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読み切り編
彼は婚約者
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そのとき彼は綺麗な女性と連れ立って歩いていた。きっと恋人同士なのだろうが、親密さを周囲にアピールする女性とは逆に、手も繋がなければ肩も抱かない。まるでどうでも良さそうに、薄っぺらいのに妙に優雅な笑みを浮かべて、雑踏の中に埋没していた。
「おや、知らぬ振りとは他人行儀な」
横を通り過ぎようとしたところで、彼はやんわりと私の片腕を掴んだ。一見頼りなげな風貌に似合わず、力は思いの外強い。趣味が筋トレなのだから当然と言えば当然。
「これは大変失礼致しました。本気で視界に入っておりませんでした」
神妙に頭を下げれば、隣の女性のものとは違う香水の匂いが鼻をつく。相変わらずお盛んですこと。
「何? この女」
隣の女性が胡散臭そうに私を睨んだ。
「この人は」
口を開きかけた彼を遮って、私はにこやかに微笑む。
「名乗る程の者ではございません。ただの知人です」
計ったように彼の笑みも深く、傍目には分からない程度にどす黒く染まる。
「そうよね。彼とあんたじゃ月とスッポンだもの。私の方がずっとお似合い」
あー、地雷踏んじゃったよ、このお姉さん。せっかく綺麗なのに浅はかだな。
まあ彼がつきあう女はみんなそうだ。どこから探してくるのか、外見は誂えたように彼にぴったりなのに、中身がどうしてそうなると突っ込めるくらい伴っていない。
「僕がスッポン?」
「まさか! この十人並みの女に決まってるでしょ」
けらけらと笑うピーマン女。私は逃走に失敗したことを悟り、掴まれたままの腕を振り払うのをやめた。
「知人だなんて嘘でしょ」
どうでもいいけれど、そろそろ彼の目が笑っていないことに気づけよ。
気持ちは一応分かるのよ。私は美人ではない代わりに不細工でもなく、高身長を除けばこれといった特技もない正に十人並み。だからその点に関しては悪口でも何でもない。
問題なのは彼。線の細いシルエットに落ち着いた物腰、加えて頭脳明晰。それだけでも人目を引くには充分なのに、彼の名を周囲に知らしめる最大の欠点。
「消えろ、ぶす」
今月の恋人である女性が目をまん丸くする。たぶん誰から発せられた暴言か分かっていない。
「この人を侮辱したら許さない」
そうして私の肩を抱く彼。
「この人は僕の婚約者だ」
女性が思いっきり顔を引きつらせた。そう、彼の欠点はやたらと恋に落ちまくる性質と、形だけの婚約者である私への「悪口」に執着していることだ。
「嫉妬ぐらいしてくれてもいいんじゃない?」
恋人を足蹴にした婚約者ーー九条輝に連れられるままに、彼の家を訪れた私は、勧められた紅茶を飲みながら肩を竦めた。
「えー、面倒臭い」
「僕をここまで邪険にするのは君ぐらいのものだよ、真田由良」
さっき女性にぶすと吐き捨てた男とは、同一人物とは思えない口調で拗ねる。そりゃ最初の二回くらいは私もちょっとばかし妬きましたよ。腐っても婚約者ですから。でも頻繁に恋人が変わるんじゃ、いい加減慣れて平気になりますって。
そもそも私が九条と婚約する羽目に陥ったのは、彼のふらふら女を渡り歩く性質のせいである。
「その都度恋に落ちるんだから仕方がない」
本人は至って真面目に宣うが、月に一度は必ず好きな人ができるというのだから器用なものだ。つまりどんな美女とつきあっても一ヶ月しか持たない。
そもそも私と九条は大学の同期だった。同じゼミとサークルに所属していたので、あくまで友人として親しかったのだが、ここに彼の特異なもう一つの性質が影響する。お披露目したばかりだが、何故か私への悪口雑言に対してのみ過敏に反応するのだ。
よくつるんでいる都合上勘違いされやすいけれど、九条は私に一片の愛情もない。ただ私への非難めいた文言を耳にすると、冷酷無比な一面が発動する。罵りの言葉と共に。当然恋人でも攻撃の対象になり、今日のように一時間前に恋に落ちた相手であっても切り捨ててしまう。
この病(?)は家族にも友人にも適用されることはなく、不思議で仕方がないのだが私のみに現れる。だが本人の意思は全く関わっていない為、私のことは好いてもいなければ、大切に想ってもいない。お陰で原因は謎に包まれたまま。
九条の家は昔はこの辺り一帯の地主だったそうで、現在は大手の不動産会社を営んでいる。経営者夫婦である九条の両親は、後継者であり片腕でもある息子の将来を心配しーー嫁を月替わりにするのではないかという、半ば冗談に聞こえない不安に囚われているーー、唯一特効薬となる私に頭を下げたのである。
「息子と結婚して下さい」
「お断りします」
いくら左団扇の生活が待っていようと、確実に毎月浮気する男と婚約なんて絶対ご免だった。ところがてっきり九条が上手く回避するだろうと踏んでいたのに、奴はこの提案をあっさり受け入れた。
「考えてみたら結婚した後に、お互いの妻や夫君の前で君を庇ったら、それこそ揉め事が勃発するだろう?」
月一で恋人を変えるくせに、結婚するつもりだったとは驚きだ。とはいえ私も既に二十九歳。長いこと彼氏もいないせいで、親戚総出で見合いの準備を始めている。実際に結婚するかどうかはともかく、牽制とキープとしてなら九条は好物件。脳内で算盤を弾いた結果、私も本人ではなく彼に連なるものに落ちた。
こうして婚約を結んで半年。私は望んでもいないのに、六人目の恋人を追い払ってしまったわけだ。できるだけ関わらずに済むよう、外ですれ違っても他人に徹しているのに、九条は分かっていながら私に絡んでくる。
「僕だって男なんだけどね、真田由良」
いちいちフルネームで呼ぶな。
「安心して。女には見えないから」
投げやりに返して紅茶を口に含むと、九条はらしくない重いため息をついた。
「結局くっついたんだ」
向かいの席に座る新婚夫婦が、私と九条を眺めてため息混じりに苦笑した。
「形だけね」
辛辣に吐く私に隣の九条が嘆く。
「僕の婚約者殿はいつも冷たいんだよ」
私は無視してカフェオレを飲んだ。
十月初めの日曜日。私は九条の家で大学時代の友人と会っていた。つい先日結婚したばかりの二人は、わざわざ新婚旅行のお土産を届けてくれたのだ。
「しょうがないだろ。惚れっぽい九条が悪い」
夫の岡崎が窘めれば、新妻の冴子も呆れて肩を竦める。どうでもいいことだが、新夫という表現はないんだな。
「こんな年になっても、まだ病が治らないなんて」
九条の凄いところは月に一回恋人を変えても、時期が重なったりしないことだ。それぞれの相手に義理は立てている。しかし現在は私がいるので表向き浮気に勘定される。
「由良に悪いとは思わないの?」
「真田由良は僕を好きじゃない。よって不貞にはならない」
紅茶党の九条は葉っぱ臭いお茶を優雅に啜る。私もその意見に異論はない。
「何が嫌だって、可哀想な婚約者に仕立てあげられることよ。それさえ阻止してくれれば、あとは九条が誰と懇ろになろうが関知しない」
「全くこの二人は……」
幸せいっぱいである筈の岡崎夫妻は、揃って頭を抱えてしまった。
「九条は真田に対する悪口が許せないんだよな? じゃあ例えば他の男が真田に優しくする分には問題ないのか?」
「駄目だ」
岡崎の問いに即答した九条に目を瞬いた。大学時代も社会人となってからも、私には一応彼氏というものが存在した。別れ話のもつれでぼろくそに貶されたときは、九条の病が発動したが、つきあっている間に邪魔をされたことはなかったからだ。
「何故だ?」
「今は僕がいる。他の男を近づけること自体罪だ」
「お前な」
身勝手極まりない発言に、九条以外の三人は肩を落とした。所詮こいつに常識は通用しない。考えてみれば約束もしていないのに、私の行く先々に九条はいた。これが恋心故の行動ならば救いもあるが、単純に悪口の管理では鬱陶しいだけだ。
私はこっそり隣の男を盗み見る。一般的な感覚でいけば、九条は格好いいというよりは綺麗な男だと思う。物腰も柔らかいし乱暴なところもない。筋トレの成果でちゃんと男らしい一面も持つ。
だから大学時代もモテていた。ころころ相手を変えても、恋人になりたがる女は後を絶たなかった。一方の私は身長だけは釣り合いが取れているが、髪もショートで勇ましく(友人談)、他には似合いの要素がない。
けれど私に着いて回っては、
「消えろ、ぶす」
を繰り返すので、真剣に交際を始めてもすぐに破綻を招くのだ。
そこでふと思案した。もしかして私自身が諸悪の根源なのだろうか。九条の視界に入らなければ、実はいとも平和に彼は恋人との時間を過ごせるのではなかろうか。今更感が拭えなくはあるが。
「九条が女漁りをやめなくても真田は結婚するのか?」
岡崎に話題を振られて我に帰った。
「どうだろうねえ」
「どうしてそんなに他人事なの」
不思議そうに冴子も首を傾げたが、実は私達の結婚の日取りはまだ決まっていない。息子の性質が性質なので、せめて落ち着くまでは入籍を見合わせようと、結婚を急ぐ私の家族に九条の両親が上手く待ったをかけてくれているのだ。
「挙式当日に招待客に一目惚れをされてはたまらない」
さすが親は子供のことをよく理解している。私もそんな人生勘弁願いたい。
「前途多難な婚約」
しれっと事情を話す私に、岡崎と冴子は気の毒そうな視線を向けていた。
岡崎夫妻と交流を温めた翌日、残業を終えて会社を出ると、目の前に駐めてあった車に九条が寄りかかっていた。時刻は二十時。とっくに夜の帳が降りている。
「お疲れ様」
私を見つけるなり九条は片手を上げた。まさか迎えに来たとでもいうのだろうか。自慢じゃないが九条とはデートらしいデートをしたことがない。彼の家には頻繁にお邪魔しているが、何せ常に恋人がいる男だ。下手に一緒に出歩くと、要らぬ敵を増やすことになる。
「いつもこんな時間なの?」
「早いときもあれば遅いときもある」
「だからうちで働けばいいのに」
不服そうにため息をついて、九条は助手席のドアを開けた。
「怖ろしくて仕事にならないわよ」
正式に婚約が整った後、九条不動産に勤務してはどうかと打診があった。現在の会社で経理を担当しているのが理由だが、女性従業員が全員九条のお手つきになっている可能性が高いので、断固拒否したのだ。
「真田由良は僕を何だと思っているの」
「女好き」
「未来の夫にそれはないでしょ」
婚約しておいて何だが、私はいずれ九条と結婚、もしくは夫婦になるという実感が全くない。まして九条と男女のあれこれをする、いや彼がそういった行為をするイメージが既に湧かない。実際はしているのだろうが、永遠に花から花へと渡り歩いているような気がする。
「あれ、由良じゃん。お前も今帰りか?」
足を止めたままでいると、背後から耳慣れた声がかけられた。
「和樹、お疲れ」
例の趣味仲間である三浦和樹が、わしゃわしゃと私の髪を掻き回す。高校時代に高校時代にバレーボールをしていた縁で、社内のレクリエーションである球技大会で盛り上がって以来、時間が合えば一緒に試合観戦に赴いている。気性のさっぱりした男で、彼女の悩みなんかもあっけらかんと話すので、私もたまに九条の愚痴を聞いてもらったりしていた。
「昨日のVリーグの特集観たか? 往年のプレーヤーが登場して最高だったよな」
「観た観た! もうずっとテレビに噛りついてたよ」
前夜のテレビ番組を思い出して興奮気味に答えると、和樹は悪戯っぽく目をくりくりさせて私の後ろを見た。振り返れば九条が相変わらず優雅に愛想を振り撒いている。
「あれが婚約者もどき? 想像以上に麗しいな」
嫌味ではなく本気で褒めている。
「由良だって充分格好いいけど、あんなのが隣にいたら確かに霞むよなあ。笑えないわ、俺」
実は和樹の彼女は社内でベストスリーに数えられる美人。周囲からのアプローチも半端なくて、本人曰く十人並みの彼はプロポーズをするか迷っている最中。というか格好いいとは何だ。ぶすよりはいいが。
「真田由良は僕の隣で霞むような、没個性の人間じゃありませんよ」
小声で会話していたつもりが、九条に聞こえていたらしい。私は慌てて和樹の背を押した。
「拙い、病が発動する」
さすがに友人に暴言を吐かれては堪らない。ちなみに男にはぶすではなくげすである。
「お目にかかりたい気もするが、今日のところは退散するよ。じゃあな、由良」
楽しげに手を振って和樹は去っていった。病が治まったような九条にほっと胸を撫で下ろす。
「私も帰る。またね、九条」
そう言って最寄駅に向かおうとしたら、がしっと肩を掴まれた。
「それはいくら何でも酷いよ、真田由良」
有無を言わさず私を車の助手席に座らせる。
「まさか、本当に、迎えに来たとか?」
信じられずに洩らすと、運転席に乗り込んだ九条は乱暴に車をスタートさせた。
「君は僕を何だと心得ているの」
「九条」
さっきと同じ質問にそう返す私。
「間違ってはいないけど、僕は唯一君の隣にいることを許された男ではないの?」
また悪い癖が始まった。九条は私に男の影がちらつくと、嫉妬めいた言動を取り出すのだ。普段は放っておくくせに、取られそうになると惜しくなる玩具と同じ。
「私は正式にあんたの隣にいることを許された女だけど、それに見合う扱いはされていないよ? 」
「してもいいの? 真田由良は」
「冗談でしょ。あんたの恋人のうちの一人に刺されそうだよ」
呆れてぼやく私に、九条は返事をせずにただ車を走らせていた。
九条の病が突然沈静化(?)したのは、十月も終わりに近づいた頃だった。その数日前に街中で十月の恋人とデート中にすれ違ったのだが、
「経理課の真田さん?」
偶然にも相手は社内ベストスリー美女の一人だった。どこまで手を広げているんだと、呑気な九条に舌打ちしたくなった。
「農作業でもしてらしたの?」
しかもタイミングが悪いことに、私は近所のソフトボール大会の助っ人に引っ張り出され、砂まみれのジャージ姿だった。
「悪役レスラーみたいでお似合いね」
この程度の戯言は私にとっては屁でもないが、拙いことに抑える間もなく九条の病が発動した。
「消えろ、ぶす」
よりによって言われた経験が無いであろう、自分の美しさを否定する暴言を投げつけられ、彼女は目を吊り上げて怒り狂った。それだけなら良かったのだが、彼女は社内に私に恋人を寝取られたと吹聴して回ったのである。もっとも女らしさからかけ離れた大柄な私に、その噂が信憑性を持つことは当然なく、彼女が地団太踏んで悔しがるに留まったのだが。
けれどそれ以来九条の様子が明らかに変わった。十一月の恋人とのデート中に鉢合わせしても、
「こんにちは」
程度の挨拶しかしてこないし、彼女に私との関係を問われても、大学時代の友人と真っ当な答え方をしている。
そしてもう一つ。私への悪口に無反応になった。
「九条さんの友人にしては平凡な方ね」
十一月の恋人が素直な感想を述べても、そうですねとあっさり流して終わる。このときはたまたまなのかと思ったが、季節が巡って十二月になっても新年を迎えても、九条の病は発動しない。
「女性にしてはむさくるしい」
「可愛らしさのかの字もない女」
恋人は相変わらず月一で別人になり、その都度私が彼女達に悪意を向けられても、九条はまるで憑き物が落ちたように肯定の姿勢を取り続けた。当然めでたい状況であり、また私の役割に意味がなくなったことを示してもいた。
「破棄?」
久し振りに会った冴子は、心底驚いたように目を見開いた。
「まだ申し入れた段階だけどね」
仕事帰りに待ち合わせたカフェで、それぞれ温かい飲み物で一息ついてから、私はほーっと軽く両手を伸ばした。
「九条は了承したの?」
「分からない。でも親御さんは納得してくれた」
窓の外は二月の闇。今にも雪が降りそうな街の中を、たくさんの人が急ぎ足で通り過ぎてゆく。
九条の病は完全に発動されなくなった。私の存在があろうがなかろうが、彼はひらりひらりと新たな恋人を求めて、毎月優雅にその綺麗な羽を広げている。蝶々を捕まえる虫取り網は、穴が開いて使い物にならなくなった。
「私ではもうお役に立てないと思います」
バレンタインデーである昨夜、私は九条家を訪れて正式に婚約破棄を申し入れた。皮肉にも九条宛のチョコレートが並ぶリビングで、彼の両親は複雑な表情を浮かべていた。この日を選んだのは、九条が必ず留守だと踏んだからだ。
「ごめんなさい。九条の経歴に傷をつけることになって」
嫁にと望まれた婚約ではなかった。だが私も損得勘定をした上で結んだ婚約だ。被害者面できる立場ではないし、実質被害など微塵もない。むしろ親戚連中からよくやったと拍手喝采を浴びたくらいだ。
「そんなことは気にしなくていいの、そもそも輝に問題があるんだから。でも私達としてはこのまま由良さんに婚約者でいて欲しいのよ?」
邪な自分にはありがたい言葉である。でも私の役目は九条のストッパーであって、本来の意味での伴侶になることではない。それが果たせないのなら、婚約者でいる意味がそもそもない。
「おそらく輝もショックを受けると思うが」
顎に手を当てて考え込む九条の父親に、私はやんわりと首を振った。二人の間に友情はあるかもしれないが、愛情などというこっ恥ずかしいものは皆無だ。
それに病が発動しなくなってから、私がこの家を訪れる機会も減り、九条とはろくに顔も合わせていない。それでも電話一つかけてこないのだ。所詮その程度の繋がり。
「お世話になりました」
渋る九条の両親を何とか説き伏せ(彼らにとっては私は最後の砦だったのだろう)、私は居心地のいいリビングを後にする。
ーー再びこの家を訪れることはあるだろうか。
去り際に二階建ての家屋を振り返る。不動産を取り扱っているのに、無駄に広くも豪華でもない、でも人の温もりを感じるこの家は案外好きだった。いつかお互い家庭を持って、昔を懐かしむことが出来るようになったら、冴子達と一緒に足を運べる日も来るかもしれない。
「後味の悪い結末ね」
コーヒーで暖を取りながら、冴子が残念そうに目を伏せた。
「でも男女の仲ではないから、感情のもつれはないし、さほど気まずいことにはならないと思う」
当事者よりも冴子の方が沈んでいるので、私は景気づけのつもりで明るく言った。
「は?」
つもりだった。ところが冴子は今度はぎょっと目を剥いた。忙しいな。
「九条、由良に手を出していないの?」
「当然でしょ? 私達つきあっていたわけじゃないんだよ」
何を勘違いしているのか知らないが、怪しい雰囲気にすらなったことがない。
「おうちデートの謎が解けた」
由良はがっくりと項垂れた。
「デートじゃないって。そんなもんしたくないから、九条は家に招んでいたんじゃない」
金も暇もかける価値のない相手だという証拠だ。仮にも婚約者なのにずいぶん安く見積もられたものだ。ある意味さすが不動産のプロ。
「哀れだわ」
けれど誰に対してなのか、冴子はそう呟いたきり遠い目をしていた。
あんなへんてこな奴でも、それなりに暇潰しにはなっていたらしい。会社の後輩女子から貰ったチョコレートを摘まみながら、私は休日の気怠い午後を自室でだらだら過ごしていた。昨日のバレンタインデーは土曜日。九条はおそらく二月の恋人としっぽりお泊りでもしていたことだろう。
「今年は三十なのよ。あんないい人を逃がしてどうするつもりなの」
婚約を破棄したことを報告すると(まだ決定ではないが)、母は烈火の如く怒り出した。私が実家で脛かじりをしているせいで、跡取りである兄夫婦を呼び寄せることができずにいる母は、今すぐにでも私を嫁に出したくて仕方がないのだ。
「職はあるんだから、いざとなったら一人で生きてゆく算段をつけるよ」
寄生する予定はないと胸を張ったのに、母はこの馬鹿娘がと思いの外落胆していた。こうしてみると男はともかく女の三十は微妙だ。本人が焦っていなくても周囲がこれでもかというくらい気を揉む。仕事も趣味も楽しくて、お金にも不自由していないのに、何故それを満喫してはいけないのだろう。やはり出産に影響するからだろうか。
「子供はいつでもいいから」
旦那の両親に優しい言葉をかけられた友人は、結婚したが最後毎日男を産めと念仏の如く唱えられ、半ば半狂乱になっていた。無事に男児を産んだ暁には涙を流して安堵する始末。正直背筋がぞっとした。
「馬鹿息子と結婚してくれるだけで充分です」
そう考えると九条の両親は何とも控えめだった。元は地主様なのに偉ぶったところは一つもなく、結婚の時期を急かしもしなければ、私の仕事や趣味を制限することもなかった。息子の嫁としては知も美も大分不足していたんだろうに。
「真田由良!」
けたたましい足音と共に勢いよく部屋のドアが開いた。
「九条?」
いつも整っている髪を振り乱し、マラソンでもしてきたのか苦し気に肩で息をしている。十年近いつきあいだが、こんなに慌てている姿は初めてかもしれない。
「これはあんたのをくすねたわけじゃないからね。私が貰ったものだから」
手にチョコレートを持っていたこともあり、私は疑いをかけられる前に弁明した。誕生日に同僚から好物のお菓子をプレゼントされたとき、自分の物だと勘違いした九条にごねられて大変だったのだ。
「誰もそんなこと、聞いてない」
ようやく通常の呼吸に戻った九条は、律儀に部屋のドアを閉めてから私の隣に腰を下ろした。ちなみに私の部屋は和室なのだが、畳に座る九条にはいつまで経っても慣れない。
「でも前にお菓子を」
「あれは男から贈られたものでしょ。だから怒っただけだよ」
普段の穏やかさは何処へやらいやに不機嫌だ。
「婚約破棄、したいんだって?」
「ああ、それでか」
基本的には礼儀正しいのだろう。九条が連絡なしで我が家を訪ねたことはない。もっともここ数カ月の二人の関係を鑑みれば、彼にとっても寝耳に水の話ではなかろう。
「あんたの暴走を止める為の婚約だったからね。その効果が発揮できなければ破棄するのは当たり前」
「本気なの?」
「だってもう私に利用価値はないよ?」
無くしたのはあんた自身だよ、九条。
「利用価値……」
呆然と呟いた後、九条はきっと表情を引き締めた。鋭い視線でこちらを睨めつける。
「責任、ちゃんと取ってよ」
慰謝料でも払えというのだろうか。破棄の原因を作ったのは九条なのに意味不明だ。
「いくら?」
あえて訊ねてやると九条は激昂した。
「屍と化す僕の気持ちを回収しろってことだよ!」
「屍?」
「何処の世界にどうでもいい女の悪口を言われて腹を立てる男がいる!」
「句読点だっけ? つけてくんないかな。早口で訳分かんない」
「真田由良!」
会話をぶった切るように喚く九条。あー、煩い。一旦黙らせる為に私は彼の口にチョコレートを放り込んだ。咀嚼しながらも悔しそうに唇を噛む。器用だな、おい。
「二月の恋人はどうしたの? 昨日から一緒だったんじゃないの?」
「真田由良は意地悪だね。大学のときからそうだった」
「単なる事実確認でしょ。人聞き悪い」
「昨夜は一人だったよ。ずっと君からの連絡を待っていたのに」
「電話が欲しいとメールすればよかったじゃない」
「バレンタインデーだったんだよ? こんな日に他の女の名前を出す?」
「名前なんて知らないから出してないけど」
絶望したように言葉を失った九条は、おずおずとそれは遠慮がちに私に抱き着いた。まるで捨てないでと縋るが如く。彼とのまともな触れ合いはこれが初めてで、想像以上に逞しい体に私の頭は真っ白になった。
「真田由良は」
ドキドキと不規則な音が二人の間に響く。
「こんな人の気持ちを全く解さない、意地悪で酷い女なのに」
「喧嘩、売ってんの?」
歯向かってみたものの、些か迫力に欠ける。
「抱いてしまわないように、わざわざ親のいる時間に家に招んでいたのに」
九条にも性欲あったのか。というかさらっと爆弾発言すんな。ああ、でも冴子がそれらしいことをぼやいていた。哀れだとか何とか。
「あんた病は治ったんじゃなかったの?」
「一生治らない」
弱々しく呟いてから、九条は私の耳元で小さくごめんとつけ加えた。十月の恋人から私が必要以上に傷つけられたことで、相当自責の念に駆られていたらしい。自分が私に関わらなければ物事が平和に解決すると判断し、私自身はさしたる打撃でもなかったのに、そのせいで病を発動するのを止めた、と。それが婚約破棄に至るとは想像もせずに。
「あんたの病、自発的なもんだったの?」
聞き捨てならない文言に驚いて怒鳴ると、九条はやはり気づいていなかったんだねとため息をついた。
「真田由良以外は皆とっくに分かっているのに」
「だって矛盾してるじゃない? そもそもその病って何」
「まだ気づかないの? 恋の病に決まってるでしょ」
「はあ?」
両手で九条の胸を力一杯押すと、彼はあっさり私から離れた。そのくせ今頃真っ赤になって、
「真田由良、柔らかい」
可愛げのないでかいだけが取り柄の私に、女を意識したような素振りを見せる。
「もう一回、駄目?」
やめい、もじもじすんな。こっちが恥ずかしくなる。
「ごめん九条。いろいろとこんがらがってきたんだけど」
こめかみを押さえて唸る私に、九条はチョコレートよりも甘ったるい極上の笑みを浮かべた。
「答えは簡単。僕が好きなのは今も昔も真田由良だけだよ」
春は恋の季節。よって色とりどりの咲き誇る花の匂いに釣られて、嬉しそうにあちこち自由に飛んでゆくのである。私のどうしようもない婚約者は。
「九条は落ち着いたんじゃなかったの?」
相変わらずふらふらしている九条に、カフェの窓際の席で冴子がうんざりしたように顔を顰めた。ちなみに窓の外では九条が四月の恋人とデート中。
「腐っても九条たる所以だわよ」
私はふんと鼻を鳴らした。婚約して一年が過ぎても九条は一向に変わらない。花から花へと渡り歩くし、病の発動も復活させた。
「由良はそれでいいの?」
九条から思いがけない告白を受けて、とりあえず私は婚約破棄をするのを考え直した。というより現状処理に頭が追いつかず、いったん棚上げした形だ。両家の家族からは大分喜ばれたけれど。
「仕方がないよね。あんな男に捕まっちゃったんだから」
大学時代から私を慕っていたという言葉は、胡散臭くて到底鵜呑みにはできないが、背格好が似ている私を守れるよう筋トレを始めたなんて聞かされれば、ちょっとは絆されるというものだ。実際私に対する悪意をずっと払い除けてくれた男は、九条一人きりなのだし。
「どんなに遠くまで行っても、僕は必ず真田由良の元に帰るよ」
一度くらいは浮気男の典型的な台詞を真に受けてやろう。
「一応大団円、なのかしら……ん?」
外を眺めていた冴子がふと眉間に皺を寄せた。こちらを指差して何事か喚く四月の恋人に、九条の全身から黒いオーラが漂っている。拙いと直感的に思ったときには、彼の口がお決まりの形に動いた。
ーー消えろ、ぶす。
去ってゆく恋人に未練のみの字も見せず、九条はにこやかに私に手を振っている。冴子は吹き出しつつも拍手を送っていた。
「本当にしょうがないんだから」
懲りない婚約者に私は呆れて肩を竦めた。なのにほんのり胸が温かくなるのは何故だろう。きっと春の陽気のせいに違いない。
「おや、知らぬ振りとは他人行儀な」
横を通り過ぎようとしたところで、彼はやんわりと私の片腕を掴んだ。一見頼りなげな風貌に似合わず、力は思いの外強い。趣味が筋トレなのだから当然と言えば当然。
「これは大変失礼致しました。本気で視界に入っておりませんでした」
神妙に頭を下げれば、隣の女性のものとは違う香水の匂いが鼻をつく。相変わらずお盛んですこと。
「何? この女」
隣の女性が胡散臭そうに私を睨んだ。
「この人は」
口を開きかけた彼を遮って、私はにこやかに微笑む。
「名乗る程の者ではございません。ただの知人です」
計ったように彼の笑みも深く、傍目には分からない程度にどす黒く染まる。
「そうよね。彼とあんたじゃ月とスッポンだもの。私の方がずっとお似合い」
あー、地雷踏んじゃったよ、このお姉さん。せっかく綺麗なのに浅はかだな。
まあ彼がつきあう女はみんなそうだ。どこから探してくるのか、外見は誂えたように彼にぴったりなのに、中身がどうしてそうなると突っ込めるくらい伴っていない。
「僕がスッポン?」
「まさか! この十人並みの女に決まってるでしょ」
けらけらと笑うピーマン女。私は逃走に失敗したことを悟り、掴まれたままの腕を振り払うのをやめた。
「知人だなんて嘘でしょ」
どうでもいいけれど、そろそろ彼の目が笑っていないことに気づけよ。
気持ちは一応分かるのよ。私は美人ではない代わりに不細工でもなく、高身長を除けばこれといった特技もない正に十人並み。だからその点に関しては悪口でも何でもない。
問題なのは彼。線の細いシルエットに落ち着いた物腰、加えて頭脳明晰。それだけでも人目を引くには充分なのに、彼の名を周囲に知らしめる最大の欠点。
「消えろ、ぶす」
今月の恋人である女性が目をまん丸くする。たぶん誰から発せられた暴言か分かっていない。
「この人を侮辱したら許さない」
そうして私の肩を抱く彼。
「この人は僕の婚約者だ」
女性が思いっきり顔を引きつらせた。そう、彼の欠点はやたらと恋に落ちまくる性質と、形だけの婚約者である私への「悪口」に執着していることだ。
「嫉妬ぐらいしてくれてもいいんじゃない?」
恋人を足蹴にした婚約者ーー九条輝に連れられるままに、彼の家を訪れた私は、勧められた紅茶を飲みながら肩を竦めた。
「えー、面倒臭い」
「僕をここまで邪険にするのは君ぐらいのものだよ、真田由良」
さっき女性にぶすと吐き捨てた男とは、同一人物とは思えない口調で拗ねる。そりゃ最初の二回くらいは私もちょっとばかし妬きましたよ。腐っても婚約者ですから。でも頻繁に恋人が変わるんじゃ、いい加減慣れて平気になりますって。
そもそも私が九条と婚約する羽目に陥ったのは、彼のふらふら女を渡り歩く性質のせいである。
「その都度恋に落ちるんだから仕方がない」
本人は至って真面目に宣うが、月に一度は必ず好きな人ができるというのだから器用なものだ。つまりどんな美女とつきあっても一ヶ月しか持たない。
そもそも私と九条は大学の同期だった。同じゼミとサークルに所属していたので、あくまで友人として親しかったのだが、ここに彼の特異なもう一つの性質が影響する。お披露目したばかりだが、何故か私への悪口雑言に対してのみ過敏に反応するのだ。
よくつるんでいる都合上勘違いされやすいけれど、九条は私に一片の愛情もない。ただ私への非難めいた文言を耳にすると、冷酷無比な一面が発動する。罵りの言葉と共に。当然恋人でも攻撃の対象になり、今日のように一時間前に恋に落ちた相手であっても切り捨ててしまう。
この病(?)は家族にも友人にも適用されることはなく、不思議で仕方がないのだが私のみに現れる。だが本人の意思は全く関わっていない為、私のことは好いてもいなければ、大切に想ってもいない。お陰で原因は謎に包まれたまま。
九条の家は昔はこの辺り一帯の地主だったそうで、現在は大手の不動産会社を営んでいる。経営者夫婦である九条の両親は、後継者であり片腕でもある息子の将来を心配しーー嫁を月替わりにするのではないかという、半ば冗談に聞こえない不安に囚われているーー、唯一特効薬となる私に頭を下げたのである。
「息子と結婚して下さい」
「お断りします」
いくら左団扇の生活が待っていようと、確実に毎月浮気する男と婚約なんて絶対ご免だった。ところがてっきり九条が上手く回避するだろうと踏んでいたのに、奴はこの提案をあっさり受け入れた。
「考えてみたら結婚した後に、お互いの妻や夫君の前で君を庇ったら、それこそ揉め事が勃発するだろう?」
月一で恋人を変えるくせに、結婚するつもりだったとは驚きだ。とはいえ私も既に二十九歳。長いこと彼氏もいないせいで、親戚総出で見合いの準備を始めている。実際に結婚するかどうかはともかく、牽制とキープとしてなら九条は好物件。脳内で算盤を弾いた結果、私も本人ではなく彼に連なるものに落ちた。
こうして婚約を結んで半年。私は望んでもいないのに、六人目の恋人を追い払ってしまったわけだ。できるだけ関わらずに済むよう、外ですれ違っても他人に徹しているのに、九条は分かっていながら私に絡んでくる。
「僕だって男なんだけどね、真田由良」
いちいちフルネームで呼ぶな。
「安心して。女には見えないから」
投げやりに返して紅茶を口に含むと、九条はらしくない重いため息をついた。
「結局くっついたんだ」
向かいの席に座る新婚夫婦が、私と九条を眺めてため息混じりに苦笑した。
「形だけね」
辛辣に吐く私に隣の九条が嘆く。
「僕の婚約者殿はいつも冷たいんだよ」
私は無視してカフェオレを飲んだ。
十月初めの日曜日。私は九条の家で大学時代の友人と会っていた。つい先日結婚したばかりの二人は、わざわざ新婚旅行のお土産を届けてくれたのだ。
「しょうがないだろ。惚れっぽい九条が悪い」
夫の岡崎が窘めれば、新妻の冴子も呆れて肩を竦める。どうでもいいことだが、新夫という表現はないんだな。
「こんな年になっても、まだ病が治らないなんて」
九条の凄いところは月に一回恋人を変えても、時期が重なったりしないことだ。それぞれの相手に義理は立てている。しかし現在は私がいるので表向き浮気に勘定される。
「由良に悪いとは思わないの?」
「真田由良は僕を好きじゃない。よって不貞にはならない」
紅茶党の九条は葉っぱ臭いお茶を優雅に啜る。私もその意見に異論はない。
「何が嫌だって、可哀想な婚約者に仕立てあげられることよ。それさえ阻止してくれれば、あとは九条が誰と懇ろになろうが関知しない」
「全くこの二人は……」
幸せいっぱいである筈の岡崎夫妻は、揃って頭を抱えてしまった。
「九条は真田に対する悪口が許せないんだよな? じゃあ例えば他の男が真田に優しくする分には問題ないのか?」
「駄目だ」
岡崎の問いに即答した九条に目を瞬いた。大学時代も社会人となってからも、私には一応彼氏というものが存在した。別れ話のもつれでぼろくそに貶されたときは、九条の病が発動したが、つきあっている間に邪魔をされたことはなかったからだ。
「何故だ?」
「今は僕がいる。他の男を近づけること自体罪だ」
「お前な」
身勝手極まりない発言に、九条以外の三人は肩を落とした。所詮こいつに常識は通用しない。考えてみれば約束もしていないのに、私の行く先々に九条はいた。これが恋心故の行動ならば救いもあるが、単純に悪口の管理では鬱陶しいだけだ。
私はこっそり隣の男を盗み見る。一般的な感覚でいけば、九条は格好いいというよりは綺麗な男だと思う。物腰も柔らかいし乱暴なところもない。筋トレの成果でちゃんと男らしい一面も持つ。
だから大学時代もモテていた。ころころ相手を変えても、恋人になりたがる女は後を絶たなかった。一方の私は身長だけは釣り合いが取れているが、髪もショートで勇ましく(友人談)、他には似合いの要素がない。
けれど私に着いて回っては、
「消えろ、ぶす」
を繰り返すので、真剣に交際を始めてもすぐに破綻を招くのだ。
そこでふと思案した。もしかして私自身が諸悪の根源なのだろうか。九条の視界に入らなければ、実はいとも平和に彼は恋人との時間を過ごせるのではなかろうか。今更感が拭えなくはあるが。
「九条が女漁りをやめなくても真田は結婚するのか?」
岡崎に話題を振られて我に帰った。
「どうだろうねえ」
「どうしてそんなに他人事なの」
不思議そうに冴子も首を傾げたが、実は私達の結婚の日取りはまだ決まっていない。息子の性質が性質なので、せめて落ち着くまでは入籍を見合わせようと、結婚を急ぐ私の家族に九条の両親が上手く待ったをかけてくれているのだ。
「挙式当日に招待客に一目惚れをされてはたまらない」
さすが親は子供のことをよく理解している。私もそんな人生勘弁願いたい。
「前途多難な婚約」
しれっと事情を話す私に、岡崎と冴子は気の毒そうな視線を向けていた。
岡崎夫妻と交流を温めた翌日、残業を終えて会社を出ると、目の前に駐めてあった車に九条が寄りかかっていた。時刻は二十時。とっくに夜の帳が降りている。
「お疲れ様」
私を見つけるなり九条は片手を上げた。まさか迎えに来たとでもいうのだろうか。自慢じゃないが九条とはデートらしいデートをしたことがない。彼の家には頻繁にお邪魔しているが、何せ常に恋人がいる男だ。下手に一緒に出歩くと、要らぬ敵を増やすことになる。
「いつもこんな時間なの?」
「早いときもあれば遅いときもある」
「だからうちで働けばいいのに」
不服そうにため息をついて、九条は助手席のドアを開けた。
「怖ろしくて仕事にならないわよ」
正式に婚約が整った後、九条不動産に勤務してはどうかと打診があった。現在の会社で経理を担当しているのが理由だが、女性従業員が全員九条のお手つきになっている可能性が高いので、断固拒否したのだ。
「真田由良は僕を何だと思っているの」
「女好き」
「未来の夫にそれはないでしょ」
婚約しておいて何だが、私はいずれ九条と結婚、もしくは夫婦になるという実感が全くない。まして九条と男女のあれこれをする、いや彼がそういった行為をするイメージが既に湧かない。実際はしているのだろうが、永遠に花から花へと渡り歩いているような気がする。
「あれ、由良じゃん。お前も今帰りか?」
足を止めたままでいると、背後から耳慣れた声がかけられた。
「和樹、お疲れ」
例の趣味仲間である三浦和樹が、わしゃわしゃと私の髪を掻き回す。高校時代に高校時代にバレーボールをしていた縁で、社内のレクリエーションである球技大会で盛り上がって以来、時間が合えば一緒に試合観戦に赴いている。気性のさっぱりした男で、彼女の悩みなんかもあっけらかんと話すので、私もたまに九条の愚痴を聞いてもらったりしていた。
「昨日のVリーグの特集観たか? 往年のプレーヤーが登場して最高だったよな」
「観た観た! もうずっとテレビに噛りついてたよ」
前夜のテレビ番組を思い出して興奮気味に答えると、和樹は悪戯っぽく目をくりくりさせて私の後ろを見た。振り返れば九条が相変わらず優雅に愛想を振り撒いている。
「あれが婚約者もどき? 想像以上に麗しいな」
嫌味ではなく本気で褒めている。
「由良だって充分格好いいけど、あんなのが隣にいたら確かに霞むよなあ。笑えないわ、俺」
実は和樹の彼女は社内でベストスリーに数えられる美人。周囲からのアプローチも半端なくて、本人曰く十人並みの彼はプロポーズをするか迷っている最中。というか格好いいとは何だ。ぶすよりはいいが。
「真田由良は僕の隣で霞むような、没個性の人間じゃありませんよ」
小声で会話していたつもりが、九条に聞こえていたらしい。私は慌てて和樹の背を押した。
「拙い、病が発動する」
さすがに友人に暴言を吐かれては堪らない。ちなみに男にはぶすではなくげすである。
「お目にかかりたい気もするが、今日のところは退散するよ。じゃあな、由良」
楽しげに手を振って和樹は去っていった。病が治まったような九条にほっと胸を撫で下ろす。
「私も帰る。またね、九条」
そう言って最寄駅に向かおうとしたら、がしっと肩を掴まれた。
「それはいくら何でも酷いよ、真田由良」
有無を言わさず私を車の助手席に座らせる。
「まさか、本当に、迎えに来たとか?」
信じられずに洩らすと、運転席に乗り込んだ九条は乱暴に車をスタートさせた。
「君は僕を何だと心得ているの」
「九条」
さっきと同じ質問にそう返す私。
「間違ってはいないけど、僕は唯一君の隣にいることを許された男ではないの?」
また悪い癖が始まった。九条は私に男の影がちらつくと、嫉妬めいた言動を取り出すのだ。普段は放っておくくせに、取られそうになると惜しくなる玩具と同じ。
「私は正式にあんたの隣にいることを許された女だけど、それに見合う扱いはされていないよ? 」
「してもいいの? 真田由良は」
「冗談でしょ。あんたの恋人のうちの一人に刺されそうだよ」
呆れてぼやく私に、九条は返事をせずにただ車を走らせていた。
九条の病が突然沈静化(?)したのは、十月も終わりに近づいた頃だった。その数日前に街中で十月の恋人とデート中にすれ違ったのだが、
「経理課の真田さん?」
偶然にも相手は社内ベストスリー美女の一人だった。どこまで手を広げているんだと、呑気な九条に舌打ちしたくなった。
「農作業でもしてらしたの?」
しかもタイミングが悪いことに、私は近所のソフトボール大会の助っ人に引っ張り出され、砂まみれのジャージ姿だった。
「悪役レスラーみたいでお似合いね」
この程度の戯言は私にとっては屁でもないが、拙いことに抑える間もなく九条の病が発動した。
「消えろ、ぶす」
よりによって言われた経験が無いであろう、自分の美しさを否定する暴言を投げつけられ、彼女は目を吊り上げて怒り狂った。それだけなら良かったのだが、彼女は社内に私に恋人を寝取られたと吹聴して回ったのである。もっとも女らしさからかけ離れた大柄な私に、その噂が信憑性を持つことは当然なく、彼女が地団太踏んで悔しがるに留まったのだが。
けれどそれ以来九条の様子が明らかに変わった。十一月の恋人とのデート中に鉢合わせしても、
「こんにちは」
程度の挨拶しかしてこないし、彼女に私との関係を問われても、大学時代の友人と真っ当な答え方をしている。
そしてもう一つ。私への悪口に無反応になった。
「九条さんの友人にしては平凡な方ね」
十一月の恋人が素直な感想を述べても、そうですねとあっさり流して終わる。このときはたまたまなのかと思ったが、季節が巡って十二月になっても新年を迎えても、九条の病は発動しない。
「女性にしてはむさくるしい」
「可愛らしさのかの字もない女」
恋人は相変わらず月一で別人になり、その都度私が彼女達に悪意を向けられても、九条はまるで憑き物が落ちたように肯定の姿勢を取り続けた。当然めでたい状況であり、また私の役割に意味がなくなったことを示してもいた。
「破棄?」
久し振りに会った冴子は、心底驚いたように目を見開いた。
「まだ申し入れた段階だけどね」
仕事帰りに待ち合わせたカフェで、それぞれ温かい飲み物で一息ついてから、私はほーっと軽く両手を伸ばした。
「九条は了承したの?」
「分からない。でも親御さんは納得してくれた」
窓の外は二月の闇。今にも雪が降りそうな街の中を、たくさんの人が急ぎ足で通り過ぎてゆく。
九条の病は完全に発動されなくなった。私の存在があろうがなかろうが、彼はひらりひらりと新たな恋人を求めて、毎月優雅にその綺麗な羽を広げている。蝶々を捕まえる虫取り網は、穴が開いて使い物にならなくなった。
「私ではもうお役に立てないと思います」
バレンタインデーである昨夜、私は九条家を訪れて正式に婚約破棄を申し入れた。皮肉にも九条宛のチョコレートが並ぶリビングで、彼の両親は複雑な表情を浮かべていた。この日を選んだのは、九条が必ず留守だと踏んだからだ。
「ごめんなさい。九条の経歴に傷をつけることになって」
嫁にと望まれた婚約ではなかった。だが私も損得勘定をした上で結んだ婚約だ。被害者面できる立場ではないし、実質被害など微塵もない。むしろ親戚連中からよくやったと拍手喝采を浴びたくらいだ。
「そんなことは気にしなくていいの、そもそも輝に問題があるんだから。でも私達としてはこのまま由良さんに婚約者でいて欲しいのよ?」
邪な自分にはありがたい言葉である。でも私の役目は九条のストッパーであって、本来の意味での伴侶になることではない。それが果たせないのなら、婚約者でいる意味がそもそもない。
「おそらく輝もショックを受けると思うが」
顎に手を当てて考え込む九条の父親に、私はやんわりと首を振った。二人の間に友情はあるかもしれないが、愛情などというこっ恥ずかしいものは皆無だ。
それに病が発動しなくなってから、私がこの家を訪れる機会も減り、九条とはろくに顔も合わせていない。それでも電話一つかけてこないのだ。所詮その程度の繋がり。
「お世話になりました」
渋る九条の両親を何とか説き伏せ(彼らにとっては私は最後の砦だったのだろう)、私は居心地のいいリビングを後にする。
ーー再びこの家を訪れることはあるだろうか。
去り際に二階建ての家屋を振り返る。不動産を取り扱っているのに、無駄に広くも豪華でもない、でも人の温もりを感じるこの家は案外好きだった。いつかお互い家庭を持って、昔を懐かしむことが出来るようになったら、冴子達と一緒に足を運べる日も来るかもしれない。
「後味の悪い結末ね」
コーヒーで暖を取りながら、冴子が残念そうに目を伏せた。
「でも男女の仲ではないから、感情のもつれはないし、さほど気まずいことにはならないと思う」
当事者よりも冴子の方が沈んでいるので、私は景気づけのつもりで明るく言った。
「は?」
つもりだった。ところが冴子は今度はぎょっと目を剥いた。忙しいな。
「九条、由良に手を出していないの?」
「当然でしょ? 私達つきあっていたわけじゃないんだよ」
何を勘違いしているのか知らないが、怪しい雰囲気にすらなったことがない。
「おうちデートの謎が解けた」
由良はがっくりと項垂れた。
「デートじゃないって。そんなもんしたくないから、九条は家に招んでいたんじゃない」
金も暇もかける価値のない相手だという証拠だ。仮にも婚約者なのにずいぶん安く見積もられたものだ。ある意味さすが不動産のプロ。
「哀れだわ」
けれど誰に対してなのか、冴子はそう呟いたきり遠い目をしていた。
あんなへんてこな奴でも、それなりに暇潰しにはなっていたらしい。会社の後輩女子から貰ったチョコレートを摘まみながら、私は休日の気怠い午後を自室でだらだら過ごしていた。昨日のバレンタインデーは土曜日。九条はおそらく二月の恋人としっぽりお泊りでもしていたことだろう。
「今年は三十なのよ。あんないい人を逃がしてどうするつもりなの」
婚約を破棄したことを報告すると(まだ決定ではないが)、母は烈火の如く怒り出した。私が実家で脛かじりをしているせいで、跡取りである兄夫婦を呼び寄せることができずにいる母は、今すぐにでも私を嫁に出したくて仕方がないのだ。
「職はあるんだから、いざとなったら一人で生きてゆく算段をつけるよ」
寄生する予定はないと胸を張ったのに、母はこの馬鹿娘がと思いの外落胆していた。こうしてみると男はともかく女の三十は微妙だ。本人が焦っていなくても周囲がこれでもかというくらい気を揉む。仕事も趣味も楽しくて、お金にも不自由していないのに、何故それを満喫してはいけないのだろう。やはり出産に影響するからだろうか。
「子供はいつでもいいから」
旦那の両親に優しい言葉をかけられた友人は、結婚したが最後毎日男を産めと念仏の如く唱えられ、半ば半狂乱になっていた。無事に男児を産んだ暁には涙を流して安堵する始末。正直背筋がぞっとした。
「馬鹿息子と結婚してくれるだけで充分です」
そう考えると九条の両親は何とも控えめだった。元は地主様なのに偉ぶったところは一つもなく、結婚の時期を急かしもしなければ、私の仕事や趣味を制限することもなかった。息子の嫁としては知も美も大分不足していたんだろうに。
「真田由良!」
けたたましい足音と共に勢いよく部屋のドアが開いた。
「九条?」
いつも整っている髪を振り乱し、マラソンでもしてきたのか苦し気に肩で息をしている。十年近いつきあいだが、こんなに慌てている姿は初めてかもしれない。
「これはあんたのをくすねたわけじゃないからね。私が貰ったものだから」
手にチョコレートを持っていたこともあり、私は疑いをかけられる前に弁明した。誕生日に同僚から好物のお菓子をプレゼントされたとき、自分の物だと勘違いした九条にごねられて大変だったのだ。
「誰もそんなこと、聞いてない」
ようやく通常の呼吸に戻った九条は、律儀に部屋のドアを閉めてから私の隣に腰を下ろした。ちなみに私の部屋は和室なのだが、畳に座る九条にはいつまで経っても慣れない。
「でも前にお菓子を」
「あれは男から贈られたものでしょ。だから怒っただけだよ」
普段の穏やかさは何処へやらいやに不機嫌だ。
「婚約破棄、したいんだって?」
「ああ、それでか」
基本的には礼儀正しいのだろう。九条が連絡なしで我が家を訪ねたことはない。もっともここ数カ月の二人の関係を鑑みれば、彼にとっても寝耳に水の話ではなかろう。
「あんたの暴走を止める為の婚約だったからね。その効果が発揮できなければ破棄するのは当たり前」
「本気なの?」
「だってもう私に利用価値はないよ?」
無くしたのはあんた自身だよ、九条。
「利用価値……」
呆然と呟いた後、九条はきっと表情を引き締めた。鋭い視線でこちらを睨めつける。
「責任、ちゃんと取ってよ」
慰謝料でも払えというのだろうか。破棄の原因を作ったのは九条なのに意味不明だ。
「いくら?」
あえて訊ねてやると九条は激昂した。
「屍と化す僕の気持ちを回収しろってことだよ!」
「屍?」
「何処の世界にどうでもいい女の悪口を言われて腹を立てる男がいる!」
「句読点だっけ? つけてくんないかな。早口で訳分かんない」
「真田由良!」
会話をぶった切るように喚く九条。あー、煩い。一旦黙らせる為に私は彼の口にチョコレートを放り込んだ。咀嚼しながらも悔しそうに唇を噛む。器用だな、おい。
「二月の恋人はどうしたの? 昨日から一緒だったんじゃないの?」
「真田由良は意地悪だね。大学のときからそうだった」
「単なる事実確認でしょ。人聞き悪い」
「昨夜は一人だったよ。ずっと君からの連絡を待っていたのに」
「電話が欲しいとメールすればよかったじゃない」
「バレンタインデーだったんだよ? こんな日に他の女の名前を出す?」
「名前なんて知らないから出してないけど」
絶望したように言葉を失った九条は、おずおずとそれは遠慮がちに私に抱き着いた。まるで捨てないでと縋るが如く。彼とのまともな触れ合いはこれが初めてで、想像以上に逞しい体に私の頭は真っ白になった。
「真田由良は」
ドキドキと不規則な音が二人の間に響く。
「こんな人の気持ちを全く解さない、意地悪で酷い女なのに」
「喧嘩、売ってんの?」
歯向かってみたものの、些か迫力に欠ける。
「抱いてしまわないように、わざわざ親のいる時間に家に招んでいたのに」
九条にも性欲あったのか。というかさらっと爆弾発言すんな。ああ、でも冴子がそれらしいことをぼやいていた。哀れだとか何とか。
「あんた病は治ったんじゃなかったの?」
「一生治らない」
弱々しく呟いてから、九条は私の耳元で小さくごめんとつけ加えた。十月の恋人から私が必要以上に傷つけられたことで、相当自責の念に駆られていたらしい。自分が私に関わらなければ物事が平和に解決すると判断し、私自身はさしたる打撃でもなかったのに、そのせいで病を発動するのを止めた、と。それが婚約破棄に至るとは想像もせずに。
「あんたの病、自発的なもんだったの?」
聞き捨てならない文言に驚いて怒鳴ると、九条はやはり気づいていなかったんだねとため息をついた。
「真田由良以外は皆とっくに分かっているのに」
「だって矛盾してるじゃない? そもそもその病って何」
「まだ気づかないの? 恋の病に決まってるでしょ」
「はあ?」
両手で九条の胸を力一杯押すと、彼はあっさり私から離れた。そのくせ今頃真っ赤になって、
「真田由良、柔らかい」
可愛げのないでかいだけが取り柄の私に、女を意識したような素振りを見せる。
「もう一回、駄目?」
やめい、もじもじすんな。こっちが恥ずかしくなる。
「ごめん九条。いろいろとこんがらがってきたんだけど」
こめかみを押さえて唸る私に、九条はチョコレートよりも甘ったるい極上の笑みを浮かべた。
「答えは簡単。僕が好きなのは今も昔も真田由良だけだよ」
春は恋の季節。よって色とりどりの咲き誇る花の匂いに釣られて、嬉しそうにあちこち自由に飛んでゆくのである。私のどうしようもない婚約者は。
「九条は落ち着いたんじゃなかったの?」
相変わらずふらふらしている九条に、カフェの窓際の席で冴子がうんざりしたように顔を顰めた。ちなみに窓の外では九条が四月の恋人とデート中。
「腐っても九条たる所以だわよ」
私はふんと鼻を鳴らした。婚約して一年が過ぎても九条は一向に変わらない。花から花へと渡り歩くし、病の発動も復活させた。
「由良はそれでいいの?」
九条から思いがけない告白を受けて、とりあえず私は婚約破棄をするのを考え直した。というより現状処理に頭が追いつかず、いったん棚上げした形だ。両家の家族からは大分喜ばれたけれど。
「仕方がないよね。あんな男に捕まっちゃったんだから」
大学時代から私を慕っていたという言葉は、胡散臭くて到底鵜呑みにはできないが、背格好が似ている私を守れるよう筋トレを始めたなんて聞かされれば、ちょっとは絆されるというものだ。実際私に対する悪意をずっと払い除けてくれた男は、九条一人きりなのだし。
「どんなに遠くまで行っても、僕は必ず真田由良の元に帰るよ」
一度くらいは浮気男の典型的な台詞を真に受けてやろう。
「一応大団円、なのかしら……ん?」
外を眺めていた冴子がふと眉間に皺を寄せた。こちらを指差して何事か喚く四月の恋人に、九条の全身から黒いオーラが漂っている。拙いと直感的に思ったときには、彼の口がお決まりの形に動いた。
ーー消えろ、ぶす。
去ってゆく恋人に未練のみの字も見せず、九条はにこやかに私に手を振っている。冴子は吹き出しつつも拍手を送っていた。
「本当にしょうがないんだから」
懲りない婚約者に私は呆れて肩を竦めた。なのにほんのり胸が温かくなるのは何故だろう。きっと春の陽気のせいに違いない。
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