最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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4章「哀れな死者たちの世界」

ミラの地下牢

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【ダンジョン詳細】ミラの地下牢

『ダンジョン属性』
メイン属性:闇 サブ属性:大地,氷
『難易度』
☆9
『出現モンスター系統&レベル帯』
・アンデッド(レイス&ダークスピリット系)【500~591】
・アンデッド(ボーン・グール系)【418~493】
・カラークリスタル系【307~380】
『階層』
全1階層
『条件など、ほか備考』
・他ダンジョンへの連結アリ
・人数制限:1パーティ(6人)まで
・光・聖属性魔法使用禁止


―通路の両側には名前通り厳つい鉄格子が嵌められた地下牢が立ち並び、ウォォォォオオ…と何かの哭き声とも聞こえる風のが辺りに木霊こだまする。
鉄格子ももう錆つき、朽ちかけていて造られてからの年月を窺わせる。
「もうこのダンジョンはフロアは1つだけだ。…秘境は大丈夫か…」
「走ってでも行けますよね?」
「そんな危ない考え方は賛同しかねるのだが…」
「ある意味事実ではある。が、無闇に走れば罠の餌食だぜ?」
ダンジョン入り口にあるセーフティエリアにて小休止を取る4人。因みにヒビキはライアに紋章術をやって見せているところだ。そうしながら、エヴァンとフレイの間で交わされた会話に割り込む。
右手でカラフルな紋章を宙に描いて見せながら、慣れた手つきで左手でウィンドウを開き、エヴァンに飛ばす。
ウィンドウの淡い光と、魔力で描かれた複雑な幾何学的模様の紋章が放つ光が辺りを照らす中に幾つかの視線が交差した。
そのウィンドウには、【魔力探知波マジックソナー】により自動地図化マッピングされた【ミラの地下牢】の全容図が表示されていた。
「いつの間に取ったんですか」
「ん?ちょっと片手間に」
「……………もう気にしない事にします」
いくらこのダンジョンが縦に長い構造ではないといっても、片手間で全容を走査できる者はそうそういない。
5人の魔導機人カーディナルの内1人とでも接する時には常識を捨てろ。特にプレイヤー間で語られる、彼ら自身があずかり知らぬ噂である。
改めてその真実性を実感しながら、エヴァンは闇に包まれた通路の先を見やった。
―暫く経つ。
小休止を止め、4人は立ち上がって先へと歩き出す。
両側に立ち並ぶ地下牢の奥の薄暗がりから、何かが不躾に見てくる視線を幾つも感じる。
黒いフードの下から覗く紅血色の双眸は油断なく左右を見渡し、地下牢の奥にいる何かの存在と通路の先を警戒している。
牢の奥には無数のレイスやグールが蹲っており、こちらを見てきはするものの襲ってくる気配はない。
で、通路の先はというと……
「カラークリスタルか。体色と同じ属性の攻撃をすると反射されるから注意しろよ!」
六角柱型、正八面体型、正四面体型などの形をした、カラフルな水晶クリスタルが十数体、ふよふよと浮遊している。
色は赤、青、黄、緑、茶、白、黒、紫など、バリエーションに富む。
クリスタルの中央には体色と同色の単眼が嵌っているのだが、その単眼は特に動く様子はない。
「やつらの攻撃方法は単眼からのレーザービーム、タックル、あと極稀に自爆してくる!レーザーはバリエーションがあるから気を付けろ!」
「了解です」
「わかった」
「了承した!」
…実はカラークリスタル族自体のステータスは、あまり強くはない。故にレーザーやタックルのダメージは防御さえある程度できていれば問題ないぐらいでしかない。自爆だけは即死の危険があるが、滅多に使ってくることはない。
……あくまでさして警戒する必要はない。
「もう少しで全部壊せます!」
「了承した!」
「………………ちょっと聞いてくれ!奥の方からすげえ勢いでモンスターの反応が近づいてくる!……間違いねぇ、クリスタルビットだ!」
ヒビキの大声を聞いた瞬間、全員の表情が強張った。
…カラークリスタルの上位種、クリスタルビット。平たく書くと、「自動反撃水晶クリスタルビット」となる。ダンジョンの宝物庫などの門前によくいる、ゴーレムに似た自動防御装置の様な役割をもつモンスターであり普通は自ら攻撃しに大きく移動したりはしない。
しかし、数秒後に現れた浮遊し自走する水晶の球体は間違いなくクリスタルビットのものだ。
それも十近い数いる。
主な能力は、
・自身と同属性&反属性の完全反射
・武器と魔法を扱う
・極稀に自爆(巻き込まれたプレイヤーの防御力を大きく突き抜ける威力)
である。
なかなかに厄介な相手で、何故そう評されるのかというと。
「こいつ、武器を使ってくる!?」
「しかも同時に複数…」
各ピットの周囲には剣や槍、斧などの複数の武器が浮かび、同時に2つ3つが振るわれてくる。
「核が中にあるから、それさえ砕けば動かなくなるぞ」
風を纏わせた双刀で滑らかにピットを核ごと断ち切りながら、ヒビキが言った。
ピットの周囲に浮かぶ武器群は全て国宝級トレジャークラス唯一級ユニーククラス程度であり、超遺物級オーパーツクラスの前では全て意味を成さない。
両側の牢の鉄格子を足場にして立体的に飛び回り、次々とピットを撃破してドロップアイテムに変えていく。
やがて辺りには何もいなくなった。
「アイテムボックスの容量がそろそろ心配になってきました…」
「《ボックス容量拡張》を取っておけばよかったか?」
ゲーマーの宿阿である。ちょっとでも便利に思うとスキルは欲しくなるものだ。
「…次の小休止で色々しておくか。アイテム消費にもなるし」
「…?」
罠など意にも介さず、その歩を進める。
「…………ん?」
「どうした?」
「……この先、下降通路前の大部屋に【隠蔽ハインディング】で身を隠すモンスターがいる様です。数は3体、正体不明表示です」
「どれどれ……確かにあるな」
地図に映るマーカーは、半透明の赤色。これは【隠蔽】などで身を隠しているモンスターを示すもの。
ちなみに【索敵】で表示されるモンスターのマーカーだが、本人がその対象に遭遇したことが無い未遭遇モンスターの場合は正体不明表示となる。
ヒビキの【索敵】にも引っ掛かったその反応の詳細は、
「Lv452の【マッドダークウルフ】だとさ」
「3体全部?」
「その通り」
「ふむ」
この会話の間にも彼ら4人は歩を進めており、やがてそのモンスターが待ち構える大部屋の入り口へと到達した。
大部屋の両側の壁にも牢の鉄格子が嵌められており、その景色をよく目を凝らしてみてみると確かに3か所程僅かに景色が歪んで見える。
「擬態を解く間もなく焼き殺してやろう」
そう息巻くフレイは魔炎を噴き上げる【灰燼の猛炎剣】を振るう。
「自分はまあ自分のやり方でやらせてもらいますよ」
魔矢を放つのではなく、【猛炎フレアオイル】を3つほど的確な位置に放るエヴァン。
「俺は俺で行くわ」
紋章で強化された双刀を既に抜き放っているヒビキは数歩で勢いをつけた後、トンッと軽い足音を残し掻き消える。
…ほぼ同時に、【隠蔽】による擬態を解く間も与えられなかった哀れなゾンビ狼マッドダークウルフたちは1体はフレイの剣の魔炎に焼き殺され、1体はエヴァンの道具の餌食となり、1体は攻撃を認識する間もなく真っ二つに断ち切られた。
黒いガラスとなって四散し消え去るのを見届けず、4人は部屋の奥にあった「下降通路」へと歩を進めた。






―さて、残るダンジョンは後1つ。墓地の様子はどうなっていることやら…?
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