宇宙の終点

あいいろ-AIIRO

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第1章 旅だち

旅だち

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  「早く乗れ!」
建物の中で響き渡った銃弾のように尖った声が
僕の鼓膜を振動させる。
私たちは誘拐されたのだ。
僕の名前は*高沢 智爾(たかざわ さとしか)*
会社終わりの帰宅途中、突然鈍器のようなもので
後頭部を殴られ、今ここにいる。
誘拐犯に言われた事をただただ従うしかない。
そう魂に刻み込む。
「全員乗りました!」
そう聞こえて間も無くして、宇宙船のドアが閉まった。
 船の中は、外から見た時よりもずっと綺麗だった。
空色のガラス、天井に埋め込まれたランタン、
床には少しもズレがなく塗裝された空色と灰色の
シンプルなラインが引かれていた。
しばらく呆然としていると、水色の宇宙服を著た
人がやってきた。
「俺の名は*カポ・メルシー*。忘れるな」
「俺たちをどうする気だ!」
中年の男性が叫ぶ。
「君たちにこの星を救ってもらいたい
もちろん報酬はあるよ」
予想外の出来事に皆、耳を疑った。
「どうやって救うんだ?」
「簡単なことさ、この宇宙船で10光年離れた所に
ある惑星のエネルギーを持ってくるんだ」
彼がそう言うとトコトコと休憩室らしき部屋に歩いて行った。
「おい、あれ操縦室じゃないか?」
若者が指差した先には小さく赤い字で(Control)と書いてあった部屋があった。
「行くぞ」
一斉に船内にいた人が操縦室に向かった。
部屋に入ると、右に操縦レバー、左に電子地図が机に付いている。
部屋の真ん中には、安全操作マニュアルが置いてあった。
ガタイの良い人がページをめくる。
「まずレバーを引け」
「次に赤いスイッチを」
と次々と、指示を出してくる。
みんなそれに従い、次々と室内の電気がついていく。
「最後にお前!そこのレバーを倒してくれ」
指を刺され、僕はすぐにレバーを倒した。
すると一気に薄暗い部屋が明るくなり、部屋がゆりかごの
ように揺れ始める。
ー飛んだー
僕はすぐにそう思った。
「黃色いボタンを」
男がそう言うと、揺れが一気に激しくなった。
「発進!」
その言葉が聞こえたしばらく後に、船体が炎の渦で包まれた。
眩しくて目を閉じる。揺れはどんどん強くなり、
やがて感じない程度にまで弱まった。
目を開けるとそこはー
ー宇宙だー
初めて目にする光景に、目をこすって再度見つめる。
星が無數に散らばり、天の川も見えている。
「そこのレバーを」
「ワープ‼︎」
女性がレバーを引くと、船の先に穴が出現した。
船はその穴の中に入って行く。
穴をくぐり抜けた瞬間、窓から今までで感じたこともないレベルの白い光が僕の瞳に飛び込んでくる。
僕は再び目を閉じる。
「よし!成功だ!」
「あとは座標を入れて…っと…」
目を開けるともうすでにみんなはいなくなっていた。
「休憩室に行ったのかな?」
そう口ずさみ、慣れない様子で休憩室に向かう。
休憩室のドアがウィーーーンと開き中の様子を見る。
そこにはみんなの姿が……あるはずだった………
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