相棒はかぶと虫

文月 青

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11月 1

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十一月と聞くと凄く寒そうに感じるが、実際は穏やかな天気が続いていた。巷では収穫祭とやらがあって、祖父ちゃんも自分で作った野菜を出品したり、少し形の崩れた果物をお手頃価格で販売したりと、今年を締めくくる大きな行事に忙しく走り回っていた。

俺は会場には行かなかったので、家で野菜や果物の値付けを手伝った。来るなら目出し帽を被るのは禁止だと、祖父ちゃんや兄さんのみならず酒屋のおじさんにまで釘を刺されたからだ。みんな何気に酷くない?

かぶと虫は地道に活動を続けてはいたけれど、十一月に入ってからは餌をあまり食べなくなり、暖かい部屋でもじっとしている方が多くなりつつあった。時々もの言いたげにこちらを見ているような気がするのは、俺の思い過ごしだろうか。

「ちっこい木は壊れたのか?」

がらんとなった飼育ケースの中を覗いているのだろう。祖父ちゃんが不思議そうに訊ねた。キッチンでフライパンをジュウジュウ言わせながら、俺は後ろ姿で首を振る。

「避けてみたんだ」

かぶと虫の足は伸び切っているうえに、力も殆ど入らないようで、転倒防止用の木によじ登ろうとしても掴まることができず、その都度ひっくり返ってしまう。逆に転倒を手伝っているような感じがしたので、試しに取り外してみたのだ。餌は代わりに用意した平たい木の上に置いている。

でき上がった豚肉の生姜焼きをお皿に移し、付け合わせのキャベツの千切りとトマトを添える。じゃがいもと玉ねぎのスープと一緒にテーブルに出すと、祖父ちゃんと兄さんと何故か酒屋のおじさんまでが「頂きますと」手を合わせた。

「美味いなぁ、葉ちゃん。うちの娘の嫁にならないか?」

酒屋のおじさんが感心した様子で仄めかす。

「お前の娘は二十四だろう? 樹の方が年齢的には合ってんじゃないのか」

つられて祖父ちゃんが答えると、今度は兄さんが真面目に訂正を入れる。

「それ以前に俺も葉も嫁にはなれないからな?」

確かにそうだ。座って箸を動かしながら俺もうんうんと頷く。かぶと虫同盟とも呼ぶべきメンバーは、日々会員を増やしつつあり、定例会と称して一緒にお昼ご飯を食べている。男衆が日中食材を使っていると踏んだ母さんは、食事の準備をしなくて済む分自分が楽だからと、冷蔵庫にいろいろ突っ込んでおいてくれるようになった。

祖父ちゃんは自分が作った野菜で俺が調理をするのが心底嬉しいらしく、またそれを皆で食べられるのが更に楽しいと、

「葉のお陰で働き甲斐がある」

元気に冬の野菜作りに励んでいる。俺も残さず平らげて貰えると張り合いがあって、明日は何にしようかなと自然に考えていたりする。

でもちょっと待て。俺は確か冬眠中だった筈だよね?

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