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7月 2
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かぶと虫は祖母ちゃんの三回忌以降、時々俺の部屋を訪ねてくるようになった。どうやって侵入するのか訊いても、
「企業秘密ださ」
と言って教えてくれない。つっかえ棒は必ずしてあるので不思議だが、それ以上突っ込むのは面倒だし、どうしようが入ってくるのだから放っておくことにした。
名前にしてもそうだ。いい加減本名は何だと問い詰めても、
「だからかぶと虫ださ。まぁ、かぶこでもカブタックでもスーパーカブでも、好きに呼んでくれればいいんださ」
真面目な顔でふざけたことを抜かす。そもそもネットで調べたら、かぶこはともかく後の二つはテレビ番組にバイクじゃないか。全く。だから俺はとりあえず「かぶと」と呼ぶことにした。これも歴代の仮面ライダーの中にいたような記憶があるが、確か向こうはカタカナだった筈なので許してもらおう。
「ところでかぶとは幾つなんだ?」
かぶとが現れてから十日目。七月も終わりに差しかかっている。現在が何月何日かなんてずっと関係なく過ごしてきたのに、かぶとが毎日その日あったことをべらべら喋るものだから、自然と頭に入ってしまっていた。
「大人なんださ」
そうは見えない。夏休みを利用して海にでも遊びに来た高校生のようだ。
「十七、八くらい?」
「そうそう。十八令なんださ」
「何それ」
初めて耳にした年齢表現に俺は眉を顰める。かぶとは笑いながら葉と一緒なんださと俺の肩をぽんぽんと叩いた。そういえば誰かに触れられたのはいつぶりだろう。
相変わらずエアコンを無視して窓を全開にして、太陽の光と熱風を浴びて喜んでいるかぶと。許可をしていないのにずかずか人の領域に踏み込んで、勝手に好きなように寛いで、おかしな言葉遣いで言いたい放題言って。でもちっとも嫌な気持ちにならないのは何故だろう。
「葉は毎日ここで何をしているんださ?」
かぶとがうーんと両手を空に伸ばした。「私はかぶと虫ださ」を真に受けるわけじゃないが、夏の風景に違和感なく溶け込んでいる。
「冬眠」
ベッドで膝をぎゅっと抱えて呟く。体のいいこじつけだというのは自分でも分かっている。だから無意識のうちに身を強張らせてかぶとの返事に備えた。
「じゃあ葉は蛹なんださ」
ところが予想に反して、かぶとはにっこり微笑んだ。
「蛹?」
「うん。かぶと虫は大人になるために、土の中で力をいっぱい蓄えるんださ。だから葉は蛹だ」
「何でかぶと虫と同じなんだよ」
かぶとの例えに子供のように口を尖らせた。
「大丈夫ださ」
かぶとは頷くなりまたベッドにジャンプすると、今度はゆっくり俺の頭を撫で続ける。やっぱり嫌な気持ちはしなかった。
「企業秘密ださ」
と言って教えてくれない。つっかえ棒は必ずしてあるので不思議だが、それ以上突っ込むのは面倒だし、どうしようが入ってくるのだから放っておくことにした。
名前にしてもそうだ。いい加減本名は何だと問い詰めても、
「だからかぶと虫ださ。まぁ、かぶこでもカブタックでもスーパーカブでも、好きに呼んでくれればいいんださ」
真面目な顔でふざけたことを抜かす。そもそもネットで調べたら、かぶこはともかく後の二つはテレビ番組にバイクじゃないか。全く。だから俺はとりあえず「かぶと」と呼ぶことにした。これも歴代の仮面ライダーの中にいたような記憶があるが、確か向こうはカタカナだった筈なので許してもらおう。
「ところでかぶとは幾つなんだ?」
かぶとが現れてから十日目。七月も終わりに差しかかっている。現在が何月何日かなんてずっと関係なく過ごしてきたのに、かぶとが毎日その日あったことをべらべら喋るものだから、自然と頭に入ってしまっていた。
「大人なんださ」
そうは見えない。夏休みを利用して海にでも遊びに来た高校生のようだ。
「十七、八くらい?」
「そうそう。十八令なんださ」
「何それ」
初めて耳にした年齢表現に俺は眉を顰める。かぶとは笑いながら葉と一緒なんださと俺の肩をぽんぽんと叩いた。そういえば誰かに触れられたのはいつぶりだろう。
相変わらずエアコンを無視して窓を全開にして、太陽の光と熱風を浴びて喜んでいるかぶと。許可をしていないのにずかずか人の領域に踏み込んで、勝手に好きなように寛いで、おかしな言葉遣いで言いたい放題言って。でもちっとも嫌な気持ちにならないのは何故だろう。
「葉は毎日ここで何をしているんださ?」
かぶとがうーんと両手を空に伸ばした。「私はかぶと虫ださ」を真に受けるわけじゃないが、夏の風景に違和感なく溶け込んでいる。
「冬眠」
ベッドで膝をぎゅっと抱えて呟く。体のいいこじつけだというのは自分でも分かっている。だから無意識のうちに身を強張らせてかぶとの返事に備えた。
「じゃあ葉は蛹なんださ」
ところが予想に反して、かぶとはにっこり微笑んだ。
「蛹?」
「うん。かぶと虫は大人になるために、土の中で力をいっぱい蓄えるんださ。だから葉は蛹だ」
「何でかぶと虫と同じなんだよ」
かぶとの例えに子供のように口を尖らせた。
「大丈夫ださ」
かぶとは頷くなりまたベッドにジャンプすると、今度はゆっくり俺の頭を撫で続ける。やっぱり嫌な気持ちはしなかった。
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