最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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10章「狩人たちの見る夢」

古寂れた聖堂街と廃城の噂

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―――地下教会の奥の扉から、上へ上へと階段を上った先は予想通り教会(地上部分)だった。ステンドグラスなどはかなり気合が入った造りをしているのだが、普通現実で見るような十字架や像などのものが一切なく何を信仰する教会なのかは分からない。地下はあんなに凄惨な状態だったくせに、地上部分は周囲に比べ比較的綺麗である。
そして目の前に灯りがあった。

≪ログ≫
灯り「オドン教会の聖堂街」が解放されました。狩人の夢の「市街の墓石」とこの灯りとの転移ができるようになります。


出口は正面・左右で三つあった。しかし、右側の出口は開かない。
正面は行き止まりっぽいので、左の出口から出る。井戸墓地を通り抜け左の階段を降り、その先の別の教会を目指す。教会の正面玄関は開かなかったため階段を上ってその上の2階の扉から侵入することにした。

「…………………??」

入って右側、青年がレバーを見つけたらしい。彼が頭上に?マークを浮かべたままそのレバーを引くと、ガコン、という音の後にゴリゴリという、石同士がすりあうような音が階下から聞こえた。

「?……あ」

ずっとマップを注視していたヒビキが、階下にある棺が動きその下に隠し階段が現れたのに気付いた。マップ曰くその先は別のエリアらしいので、もう少し探索してみることにする。例えば井戸墓地を右に行った先などはまだ行っていない。……というわけで来た道を戻り、井戸墓地の分かれ道から右側の道を辿る。…しかし。

「………………開かねぇな」
「!」

仕掛けで閉じられた正門が道を塞いでいる。その門の中央の窪みの下に何か刻まれているのに青年が気付いた。どれどれ、とヒビキがつられて窪みの下に目を向ける。

【《狩長の印》を示せ】

こう刻まれていた。暫く黙り込んだ後、助言者にヒントを貰おうか、ついでに消耗アイテムを買い足しておこうと考え一旦狩人の夢に戻ることにする。戻る途中青年が段差でコケかけたのでヒビキが半ば強引に腕を引っ張る形で誘導した。



―――狩人の夢に戻った後、水盆の使者の元へ行く。「聖職者の獣」を倒したお陰か目当てのキーアイテムはすぐ見つかった。エリア主連戦していなければ1万貯めるのは面倒くさかったかもしれない。他輸血液や水銀弾などの消耗アイテムも買い込み、次は助言者の家へ行く。

すると車椅子の狩人は眠り込んでいた。仕方ないので武器を修理しておくことにする。刃を研ぎ、弦も張り直す。変形機構も若干歪んでいたので慎重に直した。銃の方は道具が置かれていたのでそれを使って念入りに掃除しておく。2人の武器の一連の修理作業が終わった後、カタンと小さな音が耳に届いた。

振り向くと、壁際の椅子に座っていた(身の丈2メル近い)人形が動き出している。スタイルや顔立ちは普通に美しいのだが、そこまで巨大な人形がひとりでに動いているという事実をいきなり飲み込めずヒビキは暫くフリーズ状態だった。

…一方青年の方はというとフリーズ状態のヒビキとは逆に、近づいて行って手を振ったりお辞儀したり色々試しているようだった。すると人形の方も手を振り返したりお辞儀してきたり、反応を返してくれる。
行動によっては何も反応しないこともあるようだが、どうも大体の行動に対し反応を返してくれるらしい。

ここでやっと復帰したヒビキも人形に近づく。すると宙にウィンドウが開いた。

「……………レベルアップか」

血の遺志を使ってレベルアップをしてくれるらしい。項目は

【体力】
HPと防御力に関わる。
【持久力】
スタミナ、防御力、遅効毒・劇毒耐性に関わる。
【筋力】
防御力に関わる。装備要求能力値の1つで、武器に筋力補正があれば攻撃力が上がる
【技術】
防御力と内臓攻撃の威力に関わる。装備要求能力値の1つで、武器に技術補正があれば攻撃力が上がる
【血質】
宿す血がどれだけ神秘に近いかを示す。装備要求能力値の1つ。血質補正のある武器(主に銃)の攻撃力を補正する
【神秘】
神秘を扱う素質を示す。装備要求・秘儀要求能力値の1つ。神秘・炎・雷属性の攻撃力と、秘儀の攻撃力を補正する。アイテム発見力と防御力に関わる。

この世界に来た時にステータスも引きずられるようにかなり大幅に下がっていたため、正直有難い。考え込んだ末、ヒビキは自分が持っている「暗殺者の弓剣」の補正がある技術・血質と体力、青年は「月光の聖剣」の補正がある神秘・筋力と体力をメインに上げることにした。

慣れた手つきでレベルアップを終わらせ、人形にジェスチャーをして遊んでいる青年を後目にヒビキは入手したアイテムを整理していた。工房道具は机の上に揃えて置き、強化アイテムを使って持っている武器の強化を行う。余りは保管箱へ直行である。

「いってらっしゃいませ、狩人様。貴方がたの目覚めが有意なものでありますように」

動くんなら喋るよな。綺麗な女性の声で人形が喋った事実を半ばまで諦めた気持ちで受け入れた。

青年の持つ剣と銃の強化も終わった後、一旦保管箱にしまった《狂人の智慧》を手に取る。どくろがくっついた奇妙な本のようなそれは、言いようもない不気味な雰囲気を纏っていた。中を少し開いたが、読めない文字が羅列されていたのが見えた瞬間、頭に鋭い痛みが走った。痛みはすぐに治まったが、何かがおかしくなった気がする。…?
《狂人の智慧》はそれで使用扱いになったのか消えてしまった。

「………………………お、おお!お主ら来ていたのか。すまんな少し眠り込んでいたようだ」

車椅子の狩人/助言者がいつの間にか起きていた。起きた直後に2人が来たことに気づいたらしい。

「お主らが居なかった間、狩人どうほうが一人来てな。お主らのことを話したら興味を持たれて伝言を頼まれた
【医療を受けず来たあなた方に頼みたいことがあります。旧市街への隠し階段がある教会の2階を通り抜けた先にある通路で待っています】
……だそうだ。まぁ、行ってやるといい。ついでに知らせておくが、お主ら宛てに招待状が届いていたぞ。診療所の治療室にあるはずだ」
「…………招待状?」
「…廃城からの招待状だ。忘れないうちに取ってくるといい。ただ、教区長のあの女と墓地街の魔女を倒さないとどうしようもないな。その後場所は教えてやる」
「…………………………」
「あの女も獣の病に罹った聖職者だ。炎とノコギリを用意していくといいだろう」

憎々しげに形のいい唇を歪めた後、ちょうど水盆の使者がいる方を顔の向きというか視線で示す。視線を戻した後、また物思いに沈んでいく。その後2人は顔を見合わせた。

「どうするか…」
「……」
「招待状探してから会いに行くか?」
「(こくり)」



―――というわけで、狩人の夢からほど近い場所にあった診療所にやってきた2人。ぱっと見では確実に診療所とは判別できないほど不気味な雰囲気を纏っている。内部に入ってみるとあちこちに飛散し生々しく染みついたまだ新しい血痕と所々に転がるぐちゃぐちゃの死体がより不気味さを醸し出していた。

『グルルルル!』
パァンパン!
『グルゥッ!?』

物陰から唐突に襲い掛かってくる四つん這いの人狼を撃退しつつ、その撃退された中に混じっている灰色のメタリックな宇宙人のような見た目をした敵には気づかず、中を探索する。
ある部屋の前に差し掛かった時。

『グルッ!?』

HPがある程度減っている人狼を撃ち抜き、扉を開け部屋の中を見た瞬間、鮮明な現実味を伴った幻像が脳裏に瞬く。それと同時にとてつもない既視感とともに頭を殴られたような激しい眩暈で視界が歪む。斜め後ろを振り向けば青年も似たようなことになっているようだが、ヒビキよりかは程度が僅かばかり軽そうだ。

「………………っ!?」

狩人たちが”血の医療”と呼ぶ《■■■の血》を輸血する光景。
声にならない苦痛の籠った叫び声。

目覚め、赤い瞳はぼんやりとしていながら相当の混乱で満ちている。
それまでの記憶を失い、”     ”を求めて獣を狩れと……

―招待状自体は部屋の中を探していたらすぐに見つかった。なぜか一緒に古びた宛名のない招待状もあったが。目的のものを見つけたらさっさと離れる。あれ以上眩暈に襲われ続けるのも御免こうむりたい。



――――墓石からの転移で聖堂街に戻り、指定された場所へ向かう。
そこでは壁に寄り掛かった立ち姿の狩人が待っていた。背になんと(殴られたら相応に痛そうな)ごつい車輪を背負い、医療教会の処刑隊装束を身に纏っている。腰にはポーチと遠距離戦用なのか教会の連装銃を下げていた。
年齢はそれなりに若そう(=20代前半)で、がっちりした比較的細い体型と(日本人平均からして)かなり高めの身長、きりっとした雰囲気を纏っている。

「ああ、お待ちしていました」

やはり張りのある声音で言いながら、その狩人は一礼した。




***

≪要注意敵メモ(Byヒビキ)≫
【教会の使い】
白い教会の装束に身を包んでいる。またこれまた持っている武器が多様で、よく見るのは杖持ち。ランタンを持っているのもいるが、そのタイプはあまり積極的に襲い掛かってはこない様子。

【教会の大男】
ものすごく体がデカい。そして持っている武器もデカい。動きはのろったいが直撃すればただでは済まなそうなので、密着して回避しながらラッシュで倒してしまった方が簡単かと思われる。時々とげ付き鉄球をぶん回すタイプもいる。
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