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第一章 辺境のハロウィンパーティ
1-2.当然のように噂になって
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――リズ先生、婚約破棄されたんだって!
――知ってる。婚約者のウィル先生に浮気されたんでしょ。
――そうそう。しかも相手はトミー先生。男に寝取られるなんて。
――ありえない!
生徒たちの囁き声が聞こえて、リズは表情を曇らせる。
(ありえないと思いたいのは私なのに……)
教科書とノートを抱え、教室から職員室へ帰る途中にも、予期せぬ形で噂話が耳に入ってくるのだ。
悪夢のようなカフェでの婚約破棄から一ヶ月。あっという間に話は広がり、学校中に――いや、リズやウィル、トミーの三名の教師を知る者たち全員に、今回の事情が知れ渡っていた。
「ねぇ、リズ先生は、どう思っているの?」
「何を?」
「だから、ウィル先生とトミー先生のこと」
同僚教師も、職員室へ着いたばかりのリズにそう尋ねた。最近、誰と話してもこうだ。みんながリズとウィルとトミーの三角関係に夢中なのである。
「私としては、彼らを祝福したいの。……誰だって、突然恋に落ちたりするものよ」
次の授業に向けて資料を確認しながら、なるべく動揺していない風を装って答える。
「……そういうもの? 私なら激怒してるけど。……リズ先生、オトナじゃん」
「……だって、そう思って自分を納得させるしかないでしょう?」
本心を言えば、今すぐにでも泣き出したい気持ちだ。
だってありえないだろう。
正式に婚約を発表したのは三ヶ月前。それからは婚約指輪を職場でも身につけていたのだ。
リズは大学で地質学を専攻した理科教師。もともと大の鉱物好きだ。だからダイヤモンドのセットされた指輪が嬉しくて、職場にもつけて来ていた。
(調子に乗っていたと言われれば、否定はしないわ)
「うーん、たしかにね……」
同僚教師は、分かったような分からないような反応をした。
「さぁ、もうこんな時間。早く次の教室へ行きましょう」
「今日を乗り切れば週末だものね。あと少し、気合入れていこう」
なんとか上手くかわして、リズは次の授業へと向かう。
(こんな日が、ずっと続くのかしら)
教師の住む世界は狭い。学校は生活と直結していて、リズの暮らす世界のほとんど全てだ。
婚約者に逃げられた、しかも相手は職場の同僚で、男性――。生徒にとっても教職員にとっても、格好の話のネタである。
ここにいるのは、耐えられない。
リズは胸に秘めていた思いを、週明けに教務主任へ打ち明けようと心に決めた。
――知ってる。婚約者のウィル先生に浮気されたんでしょ。
――そうそう。しかも相手はトミー先生。男に寝取られるなんて。
――ありえない!
生徒たちの囁き声が聞こえて、リズは表情を曇らせる。
(ありえないと思いたいのは私なのに……)
教科書とノートを抱え、教室から職員室へ帰る途中にも、予期せぬ形で噂話が耳に入ってくるのだ。
悪夢のようなカフェでの婚約破棄から一ヶ月。あっという間に話は広がり、学校中に――いや、リズやウィル、トミーの三名の教師を知る者たち全員に、今回の事情が知れ渡っていた。
「ねぇ、リズ先生は、どう思っているの?」
「何を?」
「だから、ウィル先生とトミー先生のこと」
同僚教師も、職員室へ着いたばかりのリズにそう尋ねた。最近、誰と話してもこうだ。みんながリズとウィルとトミーの三角関係に夢中なのである。
「私としては、彼らを祝福したいの。……誰だって、突然恋に落ちたりするものよ」
次の授業に向けて資料を確認しながら、なるべく動揺していない風を装って答える。
「……そういうもの? 私なら激怒してるけど。……リズ先生、オトナじゃん」
「……だって、そう思って自分を納得させるしかないでしょう?」
本心を言えば、今すぐにでも泣き出したい気持ちだ。
だってありえないだろう。
正式に婚約を発表したのは三ヶ月前。それからは婚約指輪を職場でも身につけていたのだ。
リズは大学で地質学を専攻した理科教師。もともと大の鉱物好きだ。だからダイヤモンドのセットされた指輪が嬉しくて、職場にもつけて来ていた。
(調子に乗っていたと言われれば、否定はしないわ)
「うーん、たしかにね……」
同僚教師は、分かったような分からないような反応をした。
「さぁ、もうこんな時間。早く次の教室へ行きましょう」
「今日を乗り切れば週末だものね。あと少し、気合入れていこう」
なんとか上手くかわして、リズは次の授業へと向かう。
(こんな日が、ずっと続くのかしら)
教師の住む世界は狭い。学校は生活と直結していて、リズの暮らす世界のほとんど全てだ。
婚約者に逃げられた、しかも相手は職場の同僚で、男性――。生徒にとっても教職員にとっても、格好の話のネタである。
ここにいるのは、耐えられない。
リズは胸に秘めていた思いを、週明けに教務主任へ打ち明けようと心に決めた。
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