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10章「狩人たちの見る夢」
獣の”神父”
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――――技術力がいいのか全く悪臭のしない上に綺麗な水しか流れてこない下水道を歩く。下水道のあちこちにアイテムと、狩人装束を纏った骨が散逸していた。やがて、下水道の終端が見える。終端の部屋には人食い豚が数匹おり、奥の壁には梯子がかかっている。
その上にはレバーを引くと起動するエレベーターがあり、
その、上の教会には……
ザザッ…――ザ…ザザァ――……
激しいノイズの向こうに見える人影。
人影は自らのことを神父と名乗った。
教会に血化粧が施され、銃弾が壁を抉る。
唐突にそれは哄笑を放ち獣と成った。
幾度も身体を傷つけられながらも、斬撃痕と弾痕を獣の体躯に刻み付ける。
やがて獣と化した神父は倒れ、赤い目から幾分か活力の光が消失したままふらふらと神父が落とした鍵で地上への扉を開け、階段を上っていく。
…
―――目を覚ます。出血はすっかり収まっていた。マップ曰くこの街の下水道を経由すれば次エリアの【聖堂街】…しかしその直前にもう片方のエリア主が待ち構えていることが分かっている。
(………………??)
目覚める直前に見た夢。
自分と全く同じ姿をしていたが、赤く輝く目には何の感情も見受けられなかった。強いて言えば殺気が輝いていただけだ。しかし、身のこなしや放つ気配、武器の扱いは一流の狩人そのもの。
これがシステムの言っていた記憶深奥なのかと妙に納得していると、青年の方も目覚めた。
「?」
「ああ…じゃあ行こうか」
考え込んでいた自分を見て首を傾げる青年。それを見てヒビキは自分の思考を打ち切った。
…
数十分後。道をうろつく武器を携えた群衆や人食い豚の身体に風穴をぶち開けながら、下水道への入り口を探し当てた。人狼のハメ戦法に使った民家の逆側にあった、柵の崩れた一方通行の段差を道なりに降りていくと入り口だ。中は記憶の通り綺麗な水が流れ、コケっぽい匂いが漂っているだけ。
下水道自体は、側面の壁にいくつか長い梯子がかかっているだけで道自体は一直線。迷う心配はない。
しかしゾンビやら人食い豚やらがうろついているので、ここでも銀矢と弓剣、青年の持つ剣の光波が大活躍した。影に隠れ不意打ちし、相手がのけぞったところを弱点部位にもう数発入れる実に簡単な作業。しかし油断すると一瞬で被弾するため、気は抜けない。
「……はぁ、はぁ」
「………………」
被弾してもやり返すことで精神を高揚させ、命を奪い返す狩人独特の戦法がある。リゲインというのだが、これをやりすぎた結果が《血に酔った狩人》。つまりこれは麻薬のに似たものと捉えればいい……のか?
『グアアアアアアァァア!!』
―パァンパンパァアン!
『!?!?』
ドサッ。
ヒビキの斜め後ろから襲い掛かってきたゾンビ数体を纏めて獣狩りの銃でヘッドショット。鋭い破裂音が連鎖し、遅れてゾンビの腐った体躯が崩れ落ちる音が鳴った。腐敗に侵された血が水を染め上げる前に、精神衛生上長居はよくないと判断し慌てて青年の腕を引っ張りその場を離れた。
ジャブジャブと流れる水に逆らいながら進み、目についたアイテムは片っ端から回収する。下水道をある程度進むと馬鹿みたいに開けた空間に出た。しかし敵以外何もないらしく、道なりに水道橋を渡るのみ。水道橋を渡った先には数匹の赤茶けた巨大豚こと人食い豚がうろついている。その奥には梯子が見えた。
すり抜けようにも人食い豚の体躯が大きいため隙間がほとんどなく、無理に通ろうとすれば間違いなく全ての豚に気づかれてしまう。ここは安全に一体ずつ、素早く処理することにした。
アイテムボックスから、白い骨で出来た短剣を取り出した。
祭祀者の骨刃
種別:道具
傷つけた敵の方向感覚を狂わせ、同士討ちを起こさせる力を宿した骨の短剣。
ただし元は儀礼の品であるため、深く斬りつけると壊れてしまう
まさか近くまで走って行って切りつけるわけにもいかないので、今回はそのまま短剣をぶん投げる。無論標的は人食い豚のうちの一体である。白い骨の短剣は猛スピードで空を切ると、人食い豚の脇腹に深く突き刺さった。
『…ブヒ!……ピギィィイイイ!?』
大混乱を起こしたその豚はいきなりぐるぐる走り出し、周りにいた人食い豚たちを体当たりしたり蹴りに蹴る。やがて物陰に潜むヒビキたちの横を走り抜けていき、水道橋から落下した音が鳴った。数秒後にドチャッという結構生々しい音が聞こえてきたので、あの豚の結末は容易に察せる。
弓を引き、3本纏めて銀矢を撃つ。
扇状に飛んだ矢は、一体の豚に完全にトドメを刺した。
青年が剣を振るい光波を放つ。
別方向にいた豚がスッパリ切り裂かれた。
そんなこんなで青息吐息だった人食い豚たちを手早く処理し、ドロップアイテムはすべて回収してから梯子を上る。
上った先にはレバーと、エレベーターとしか形容しようのないものが並んでいた。銀の柵で閉ざされたそれを一瞥し、レバーを躊躇いなく引く。
夢の通りなら、この先は…………
エレベーターの入り口を閉ざしていた銀の柵がすーっと開き、ほぼ同時に上から乗り場が下りてくる。そして床と同じ位置でガシャン!と停止した。2人が乗った後、柵はまたすーっと閉じ、乗り場が上へ移動する。
…
エレベーターを降りた先は、奇妙な教会だった。いや、内装は確かに教会なのだが異様に広く、床には墓石が乱立し、ついでと言わんばかりに狩人装束を纏った骨が散らばっていた。そして、奥に立つ教会装束の狩人―夢では神父と名乗っていたが―がこちらに気づいたか振り向いた。
かなり老年とみられるがその肉体には衰えのおの字も見当たらず、散弾銃と獣狩りの斧を持っている。狩人の例に漏れない赤い目が、複雑な色の感情をたたえて輝く。こちらを見据えたその狩人が、言った。
「……………どこもかしこも、獣ばかりだ………
…貴様らも、どうせそうなるのだろう?」
殺気が、放たれる。
片手斧を構え、その狩人―神父が迫ってくる。
「来るぞ」
「…!」
青年が聖剣を構え、ヒビキは弓から剣に戻した弓剣を構える。無論ヤスリで炎エンチャント済みだ。
…斧による縦横の振り(2連続縦振りもあった)、地面を削ってからのかち上げ、ジャンプ攻撃など当たればかなりのダメージを喰らうであろうと予想できるだけに全力で避けた。
ヒビキよりも早く射程外からの攻撃を始めた青年は剣で光波を放ち、早々に弓で回避を織り交ぜながら攻撃を始めたヒビキ。しかし厄介なのが散弾銃による攻撃で、範囲が広い故にヘイトを自身に集中させていたヒビキは散弾銃の銃撃からの突進かち上げでしょっちゅう受傷した。かち上げられるのだけは免れたものの、徐々に視界が霞んでいく。
怪我の功名(?)かヒビキが引き付けていた間攻撃し放題だった青年が神父のHPを削り、残りHP量がいよいよ六割を切ろうというあたり、だ。
「…匂い立つなぁ……
堪らぬ血で誘うものだ、
えづくじゃアないか!
ハッハッハッ…
ハッ、ハハハハハハハッ!」
左手に持つ獣狩りの斧が変形した。変形能力を備える(とわかった)この世界の武器群の中でも斧は攻撃力が上がると予測できるため、下手に近づかないのが上策だ。近づかないといっても、散弾銃などは相変わらず持っているため近づかないようにしても油断はならない。しかし、無駄に警戒しすぎてもそれは逆に動きの阻害を招くだけ。落ち着くのが一番だ。
「奴の背後に常に陣取るようにしてくれ、俺が注意を引き受ける」
「…………(こくり)」
2人の武器防具とも自身の血と返り血に塗れ、体力も半分は尽きている。しかし、戦意は衰えていない。
ヒビキは同意を取るとすぐに相手の注意を引くように移動する。無論剣は抜いたままだ。神父はまんまとその動きに釣られ、ヒビキを狙い始める。青年は背後に足音を抑えながら移動した。
パァンパァン!と銃声が鳴り響き、血が噴き出す。教会に血化粧が施され、赤黒く染みついた。どんどん増えていく散弾銃のかすり傷と斧の切り傷から赤い血が流れ出し、痛みとともに視界を霞ませる。霞んだ視界では正確に敵の攻撃を見切ることができず、さらに傷は増えていく。HPの減少は輸血液で凌いでいるが、傷は休息しないと治らない。
…
そんなこんなでとうとう神父のHPが3割を切った。
「ハハッ、ハハハハハハハハハハ!!」
哄笑の直後、体躯が肥大化し鋭い爪と牙を持つ獣と化した。理性はもうないらしく、咆哮しか発しない。
「!!」
両腕が肥大化した獣と化した神父が本格的に暴れる前に削りきろうと、懸命により深い斬撃を叩き込む。散弾銃や斧を捨て、聖職者の獣と同じく肉弾攻撃ばかりになるが銃撃を頭部に叩き込むと面白いくらいに怯む。内臓攻撃もとれるため、半ばハメ戦法のような形で銃撃し続ける。
しかし、一部問題もあった。
(こいつ…墓石すらぶっ壊してくる!?)
獣と化した神父の肉弾攻撃は、今まで盾として使えた教会の床に乱立する墓石すらぶっ壊してくる。その様は半ば恐怖を与えるものであった。その反面、獣と化したことで炎に余計弱くなったらしく銃撃による怯み+アイテム《火炎瓶》併用でHPがガリガリと削れる。
やがて、獣は倒れた。
獣が倒れたのと入れ替わりに、教会の中央に火のついた黒カンテラが出現する。《地下墓の鍵》がドロップした。教会の奥にある扉を開ける鍵だろう。
≪ログ≫
灯り「オドンの地下墓」が解放されました狩人の夢の「市街の墓石」とこの灯りとの転移ができるようになります。
…
灯りで休息し、すっかり傷を治したヒビキと特に傷を負っていない青年は鍵を使って先へ進む。道は一方通行らしく、迷う心配はない。途中に壁の色に半ば擬態していた宝箱があったのに気づき、慌てて回収しておいた。
≪拾ったアイテム種類≫
・死血の雫【3】
・石ころ
・血石の欠片
・死血の雫【1】
・匂い立つ血の酒
・輸血液
・水銀弾
・ノコギリ槍
・油壷
・狂人の智慧
・ノコギリの狩人証
・死血の雫【2】
・狩人の確かな徴
・濃厚な死血【5】
・狩人シリーズ
・真っ赤なブローチ
・血晶石の工房道具(宝箱の中)
この広大な市街では待望のノコギリ属性武器が取れた。しかし民家の遺体が天井から吊り下げられており、ロープを切らないとアイテムが取れないのはわかったもののその光景自体にやや嫌悪感を抱いたのは秘密である。
古い手記曰く、狩人証は狩人の夢にいる水盆の使者に渡せばラインナップが増えるらしい。
******
曰く、神父は未だ新人狩人のおよそ4割以上の心をへし折っているとか。
その上にはレバーを引くと起動するエレベーターがあり、
その、上の教会には……
ザザッ…――ザ…ザザァ――……
激しいノイズの向こうに見える人影。
人影は自らのことを神父と名乗った。
教会に血化粧が施され、銃弾が壁を抉る。
唐突にそれは哄笑を放ち獣と成った。
幾度も身体を傷つけられながらも、斬撃痕と弾痕を獣の体躯に刻み付ける。
やがて獣と化した神父は倒れ、赤い目から幾分か活力の光が消失したままふらふらと神父が落とした鍵で地上への扉を開け、階段を上っていく。
…
―――目を覚ます。出血はすっかり収まっていた。マップ曰くこの街の下水道を経由すれば次エリアの【聖堂街】…しかしその直前にもう片方のエリア主が待ち構えていることが分かっている。
(………………??)
目覚める直前に見た夢。
自分と全く同じ姿をしていたが、赤く輝く目には何の感情も見受けられなかった。強いて言えば殺気が輝いていただけだ。しかし、身のこなしや放つ気配、武器の扱いは一流の狩人そのもの。
これがシステムの言っていた記憶深奥なのかと妙に納得していると、青年の方も目覚めた。
「?」
「ああ…じゃあ行こうか」
考え込んでいた自分を見て首を傾げる青年。それを見てヒビキは自分の思考を打ち切った。
…
数十分後。道をうろつく武器を携えた群衆や人食い豚の身体に風穴をぶち開けながら、下水道への入り口を探し当てた。人狼のハメ戦法に使った民家の逆側にあった、柵の崩れた一方通行の段差を道なりに降りていくと入り口だ。中は記憶の通り綺麗な水が流れ、コケっぽい匂いが漂っているだけ。
下水道自体は、側面の壁にいくつか長い梯子がかかっているだけで道自体は一直線。迷う心配はない。
しかしゾンビやら人食い豚やらがうろついているので、ここでも銀矢と弓剣、青年の持つ剣の光波が大活躍した。影に隠れ不意打ちし、相手がのけぞったところを弱点部位にもう数発入れる実に簡単な作業。しかし油断すると一瞬で被弾するため、気は抜けない。
「……はぁ、はぁ」
「………………」
被弾してもやり返すことで精神を高揚させ、命を奪い返す狩人独特の戦法がある。リゲインというのだが、これをやりすぎた結果が《血に酔った狩人》。つまりこれは麻薬のに似たものと捉えればいい……のか?
『グアアアアアアァァア!!』
―パァンパンパァアン!
『!?!?』
ドサッ。
ヒビキの斜め後ろから襲い掛かってきたゾンビ数体を纏めて獣狩りの銃でヘッドショット。鋭い破裂音が連鎖し、遅れてゾンビの腐った体躯が崩れ落ちる音が鳴った。腐敗に侵された血が水を染め上げる前に、精神衛生上長居はよくないと判断し慌てて青年の腕を引っ張りその場を離れた。
ジャブジャブと流れる水に逆らいながら進み、目についたアイテムは片っ端から回収する。下水道をある程度進むと馬鹿みたいに開けた空間に出た。しかし敵以外何もないらしく、道なりに水道橋を渡るのみ。水道橋を渡った先には数匹の赤茶けた巨大豚こと人食い豚がうろついている。その奥には梯子が見えた。
すり抜けようにも人食い豚の体躯が大きいため隙間がほとんどなく、無理に通ろうとすれば間違いなく全ての豚に気づかれてしまう。ここは安全に一体ずつ、素早く処理することにした。
アイテムボックスから、白い骨で出来た短剣を取り出した。
祭祀者の骨刃
種別:道具
傷つけた敵の方向感覚を狂わせ、同士討ちを起こさせる力を宿した骨の短剣。
ただし元は儀礼の品であるため、深く斬りつけると壊れてしまう
まさか近くまで走って行って切りつけるわけにもいかないので、今回はそのまま短剣をぶん投げる。無論標的は人食い豚のうちの一体である。白い骨の短剣は猛スピードで空を切ると、人食い豚の脇腹に深く突き刺さった。
『…ブヒ!……ピギィィイイイ!?』
大混乱を起こしたその豚はいきなりぐるぐる走り出し、周りにいた人食い豚たちを体当たりしたり蹴りに蹴る。やがて物陰に潜むヒビキたちの横を走り抜けていき、水道橋から落下した音が鳴った。数秒後にドチャッという結構生々しい音が聞こえてきたので、あの豚の結末は容易に察せる。
弓を引き、3本纏めて銀矢を撃つ。
扇状に飛んだ矢は、一体の豚に完全にトドメを刺した。
青年が剣を振るい光波を放つ。
別方向にいた豚がスッパリ切り裂かれた。
そんなこんなで青息吐息だった人食い豚たちを手早く処理し、ドロップアイテムはすべて回収してから梯子を上る。
上った先にはレバーと、エレベーターとしか形容しようのないものが並んでいた。銀の柵で閉ざされたそれを一瞥し、レバーを躊躇いなく引く。
夢の通りなら、この先は…………
エレベーターの入り口を閉ざしていた銀の柵がすーっと開き、ほぼ同時に上から乗り場が下りてくる。そして床と同じ位置でガシャン!と停止した。2人が乗った後、柵はまたすーっと閉じ、乗り場が上へ移動する。
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エレベーターを降りた先は、奇妙な教会だった。いや、内装は確かに教会なのだが異様に広く、床には墓石が乱立し、ついでと言わんばかりに狩人装束を纏った骨が散らばっていた。そして、奥に立つ教会装束の狩人―夢では神父と名乗っていたが―がこちらに気づいたか振り向いた。
かなり老年とみられるがその肉体には衰えのおの字も見当たらず、散弾銃と獣狩りの斧を持っている。狩人の例に漏れない赤い目が、複雑な色の感情をたたえて輝く。こちらを見据えたその狩人が、言った。
「……………どこもかしこも、獣ばかりだ………
…貴様らも、どうせそうなるのだろう?」
殺気が、放たれる。
片手斧を構え、その狩人―神父が迫ってくる。
「来るぞ」
「…!」
青年が聖剣を構え、ヒビキは弓から剣に戻した弓剣を構える。無論ヤスリで炎エンチャント済みだ。
…斧による縦横の振り(2連続縦振りもあった)、地面を削ってからのかち上げ、ジャンプ攻撃など当たればかなりのダメージを喰らうであろうと予想できるだけに全力で避けた。
ヒビキよりも早く射程外からの攻撃を始めた青年は剣で光波を放ち、早々に弓で回避を織り交ぜながら攻撃を始めたヒビキ。しかし厄介なのが散弾銃による攻撃で、範囲が広い故にヘイトを自身に集中させていたヒビキは散弾銃の銃撃からの突進かち上げでしょっちゅう受傷した。かち上げられるのだけは免れたものの、徐々に視界が霞んでいく。
怪我の功名(?)かヒビキが引き付けていた間攻撃し放題だった青年が神父のHPを削り、残りHP量がいよいよ六割を切ろうというあたり、だ。
「…匂い立つなぁ……
堪らぬ血で誘うものだ、
えづくじゃアないか!
ハッハッハッ…
ハッ、ハハハハハハハッ!」
左手に持つ獣狩りの斧が変形した。変形能力を備える(とわかった)この世界の武器群の中でも斧は攻撃力が上がると予測できるため、下手に近づかないのが上策だ。近づかないといっても、散弾銃などは相変わらず持っているため近づかないようにしても油断はならない。しかし、無駄に警戒しすぎてもそれは逆に動きの阻害を招くだけ。落ち着くのが一番だ。
「奴の背後に常に陣取るようにしてくれ、俺が注意を引き受ける」
「…………(こくり)」
2人の武器防具とも自身の血と返り血に塗れ、体力も半分は尽きている。しかし、戦意は衰えていない。
ヒビキは同意を取るとすぐに相手の注意を引くように移動する。無論剣は抜いたままだ。神父はまんまとその動きに釣られ、ヒビキを狙い始める。青年は背後に足音を抑えながら移動した。
パァンパァン!と銃声が鳴り響き、血が噴き出す。教会に血化粧が施され、赤黒く染みついた。どんどん増えていく散弾銃のかすり傷と斧の切り傷から赤い血が流れ出し、痛みとともに視界を霞ませる。霞んだ視界では正確に敵の攻撃を見切ることができず、さらに傷は増えていく。HPの減少は輸血液で凌いでいるが、傷は休息しないと治らない。
…
そんなこんなでとうとう神父のHPが3割を切った。
「ハハッ、ハハハハハハハハハハ!!」
哄笑の直後、体躯が肥大化し鋭い爪と牙を持つ獣と化した。理性はもうないらしく、咆哮しか発しない。
「!!」
両腕が肥大化した獣と化した神父が本格的に暴れる前に削りきろうと、懸命により深い斬撃を叩き込む。散弾銃や斧を捨て、聖職者の獣と同じく肉弾攻撃ばかりになるが銃撃を頭部に叩き込むと面白いくらいに怯む。内臓攻撃もとれるため、半ばハメ戦法のような形で銃撃し続ける。
しかし、一部問題もあった。
(こいつ…墓石すらぶっ壊してくる!?)
獣と化した神父の肉弾攻撃は、今まで盾として使えた教会の床に乱立する墓石すらぶっ壊してくる。その様は半ば恐怖を与えるものであった。その反面、獣と化したことで炎に余計弱くなったらしく銃撃による怯み+アイテム《火炎瓶》併用でHPがガリガリと削れる。
やがて、獣は倒れた。
獣が倒れたのと入れ替わりに、教会の中央に火のついた黒カンテラが出現する。《地下墓の鍵》がドロップした。教会の奥にある扉を開ける鍵だろう。
≪ログ≫
灯り「オドンの地下墓」が解放されました狩人の夢の「市街の墓石」とこの灯りとの転移ができるようになります。
…
灯りで休息し、すっかり傷を治したヒビキと特に傷を負っていない青年は鍵を使って先へ進む。道は一方通行らしく、迷う心配はない。途中に壁の色に半ば擬態していた宝箱があったのに気づき、慌てて回収しておいた。
≪拾ったアイテム種類≫
・死血の雫【3】
・石ころ
・血石の欠片
・死血の雫【1】
・匂い立つ血の酒
・輸血液
・水銀弾
・ノコギリ槍
・油壷
・狂人の智慧
・ノコギリの狩人証
・死血の雫【2】
・狩人の確かな徴
・濃厚な死血【5】
・狩人シリーズ
・真っ赤なブローチ
・血晶石の工房道具(宝箱の中)
この広大な市街では待望のノコギリ属性武器が取れた。しかし民家の遺体が天井から吊り下げられており、ロープを切らないとアイテムが取れないのはわかったもののその光景自体にやや嫌悪感を抱いたのは秘密である。
古い手記曰く、狩人証は狩人の夢にいる水盆の使者に渡せばラインナップが増えるらしい。
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曰く、神父は未だ新人狩人のおよそ4割以上の心をへし折っているとか。
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