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1.ハロウィンもクリスマスもネタは資料室から(1500字)
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オッス、オラ真織。健康食品会社で働く限界OLだ。カスタマーセンターでの三年の勤務を経て、今は本社の企画部で販売戦略を立てている。
ほらほら、よくあるでしょ? 中高年向け雑誌の裏表紙や、新聞の折り込み広告にあるサプリの広告。ああいうのを考えているわけ。
弊社が扱っているのは、男性向け精力剤。看板商品は『Re:絶倫魔王』。うん、ありがち。ああいうのを売っている。しかも成分的にはかなり胡散臭い。
――ここまで読んでくださった皆さん!
私はサプリや精力剤の全てを否定しているわけではないのですよ。良い製品、たくさんあります。だけどね、弊社製品はそうじゃない。科学的な裏づけのない、ふんわりとしたサプリを売っている、そしてそれらをよりたくさん売るために日々頭を捻っているのが、我々のような限界社員なわけです。
――え、何が限界だって? 楽しそうに見えるって? 嫌なら辞めろって?
うん、たしかにその通り。でもさぁ、ぶっちゃけ、私が就職した頃は不景気で、どの会社も新卒採用を渋っていた。百二十社にエントリーシートを出して参考に進み、ようやく内定を勝ち取ったのがこの会社ってわけ。
まぁ、ただ、入ってみればそこから先も苦難の道のり。離職率が高いから仕事について教えてれる先輩もろくにいない。自分なりに考えてがむしゃらに仕事していたら、勤続八年を迎えていた。コールセンターでの仕事が評価されて企画部に異動して、今では折り込みチラシを任されていて、仕事自体は楽しい。給与や待遇も悪くない。
もう限界! と悪態をつきつつ、今日も職場に来ているわけだ。
そんなわけで、えーっ、本日のお仕事。
クリスマスシーズンの折り込みチラシのアイデアを得るために、私は本社の地下にある資料室に来た。
言っておくけど、うちは古臭い昭和の会社。私は世間でいう総合職だけど、職場では会社指定の制服を着ている。白い開襟ブラウスに紺色のベストと膝丈スカート、スキンカラーのストッキングにオフィスサンダルという、ダサいOLスタイルだ。シャツからサンダルまでもちろん会社指定。地下への階段は冷えるから、ストッキング一枚では辛い。
はぁぁ、やってらんねぇぜ。
資料室は埃っぽくて暗い。窓もなくて真っ暗だ。壁一面に所狭しと並べられた古いファイル、古めかしいコピー機、いつ使うんだかわからないFAXの予備機。照明はところどころ電球が切れていて、正直ここで文字を読むのもしんどい。
「えーっと……」
私は二十年前に載せた新聞広告のファイルを探して、資料室をウロウロする。クリスマスシーズンの広告のアイデア、転がってないかなあ……。
二十年前の広告を使い回そうという発想が、いかにも弊社っぽい。でもいいのだ。変わらないことが弊社の価値でもあるのだから。そんな風に自分を納得させている。現にハロウィンバージョンも過去資料を参考に作って、反応は上々だ。
――とそこで、おかしな物音がして私は動きを止めた。
「あっ……ダメですっ、専務……」
「大丈夫。ここには誰も来ないよ」
「でも、こんなところで……」
「いいから、君だって期待してここへ来たんだろう?」
……はっ、誰かいる!?
私は資料室の奥にある棚と棚の隙間から、そっと顔を覗かせた。するとそこには――二人の男女が抱き合う姿があった。いや、抱き合っているのではない。男が女を壁に押しつけている。
男は黒地にストライプのスーツを着た初老、女は私と同じ制服を着たアラフォーだ。
そして男の腕は女のスカートの中に潜り込んでいて……。
おいいぃぃ! なんで会社でヤッてるの! え、セクハラ? オフィス・ラブ!? Why? どういうこと……?
ほらほら、よくあるでしょ? 中高年向け雑誌の裏表紙や、新聞の折り込み広告にあるサプリの広告。ああいうのを考えているわけ。
弊社が扱っているのは、男性向け精力剤。看板商品は『Re:絶倫魔王』。うん、ありがち。ああいうのを売っている。しかも成分的にはかなり胡散臭い。
――ここまで読んでくださった皆さん!
私はサプリや精力剤の全てを否定しているわけではないのですよ。良い製品、たくさんあります。だけどね、弊社製品はそうじゃない。科学的な裏づけのない、ふんわりとしたサプリを売っている、そしてそれらをよりたくさん売るために日々頭を捻っているのが、我々のような限界社員なわけです。
――え、何が限界だって? 楽しそうに見えるって? 嫌なら辞めろって?
うん、たしかにその通り。でもさぁ、ぶっちゃけ、私が就職した頃は不景気で、どの会社も新卒採用を渋っていた。百二十社にエントリーシートを出して参考に進み、ようやく内定を勝ち取ったのがこの会社ってわけ。
まぁ、ただ、入ってみればそこから先も苦難の道のり。離職率が高いから仕事について教えてれる先輩もろくにいない。自分なりに考えてがむしゃらに仕事していたら、勤続八年を迎えていた。コールセンターでの仕事が評価されて企画部に異動して、今では折り込みチラシを任されていて、仕事自体は楽しい。給与や待遇も悪くない。
もう限界! と悪態をつきつつ、今日も職場に来ているわけだ。
そんなわけで、えーっ、本日のお仕事。
クリスマスシーズンの折り込みチラシのアイデアを得るために、私は本社の地下にある資料室に来た。
言っておくけど、うちは古臭い昭和の会社。私は世間でいう総合職だけど、職場では会社指定の制服を着ている。白い開襟ブラウスに紺色のベストと膝丈スカート、スキンカラーのストッキングにオフィスサンダルという、ダサいOLスタイルだ。シャツからサンダルまでもちろん会社指定。地下への階段は冷えるから、ストッキング一枚では辛い。
はぁぁ、やってらんねぇぜ。
資料室は埃っぽくて暗い。窓もなくて真っ暗だ。壁一面に所狭しと並べられた古いファイル、古めかしいコピー機、いつ使うんだかわからないFAXの予備機。照明はところどころ電球が切れていて、正直ここで文字を読むのもしんどい。
「えーっと……」
私は二十年前に載せた新聞広告のファイルを探して、資料室をウロウロする。クリスマスシーズンの広告のアイデア、転がってないかなあ……。
二十年前の広告を使い回そうという発想が、いかにも弊社っぽい。でもいいのだ。変わらないことが弊社の価値でもあるのだから。そんな風に自分を納得させている。現にハロウィンバージョンも過去資料を参考に作って、反応は上々だ。
――とそこで、おかしな物音がして私は動きを止めた。
「あっ……ダメですっ、専務……」
「大丈夫。ここには誰も来ないよ」
「でも、こんなところで……」
「いいから、君だって期待してここへ来たんだろう?」
……はっ、誰かいる!?
私は資料室の奥にある棚と棚の隙間から、そっと顔を覗かせた。するとそこには――二人の男女が抱き合う姿があった。いや、抱き合っているのではない。男が女を壁に押しつけている。
男は黒地にストライプのスーツを着た初老、女は私と同じ制服を着たアラフォーだ。
そして男の腕は女のスカートの中に潜り込んでいて……。
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