1 / 3
第1話
しおりを挟む
1
秋も深まりつつある十月のこと、俺は商店街のハロウィン大セール福引きで『VRヘッドセット』を引き当てた。
といっても、壮大なVRMMORPGの世界へダイブ! するためのヘッドセットではなく、主にユーザーが短い映像体験をするためのものだという。
……うーん、これなら正直、五等賞の『安眠ふかふかシーツ』の方が良かったな……。
俺の感想は、その程度のものだった。
四等賞という微妙な立ち位置の景品であることからして、おそらく電気屋の在庫処分品だろう。
試しに商品名をネットで検索してみたところ、フリマアプリで叩き売り価格で出品されていた。
商品説明欄に「怖いので出品することにしました。値下げ交渉は可能ですが、返品は絶対不可です。」などと書かれているところを見ると、性能的にもイマイチなのだろう。
それでも、今までテレビでしか見たことのないVR世界が体験できるとあって、俺は意気揚々と帰宅した。
早速、VRヘッドセットを装着して電源をオンにする。
ベッドの上のシーツに寝転び、準備は万端。
そして視界いっぱいに広がるゲーム画面。
「ウェルカム!」の文字が表示されたところで、俺は頭をひねる。
……ところで、何をオーダーすればいいんだ?
やがて現れたのは、シチュエーション設定画面だ。
そこで俺は「可愛いヤンデレ彼女と公園で滅茶苦茶セックスする!」と、気軽な気持ちで入力してみた。
雑な内容だが、今日は初回だ。お試しで使うなら、そのくらいぼんやりとした内容でいいだろう。
* * *
気がついたら、俺はいつも暮らしている世界と似た、けれど絶妙に細部に違和感を覚える世界にいた。
いや……違う。俺の意識だけが、この世界に飛ばされてきたのだろう。
俺は黒い詰め襟を着ていて、学校指定と思われる校章入りの鞄を持っていた。
なるほど、そういうプレイというわけか。悪くないだろう。
ちょうど紅葉が始まる季節で、頬を撫でる風が心地良い。
コンビニに「ハロウィンスイーツ」の昇り旗が立っているところから想像するに、おそらく十月末なのだろう。
チュンチュンと雀のさえずる声が聞こえる。清々しい秋の朝である。
気分が良くなった俺は、鼻歌を歌いながら通学路を歩いた。
お、誰かいるぞ……!
目の前に、清楚なセーラー服を着た黒髪ロングの美少女がいて、こちらに手を振っている。
あれは――おそらくVRが設定してくれたヤンデレ彼女だろう。
心を躍らせた俺は、大きく手を振った。
「おーい」
大声で呼びかけたところ、向こうも気づいたようだった。
「あ、センパーイ!」
そう言いながら、その場でバンザイしながらぴょんぴょん跳ねている。
その度に胸が揺れていて、見ているこっちとしては目のやり場に困るほどだ。
いや、目立つのは胸だけじゃない。
全体的に、一言でまとめると超絶カワイイ!
真っ黒な髪と真っ白な肌のコントラスト、目は小動物のように黒目がちでくりくりとしていて、頬や唇はほんのりと桃色だ。
例えるなら地上に降り立った天使か、異世界から転生してきた日本人形である。
俺は胸から視線を逸らしつつ、軽く手を振る。
「こんなところで何してんだ?」
「えっとですね……センパイを待ってたんです!」
「俺を? なんでまた?」
「一緒に学校に行こうかなって思いまして……ダメですか?」
小首を傾げ、サラサラの髪の一束を耳にかけながら、彼女は訊ねた。
そうだ、この黒髪美少女は俺の後輩であり、彼女なのだ。
「別にいいけど……」
「やったぁ!」
彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべ、両手を広げて、俺に近づいてくる。
そのまま勢いよく抱きついてきた。
「おいおい。照れるだろ」
「へへっ……センパイと一緒に歩くの、久々ですからね~♪」
「そうだな。最近はお互い忙しかったもんな」
「はい! 朝くらいしかゆっくりできないんで、いっぱいイチャイチャしたいです!!」
「お前ってさ……まあいいか。とりあえず、離れてくれ。落ち着かないんだ」
彼女の胸が、俺の腕に当たる。
気恥ずかしくて、顔を背けた。
「あっ、すみません! 嬉しくてつい……あ、あの、良かったら……おっぱい揉んでみませんか♡」
「はぁ?」
ミラクル超展開な彼女の言葉に、俺はあんぐりと口を開けた。
可愛い顔をして何を言っているのだろうか、この娘は。
「ほら、先輩が私の胸を揉むのって私服のときですけど、平日はいつも制服着てるじゃないですか? だから制服シチュエーションならではの揉み心地っていうのがあるかなと思いまして……」
「いや、ないない。普通に考えて断るだろ」
平日の朝に道端で女の胸を揉む男がどこにいるんだ?
いくらVR体験でもそれはないだろうと、俺は思った。
「そんなこと言わずに、お願いしますよぉ~」
顔の前で手を合わせ、彼女は俺にウインクして見せた。
その表情も超絶カワイイ。
ここまで頼まれれば、断るのもおかしな気がしてくる。
「わかったわかった……じゃあ一回だけな。ただし、そっちで……」
俺は脇にある公園のベンチを指差した。
住宅地にある朝の公園に、人はいなかった。
時計を見たところ、まだ時間は十分にある。
俺たちは二人並んで、白いベンチにいそいそと座った。
秋も深まりつつある十月のこと、俺は商店街のハロウィン大セール福引きで『VRヘッドセット』を引き当てた。
といっても、壮大なVRMMORPGの世界へダイブ! するためのヘッドセットではなく、主にユーザーが短い映像体験をするためのものだという。
……うーん、これなら正直、五等賞の『安眠ふかふかシーツ』の方が良かったな……。
俺の感想は、その程度のものだった。
四等賞という微妙な立ち位置の景品であることからして、おそらく電気屋の在庫処分品だろう。
試しに商品名をネットで検索してみたところ、フリマアプリで叩き売り価格で出品されていた。
商品説明欄に「怖いので出品することにしました。値下げ交渉は可能ですが、返品は絶対不可です。」などと書かれているところを見ると、性能的にもイマイチなのだろう。
それでも、今までテレビでしか見たことのないVR世界が体験できるとあって、俺は意気揚々と帰宅した。
早速、VRヘッドセットを装着して電源をオンにする。
ベッドの上のシーツに寝転び、準備は万端。
そして視界いっぱいに広がるゲーム画面。
「ウェルカム!」の文字が表示されたところで、俺は頭をひねる。
……ところで、何をオーダーすればいいんだ?
やがて現れたのは、シチュエーション設定画面だ。
そこで俺は「可愛いヤンデレ彼女と公園で滅茶苦茶セックスする!」と、気軽な気持ちで入力してみた。
雑な内容だが、今日は初回だ。お試しで使うなら、そのくらいぼんやりとした内容でいいだろう。
* * *
気がついたら、俺はいつも暮らしている世界と似た、けれど絶妙に細部に違和感を覚える世界にいた。
いや……違う。俺の意識だけが、この世界に飛ばされてきたのだろう。
俺は黒い詰め襟を着ていて、学校指定と思われる校章入りの鞄を持っていた。
なるほど、そういうプレイというわけか。悪くないだろう。
ちょうど紅葉が始まる季節で、頬を撫でる風が心地良い。
コンビニに「ハロウィンスイーツ」の昇り旗が立っているところから想像するに、おそらく十月末なのだろう。
チュンチュンと雀のさえずる声が聞こえる。清々しい秋の朝である。
気分が良くなった俺は、鼻歌を歌いながら通学路を歩いた。
お、誰かいるぞ……!
目の前に、清楚なセーラー服を着た黒髪ロングの美少女がいて、こちらに手を振っている。
あれは――おそらくVRが設定してくれたヤンデレ彼女だろう。
心を躍らせた俺は、大きく手を振った。
「おーい」
大声で呼びかけたところ、向こうも気づいたようだった。
「あ、センパーイ!」
そう言いながら、その場でバンザイしながらぴょんぴょん跳ねている。
その度に胸が揺れていて、見ているこっちとしては目のやり場に困るほどだ。
いや、目立つのは胸だけじゃない。
全体的に、一言でまとめると超絶カワイイ!
真っ黒な髪と真っ白な肌のコントラスト、目は小動物のように黒目がちでくりくりとしていて、頬や唇はほんのりと桃色だ。
例えるなら地上に降り立った天使か、異世界から転生してきた日本人形である。
俺は胸から視線を逸らしつつ、軽く手を振る。
「こんなところで何してんだ?」
「えっとですね……センパイを待ってたんです!」
「俺を? なんでまた?」
「一緒に学校に行こうかなって思いまして……ダメですか?」
小首を傾げ、サラサラの髪の一束を耳にかけながら、彼女は訊ねた。
そうだ、この黒髪美少女は俺の後輩であり、彼女なのだ。
「別にいいけど……」
「やったぁ!」
彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべ、両手を広げて、俺に近づいてくる。
そのまま勢いよく抱きついてきた。
「おいおい。照れるだろ」
「へへっ……センパイと一緒に歩くの、久々ですからね~♪」
「そうだな。最近はお互い忙しかったもんな」
「はい! 朝くらいしかゆっくりできないんで、いっぱいイチャイチャしたいです!!」
「お前ってさ……まあいいか。とりあえず、離れてくれ。落ち着かないんだ」
彼女の胸が、俺の腕に当たる。
気恥ずかしくて、顔を背けた。
「あっ、すみません! 嬉しくてつい……あ、あの、良かったら……おっぱい揉んでみませんか♡」
「はぁ?」
ミラクル超展開な彼女の言葉に、俺はあんぐりと口を開けた。
可愛い顔をして何を言っているのだろうか、この娘は。
「ほら、先輩が私の胸を揉むのって私服のときですけど、平日はいつも制服着てるじゃないですか? だから制服シチュエーションならではの揉み心地っていうのがあるかなと思いまして……」
「いや、ないない。普通に考えて断るだろ」
平日の朝に道端で女の胸を揉む男がどこにいるんだ?
いくらVR体験でもそれはないだろうと、俺は思った。
「そんなこと言わずに、お願いしますよぉ~」
顔の前で手を合わせ、彼女は俺にウインクして見せた。
その表情も超絶カワイイ。
ここまで頼まれれば、断るのもおかしな気がしてくる。
「わかったわかった……じゃあ一回だけな。ただし、そっちで……」
俺は脇にある公園のベンチを指差した。
住宅地にある朝の公園に、人はいなかった。
時計を見たところ、まだ時間は十分にある。
俺たちは二人並んで、白いベンチにいそいそと座った。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる