた当時は、俺の母さんよりもさらに気弱な印象だったのに。
彼女の表情には一切の弱さも甘えも無かった。よくいる1人の心優しき母親だった彼女が、今は非情なテロリストや、ヤツらの使役する生物兵器と闘う戦士なのだ。
愛する娘の華怜が、戻れなかったばかりに……。
「茉純さん。……華怜の安否は、まだ……?」
俺がそう切り出すと、彼女は目を伏せて答える。
「……ええ。……私もずっと行方を追ってはいるのだけれど……」
彼女はふぅと息をつく。
「いえ……! そんな……茉純さんは立派に戦ってるじゃないですか!」
俺がそう言うと、茉純さんは首を振る。
「そんなことないわ。私はただ、小さい子供たちが安心して暮らせる場所を作りたいの。そして、華怜を必ず取り返す。……それだけなの」
彼女の目には、強い意志が宿っているように見えた。
茉純さんも、ずっと探し続けているんだ。華怜を……自分の娘を。
「茉純さん……」
俺がそう言うと、彼女は微笑む。
「そんな顔しないで? ……大丈夫、きっと華怜は生きているわ。絶対にね」
彼女は自分に言い聞かせるようにそう言った。そうだ、茉純さんの言うとおりだ。
華怜は生きている、必ず。……そしてきっと、いつかまた会える日が来るはずだ。
「……はい。俺もそう思います」
俺がそう言うと、茉純さんは嬉しそうに微笑むのだった。
もう少し話をしていたかったけど、茉純さんはすぐにまた訓練に参加しなければならないらしく、舞歌さんによろしく、とだけ言って持ち場に戻って行った。
ビルを出ようとすると、フロントのモニターに、世界中で今現在起きているテロや襲撃事件のニュースが映し出される。
複数の映像が、それぞれ違う事件現場の状況を伝えている。
(……Ouroborosだけじゃない……。この世界には、数えきれないほどの世界的な脅威が潜んでいる……)
俺が足を止めてモニターを眺めていると、1つの映像が目に留まった。
それを見た瞬間、俺の心臓はドクンと大きく脈打った。
「これって……まさか……!」
そこに映っていたのは、あまりに見知った人物だった。俺は思わず息を呑む。
「父さ……いや……種吉秀……! どうして……!」
そう。モニターに映っていたのは、俺の父さんであり、Ouroborosの幹部でもある種吉秀の姿だった。
俺はしばらく映像を見ていたが、ふと我に返り、その場を後にする。
驚いたのは種吉秀の姿に、ではない。……彼が映っていた映像の内容に、だ。
ニュー東京の旗を掲げた部屋の中で、ニュー東京の首相である河南乱下と笑顔で握手を交わしている秀の姿があった。
"Ouroborosとニュー東京は、協力関係にある"……とでも言わんばかりに。
テロップでは、「神の復活を望む組織と、ディストピア新興国家が同盟か——?」
とあった。
俺は背筋が凍るのを感じた。
Ouroborosだけでも厄介だというのに、これからはニュー東京までも俺と母さんを狙ってくる可能性が高い。相手は武装した、秩序もモラルも失くした兵士たちだ。
……すぐにでも、対策を考えないと。
これまで続けてきた能力と肉体の鍛錬だけじゃなく、もっと実用的な対策を……。
そんなことを考えつつ、俺は岡山支部を後にしたのだった。
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