朝から困ったヤンデレ彼女 ~かわいい後輩とメチャックスするVR~

冬島六花

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第1話

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 秋も深まりつつある十月のこと、俺は商店街のハロウィン大セール福引きで『VRヘッドセット』を引き当てた。
 といっても、壮大なVRMMORPGの世界へダイブ! するためのヘッドセットではなく、主にユーザーが短い映像体験をするためのものだという。

 ……うーん、これなら正直、五等賞の『安眠ふかふかシーツ』の方が良かったな……。

 俺の感想は、その程度のものだった。
 四等賞という微妙な立ち位置の景品であることからして、おそらく電気屋の在庫処分品だろう。
 試しに商品名をネットで検索してみたところ、フリマアプリで叩き売り価格で出品されていた。
 商品説明欄に「怖いので出品することにしました。値下げ交渉は可能ですが、返品は絶対不可です。」などと書かれているところを見ると、性能的にもイマイチなのだろう。

 それでも、今までテレビでしか見たことのないVR世界が体験できるとあって、俺は意気揚々と帰宅した。
 早速、VRヘッドセットを装着して電源をオンにする。
 ベッドの上のシーツに寝転び、準備は万端。
 そして視界いっぱいに広がるゲーム画面。
「ウェルカム!」の文字が表示されたところで、俺は頭をひねる。

 ……ところで、何をオーダーすればいいんだ?

 やがて現れたのは、シチュエーション設定画面だ。
 そこで俺は「可愛いヤンデレ彼女と公園で滅茶苦茶セックスする!」と、気軽な気持ちで入力してみた。
 雑な内容だが、今日は初回だ。お試しで使うなら、そのくらいぼんやりとした内容でいいだろう。

 * * *

 気がついたら、俺はいつも暮らしている世界と似た、けれど絶妙に細部に違和感を覚える世界にいた。
 いや……違う。俺の意識だけが、この世界に飛ばされてきたのだろう。
 俺は黒い詰め襟を着ていて、学校指定と思われる校章入りの鞄を持っていた。
 なるほど、そういうプレイというわけか。悪くないだろう。
 ちょうど紅葉が始まる季節で、頬を撫でる風が心地良い。
 コンビニに「ハロウィンスイーツ」の昇り旗が立っているところから想像するに、おそらく十月末なのだろう。
 チュンチュンと雀のさえずる声が聞こえる。清々しい秋の朝である。
 気分が良くなった俺は、鼻歌を歌いながら通学路を歩いた。

 お、誰かいるぞ……!

 目の前に、清楚なセーラー服を着た黒髪ロングの美少女がいて、こちらに手を振っている。
 あれは――おそらくVRが設定してくれたヤンデレ彼女だろう。
 心を躍らせた俺は、大きく手を振った。

「おーい」

 大声で呼びかけたところ、向こうも気づいたようだった。

「あ、センパーイ!」

 そう言いながら、その場でバンザイしながらぴょんぴょん跳ねている。
 その度に胸が揺れていて、見ているこっちとしては目のやり場に困るほどだ。
 いや、目立つのは胸だけじゃない。
 全体的に、一言でまとめると超絶カワイイ!
 真っ黒な髪と真っ白な肌のコントラスト、目は小動物のように黒目がちでくりくりとしていて、頬や唇はほんのりと桃色だ。
 例えるなら地上に降り立った天使か、異世界から転生してきた日本人形である。
 俺は胸から視線を逸らしつつ、軽く手を振る。

「こんなところで何してんだ?」
「えっとですね……センパイを待ってたんです!」
「俺を? なんでまた?」
「一緒に学校に行こうかなって思いまして……ダメですか?」

 小首を傾げ、サラサラの髪の一束を耳にかけながら、彼女は訊ねた。
 そうだ、この黒髪美少女は俺の後輩であり、彼女なのだ。

「別にいいけど……」
「やったぁ!」

 彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべ、両手を広げて、俺に近づいてくる。
 そのまま勢いよく抱きついてきた。

「おいおい。照れるだろ」
「へへっ……センパイと一緒に歩くの、久々ですからね~♪」
「そうだな。最近はお互い忙しかったもんな」
「はい! 朝くらいしかゆっくりできないんで、いっぱいイチャイチャしたいです!!」
「お前ってさ……まあいいか。とりあえず、離れてくれ。落ち着かないんだ」

 彼女の胸が、俺の腕に当たる。
 気恥ずかしくて、顔を背けた。

「あっ、すみません! 嬉しくてつい……あ、あの、良かったら……おっぱい揉んでみませんか♡」
「はぁ?」

 ミラクル超展開な彼女の言葉に、俺はあんぐりと口を開けた。
 可愛い顔をして何を言っているのだろうか、この娘は。

「ほら、先輩が私の胸を揉むのって私服のときですけど、平日はいつも制服着てるじゃないですか? だから制服シチュエーションならではの揉み心地っていうのがあるかなと思いまして……」
「いや、ないない。普通に考えて断るだろ」

 平日の朝に道端で女の胸を揉む男がどこにいるんだ?
 いくらVR体験でもそれはないだろうと、俺は思った。

「そんなこと言わずに、お願いしますよぉ~」

 顔の前で手を合わせ、彼女は俺にウインクして見せた。
 その表情も超絶カワイイ。
 ここまで頼まれれば、断るのもおかしな気がしてくる。

「わかったわかった……じゃあ一回だけな。ただし、そっちで……」

 俺は脇にある公園のベンチを指差した。
 住宅地にある朝の公園に、人はいなかった。
 時計を見たところ、まだ時間は十分にある。
 俺たちは二人並んで、白いベンチにいそいそと座った。
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