†魔剤戦記†

ベネト

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第2章 剤と愛に飢えし者たち

第9話 コードネーム・エンペラー

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「そうさ!そう!知っているのか!ボクこそが神を殺す者にして、YHWHの処刑人。『ソロモンの鍵』の器たる男、コードネーム・エンペラーだよ!」

そう高らかに名乗りを上げた男は、すぐに吹き飛ばされた神次にジャッジするかのような冷徹な視線を向けると、すぐに興味を失ったように魔沙斗への視線を向け、感極まって心酔するように大袈裟に両手を広げ、叫んだ。

「嗚呼、こういう口上、一度やってみたかったんだよな!カッコよく決まった上に、なんか御誂え向きの生贄動物まで登場したし、ボクはなんてツイてるやつなんだろうなぁ!?」

大仰な口上を叫び、宙にその身を浮かせたままその身を得意げに揺らす、コードネーム・エンペラーと名乗る謎の男。奇襲を仕掛けてきた先ほどの触手と思しき物体は、間違いなくこの男が操っているものであろう。芝居がかった男の仕草に憮然とした魔沙斗は、心の内に芽生えた得体としれない存在への恐怖を瞬間的に隠す。この程度、造作もないことであった。戦いにおいて恐れを見抜かれた場合、そのまま主導権を奪われることを意味する。

「へぇ... 随分とヘンスの欠片もない名前をつけるもんだな」

「センスがない?はぁ... お前は全くわかってないね。まぁいいか、生贄動物にボクの美学は理解できな... がぁっっ!?」

得意げに切り出された男の語りを、迸る雷撃を纏った閃光の疾走が強制的に遮る。

「いっでぇぇぇっっ!!!人が喋ってる最中に邪魔をするものじゃないよ!それも生贄動物のぶん... あっぢぃぃぃ!マジでいたいって!」

続け様に後方より放たれた束の如き閃光が次々に宙に浮き上がった男に、まるで贄に集る猛禽のように次々と襲いかかり、蹂躙する。

「オレに喧嘩うっといて、五体満足で帰れるだなんて思っちゃってるパターンか?」

閃光の発生源。灰がかった煙幕が晴れるに従って、その攻撃を発した存在であり、声の主シルエットが徐々に浮かび上がる。

「エンペラー?皇帝にしちゃあ女みてぇなヒョロい体なこと!センスも意味不明だぜ?」

先ほど負った触手による一閃によるダメージなどまるで意にも介していないといった風に、神次がその無骨な手をボキボキと鳴らしながら睨め付けるような、煽るような視線を男に向ける。

「はぁ... なんなんだいお前は。その身なり、喋り方、いかにも低脳の典型といった感じで気に入らなかったから真っ先に始末しようと思ったのに。イメージ通りしぶといんだね?まぁ、バカで体も弱かったらなんもいいところがないからね?」

「言ってくれるなぁ。たしかにオレはバカだよ。机に齧り付いて、自論がどうとか捏ねてマスかいてるような奴らの基準ではな。だけど、鈍り切ったその感覚、死の臭いに鈍感なおぼっちゃん、本当のバカはそっちだと思うぜ?」

「へぇ?意外と反論もできる。それはそれで面白いけど深みがたり...」

神次は男をまるでいないものであるかのように無視すると、魔沙斗の元へと歩き出した。

その瞬間のことである。神次に気を取られていたエンペラーと名乗る男は完全に気がつくのが完全に遅れてしまっていた。先ほどの神次が放った閃光の波状攻撃。あれは無駄に乱発されたものではなく、浮かび上がる男の頭上に備え付けられたシャンデリアを撃ち抜いていたということに。

導線が焼き切れるかの如きバチバチという不穏な電子音が鳴り響いた刹那、自重を預けていた紐が熱により切断され、その巨駆のバランスを崩した豪奢なシャンデリアが、避ける間も無く男の頭上に激突すると、そのまま男を押し潰しロビーへと押し付ける。

「バカなぁぁぁっっっっっ!?」

上品な情景を醸し出す館の内部。その中でも一際その豪勢なムードを演出する物体であったシャンデリアが、男の情けない断末魔をかき消すように床面に激突し轟音を立てる。

「器のくせに、反射神経が鈍すぎだわ」

そのレゾン・デートルを奢侈に振り切った、露悪的な権力者や富豪がその力を顕示するためだけに作られた存在。それが今、男を下敷きに床に崩れ落ちて、その身を炎に包ませている。

呆れたように、男を巻き添えに燃え盛るシャンデリアに対して一瞥を投げかけた神次。魔沙斗はその様子を目にするや否や上着の裏地にあしらわれた衣嚢より素早くピストルを取り出す。

敵対存在と権力をアピールするための豪奢な照明器具、その双方を真紅の炎で灰と変えるキャンプファイター。いや、もはや犠牲獣を焼き尽くすための祭壇。今こうして、虚栄を象徴するものたちが火にくべられる。

「流石だな神次。だがまだ力尽きてはいないだろう。トドメを刺しておかないとな」

魔沙斗が気を引き締めるかのようにその顔を強張らせると、炎上の中心地に向かってピストルのトリガーを引く。一発。

激しい銃声と共に、放たれた銃弾が燃え盛る焔に跳弾し、一際激しい爆発を引き起こす。

「な、持ってきてよかっただろ?お前はこんなものいらないと言っていたが、全時代的な凶器も時には役に立つものだ。あの腰抜け共も少しは役に立つ」

「てか、証拠はいいのか?このまま灰にしちゃったら殺したっていう証拠がなんにもなくね?」

「それは問題ない、ゴネやがったらアイツらごと地獄送りにするだけだ」

「ま、それもそうか。資料だけは見せてもらわないとね」

「その時は、こいつが再び火を噴くことになるな」

爆発の中心地から弾け飛ぶ火の粉を軽く払い、右手に構えたピストルを見据えて平然と言い放つ魔沙斗。続け様に二発、三発。その弾が爆心地に放たれ、その度に排莢が、燃え盛る炎により紅く照らされる二人の眼前に弾け飛ぶ。

仮面の男たちが自分たちの脅迫に用いたピストルを、ここの研究機関の簒奪者を倒すために必要になると言って拝借してきた甲斐があったと、内心でほくそ笑む。万が一役に立たなかったとしても、事を成し終えた後に彼らとの交渉を行う際に大いに活躍するだろう。

交渉というのは純粋に議論と議論を戦わせて権利を勝ち取る。そのようなものでは断じてなく、普段の力関係や純然たる暴力をちらつかせて、上下関係をはっきりさせるためのものであり、脅迫を多分に含んだ儀礼の一つである。
それが魔沙斗の自論であった。

「あぁ... いってぇ... それにあつい... 全身の血管、神経という神経が焼けつくか如き痛み...」

「っ...!?離れろ!」

激しく燃え盛る炎の中心地、本来もう二度と声など発することは考えられぬ、虚飾を葬る火葬の主役。本来なら物言わぬ灰となっているはずのそれが今、うめく様な声を焔の下であげたのを確かに魔沙斗は聞き逃さなかった。

「よっと!」

華麗に身を翻すと、右手から再び炎に向かって牽制打の雷撃を放ちつつ後退する神次。

「クソ外れを引いたと思ったけど... あれじゃなきゃ死んでたよ。意外とツイてるってことか、これぇ?」

灰となり、朽ちかけたシャンデリアの残骸を押し除け蘇る存在。全身が焼け爛れ、その皮膚は赤黒く変色し、体の一部から黒く焦げ付いた臓物のようなものが飛び出た歪な人型がゾンビのようによろよろとその身を起こす。その様相はまるで、生命が持つ神秘と冒涜を同時に体現しているかのようなアンビバレントさを孕んでいた。

常人ならばまず到底生きてることなど考えられない状況。命を保っていることだけでも奇跡に近いようなその存在が、こうしてよろめきながらも起き上がるという所作は明らかに常軌を逸している異常事態であった。

「ちっ... 往生際が悪ぃ...」

すぐさま蘇った男から距離をとりつつ、ピストルを構え直した魔沙斗がその銃口を男に突きつける。元々小柄な体躯であったその男の肉や皮膚が焼けて削げ落ち、針金で造られた模型人間のようなその有様は、見るものを不快にさせるには十分だった。

「うわっ、きもちわりぃ、まだ生きてんのかよ?」

よろめきながら、うまく聞き取れないうわ言をぶつぶつと呟くその存在を見て、神次も顔を顰める。

しかし、男が放つ言葉は時間と共に徐々に明瞭なものとなる。戦場で銃弾爆撃を喰らった兵士の如き惨状、もはや焼け焦げた肉達磨と化していた男の皮膚や手足、その悉くが瞬く間に元の姿へと戻ってゆく。その身体を破壊されても再生する生物と同じように、神を冒涜するかの如き動作が目の前で実行されていった。

ダンッ!!

再び魔沙斗の放った銃弾が、再生しつつある男の脳天に穴を開けた。飛び散る鮮血、濁ったな 悲鳴。しかし、銃撃も虚しくその脳天にぽっかりと開けられた音は、液体が蒸発する時にも似た音と共に忽ち塞がり、恢復してゆく。

「な、何者なんだお前は!?」

狼狽する魔沙斗とは対照的に、完全にその姿を人間としての完全さを備えた状態へと復活させた男が不機嫌そうに首をゴキゴキと鳴らす。

「体の傷は回復はしても、痛みはしっかり感じんだな... おかげで一生忘れられない体験になりそうだよまったく。やっぱり中途半端なやつを引いちまった。クソが。」

今や完全に治癒を果たし、傷一つない体のあちこちを未だ掻きむしると、その軀から翡翠のオーラを発する男。

「そうそう、バカって言われたのだけは少々許せないね。ボクは頭脳には自信があったのに。まぁいい。魔剤をたらふく飲んでおいて助かったよ。真に頭脳を駆使するものとして、二度は同じ失敗は犯さない。今度こそ永劫の責苦を与えてやるよ!」

男がヘブライ語の詠唱を口ずさむと、それに触発されたかのように、彼の頭上に白く光る巨大な獅子の顔面の幻影の様なものが現れる。

獅子の顔面からは五本ほどの馬の思しき獣の筋骨逞しい脚が生えており、胴体と思しきものは見つからない。やがてひとえ、ふたえにそれが竜巻の様に回転を始めたかと思うと、男が再び空に浮かびあがる。いつのまにか、その右の手には皮革の装丁で覆われた物々しい本が握られていた。

「あの幻影... マズいぞ!」

魔逢塾にて塾長が見せた、巨大な書架の形をとった幻影。男の頭上に浮かび上がる、獅子の貌よりグロテスクな馬と思しき畜生の脚が生えている蜃気楼のような存在は、間違いなくあの時見たものと同質のものである。

「ネロ、エラガバルス、ハドリアヌス、ユリアヌス。主の御名は貶められよ。我はYHWHの処刑人にして反骨の化身、コードネーム・エンペラー也!」

男にしては優美すぎるほどの細く白い腕、そこに抱かれた書物それ自体が妖しげな輝きを放つ。
彼が口上を叫び、彼の後方に聖人の光輪にも似てぼんやりと、それでいて荘厳な佇まいをもって現界した獅子の幻影がそれに呼応するように高らかな咆哮にも似た轟音を響かせる。

「やけにご立派な器じゃねぇか。でもそんな軀じゃ持て余すだけだと思うぜ?」

怯むこともなくまっすぐに男を見上げる神次が、上着の内部より手馴れた仕草で魔剤缶を取り出すと、流れるが如き所作でその蓋を弾き、餓えた砂漠の獣のように瞬時に飲み干すと、手の甲で口を拭う。さながらそれは血を啜った後の闘争に飢えた吸血鬼にも似た挙動であった。

「にしてもちゃちい。本気を出してその程度か?しょうもないガキの玩具みてーだな。」

「悪いね。そう言われた方がボクは燃えるんだよ。そのガキの玩具に蹂躙されるお前の顔が今から楽しみだよ」

睨み合う二人の憎まれ口を合図として、館の内部における熾烈な生命の応酬の第二幕が始まりを告げた。
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