最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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4章「哀れな死者たちの世界」

棄てられた群墓 【第2階層】

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―――――第2階層。
壁や床、天井に這う蔦の葉の色に赤色がかかり、壁に等間隔に配置された光精石の色も若干灰色がかっていた。
ログウィンドウが音もなく開き、一文を表示する。

―《【棄てられた群墓】に入った》

「階層ごとに若干仕様が違うし、名前も違うよーだな」
「そのようですね」

壁は深くくぼんでおり、くぼみの奥にはたくさんの灰色の墓碑が立ち並んでいるのが伺える。
どの墓碑も苔むしており、大半は崩れかけていた。
ちなみに床に無数の白骨が散らばっているのは同じである。

「【ミラの地下牢】へ繋がるのはどの階層でしたっけ」
「第7階層。第8階層さいかそうまで行く必要はねぇみたいだな」
「わかりました」

暫く薄暗い中を進んでいくと、先に部屋があるのが遠く見えた。
少し歩く速度を速めようか、と思った瞬間。
ヒビキが右手で、エヴァンを制止して立ち止まった。

「…ちょっと待て」
「……どうしたんですか?」
「何か、嫌な気配を感じる」

まるでそれが合図だったかのように。
左右の壁から、ビキビキビキビキビキッ!!!!!と石がひび割れる嫌な音が連鎖した。
墓碑が音をたてて崩れ、僅かな揺れが襲う。

「やべぇな。こんな狭いところで…」
「……………ッ!!!」

―無数の白骨が墓から這い出し、壁から無数の幽霊が現れ、床に散らばっていた白骨の一部が組み上がる。
視界に映るカーソルの数が、加速度的に増……

「…………魔物達の狂宴モンスター・パレードかよッ!!」

―――――魔物達の狂宴モンスター・パレード

簡潔に言ってしまえば「モンスターのな大量発生」の通称である。
ダンジョンの中でランダムな場所に極低確率で発生する。遭遇してしまうとプレイヤー自身にそれを押し返せるだけの圧倒的なステータスがない限りは物量数の暴力に押しつぶされてデスぺナを喰らうことになる、究極に悪辣な陥穽トラップだ。

2人は無数のアンデッドモンスターを前に、表情を強張らせる。
見事に挟み撃ち状態になっている現状を打破するには、2人が双方向からの攻撃を迎撃するしかない。
通路故に縦に細長いため、そういう縦に攻撃するようなスキルでしか一気に殲滅できない。

「後ろ頼めるか!?」
「任せてください!」

2人は各々の武器を構える。
風を纏う銀の刃と濃紫の闇を纏う魔矢が、斬撃音と轟音を伴いモンスターへと襲い掛かった。

―炎・聖属性魔法スキル【華炎かえん】。
―弓術系戦技スキル【ツインバイトアローズ】。

純白の炎が床や壁を舐め、2本の矢がまるで獣の牙の様に螺旋に旋回しながら飛んだ。
炎はアンデッドモンスターを飴を溶かすように焼き尽くし、敵に突き刺さった矢は衝撃波を生んでモンスターの行動遅延ディレイを発生させる。

「俺らを舐めんな!」
「殺りきってみせますよ」

モンスター・パレード発生の瞬間は動揺していたものの、すぐにいつもの調子を取り戻した2人なら、負ける要素は1つも無い。

ヒビキは勿論だが、エヴァンのLvはアンテルとほぼ同じ。戦闘面でも負けず劣らずの上級プレイヤーだ。
モンスター・パレードは発生から数分間の間、連続してその場所からモンスターが生まれ落ち続ける。
攻撃の手を休めるわけにはいかない。
ヒビキは【華炎】を維持し続けたまま、更にスキルを発動した。

―刀術系氷・闇属性複合スキル【天斬・氷影ひょうえい】。

左手の斬撃線が凍てつき、影を纏った氷の斬撃がスケルトンに向かって飛来する。
直撃した箇所は直径数メートルに渡って凍てつき、影が周りにその手を伸ばす。影はモンスターに絡みつくと、びくりとも動じない拘束となった。

「さて、あと何分かねぇ…」
「多分あともう少しですよ。というかスキルをそんなにバカスカ撃ってMP大丈夫なんですか」
「大丈夫だぜ?辺りに闇が少しでもあればその分MP回復速度にブーストかかるし、元々の最大値が最大値だしな」
「改めて言いますけど、とことん常識はずれですよね」
「そりゃ今更だろ、というかお前だって常識はずれだろうが」

ヒビキが笑う。
プレイヤーのMPは自動回復するのだが、そのスピードはMPの最大値が高いほど速い。ヒビキの場合は彼の言う通り周りに闇があれば、回復速度にブーストがかかる。カイの場合は炎や雪・氷、ユリィは海や池、川・湖。アリスは光や雷。ルキに至っては足元に「大地」があればどこにいようがその加護を受けることができる。


「さて、最後の大掃除だ」
「もう少し頑張りましょうか」

銀の刀身に纏われる風が激しさを増し、構えられた魔煉弓には5の魔矢がつがえられていた。

―刀術系風属性複合スキル【瞬速・乱れ裂き】。
―弓術系風属性複合スキル【ストームアローズ】。

黄緑がかった色の光を帯びた斬撃と、多属性のカラフルな魔矢が周囲を席巻する。
武器の系統は違えど、同じ風の属性を最も強く纏った猛撃がアンデッドたちに容赦なく襲い掛かる。
物理攻撃が効かなかろうが魔法に耐性を持っていようが関係ない。それはまさに一方的な蹂躙劇ワンサイドゲーム
数分間轟音と斬撃の嵐が辺りを蹂躙し、モンスターが生れ落ちなくなるごろにそれは止んだ。

「あーやっと止んだか」
「助かりましたー」

精神的な疲弊を感じながらヒビキは刀を鞘に差し、エヴァンは弓を後ろ腰に吊るす。

「エヴァン、階段っぽいのはあるか?」
「ちょっと待ってください…ああ、ありました。この先です」

エヴァンが指差す先を見通してみると、確かに階段らしきさらに濃い闇が確認できた。
どうやらモンスター・パレードに対処しているうちに近くまで来てしまったらしい。

「こんなんで大丈夫なんだかなあ」
「とんとん過ぎて逆に怖いですね」
「でもなぁ、危険なやつはいなかったはず…だ、多分な」
「その多分っていうのやめてくれません?」
「いや、ユニークモンスターがいないとも限らないからな」
「…その時はその時です」
「……だな。いるかすら分からないモンを警戒していても何にもならねぇし」

そんな会話を交わしながら、階段を降りていく。



途中で、エヴァンがこんなことを言ってきた。

「あのーヒビキさん、自分のフレンドから神職に就きたいから情報教えてくれって結構前からせがまれてるんですけど、自分、神職について殆ど知識ないんで教えてもらえないでしょうか」
「へー?で、そいつはどこの神殿に入ろうとしてるんだ?」
「天空教ですね」
「ほう?」

リコード世界には星の数ほどの職業が存在する。しかし、大概は職業クエストと呼ばれる特殊な依頼をこなせば就く資格がすぐに与えられるが、神職は少々特別だ。神殿で魔法や信仰に対する適性を測られ、誓約を結び認められて初めて神職系初級職【奏士】または【奏女】の資格とローブを与えられる。そこから上の職業に上るには、地道にレベルを上げ、毎日神に対する感謝を忘れずに捧げる他無い。

別に熱烈な信仰でなくても、例えるなら普通の現代日本人が仏様や神道の神々に捧げるのと同じくらいの信仰心が認められれば資格を得ることができる。

「そりゃまたなんで」
「えーと……端的に言いますと」

少しの沈黙の後、言いづらそうにエヴァンが続けた。

「《邪悪な呪詛カース》で死んだ住人で親友の冒険者を蘇生してもらったからだとか」
「あー……」

住人は《呪詛》で死んだら蘇生魔法では生き返ることができない。稀にそういう者の前に現れて蘇生させるという話を聞いたことがある。

「暗月様あああああああああああ!ってなんかいつの間にか狂信者みたいな言動になってしまってて驚きました」
「そうなると天空教の暗月神殿か」

片手間に全ての暗月神殿の場所をエヴァンが広げたマップに記す。前、暗月神殿の中を覗いたことがあるが奏士奏女から大司祭に至るまで狂信っぷりが凄かった。そして総じてレベルも他の神殿の神職たちより高かった。なんせ聖堂部分に飾られている暗月の紋章のレリーフが冥天使を喚ぶための触媒であり、それを扱える者が司祭以上の者たちの中に数人いるのだから。

しかし、彼は己の本来の姿をあまり見せたがらないというのにどこから情報持ってきたのか神像は半人半蛇の彼の本来の姿だし、しかもそれを他人から嘲られると信者は非常に怒る。別に醜くも貧弱でもないと思うのだが、何故そう言われるのだろうか。

ちなみに、天使を喚ぶのは不可能ではないが、レベル750以上のステータスと相当の魔法熟練度が要求される。

そして神像は暗月神のものと、裁定神、境界神、罪業女神の属神全員のものが置かれていた。

「罪人の密かな粛清という仕事に喜びを感じるなら適任だろうな」
「それは大丈夫でしょうね。じゃあ後でマップも送っておきます。ありがとうございます」

そういってエヴァンはウィンドウをいじりはじめた。
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