最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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5章「忘れ去られた都」

報告、そして

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―無事、「罪人の管理簿」を入手してアステリスク内に戻ってきた3人。2人は備えつけられたソファーに座り込み、1人はどうやら気に入ったのか壁際のデカクッションの山の上に座っている。
そんな調子で暫くぼんやりとしていると、ポーンという音と共にヒビキの目の前に1枚のウィンドウが開いた。

「んぁ?」

少しばかり間抜けな声を上げ、ヒビキは内容を確認しにかかる。
ウィンドウは傭兵ギルドからのメッセージ。
端的に言えば「貴方に依頼が入りました。受けますか?断りますか?」という内容だ。
断ることも可能なのだが、それなりの理由がなければ相手に悪い印象を与えてしまう。

「傭兵ギルドからって久しぶりだな……分かってはいたがこりゃまた大口の依頼主だぜ」

>秘密の依頼
依頼主:エルフ族最高評議会長
概要:今すぐではないが、街の議会所裏にある家に来てほしい。詳しくはその時に説明する。
報酬:エルフ族の街で売っている特殊魔法書・特殊錬金素材の購入許可
条件:来る人数は2,3人までに絞ってほしい。
依頼ランク:S

「ふーん…」

エルフ族最高評議会と言えば、エルフ、ハイエルフ、ダークエルフ、フォレストエルフの長とその側近たちで構成された街の統治を行う機関だ。確か今の評議会長はエルフ族の長だったはず。

「彼らは彼ら独自の情報網を持っていたということか」

そうひとりごちたのとほぼ同時に、ルキ、ユリィ、アリスの3人も帰ってきた。

「ただいまー」
「お疲れ様です。何か掴めましたか?」
「んーとね、こんな感じ?」

アリスが1枚のウィンドウをカイに飛ばしてくる。

「最高評議会の人らが色々動いているらしい。街の中は何かピリピリしてるよなあ」
「成程です」
「傭兵ギルドからも、それ関連っぽい依頼が来たぜ」
「……本当だわ。受けておいた方がいいと思うけど…相手の希望人数は2,3人でしょう?ヒビキは行くとして、後は誰にする?」
「オレも行ってみたいけどなあ」
「まあまず…スコール」
『………何だ?』
「話、聞いてたよな?」
『ああ』
「ついてきてくれるか?」
『別にそれは構わないが』
「ありがとーな」
「……あ、そうだ。依頼の話を聞きに行くのは2,3人ほどにして、内容によっては他の全員も別動隊として動けばいいと思います。お留守番はなるべくしたくないですし」
「それ採用な。じゃあルキ、ついてきてくれ」
「了解!」

威勢のいい返事を返す、笑みを浮かべる青灰色基調の装いをしたルキ。
久しぶりに戦えそうな予感がして、血が滾っているのだろう。

「私も報酬の特殊錬金素材は気になるわ。私でも買えなかったどころか、見せてもくれなかったし」
「そういうものでしょう」
「……あ、そうそうカイ、ユリィ、これ渡しとく」

ヒビキが思い出したようにアイテムボックスから、【静寂のマテリアル】を始めとした数種類のマテリアル系アイテムを取り出しぽいと無造作に投げ渡す。見た目相応、それなりの重量をもつその金属塊と石塊をよろけることなく受け取った2人は驚いた声を上げる。

「え、これって金属のマテリアルじゃないですか!?どこで手に入れたんです」
「秘境へ行くダンジョンの鉱床から」
「へぇ、珍しいわね。ちょっとこれ使って錬金してきていいかしら?」
「僕もちょっと鍛冶を」
「…いいぞ」

明らかに嬉し気な様子で2人が去っていき、後には微妙な空気になった4人が残る。
ヒビキとスコールは暇なのかぼんやりと宙を見詰めているし、ルキは掲示板を見ている最中だ。アリスはといえば手慰みになのか小さな角材と彫刻刀らしき道具を取り出して器用に削り始めた。
削り屑は何故か床に落ちる前に塵の様に消えていっており、床に木屑が…なんてことにはならないらしい。
気まずい風味の沈黙が降りる中、いたたまれなくなったのかアリスが手を動かしたまま話し出す。

「ねぇねぇ、聖花精霊族の『血塗れた咎人』ってどんな人なんだろうね?」
「……………………あー、っと」

誰に向けるでもなく発せられた疑問形だが、ルキがそれに反応した。

「評判なら既に掲示板が出てるぞ。…とにかく簡潔にまとめれば美人でおしとやか、自分の役割もきちんと果たしてくれるってとても騒がれてる。
あとスコール、あんたも似たような感じだぜ」
『………………………………??』

後半の言葉の意味が良く分かっていないのか、こちらに向き直ったまま首を傾げるスコール。
…厳密に言えば「美人でおしとやか」の部分は「端正でミステリアス」になるのだが。確かにヒビキと同じぐらいに黒い髪と、常に僅かずつ色合いが変化している深い青の瞳、怜悧で端正な顔の造形というのはそこらの人間はなかなかもっていないだろう。

「そういう意味では、俺らが居合わせることができてよかったというべきかな。…そう騒いでる奴らは確実にマスコットキャラ的な仕事もやらせようとするはずだし」
「「あー……」」

その場面が思い浮かぶのだろう。ヒビキの言に納得した表情になる2人。
僅かに響いてくるカン、カンという槌音と、別の方向から鳴る稀に混じるポーンという破裂音をBGMに聴きながら2人の生産作業が終わるのを待つ。
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