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8章「心の在り処」
神器奪還、潜入戦
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――スコールと合流した二人は、少女を引き連れたルキとアステリスクで再び合流する。
「いやさ、手掛かりというか吸血鬼の本拠地なら見つけたんだが…」
「どこだ?」
「それは私が案内する」
「ならいいが」
『………………』
「?どうした?」
『これはどうすればいいんだ……?美術館の絵を揺らした弾みで絵の中から倒れてきたのだが』
そういってスコールが取り出したのは、小さな碧い小瓶。中には万能薬とよく似た黄金色の液体が入れられていた。エリクサーと違うのは黄金色の中に、星のような銀色の粒が混じっていること。また、液体自体が銀色一色のアンブロシアでもない。
「何だそれ?」
『さあ……?』
「取りあえずぶっかけてみたらどうですか?気付けみたいな」
「相変わらずお前は容赦ねぇよな…!」
ヒビキが若干引くが、スコールはカイの言葉に従って小瓶の中身をぶっかける。小瓶から零れた液体は銀色の光粒となって、眠る青年の上に降りかかった。
……………大体十数分後。
どこかのダンジョン支配権を分捕りに行ってしまったルキは放っておくとして、待つのに飽いたかカイも鍛冶場に行ってしまった。スコールも向かいの部屋で眠っているし、カイはまだ鍛冶をしているのか先ほどからカァアアン、カアァアンと槌音が絶えず鳴っている。
ヒビキもヒビキで今までの精神的疲労が出たのか壁際の椅子に座り込んで瞼を閉じているし、少女も眠りこけてしまっている。
―不意に。
今まで深く眠っていた青年の瞼が、ピクリと震える。
その後、悪夢を見た後かの様に勢いよく身を起こした。黒髪の下に覗く静かな黒曜石のような黒い目と鮮烈な輝きを宿した黄昏色の目は大きく見開かれ、息が荒い。
「…………?」
暫く状況を理解するのに時間を要したようだが、状況を呑み込むと青年は傍らの机に置いてあった自分の双銃を掴み、部屋から音も無く出て行ってしまった。
「神器を取り返しに行かなくては……」
誰にも聞こえない音量でそう呟いていたところを見るに、吸血鬼たちの本拠地へ行くつもりなのだろうか。
―――さらにそこから大体20分近く経った頃。
目を覚ましたヒビキは、青年がいないことに気づいた。少女を起こし、相談する。
「多分だが、その吸血鬼の本拠地へ行ってしまったんじゃねぇか?」
「そんな…!いくらあの人でも無茶ですよ…」
「今から行けば十分間に合う。転移で近くまで行けるか…そうしたら時間短縮にはなるんだが」
「転移なら私出来ます。行きますか?」
「いやちょっと待て、スコールを呼んでくる」
そこで扉を開けてルキが入ってきた。
「オレも行く。カイにはさっき訊いてきたんだが、まだ鍛冶したいってさ。で、アリスにも訊いてきたんだが行ければ行くと」
「ああならいいか」
まあいつも通りと言うことで。
その後向かいの部屋で血晶の武器を作っていたスコールを呼んできた後、少女の力を借りて付近まで転移する。
――――転移した先は、端的に言えば洞窟の中だった。しかし外にはこれ外に出れば死ぬよなと言いたくなるレベルの猛吹雪が吹き荒れているらしく、凄まじい風音が聞こえてくる。
当然の如く「気候:氷冷」かつ相当強いため、何もしないまま外に出れば彼らであっても数十分程度耐えた後スリップダメージで死亡するだろう。そこまでのレベルである。
「どうすんだ、これ」
「外に出れば回復なしだと数十分しか持たないだろうな」
「いやお前は更にその数倍は耐えれるだろ!」
「HP的には大丈夫でもこの寒さの中動きたくはない」
「まあ…そうか。じゃあカイに何かないか訊いてみるとするか」
『……大丈夫なのか…?』
【蒼穹】の中でも守護者たるルキは他4人と比べHP総量も半端じゃないほど多い。
カイにメッセージを送ったところ、十数分経って返事が来た。人数分のアイテムが添付されており、取り出してみると複雑精緻にカットされた赤い宝石の嵌ったペンダント型の魔導具だった。調べてみるとカイの装備品についている「気候(氷冷)無効」と同じ効果がついていた。
「…流石だ」
「恐らく宝石部分はユリィ作だろうけどな」
ペンダントを配り、早速身に着ける。
「案内してくれねぇか」
「勿論。こっちです」
猛吹雪が止むのを待ってられない4人は、その吹雪の中を突っ切る。少女が時々「こっちです」と示す方へひたすら走る。
……数十分後。吹雪が止み、4人の目の前にはいかにもな暗い色彩の城が姿を現した。
一応結界が張ってあるようなのだが…。
「何だ、この程度なら問題なく破れる」
「どうすんだ?」
「ちょっと待ってください…」
神器の現在位置を探っているらしい。暫くして、
「……厄介です。位置がまとまっているのではなく城の方々に散らばってる反応が多数」
『まとめて宝物庫なりなんなりに置いているというわけではないということか』
「そういうことみたいだな。もしかしたら自分たちで使っているのかもしれねぇ」
「あり得るな。その散らばってる神器の属性とか分かるか」
「一応は」
「ならいい。教えてくれ」
神器の属性を教えてもらった後。
「じゃあまとまってる反応源の回収、できるか?」
創造の女神の杖を握った少女に問う。
「わかりました。皆さんは神器を見つけたらこれを使ってください」
そういって彼女が渡してきたのは、透明なガラス玉。
「一時的な封印玉です。ぶつければ後は何とかなります。が、封印玉は近くに悪意持つ魔力があると上手く作動しないので、もし吸血鬼がいたら倒してからにしてください」
「了解」
少女が封印玉を数個ずつ全員に配り終えるところで、誰かが転移してくる反応をヒビキが察知した。
数秒後、転移の魔法陣から現れたのはアリスだった。
「お、皆集まってたんだねー」
「丁度いいタイミングだったな」
転移してきたアリスにも封印玉を渡した後、使い方を説明してから5人は結界に護られた城壁に向き直る。
『殲滅してしまっても構わないものなのか?』
「んー…別にいいと思うけどな」
いくら知性が在れど、害をなすなら容赦はしない。
『そういうものなのか…?』
「勿論、平和的に話ができるなら話をするけどな」
『ふむ…』
「でさ、終わったらどこに集まるの?」
「まあそれはその時考えようか」
「わかったー!」
「で、誰がぶち破る?」
「もうそろそろ行かないと見つかってしまうな」
「オレがやるわ」
「じゃ、補助やる」
ヒビキが描き出した威力強化の魔法紋章に向かって、神話級砕刃カテゴリの戦槌【古竜の牙】を取り出したルキがその大槌もといまんま竜の巨大な牙を振りかぶる。
―――槌術系戦技スキル【破城槌】。
ドッガァァァアアアン!!!と凄まじい轟音が鳴り響き、ガラガラと瓦礫が崩れる音を添えて立派な城壁に物凄い大穴が開いた。
「さあ、行くか!」
ヒビキの掛け声と共に、爆風を置き去りにして5人が散らばる。
…
―取りあえず中を爆走しながら適当に動き回る。後ろから兵隊らしき反応が追いかけてこようとしているのは分かるがスピードについてこれず置き去り状態だ。
ある程度走ったところで近くのそれっぽい部屋の扉を蹴り破る。ドォォオオン!とこれまた尋常ではない音を巻き添えに、扉は吹っ飛んだ。その先には一人の吸血鬼と、後ろには剣・騎士剣・大鎌・メイスなどの武器が飾られていた。デザインが一様に同じところを見るにシリーズもの、感じられる魔力から十中八九神器である。
「お、あったあった」
「…だ、誰だ!?」
「お前の後ろの神器が目当ての冒険者とだけ言っておこう」
「やはりこれが目当てか…渡すわけにはいかん!」
吸血鬼の持っているのは後ろのシリーズ武器の中の魔杖。間違いなく魔導士タイプ。
「ありゃ属性は風か」
教えてもらった情報と、【解析】で得た情報を突き合わせる。緑がかった金属っぽい色と、嵌め込まれた大きな琥珀。プレイヤーの中ではクリマシリーズと呼ばれる超遺物級の武器たちだ。
「うぉおああああああああ!」
吸血鬼の目は元々鮮血の如き紅だが、目の前の双眸からは理性が飛んでいるらしく明らかにイってしまっている。
「馬鹿じゃねぇの?」
魔杖を構えて迫ってくる相手に多少驚きはしたが、容赦なく杖を狙って斬撃を叩き込む。武器の等級が同じなので杖が斬られることは無く、甲高い金属音を立てて吸血鬼の手から弾き飛ばされた。
「上位プレイヤーの中でさえクリマシリーズを使うのを嫌がるやつがいるのによ」
「なっ…」
「じゃーな」
武器が無くなり動揺する相手を何の躊躇もなく横殴りに叩き付けるように一刀両断にした。黒いガラスに変じて砕け散る残骸には目もむけず、武器に視線を向ける。
剣・騎士剣・大鎌・メイス・魔杖・狩弓の6種の武器と、最上位の竜ですら確実に仕留める琥珀の美禄で満たされたグラスと水差しの2種の魔導具。武器説明文曰く「復讐に憑かれた嵐神の武器であり、人の子には及ばぬ凄まじい颶風を巻き起こす。その身の琥珀には今も衰えることの無い敵意を抱いている」。
説明文に沿うかの様にこのシリーズは使い手自身に一定以上の精神異常耐性が無ければ、琥珀に宿る凄まじい敵意に呑み込まれてまともに扱うことすら出来ない。神器の名に相応しい美しさなのだがあまり使われないのはそういう理由からだ。
「さてさて、やりますか」
もらった封印玉を適当にぶつけると、シリーズ武器ごと全て玉に吸い込まれてしまった。最初無色透明だった封印玉は、属性を主張するように明るい緑に染まっている。
「…こうなるのか。成程」
封印玉をアイテムボックスにしまい込み、次の標的を探して疾走する。
――カイは着実に敵を倒し、訊きだしながら神器を探す。
その結果、教会エリアらしき大きな空間に辿り着いた。ただ、カイが現実世界で知っている教会ではなく、何だか信者たちが「いあ!いあ!」とか叫んで信奉していそうな大蛸の像だとか名状しがたい何かの像だとか、色々邪神っぽい像があった。
「神器は……あれですか」
大きめの黄金の天秤がこれ見よがしに祭壇の上に置かれていた。天秤の皿の片方にはハートの形をした赤い宝石が載せられており、明らかに重さが吊り合っていないのに二つの皿は微動だにしていない。
調べたところ、【無我の天秤】と呼ばれる冥府の神器の一つであり、戦闘には全く役立たないもののそれとは別の意味で恐ろしい力を持つ神器だった。
死者と生者の間で”命の交換”を可能とする神器。生き返った死者の眼前で満足そうな微笑みを浮かべ死にゆく生者。故に”命の交換”と共に”絶望をも交換”するとされ、冥府の神自身が封印したはずの神器であった。禁忌に触れるという理由で。
「誰もいませんね…今のうちにやってしまいましょう」
呟いた後、封印玉を取り出す。すると……
…ゴゴゴッ!!
「おっ?」
明らかに像が動き出す前兆の音。案の定周囲にある邪神像が一気に動き出し、ゴリゴリと音を立てながら襲い掛かってくる。…原材料が石だからか動きは遅い。
「僕相手にその程度の動きで勝てると思ってるんですか…?」
正直、フレイやエヴァンなど最上位プレイヤーと比べれば及ぶべくもない。
ガーネットに似た深紅の宝石を削り出して加工したような魔剣【グラネットブレード】を取り出し魔力を込めて飛ばす。
するとスコールの血晶自動剣の如く魔剣は次々と石像を焼き切り、ガラクタに変えていく。
殲滅は数十秒かかったかどうかといったところ。のところでカイはもらった封印玉を天秤にぶつける。天秤は封印玉に吸い込まれ、無色透明だった玉が濃い紫色に染まった。
封印玉をしまい込み、カイは次の神器を探しに出る。
――アリスはマイペースに歩きながらそれらしき部屋を探していた。
うろうろしていると、周りの扉よりはるかに大きく豪奢な扉を見つけた。夜空の色に染められており、様々な星座が金色のレリーフで刻まれている。
「綺麗な扉だなー、何かありそう!」
魔力を少しばかり多く流し、自分が通れるぐらいに開ける。開いた隙間から身を滑り込ませると、円形の部屋だった中も中で凄まじく美しかった。丸い天井には様々な星座のレリーフが施され、湾曲した壁には本がぎっちり詰まった本棚がぴっちり並べられていた。
本棚の間に、双魔剣・騎士剣・弓・大鎌の4種の武器が飾られていた。蛇の星座が描かれた淡い夜空色のデザインからして星空の神蛇の神器と言われるシリーズ武器【エトワールシリーズ】なのは確定である。
「みーつけた!」
早速封印玉をぶつける。すると武器は全て吸い込まれてしまい、無色透明だった玉が金色に染まった。
その後も暫く辺りを探っていると、幾つかの面白そうな魔導書もだがその中から妙な瓶を発見した。
深い青地に金色で星座などの装飾が施された小瓶で、蓋を開けて中を見てみると淡い白色の丸い…飴のようなものがたくさん入っていた。
【解析】で見てみると瓶自体も特殊な魔導具で、中身の飴は【星夜シトロンの氷飴】という一粒舐めただけで疲れが吹き飛ぶらしい、魔法の飴だった。
「へー…おいしそー!」
アリス自身は見たことが無かったので、何冊かの魔導書と一緒にそれもアイテムボックスに放り込む。
そして次の神器を探しに外へ出た。
――ルキは少女についていき、まとまった反応のある部屋の前に来ていた。
「宝物庫……かね?」
「宝物庫…ではなさそうですけど」
二人の目の前にあるのは、別の意味でいかにもな、ラスボスの部屋を思わせるデザインの派手な扉だった。
「まあいいか。行くぞ?」
「わかりました」
ルキの【破城槌】で扉を思い切りぶち破る。するとその向かいには非常に大きな空間が広がっていた。
奥には玉座らしきものが据えられ、部屋のあちこちにかなりの魔力を宿す武器や魔導具が飾られていた。玉座らしき椅子の前には、これまたいかにもな吸血鬼の大公が既に臨戦態勢で立っている。
「そなたらの目的は分かっている。私たちが集めた神器が目的なのだろう?…そう簡単には渡すわけにはいかぬ。我らも目的があるのでな。欲しければ力で奪うがいい。丁度こちらも最後にその創造の女神の神器が欲しかったところでな、探す手間が省けた」
「それなら話は早い。行くぞ?」
ルキの掛け声で、戦闘の火蓋が切られた。
少女が神杖を使って魔法を撃ちだし、大公の攻撃はルキがほとんどを防ぎきる。しかし魔法では大したダメージを与えられないようで、HPはあまり減っていない。
それでも全く効いていない訳ではないので、その戦法で戦う。
……数十分後、大公が使う剣の攻撃はルキが受け止めきれているものの吸血鬼特有の血を使った魔法で少女が小さな傷を負い始めた。もうそろそろやばいかなーなんて考えた頃、一発の銃声が響き、一陣の突風が吹きすさぶ。ヒビキと青年ーダインスレイフが乱入してきたのだ。
それを見た大公が歓喜する。
「はははははっ!創造の女神の神器に加えて「黄昏の神眼」まで!これは最高だ!」
「自分の勝利を確信するにゃ、ちょっと早ぇんじゃねーのか?」
「……貴様に破滅を」
紅い竜燐模様のコートがヒビキの動きに合わせて激しく翻り、ダインスレイフは正確無比な射撃で援護する。
「流石と言ったところか。ならこちらも相応の返礼で返さなくてはな」
部屋の奥の二つある扉から、精神支配された多種多様なモンスターが【召喚】されて溢れてくる。本当に種類も属性もばらばらなため、相性を考える暇がない。
「みーんなー!!」
『なんだこの状況は』
「恐らく【召喚】でしょう」
ここでアリスとスコール、カイが合流。アリスは早速回復魔法で少女の傷を癒し、スコールは自分の双魔剣で斬り倒したモンスターの血で血晶の自動剣を作り出し、飛ばしている。
ルキと少女、ヒビキが大公を相手取り、ダインスレイフ、カイ、アリス、スコールは【召喚】されたモンスター群を相手取る。
「これじゃあきりがないよー!何とかならないの!?」
「確かに段々きつくなってきますね」
「…………扉を封印できないか試してくる。もう片方からのモンスターを対処できるか」
「…何かあるの?」
「一応手段は持っている。成功するかは分からないが」
「ならやってください!」
「わかった」
ダインスレイフが左の扉の方へ走る。開け放たれた扉の前に辿り着くと、モンスターが召喚される魔法陣を魔弾で破壊してから鎖を取り出し扉を閉じて鎖で厳重に封をする。鎖の端にある黄昏色の珠に魔力を込め、数十秒かけて封印が完成した。右の扉も同じように魔法陣を壊してから鎖で封印する。
暫くしても軋む様子はなく、見事に成功したようだ。
「流石!」
「これでかなり楽になるな」
大公は血の自動剣を作り出すことでルキと少女には対処できているようだが、いかんせんヒビキの本気の速度が速すぎてちょっとずつ傷を負わされていっている。回復しようとしても鎌鼬を纏った斬撃は止まらないどころかより容赦なく襲い掛かってくるため、隙をさらすわけにもいかず回復できていない。
「流石は古代機械国の技術の結晶。忌々しい”神に最も近い”遺物っ…」
余裕がなくなってきているのか、その表情は硬い。
いよいよ奥の手か、血で作られた兵隊ー血剣兵をざっと数えて数百程生成してきた。
「うわっは、これはやべぇ」
「表情に反してるよヒビキ」
「ルキ、奴を殺れるか!?」
「ああまあこの部屋滅茶苦茶にしていいなら…」
「ダメじゃねーか」
「周りの神器は私が回収します!数分耐えられますか!?」
「了解、そのぐらいならいける」
「よっしゃ、行くぜ!」
絶望するどころか逆に滅茶苦茶テンションボルテージが跳ね上がっている【蒼穹】4人の面々。他方、ダインスレイフは冷静に射撃で血剣兵の胸部分に僅かに見える核を狙っている。鮮烈な黄昏色に輝く眼は尽きせぬ魔力を魔弾に変化させ、実体のない血であろうが容赦なく撃ち貫く。
………数分後、少女が全ての神器を回収し終えたのを見てもう満身創痍と言った様子の大公にトドメを刺しにかかる。久しぶりの手ごたえある戦闘の礼として、ヒビキが深淵属性の魔法を発動させた。
―深淵属性魔法スキル【貪欲な闇槍】。
正確無比に心臓部分を刺し貫き、黒いガラスが砕ける音が儚く響いた。
「………………終わったか」
「終わったね。ハイこれ」
「ああオレも」
「俺も忘れかけてたわ」
「僕も回収した分渡しておきますね」
封印した分も含め封印玉を全て少女に渡す。
「ありがとうございました。これで私もお父様に面目がたちます」
「この後どうすんだ?お前も」
「俺は……このまま街に寄ってからどこかに行く」
「そうか」
黄昏色の目も神器の一種だと言ったが、ある意味自身が神器そのものであるためまた狙われるかもしれない。まあそれでも自衛ぐらいはできるだろう。
「重ねてお礼を申し上げます。対価として吊り合うかは不安ですが、これを持って行ってください」
そういって少女が取り出したのは、幾つかの素材とアイテムだった。
【千年雫石】
ランク:幻想級
・大地の底で千年の時を経た魔力結晶。相性の悪い素材同士でもその相性を無視してくっつけてしまう特性を持ち、素材同士が高級な程、出来上がった武具の耐久値を上げる効果を持つ。
【古代の大歯車】
ランク:遺物級
・古代の国、特に機械の国があった辺りからたまーに出土する大きく精巧な歯車。遥かな時が経っているのにどこも錆びついておらず、使おうと思えば問題なく使える。しかもいくら使っても擦り減らない。建物の自動機構などに組み込むとその機構の耐用年数を伸ばす効果を持つ魔導具でもある。
【竜刻の涙石】
ランク:幻想級
・【竜の谷】の最奥で極稀に入手できる竜の宝石。赤・青・緑・紫などの色があり、所持していると対応する属性の紋章を強化する。涙石とは冥府の宝石の一つで、この宝石はその亜種。死の匂いを感知するとよりその効果が跳ね上がる。
【彫刻神の工具】
ランク:幻想級
・彫刻の亜神が使っていたと言われる工具。神器ではないがそれに近い性能を持ち、彫刻師・細工師の使う道具では最高峰。持ち主の意思で自由に形状を切り替えられる。
【天獄枷の鍵】
ランク:???
・??の枷を外すことができる。但し、外すにはこの鍵と莫大な特定属性の魔力が必要。
【稀代錬金師の指輪】
ランク:遺物級
・昔いたという稀代の錬金術師が使っていた指輪。生産の錬金行為に限り、成功率を高める。作ろうとするものが難しければ難しいほどその効果は上がる。
「いやいやこれで十分だって」
『……なんだこの鍵?』
十分すぎる程のレアものである。(一部意味がわからないが)それもどうやって分かったのか生産職にとってのどから手が出る程欲しがられる代物ばかりだ。
「そうですか…?」
「うん」
「…………皆さん、本当にありがとうございました。私はこれから神器をそれぞれの神殿へ戻しに行きます。では」
「……じゃあな」
「おう!」
「ばいばーい!」
「またな!」
二人を見送った後、5人は転移でアステリスクに帰還する。
「いやさ、手掛かりというか吸血鬼の本拠地なら見つけたんだが…」
「どこだ?」
「それは私が案内する」
「ならいいが」
『………………』
「?どうした?」
『これはどうすればいいんだ……?美術館の絵を揺らした弾みで絵の中から倒れてきたのだが』
そういってスコールが取り出したのは、小さな碧い小瓶。中には万能薬とよく似た黄金色の液体が入れられていた。エリクサーと違うのは黄金色の中に、星のような銀色の粒が混じっていること。また、液体自体が銀色一色のアンブロシアでもない。
「何だそれ?」
『さあ……?』
「取りあえずぶっかけてみたらどうですか?気付けみたいな」
「相変わらずお前は容赦ねぇよな…!」
ヒビキが若干引くが、スコールはカイの言葉に従って小瓶の中身をぶっかける。小瓶から零れた液体は銀色の光粒となって、眠る青年の上に降りかかった。
……………大体十数分後。
どこかのダンジョン支配権を分捕りに行ってしまったルキは放っておくとして、待つのに飽いたかカイも鍛冶場に行ってしまった。スコールも向かいの部屋で眠っているし、カイはまだ鍛冶をしているのか先ほどからカァアアン、カアァアンと槌音が絶えず鳴っている。
ヒビキもヒビキで今までの精神的疲労が出たのか壁際の椅子に座り込んで瞼を閉じているし、少女も眠りこけてしまっている。
―不意に。
今まで深く眠っていた青年の瞼が、ピクリと震える。
その後、悪夢を見た後かの様に勢いよく身を起こした。黒髪の下に覗く静かな黒曜石のような黒い目と鮮烈な輝きを宿した黄昏色の目は大きく見開かれ、息が荒い。
「…………?」
暫く状況を理解するのに時間を要したようだが、状況を呑み込むと青年は傍らの机に置いてあった自分の双銃を掴み、部屋から音も無く出て行ってしまった。
「神器を取り返しに行かなくては……」
誰にも聞こえない音量でそう呟いていたところを見るに、吸血鬼たちの本拠地へ行くつもりなのだろうか。
―――さらにそこから大体20分近く経った頃。
目を覚ましたヒビキは、青年がいないことに気づいた。少女を起こし、相談する。
「多分だが、その吸血鬼の本拠地へ行ってしまったんじゃねぇか?」
「そんな…!いくらあの人でも無茶ですよ…」
「今から行けば十分間に合う。転移で近くまで行けるか…そうしたら時間短縮にはなるんだが」
「転移なら私出来ます。行きますか?」
「いやちょっと待て、スコールを呼んでくる」
そこで扉を開けてルキが入ってきた。
「オレも行く。カイにはさっき訊いてきたんだが、まだ鍛冶したいってさ。で、アリスにも訊いてきたんだが行ければ行くと」
「ああならいいか」
まあいつも通りと言うことで。
その後向かいの部屋で血晶の武器を作っていたスコールを呼んできた後、少女の力を借りて付近まで転移する。
――――転移した先は、端的に言えば洞窟の中だった。しかし外にはこれ外に出れば死ぬよなと言いたくなるレベルの猛吹雪が吹き荒れているらしく、凄まじい風音が聞こえてくる。
当然の如く「気候:氷冷」かつ相当強いため、何もしないまま外に出れば彼らであっても数十分程度耐えた後スリップダメージで死亡するだろう。そこまでのレベルである。
「どうすんだ、これ」
「外に出れば回復なしだと数十分しか持たないだろうな」
「いやお前は更にその数倍は耐えれるだろ!」
「HP的には大丈夫でもこの寒さの中動きたくはない」
「まあ…そうか。じゃあカイに何かないか訊いてみるとするか」
『……大丈夫なのか…?』
【蒼穹】の中でも守護者たるルキは他4人と比べHP総量も半端じゃないほど多い。
カイにメッセージを送ったところ、十数分経って返事が来た。人数分のアイテムが添付されており、取り出してみると複雑精緻にカットされた赤い宝石の嵌ったペンダント型の魔導具だった。調べてみるとカイの装備品についている「気候(氷冷)無効」と同じ効果がついていた。
「…流石だ」
「恐らく宝石部分はユリィ作だろうけどな」
ペンダントを配り、早速身に着ける。
「案内してくれねぇか」
「勿論。こっちです」
猛吹雪が止むのを待ってられない4人は、その吹雪の中を突っ切る。少女が時々「こっちです」と示す方へひたすら走る。
……数十分後。吹雪が止み、4人の目の前にはいかにもな暗い色彩の城が姿を現した。
一応結界が張ってあるようなのだが…。
「何だ、この程度なら問題なく破れる」
「どうすんだ?」
「ちょっと待ってください…」
神器の現在位置を探っているらしい。暫くして、
「……厄介です。位置がまとまっているのではなく城の方々に散らばってる反応が多数」
『まとめて宝物庫なりなんなりに置いているというわけではないということか』
「そういうことみたいだな。もしかしたら自分たちで使っているのかもしれねぇ」
「あり得るな。その散らばってる神器の属性とか分かるか」
「一応は」
「ならいい。教えてくれ」
神器の属性を教えてもらった後。
「じゃあまとまってる反応源の回収、できるか?」
創造の女神の杖を握った少女に問う。
「わかりました。皆さんは神器を見つけたらこれを使ってください」
そういって彼女が渡してきたのは、透明なガラス玉。
「一時的な封印玉です。ぶつければ後は何とかなります。が、封印玉は近くに悪意持つ魔力があると上手く作動しないので、もし吸血鬼がいたら倒してからにしてください」
「了解」
少女が封印玉を数個ずつ全員に配り終えるところで、誰かが転移してくる反応をヒビキが察知した。
数秒後、転移の魔法陣から現れたのはアリスだった。
「お、皆集まってたんだねー」
「丁度いいタイミングだったな」
転移してきたアリスにも封印玉を渡した後、使い方を説明してから5人は結界に護られた城壁に向き直る。
『殲滅してしまっても構わないものなのか?』
「んー…別にいいと思うけどな」
いくら知性が在れど、害をなすなら容赦はしない。
『そういうものなのか…?』
「勿論、平和的に話ができるなら話をするけどな」
『ふむ…』
「でさ、終わったらどこに集まるの?」
「まあそれはその時考えようか」
「わかったー!」
「で、誰がぶち破る?」
「もうそろそろ行かないと見つかってしまうな」
「オレがやるわ」
「じゃ、補助やる」
ヒビキが描き出した威力強化の魔法紋章に向かって、神話級砕刃カテゴリの戦槌【古竜の牙】を取り出したルキがその大槌もといまんま竜の巨大な牙を振りかぶる。
―――槌術系戦技スキル【破城槌】。
ドッガァァァアアアン!!!と凄まじい轟音が鳴り響き、ガラガラと瓦礫が崩れる音を添えて立派な城壁に物凄い大穴が開いた。
「さあ、行くか!」
ヒビキの掛け声と共に、爆風を置き去りにして5人が散らばる。
…
―取りあえず中を爆走しながら適当に動き回る。後ろから兵隊らしき反応が追いかけてこようとしているのは分かるがスピードについてこれず置き去り状態だ。
ある程度走ったところで近くのそれっぽい部屋の扉を蹴り破る。ドォォオオン!とこれまた尋常ではない音を巻き添えに、扉は吹っ飛んだ。その先には一人の吸血鬼と、後ろには剣・騎士剣・大鎌・メイスなどの武器が飾られていた。デザインが一様に同じところを見るにシリーズもの、感じられる魔力から十中八九神器である。
「お、あったあった」
「…だ、誰だ!?」
「お前の後ろの神器が目当ての冒険者とだけ言っておこう」
「やはりこれが目当てか…渡すわけにはいかん!」
吸血鬼の持っているのは後ろのシリーズ武器の中の魔杖。間違いなく魔導士タイプ。
「ありゃ属性は風か」
教えてもらった情報と、【解析】で得た情報を突き合わせる。緑がかった金属っぽい色と、嵌め込まれた大きな琥珀。プレイヤーの中ではクリマシリーズと呼ばれる超遺物級の武器たちだ。
「うぉおああああああああ!」
吸血鬼の目は元々鮮血の如き紅だが、目の前の双眸からは理性が飛んでいるらしく明らかにイってしまっている。
「馬鹿じゃねぇの?」
魔杖を構えて迫ってくる相手に多少驚きはしたが、容赦なく杖を狙って斬撃を叩き込む。武器の等級が同じなので杖が斬られることは無く、甲高い金属音を立てて吸血鬼の手から弾き飛ばされた。
「上位プレイヤーの中でさえクリマシリーズを使うのを嫌がるやつがいるのによ」
「なっ…」
「じゃーな」
武器が無くなり動揺する相手を何の躊躇もなく横殴りに叩き付けるように一刀両断にした。黒いガラスに変じて砕け散る残骸には目もむけず、武器に視線を向ける。
剣・騎士剣・大鎌・メイス・魔杖・狩弓の6種の武器と、最上位の竜ですら確実に仕留める琥珀の美禄で満たされたグラスと水差しの2種の魔導具。武器説明文曰く「復讐に憑かれた嵐神の武器であり、人の子には及ばぬ凄まじい颶風を巻き起こす。その身の琥珀には今も衰えることの無い敵意を抱いている」。
説明文に沿うかの様にこのシリーズは使い手自身に一定以上の精神異常耐性が無ければ、琥珀に宿る凄まじい敵意に呑み込まれてまともに扱うことすら出来ない。神器の名に相応しい美しさなのだがあまり使われないのはそういう理由からだ。
「さてさて、やりますか」
もらった封印玉を適当にぶつけると、シリーズ武器ごと全て玉に吸い込まれてしまった。最初無色透明だった封印玉は、属性を主張するように明るい緑に染まっている。
「…こうなるのか。成程」
封印玉をアイテムボックスにしまい込み、次の標的を探して疾走する。
――カイは着実に敵を倒し、訊きだしながら神器を探す。
その結果、教会エリアらしき大きな空間に辿り着いた。ただ、カイが現実世界で知っている教会ではなく、何だか信者たちが「いあ!いあ!」とか叫んで信奉していそうな大蛸の像だとか名状しがたい何かの像だとか、色々邪神っぽい像があった。
「神器は……あれですか」
大きめの黄金の天秤がこれ見よがしに祭壇の上に置かれていた。天秤の皿の片方にはハートの形をした赤い宝石が載せられており、明らかに重さが吊り合っていないのに二つの皿は微動だにしていない。
調べたところ、【無我の天秤】と呼ばれる冥府の神器の一つであり、戦闘には全く役立たないもののそれとは別の意味で恐ろしい力を持つ神器だった。
死者と生者の間で”命の交換”を可能とする神器。生き返った死者の眼前で満足そうな微笑みを浮かべ死にゆく生者。故に”命の交換”と共に”絶望をも交換”するとされ、冥府の神自身が封印したはずの神器であった。禁忌に触れるという理由で。
「誰もいませんね…今のうちにやってしまいましょう」
呟いた後、封印玉を取り出す。すると……
…ゴゴゴッ!!
「おっ?」
明らかに像が動き出す前兆の音。案の定周囲にある邪神像が一気に動き出し、ゴリゴリと音を立てながら襲い掛かってくる。…原材料が石だからか動きは遅い。
「僕相手にその程度の動きで勝てると思ってるんですか…?」
正直、フレイやエヴァンなど最上位プレイヤーと比べれば及ぶべくもない。
ガーネットに似た深紅の宝石を削り出して加工したような魔剣【グラネットブレード】を取り出し魔力を込めて飛ばす。
するとスコールの血晶自動剣の如く魔剣は次々と石像を焼き切り、ガラクタに変えていく。
殲滅は数十秒かかったかどうかといったところ。のところでカイはもらった封印玉を天秤にぶつける。天秤は封印玉に吸い込まれ、無色透明だった玉が濃い紫色に染まった。
封印玉をしまい込み、カイは次の神器を探しに出る。
――アリスはマイペースに歩きながらそれらしき部屋を探していた。
うろうろしていると、周りの扉よりはるかに大きく豪奢な扉を見つけた。夜空の色に染められており、様々な星座が金色のレリーフで刻まれている。
「綺麗な扉だなー、何かありそう!」
魔力を少しばかり多く流し、自分が通れるぐらいに開ける。開いた隙間から身を滑り込ませると、円形の部屋だった中も中で凄まじく美しかった。丸い天井には様々な星座のレリーフが施され、湾曲した壁には本がぎっちり詰まった本棚がぴっちり並べられていた。
本棚の間に、双魔剣・騎士剣・弓・大鎌の4種の武器が飾られていた。蛇の星座が描かれた淡い夜空色のデザインからして星空の神蛇の神器と言われるシリーズ武器【エトワールシリーズ】なのは確定である。
「みーつけた!」
早速封印玉をぶつける。すると武器は全て吸い込まれてしまい、無色透明だった玉が金色に染まった。
その後も暫く辺りを探っていると、幾つかの面白そうな魔導書もだがその中から妙な瓶を発見した。
深い青地に金色で星座などの装飾が施された小瓶で、蓋を開けて中を見てみると淡い白色の丸い…飴のようなものがたくさん入っていた。
【解析】で見てみると瓶自体も特殊な魔導具で、中身の飴は【星夜シトロンの氷飴】という一粒舐めただけで疲れが吹き飛ぶらしい、魔法の飴だった。
「へー…おいしそー!」
アリス自身は見たことが無かったので、何冊かの魔導書と一緒にそれもアイテムボックスに放り込む。
そして次の神器を探しに外へ出た。
――ルキは少女についていき、まとまった反応のある部屋の前に来ていた。
「宝物庫……かね?」
「宝物庫…ではなさそうですけど」
二人の目の前にあるのは、別の意味でいかにもな、ラスボスの部屋を思わせるデザインの派手な扉だった。
「まあいいか。行くぞ?」
「わかりました」
ルキの【破城槌】で扉を思い切りぶち破る。するとその向かいには非常に大きな空間が広がっていた。
奥には玉座らしきものが据えられ、部屋のあちこちにかなりの魔力を宿す武器や魔導具が飾られていた。玉座らしき椅子の前には、これまたいかにもな吸血鬼の大公が既に臨戦態勢で立っている。
「そなたらの目的は分かっている。私たちが集めた神器が目的なのだろう?…そう簡単には渡すわけにはいかぬ。我らも目的があるのでな。欲しければ力で奪うがいい。丁度こちらも最後にその創造の女神の神器が欲しかったところでな、探す手間が省けた」
「それなら話は早い。行くぞ?」
ルキの掛け声で、戦闘の火蓋が切られた。
少女が神杖を使って魔法を撃ちだし、大公の攻撃はルキがほとんどを防ぎきる。しかし魔法では大したダメージを与えられないようで、HPはあまり減っていない。
それでも全く効いていない訳ではないので、その戦法で戦う。
……数十分後、大公が使う剣の攻撃はルキが受け止めきれているものの吸血鬼特有の血を使った魔法で少女が小さな傷を負い始めた。もうそろそろやばいかなーなんて考えた頃、一発の銃声が響き、一陣の突風が吹きすさぶ。ヒビキと青年ーダインスレイフが乱入してきたのだ。
それを見た大公が歓喜する。
「はははははっ!創造の女神の神器に加えて「黄昏の神眼」まで!これは最高だ!」
「自分の勝利を確信するにゃ、ちょっと早ぇんじゃねーのか?」
「……貴様に破滅を」
紅い竜燐模様のコートがヒビキの動きに合わせて激しく翻り、ダインスレイフは正確無比な射撃で援護する。
「流石と言ったところか。ならこちらも相応の返礼で返さなくてはな」
部屋の奥の二つある扉から、精神支配された多種多様なモンスターが【召喚】されて溢れてくる。本当に種類も属性もばらばらなため、相性を考える暇がない。
「みーんなー!!」
『なんだこの状況は』
「恐らく【召喚】でしょう」
ここでアリスとスコール、カイが合流。アリスは早速回復魔法で少女の傷を癒し、スコールは自分の双魔剣で斬り倒したモンスターの血で血晶の自動剣を作り出し、飛ばしている。
ルキと少女、ヒビキが大公を相手取り、ダインスレイフ、カイ、アリス、スコールは【召喚】されたモンスター群を相手取る。
「これじゃあきりがないよー!何とかならないの!?」
「確かに段々きつくなってきますね」
「…………扉を封印できないか試してくる。もう片方からのモンスターを対処できるか」
「…何かあるの?」
「一応手段は持っている。成功するかは分からないが」
「ならやってください!」
「わかった」
ダインスレイフが左の扉の方へ走る。開け放たれた扉の前に辿り着くと、モンスターが召喚される魔法陣を魔弾で破壊してから鎖を取り出し扉を閉じて鎖で厳重に封をする。鎖の端にある黄昏色の珠に魔力を込め、数十秒かけて封印が完成した。右の扉も同じように魔法陣を壊してから鎖で封印する。
暫くしても軋む様子はなく、見事に成功したようだ。
「流石!」
「これでかなり楽になるな」
大公は血の自動剣を作り出すことでルキと少女には対処できているようだが、いかんせんヒビキの本気の速度が速すぎてちょっとずつ傷を負わされていっている。回復しようとしても鎌鼬を纏った斬撃は止まらないどころかより容赦なく襲い掛かってくるため、隙をさらすわけにもいかず回復できていない。
「流石は古代機械国の技術の結晶。忌々しい”神に最も近い”遺物っ…」
余裕がなくなってきているのか、その表情は硬い。
いよいよ奥の手か、血で作られた兵隊ー血剣兵をざっと数えて数百程生成してきた。
「うわっは、これはやべぇ」
「表情に反してるよヒビキ」
「ルキ、奴を殺れるか!?」
「ああまあこの部屋滅茶苦茶にしていいなら…」
「ダメじゃねーか」
「周りの神器は私が回収します!数分耐えられますか!?」
「了解、そのぐらいならいける」
「よっしゃ、行くぜ!」
絶望するどころか逆に滅茶苦茶テンションボルテージが跳ね上がっている【蒼穹】4人の面々。他方、ダインスレイフは冷静に射撃で血剣兵の胸部分に僅かに見える核を狙っている。鮮烈な黄昏色に輝く眼は尽きせぬ魔力を魔弾に変化させ、実体のない血であろうが容赦なく撃ち貫く。
………数分後、少女が全ての神器を回収し終えたのを見てもう満身創痍と言った様子の大公にトドメを刺しにかかる。久しぶりの手ごたえある戦闘の礼として、ヒビキが深淵属性の魔法を発動させた。
―深淵属性魔法スキル【貪欲な闇槍】。
正確無比に心臓部分を刺し貫き、黒いガラスが砕ける音が儚く響いた。
「………………終わったか」
「終わったね。ハイこれ」
「ああオレも」
「俺も忘れかけてたわ」
「僕も回収した分渡しておきますね」
封印した分も含め封印玉を全て少女に渡す。
「ありがとうございました。これで私もお父様に面目がたちます」
「この後どうすんだ?お前も」
「俺は……このまま街に寄ってからどこかに行く」
「そうか」
黄昏色の目も神器の一種だと言ったが、ある意味自身が神器そのものであるためまた狙われるかもしれない。まあそれでも自衛ぐらいはできるだろう。
「重ねてお礼を申し上げます。対価として吊り合うかは不安ですが、これを持って行ってください」
そういって少女が取り出したのは、幾つかの素材とアイテムだった。
【千年雫石】
ランク:幻想級
・大地の底で千年の時を経た魔力結晶。相性の悪い素材同士でもその相性を無視してくっつけてしまう特性を持ち、素材同士が高級な程、出来上がった武具の耐久値を上げる効果を持つ。
【古代の大歯車】
ランク:遺物級
・古代の国、特に機械の国があった辺りからたまーに出土する大きく精巧な歯車。遥かな時が経っているのにどこも錆びついておらず、使おうと思えば問題なく使える。しかもいくら使っても擦り減らない。建物の自動機構などに組み込むとその機構の耐用年数を伸ばす効果を持つ魔導具でもある。
【竜刻の涙石】
ランク:幻想級
・【竜の谷】の最奥で極稀に入手できる竜の宝石。赤・青・緑・紫などの色があり、所持していると対応する属性の紋章を強化する。涙石とは冥府の宝石の一つで、この宝石はその亜種。死の匂いを感知するとよりその効果が跳ね上がる。
【彫刻神の工具】
ランク:幻想級
・彫刻の亜神が使っていたと言われる工具。神器ではないがそれに近い性能を持ち、彫刻師・細工師の使う道具では最高峰。持ち主の意思で自由に形状を切り替えられる。
【天獄枷の鍵】
ランク:???
・??の枷を外すことができる。但し、外すにはこの鍵と莫大な特定属性の魔力が必要。
【稀代錬金師の指輪】
ランク:遺物級
・昔いたという稀代の錬金術師が使っていた指輪。生産の錬金行為に限り、成功率を高める。作ろうとするものが難しければ難しいほどその効果は上がる。
「いやいやこれで十分だって」
『……なんだこの鍵?』
十分すぎる程のレアものである。(一部意味がわからないが)それもどうやって分かったのか生産職にとってのどから手が出る程欲しがられる代物ばかりだ。
「そうですか…?」
「うん」
「…………皆さん、本当にありがとうございました。私はこれから神器をそれぞれの神殿へ戻しに行きます。では」
「……じゃあな」
「おう!」
「ばいばーい!」
「またな!」
二人を見送った後、5人は転移でアステリスクに帰還する。
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