最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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9章「開かれた外交、狂気の戦場」

戦闘の火蓋が切られる

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―――明朝。

陣形を組んだ連合軍と、灰色ドラゴンや精霊を全面に押し出した陣形を取る呪霧の国の軍が対峙する。
連合軍側はエルフの魔法で緊急的に土の城壁を作ったはいいが、あくまで緊急なのであまり耐久度は期待できない。

それぞれ散らばった【蒼穹】の面々は音声チャットで会話する。

『あの様子じゃあ、ドラゴンや精霊たちの火力で押し切ってそのまま崩してしまおうっていう魂胆かねぇ』
『のようだな。なら、最初が肝心か』
『おう。防御は任せてくれよ?』
『あたしもバンバン回復するよー』
『ドラゴンの鱗の硬度って、前攻めてきたドラゴンと同じくらいかしら?なら何とかなるんだけど』
『僕も最初から全開で行きますよ。精神的な威圧って大事ですからね』
『じゃ、戦闘中も状況によってはチャットで伝え合うということで』
『OK』

チャットは繋いだままにし、開戦を待つ。

……

―――戦は唐突に始まった。

「奴らのドラゴンが動き出しました!総勢、ドラゴンに向け集中攻撃してください!」

指示が下される。それに従って近接武器や矢が3体いるドラゴンに向かって飛ぶが……

「ダメだ、矢が効いてねぇ!」
「鱗が硬くて剣が効かないわ!!」

そんな悲鳴が次々に上がった。威力に長けた覇弓カテゴリの大弓の大矢でも、弱点であるはずの目や口内に当ててもあまりダメージがない。近接武器に至っては鱗に弾き返される始末。
なら魔法ならどうだということになったが、並大抵の火力では他の二の舞になるばかりだ。

『Kyeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!』

ドラゴンが正気を感じない叫び声を上げる。

「……ブレスが来るぞ!」

誰かが叫ぶ。その叫びの通り、灰色ドラゴンたちは一斉に口を開け、口腔に魔力を溜め始めた。キィィィイイイ…と甲高い収束音が聞こえる。タンカーたちが盾を構えるが、収束音が長い分並大抵では耐えきれるとは思えない。

『Gyuee!』
「おっと、やらせねぇよ?」

プレイヤーのタンカー部隊の中に紛れていたルキが、氷の大盾を構える。

―――盾術系魔属性複合スキル【名も無き守護者の矜持】
―――盾術系戦技スキル【ディフェンシング・フォース】

最前線部隊の手前に、黄金の半透明の壁が展開される。揺らめく壁はその儚げに揺らめく見た目に反して、直後にドラゴンが一斉に発射した魔法誘導弾をすべて受け切って見せた。魔力の無駄使いを防ぐべく、防御成功直後に壁を解除する。

……敵はたった一人のタンカーに人間程度なら軽く吹き飛ばすはずのドラゴンの魔法弾を全て受け切られ、動揺したらしい。が、そのまま進んできた。

「そぉーれ!」

アリスの大規模付与術【術式付与・全能力強化エンチャント・オールステータスアップ】が飛ぶ。それと同時に魔人族の付与術師らによる付与術も全体にかけられた。

「おぉ、付与術が来たぞ!」
「いけいけ、今のうちだ!」

最前線で戦うプレイヤーたちが一気呵成に攻め立てる。それに同じ場所で戦っていた住人の同業者も続く。
付与術の効果は目覚ましく、ドラゴン族が正面から攻撃を食い止める隙に側面から剣や槍などが突き立たれ、大矢やボルトが目や鱗に突き刺さる。海民族・獣人族の軽装部隊は身軽さを活かしてドラゴンの周囲をにいる兵士たちを翻弄し、空中部隊は存分にブレスや弓矢を撃ち合っていた。

間もなく、ドラゴンの1匹が黒いガラスとなって砕け散った。

「よっしゃ、俺らも行くぞ!」
『応』

その隙にと残りのドラゴンに飛び掛かるプレイヤーの遊撃部隊に交じっていたヒビキが地を蹴り、血晶自動剣を展開したスコールも続く。その後も断続的にドラゴンからの魔法弾は雨あられのように飛んでくるが、ルキが一人で悉くを受け切ったため他のタンカーたちは眼前の兵士たちの攻撃を防ぐのに集中できた。

いくらドラゴンのブレス魔法弾といえど、以前5人で戦った超ボスに比べればなんてことはない。超ボスの攻撃はかすっただけでルキ以外のメンバーのHPは2~3割近く持っていかれるほど重いのだ。ルキでも1割余りは持っていかれる。

ヒビキに呼ばれた大鷹の精霊は何故かすっかり張り切っており、そのせいでとんでもなく容赦ない暴風が生み出され兵士たちの血を巻き込み渦を巻く。それでいて他の部隊の邪魔にならないようヒビキが何とか制御していた。
そういえば兵士たちの一部が持つギザギザ刃の武器は恐らく出血狙いだろうか。しかしその武器も届かなければ意味がない。

カイも脳筋っぷりを盛大に発揮し、魔剣の一振りで数人の兵士を叩き切っている。

そうこうしているうちに前線部隊がドラゴンの2匹目、後詰めで出てきた灰色精霊の1体を打ち倒す。


―――彼らの蹂躙劇は、夜になり双方が退くまで断続的に続けられた。


……

夜、自分たちが張ったギルドテントの中で輪になって座る6人。

本部の天幕の近くに掲示板がたてられており、奴らの持つ灰色ドラゴンと灰色精霊は計36体だと判明していた。
士気は高い。……主たる原因は間違いなく彼ら6人である。

普通夜になると夜闇に紛れての奇襲に動くものだが、奴らの天幕付近にはいくつもの凶悪な罠が張られていることが判明し、対処法がたてられないうちは無暗に動けないようだ。

即死しない限りアリス含めた教会の回復師部隊が回復させたため、犠牲者は何人か出てしまったものの負傷者はいない。

「ルキ、お前一人でよく受け切れたよな全部」
「んぁ、前戦った超ボスに比べりゃ張り合いなかったぞ?」
「まあ、あれは…嫌な、思い出だね……」

そもそもヒビキたちとは体格差からして比べるのも馬鹿馬鹿しいぐらいの超ボスに無謀にも挑戦して、その経験の中には最終的に5人まとめて仲良く吹っ飛ばされて死に戻りした経験もある。無論、レベルカンストする前の話だ。今でも大体4割ぐらいの確率でそうなるが。残り6割も、勝てる時もあれば数人死に戻るときもある。
その時は直後にひとしきり爆笑した後反省会となったのだが、無謀に挑戦したことは誰も後悔していなかった。

『敏捷、は確かに上がっているような気はしたが…所詮手駒にされた操り人形、鈍重も鈍重だったな』
「確かにそうだな」
「ん?……………誰か来たみたいだぞ」

ギルドテントの来客用の鈴が鳴る。
応答した後、数人の人物が入ってきた。古代人族の長とその子供らしき2人、海民族の長とその子供らしき1人だ。
輪を広げて場所を作った後、来客が座ったのを確認してカイが用向きを問うと古代人族の長…名前はランシスというそうだが、が口を開いた。

「初戦はこちらが押しているが、敵は明日は本腰を入れてくるはず。ドラゴンだけでなく自立機械兵器も出してくると思われるので、他種族の長殿たちと話し合った後はあなた方とも話し合ってみようと思いまして」
「どうにかできないのか?」
「弱点は青い単眼で、そこを古代兵装の矢で射ればどの型でも一撃で破壊できます。破壊せずに無力化しようとするなら…………特別な権限を持つ存在がアクセスするしかない。私たちの技術で古代兵装はありったけ用意できましたが、特別権限については何も分かっていなくて……機械の国で所縁のあるあなた方には話しておくべきかと思ったまでです」
「父様は本当は鎧も配りたかったみたいなんだけど、原料の製造が難しくてそれは無理だったんだ。だから兵器の眼から放たれるビームには気を付けて。あれは同じ古代兵装の盾でないとそう連続では受け切れないから」

ランシスの斜め後ろに座っていた少年が続けて補足する。その目はルキの方を向いていた。

「忠告ありがとさん」

目の前に置かれた一本の矢を見てみると、確かに普通からはかけ離れている。


古代兵装・矢

制作評価:9

古代人族のみが作ることのできる、青いエネルギーの短刀を鏃に転用した矢。弓の性能がある程度ないとこれを撃ってもまともに飛ばないが、一定以上の弓で射れば十全に力を発揮する。

特殊能力 古代兵器特攻(古代兵器に対し威力激増。弱点に撃った際は一撃で破壊できる) 古代の炎(当たった相手を一撃で消滅させる。しかしボス級モンスターには効かない) 相応しき格(弓の性能が一定以上ないと十全に能力を発揮できない) 青の矢(通常の矢の倍以上もの射程距離を持つ) 


「おぅこれは凄まじい。雑魚なら一撃滅殺できるとか」
「でしょう?」

ランシスはちょっと得意そうだ。続いて、海民の女王様が口を開く。

「それでこちらなのだが、先ほどミア様から念話を頂いた。水の神獣ヴァ・ルノアから援護射撃を行う準備ができたとの事だ。流石に威力はいくらか落ちるとのことだが」
「それは朗報ですね。祖先の自立機械兵器は水にも弱いので、水溜まり程度に水没させるだけでも違いますよ」

やや興奮気味にランシスが言う。女王様(名前を聞いたところ、ルメアというそうだ)はそれを聞いて満足げだ。

「そうか。ならよかった。この戦いが終わればミア様にも礼を言いに行かねば」
「ねぇ、ちょっと相談なんだけどさ」

アリスが言う。

「どうした?」
「あいつらの一部が持ってたんだけど、このギザギザ刃って明らかに出血狙いだよね?」

そういってアリスが鏃を取り出す。確かにそれはサメの歯のようにギザギザで、細い溝が彫られていた。


出血刃・鏃

敵に刺さると出血を強要し、作ってある返しのせいで無理矢理引き抜こうとすると余計に出血する。しかし、当然だが血のない無機物などには効かない。

特殊能力 出血強要(突き刺さると相手に出血の状態異常を起こさせる。鏃が刺さっている間はポーションを飲んでも無意味) 呪いの霧兵装(カースミスト兵隊限定兵装)


「だな」
「これ、何とか無効化できないかなぁ」
「…………出血耐性を上げるものならなくはない、けど…」
「それでいいんじゃねぇの?あとは継続的に大規模回復かけてりゃ後ろへ下がる分の時間は稼げるだろう」
「これは僕も後で研究しときますね」
「ああ、頼む」

「………………で、実は一番の本題なのだが……」

そう切り出した後にルメア女王様は話し始める。初戦で犠牲になってしまった者たちの死因、「呪死」の対処だ。
出血や毒に比べ蓄積が早く、発症した時点で問答無用でレベル関係なく即死。死に戻りした後解呪するまで最大HPが半減し、プレイヤーからは最も凶悪な状態異常と呼ばれ恐れられている。

解除するには《錬金術》で作れる「解呪石」を使うか、高位の浄化師や解呪師にしか使えない呪死解除専用の魔法を使うしかない。解呪石を作るにもかなりレアな素材と高い技量が要求されるので、通常はパーティに必ず1人解呪師か浄化師の職業を修めているプレイヤーを入れる。

問題なのは解呪するアイテムは存在するものの、出血や毒などのように蓄積を消すアイテムは存在しないことだ。特にリコード世界の住人の場合死んだあと5分以内に蘇生を受けられないと本当に死んでしまうため、今回のような戦場では猛威を振るう。

「あたしの仕事が増えそうだねー。別にいいけどさあ」
「…………頼んだぞ?アリス」
「あたしとしても無暗に住人の人たちを死なせたくはないし、がんばるよ~」

武器スキルで大規模死者蘇生が可能な、アリスが担当するしかない。

「では、私たちはもうそろそろお邪魔するよ」
「ありがとうございました~。明日も頑張りましょうね~」

アリスが元気にばいばーいと手を振ると、彼らは一礼して去っていった。

その後6人で話し合った後、眠ることにする。

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