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第1話(9)
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「は、はい、そうさせていただきます。御助言、感謝いたします」
「いえいえ。というわけなので、リリさんもお願いできますかね」
「……………………」
リリさんの反応が、ない。彼女は俯いたまま、ジッとしている。
「? にゃ?」
「?? リリさん?」
「ぁっ、はいっ! なんでもありませんよっ! 修介さんの仰る通りなので、私も連絡をしてまいりますっ」
スゥさんに続いてスマホ型の端末を取り出し、どちらも廊下に出た。なので僕はお二人が戻るまで、マシマロとレートを撫でて待つ。
「にゃぁー」
「わふぅ」
「うん、そうなんだよね。僕もこういう問題は、片方だけに加担したくはない――」
『すみませんっ!』
廊下から、リリさんの大声が響いてきた。
い、一体何が起こっているんだろう。少し耳を澄ませてみる。
『はい、はい。これは由々しき事態です。……はい、はいっ。すみません。課長、本当にすみません』
どうやら通話の相手に怒られているらしく、平身低頭。声調から、何度も頭を下げているのが分かる。
『はい。はい。はい。ありがとうございますっ。さすがペルシャは器が大きいですねっ』
「にゃぁ……」
「わぅぅ……」
「うん。リリさん、必死でご機嫌を取ってるね……」
ペルシャの上司は、かなりお怒りのようだ。僕のせいで、すみません……。
「お、お待たせ致しました」
なんだか申し訳ない気持ちで一杯になっていると、スゥさんが戻ってきた。こちらはああいう声が聞こえなかったから、穏便にすんだのかな?
「あの。どうなりましたか?」
「大至急犬国と猫国が電話で会議を開くとのことで、結論が出るまで現地で待機となりました。……あの……。リリさんは、大丈夫なのでしょうか……」
アレは、かなり切実だったもんなぁ。敵対してる犬側の人間さえもが、すっごく心配そうにしている。
「どう、なんでしょうかね。話を聞いてみるまでは――あ、リリさん」
「うぅぅ……。お待たせ、いたしました……」
御帰還されたリリさんは、グロッキー状態。心身ともに疲れ果てていて、よろよろしている。
「お、お疲れ様です。スゥさんから説明は受けたんですけど、何があったんですか?」
「…………私の上司の課長はとても厳しくて、『なぜ説得できなかったのか?』と追及されました。さんざん文句を言われたあと、連絡を待てと言われました……」
「そ、そうなんですか。ごめんなさい……」
本当に、ごめんなさい。僕の我儘のせいでこんなになって、ごめんなさい。
「ご迷惑をかけているのはこちらなので、お気になさらないでください……。ただ……。ちょっと疲れたので、暫くそっとしておいてくださいね……」
そう呟いたリリさんがその後1分間に3回のペースでため息を付き、60回に達したところで二人の端末が震えた。
「いえいえ。というわけなので、リリさんもお願いできますかね」
「……………………」
リリさんの反応が、ない。彼女は俯いたまま、ジッとしている。
「? にゃ?」
「?? リリさん?」
「ぁっ、はいっ! なんでもありませんよっ! 修介さんの仰る通りなので、私も連絡をしてまいりますっ」
スゥさんに続いてスマホ型の端末を取り出し、どちらも廊下に出た。なので僕はお二人が戻るまで、マシマロとレートを撫でて待つ。
「にゃぁー」
「わふぅ」
「うん、そうなんだよね。僕もこういう問題は、片方だけに加担したくはない――」
『すみませんっ!』
廊下から、リリさんの大声が響いてきた。
い、一体何が起こっているんだろう。少し耳を澄ませてみる。
『はい、はい。これは由々しき事態です。……はい、はいっ。すみません。課長、本当にすみません』
どうやら通話の相手に怒られているらしく、平身低頭。声調から、何度も頭を下げているのが分かる。
『はい。はい。はい。ありがとうございますっ。さすがペルシャは器が大きいですねっ』
「にゃぁ……」
「わぅぅ……」
「うん。リリさん、必死でご機嫌を取ってるね……」
ペルシャの上司は、かなりお怒りのようだ。僕のせいで、すみません……。
「お、お待たせ致しました」
なんだか申し訳ない気持ちで一杯になっていると、スゥさんが戻ってきた。こちらはああいう声が聞こえなかったから、穏便にすんだのかな?
「あの。どうなりましたか?」
「大至急犬国と猫国が電話で会議を開くとのことで、結論が出るまで現地で待機となりました。……あの……。リリさんは、大丈夫なのでしょうか……」
アレは、かなり切実だったもんなぁ。敵対してる犬側の人間さえもが、すっごく心配そうにしている。
「どう、なんでしょうかね。話を聞いてみるまでは――あ、リリさん」
「うぅぅ……。お待たせ、いたしました……」
御帰還されたリリさんは、グロッキー状態。心身ともに疲れ果てていて、よろよろしている。
「お、お疲れ様です。スゥさんから説明は受けたんですけど、何があったんですか?」
「…………私の上司の課長はとても厳しくて、『なぜ説得できなかったのか?』と追及されました。さんざん文句を言われたあと、連絡を待てと言われました……」
「そ、そうなんですか。ごめんなさい……」
本当に、ごめんなさい。僕の我儘のせいでこんなになって、ごめんなさい。
「ご迷惑をかけているのはこちらなので、お気になさらないでください……。ただ……。ちょっと疲れたので、暫くそっとしておいてくださいね……」
そう呟いたリリさんがその後1分間に3回のペースでため息を付き、60回に達したところで二人の端末が震えた。
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