相棒はかぶと虫

文月 青

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11月 2

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俺の住んでいる地域は、雪はさほど積もらないけれど、寒い日が続くと当然のように風に乗って飛んでくる。それでも十一月中に降ることはまずない。

「今年は冬が早そうだ」

どんよりとした空を見上げながら、祖父ちゃんが軽トラのタイヤ交換をしようか迷っている。遠出するわけじゃないので、例年は12月ぎりぎりにやっているらしいが、今年はやけに寒さを感じるのだそうだ。

祖父ちゃんの勘が当たっているのか、かぶと虫の活動も一日一日鈍くなり、ヒーターの温風を浴びても、以前のように忙しく動く姿は見られなくなった。暖かくなったところで、ようやく少し反応があるだけで、怖いくらいじっとしている。

「さすがに年を越すのはきついだろう」

兄さんが言えば祖父ちゃんも、

「充分頑張ったな」

かぶと虫にとも俺にとも取れる労いの言葉を洩らした。

自分が傍を離れているときに、ひっそり旅立たれるのは嫌だけれど、その日のために覚悟をすることも、何だかじわじわと押し寄せてくる命の終わりを待っているようで、どちらにしても俺には抵抗があった。

「いずれにしても迎えるのが別れなら、平気でなくて当たり前だ」

祖父ちゃんは俺の気持ちが分かるようで、あーしろこーしろとは一言も言わなかった。

「たぶんどんな形で見送っても、もう少し何かしてやれたんじゃないか、できることがあったんじゃないか、そんな思いはついて回る」

祖母ちゃんのことを指しているのだろうか。そういえば祖母ちゃんは突然倒れて帰らぬ人となった。詳しい状況は聞いた筈なのに、今の俺の頭の中には残っていない。

そのとき祖父ちゃんは祖母ちゃんとお別れをすることができたのだろうか。それとも眠りにつく間際の祖母ちゃんが、最後に目にした姿だったのだろうか。

「祖母ちゃんとは最後に何か話せたの?」

同じような考えに辿り着いたのだろう。兄さんが静かに口を開いた。祖父ちゃんはその質問がくることを予想済みだったようで、くくっと楽しそうに笑み零した。

「祖母ちゃんはいつもと全く変わらんかった。畑で草むしりをしながら、家族の話をしたり、ご近所さんの話をしたり。そんでなぁと次の話題に移ろうと立ち上がって、ぱたっと倒れおった」

「そのまま?」

「そのまま」

兄さんの問いに祖父ちゃんは頷く。

「最初はこんな終わりはないだろうと悔しかったがな」

お前と出会えて楽しかった。それすらも
伝えられなかった。そう祖父ちゃんは続けた。

「でもこうして振り返ったとき、いつも通りの祖母ちゃんがそこにいて自然と笑顔になる。もしかしてこれこそがあいつの望みだったのかもしれない。今はそんなふうに思う」




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