最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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5章「忘れ去られた都」

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―――――

アステリスク内には、スコールも含めた【蒼穹】メンバー全員が集まっていた。
「ヒビキ、大変だったみたいですね」
「まぁな。でもエヴァンとフレイに会ったぞ」
「マジか」
「で、イベントハイライトに新しく出されたのがコレなんだけど…」
アリスがイベントハイライトのウィンドウを飛ばしてくる。


《イベントハイライト》

平素より、ザ・ファイナルリコード・オンラインをプレイして頂き、誠にありがとうございます。
【凍結の神殿】【世界樹内部】【天空の霊峰】【魔の彷徨う祠】【忘失の天冥墓地】の5つの秘境にて発生した《アニマプロ―ジョン》が全て鎮圧されました。
報酬としまして、「2万Lルー」「魔法の原石×5」を今回秘境に到達したプレイヤーの皆様全員に配布いたします。
また、キャンペーンクエスト第2章の発生条件は他にあと2つ存在します。発生条件が1つ満たされる度にイベントが発生し、全て満たされるとキャンペーンクエスト第2章の開始となります。ぜひ探してみてください。

皆様の活躍をお祈りいたします。

Re:ザ・ファイナルリコード・オンライン運営チーム


「だそうだよ」
「ふーん」

お金ルーに関してはどんなに貰っても彼らはあまり興奮することはない。武器防具などはカイ、回復薬ポーションなどの消耗品は主にユリィが作れるし、元となる素材は彼ら自身が狩ってくる。
要するに自給自足なのであり、そこにお金が介在する余地はない。故に彼らがそれぞれ持っているお金の額はとんでもないことになっているのだが、一々確認しようとも思わない。

「まあ何とでもなるだろ。……次は何処に行くかな」
「それなんですが、ヒビキ」
「……ん?何だ?」
「【罪の都】のもっと奥まで行ってみませんか?」
「…何故?」
「いや、これなんですけど…」

今度はカイがウィンドウを飛ばしてくる。

「んー?」

それはメッセージ受信履歴ウィンドウだった。表示されているメッセージの差出人はカイの鍛冶屋仲間の内の1人。

「そのメッセージを送ってきたのはエルフの街にいた時だそうです」

差出人の職業は【鍛冶師/マーセナリ―】で種族はハイエルフ。マーセナリ―は弓術だけでなく隠密にも高い補正ボーナスを与えてくれる職業で、当人はエルフの街で顔と全身をフードとマントで隠した見るからに怪しい2人組を見かけ、気になって後をこっそりつけていった先で聞いた話をカイにも知らせてきたらしい。
ちなみにフードからはエルフ特有の尖った耳が見え、種族にも当たりをつけたようだ。

「なになに、【罪の都】の最深部にある神具を使う…?一体何をする気だ」
「あと、NPCハイエルフの内の過激な者たちが近々街を訪れる…とも」
「それは後で考える。【罪の都】の最深部って一体何があるんだ?」

ヒビキの視線がウィンドウから外れ、少し離れた壁際に積み上げられたネタアイテムの一種ことデカクッションの山の上に器用に座っているスコールの方を向いた。
視線に気づいたか、冷静な声で返答がくる。

『【罪の都】は元々人が住んでいた。…それも少々普通でない人々がな。彼らがまつる神々の中に「罪の女神ベルニカ」という罪人を管理する女神がいて、都の名前もそこから来ている。最奥部にあるのは罪の女神の神像と、「罪人つみびとの管理簿」という古代神具に分類されるもの、おまけに大量の財宝があるそうだ』
「よく知ってるんだな」
『昔人が住んでいたころにそこにいたからな。聞いた話でしかないが』
「そうか」

ヒビキは彼を助けた時に彼の首と両手首に嵌められた暗赤色の石でできた細身の枷を見つけ、過去を聞いてから何とか外せないかと色々努力したが結局外せなかった。
何かしらの意味があるのだろうが、枷など見ていて気持ちのいいものではない。
硬い表情で一つ返した後、黙り込んでしまったヒビキにカイが再び声をかける。

「確実にそうとは言い切れませんが、彼らが【罪の都】に向かうのは2日後だそうです。その前に僕たちでその神具とかいうものを獲ってしまおうという話です。彼らにとっても重要なものだそうですからね」
「……その話自体に異論はねぇ。だが誰が行く?俺とスコールは確実に行くが」
「言ったのは僕ですし、僕もついていきますよ。ルキたちはエルフの街へ行って、当人と一緒に更に情報収集してくれませんか?行動するにしても何にしてもまず情報があるに越したことはないでしょう」
「…確かになあ。ユリィたちはどうするか?」
「私たちも行きますよ。ここで待っているだけではつまらないものね」
「だね。過激な奴らって言ってもどのくらいなのかも知っておきたいし」
【蒼穹】全員が賛成の意見を述べると、「言い出しっぺ」のカイが頷く。
「では、善は急げとも言いますし早速行動しましょうか」

…方針が決まれば行動し始めるのは非常に迅速だ。ヒビキを始めとした3人は転移魔法石で【罪の都】入り口付近まで転移し、ルキたちはエルフの街へと転移していった。

―自動的に開いた一度見たことのあるダンジョン詳細ウィンドウは消しておいて、ヒビキは呟く。

「「罪人の管理簿」っていうのが神具なんだろうというのは分かったけど、それをエルフたちがどう使おうというのか…」

それが聞こえたのか、スコールが答えを返してくる。ただしその耳元に聞こえる声音には、僅かに感情の震えが混じっていた気がした。………これは、怒り?それとも、恐怖?

『「罪の女神ベルニカ」の下での「罪人」の定義は《誓約をないがしろにしたか、神々に背を向けた者》。そして「罪人の管理簿」の力は《名が載っている者の生殺与奪を管理可能とする力》。平たく言うならその力を握れば「罪人」を自由に奴隷に出来る訳だ。
管理簿に名が載っているのは、俺自身も含めて軽く千は越す。…忌々しい道具だ』

しかも「罪人」なる存在はほぼ全員が大事なものを護るのと引き換えにそこまで堕ちてしまった力の高い者ばかりだという。
その深く沈んだ夜明け前の空の様な青の双眸の奥には、「罪の女神」なる存在と神具の力を己の為に使おうとする者への真っ黒い炎に似た強い憎悪の感情が秘められていた。【属性称号】が示す通り老いることも無く、またどうやっても死ぬことも出来ない分そういう者たちを多く見てきたのだろう。
…2人はそれには何も言わず、否、何も言えず、重く沈む空気を切り替えようとヒビキは次の言を発する。

「とにかく、ここに来た目的を果たそうぜ」
『…そうだな』
「ですね」

至って真面目な顔で頷く。2人の表情も硬い。
特にヒビキの紅い両目には一瞬、他人には理由の分からない何かの感情の細波さざなみが揺れた。
無意識に動いた手が、両腰に吊るされた風の双刀の柄に触れる。

「……さて、何が出るか」



そう呟いたのは誰だったか。
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